さて、このジャンルって初めてかもしれないなぁの第997回は、
タイトル:記憶 ニライカナイより
著者:永嶋恵美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'11)
であります。
読んでいるうちに、ミステリっぽいなぁなんて思っていたのですが、解説によるとサスペンスらしいです。
テレビでもサスペンスなんて見ない……と言うより、テレビそのものをほとんど見ないで読書三昧なので、サスペンスと言うジャンルがどんなものか、はっきり言ってよくわかっていません(笑)
でもまぁ、ジャンルに拘らないで読めたので別にかまいはしませんが。
では、ストーリーですが、
『水野春菜がそのことを知ったのは、夫とともに朝食の席でつけていたテレビのニュースキャスターの声からだった。
沖縄で起きた殺人事件。その被害者、副島奈槻の訃報を知らせる内容だった。同姓同名の他の誰かだと思いたい春菜は、しかしいくつかの局のニュースで、それが恋人の奈槻であることを知らしめられ、愕然とする。
奈槻と出会ったのは、新宿二丁目のレズビアンバー「イリス」だった。
漫画家の幼馴染みの友人池谷千恵子が描くマンガで、同性愛者を主人公に据えると言うのでその取材も兼ねて訪れた「イリス」で知り合ったのだ。
ただそれだけで終わればよかったのだが、春菜は既婚であることなど、嘘をついていたことに罪悪感を覚え、奈槻と再び会うことにする。
そこから、春菜は奈槻との恋人関係を始めていくことになる。
その奈槻が殺された。しかも遠く沖縄の地で。
抵抗した様子もなく、物盗りでもない殺人事件――怨恨の可能性が高いと判断された警察から、春菜は事情聴取を受けることになる。
春菜と奈槻の関係をすでに知っているらしい刑事は、まるで春菜が犯人であるかのように事情聴取を進めていく。
夫にはもちろんのこと、周囲にも秘密にしていた関係……それを知るのは「イリス」の常連としか思えない。
さらにふたりの関係を記事にした週刊誌が出回り、奈槻との関係を夫にまで知られてしまう。
激昂する夫の姿に耐えられず、家を飛び出してしまった春菜は、離婚の相談をしていた弁護士の荻津の助けもありながらも一所に落ち着くことができたかに見えたが、そこにも刑事の姿があった。
発作的に荻津まで振り切って逃げ出してしまう春菜は、自身に罪はないとわかっていながらも、そのまま逃亡者になってしまう。』
まず、同性愛に関して寛容になれない方は、ちょっと手を出しづらいかと思います。
性描写などはまったくと言っていいほどありませんが、春菜と奈槻の関係に嫌悪感を抱くのであれば読みづらいでしょう。
私は気にしませんし、同性愛者の友人もいますし、BLだって読もうと思えば読める人間なので、まったく苦になりません。
(BLもレーベルが確立されていない昔は、スニーカー文庫のレーベルで出てたりして、表紙買いで間違えて買ってもったいないから読んだりしたものです。今は進んで読もうとは思いませんが、読めと言われれば読めるでしょう(笑))
この1点をクリアできたならば、本書はいい作品だと言えるでしょう。
まずよい点から上げていくと、春菜のキャラ。描写のほとんどが春菜視点で描かれていますが、春菜の心の動き――心理描写が巧みで、過去に起きた出来事や、それに関連して形成された人格など、まったく無理がありません。
また、春菜視点と言うことで散りばめられた伏線も無理なくストーリーに溶け込んでいて、犯人はいったい誰なのかと言う想像を二転三転させてくれます。
ただ、逆に春菜の視点からの情報だけですので、奈槻を含めた他のキャラが薄い印象は否めません。これだけはちょっと残念なところ。
ストーリー展開は、起伏に富んでいると言うわけでもなく、割合淡々と進みます。
描写が春菜視点であること、春菜の心理描写が多用されていることからも、盛り上がりに欠けるきらいはあります。
読むひとによっては、春菜の逃亡劇にどきどきしたりはらはらしたりすることもできるかもしれませんが、私にはそれはありませんでした。
ラストで犯人が誰なのかが判明しますが、劇的なものがあるわけでもありません。
まぁ、その結末には納得できますので、ストーリーとしてはうまくまとまっている作品でしょう。
……あれ? なんか最初にいい作品と書いた割にはあんまり褒めてないような……(爆)
あー、でもサスペンスって初めて読んだ(と思う)のですが、著者の特徴なのか、やはり心理描写の巧みさは特筆すべき点でしょう。
これがなければ落第を決定づけてしまいかねない凡百の作品に成り下がってしまいそうです。
少々気になるところはあるものの、ストーリー展開に無理はないし、結末も納得できるものですし、心理描写は秀逸。
読んでも損はない作品で、比較的オススメしやすい作品と言えるでしょう。
ちょっと甘めの評点ながら、総評、良品。
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:記憶 ニライカナイより
著者:永嶋恵美
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'11)
であります。
読んでいるうちに、ミステリっぽいなぁなんて思っていたのですが、解説によるとサスペンスらしいです。
テレビでもサスペンスなんて見ない……と言うより、テレビそのものをほとんど見ないで読書三昧なので、サスペンスと言うジャンルがどんなものか、はっきり言ってよくわかっていません(笑)
でもまぁ、ジャンルに拘らないで読めたので別にかまいはしませんが。
では、ストーリーですが、
『水野春菜がそのことを知ったのは、夫とともに朝食の席でつけていたテレビのニュースキャスターの声からだった。
沖縄で起きた殺人事件。その被害者、副島奈槻の訃報を知らせる内容だった。同姓同名の他の誰かだと思いたい春菜は、しかしいくつかの局のニュースで、それが恋人の奈槻であることを知らしめられ、愕然とする。
奈槻と出会ったのは、新宿二丁目のレズビアンバー「イリス」だった。
漫画家の幼馴染みの友人池谷千恵子が描くマンガで、同性愛者を主人公に据えると言うのでその取材も兼ねて訪れた「イリス」で知り合ったのだ。
ただそれだけで終わればよかったのだが、春菜は既婚であることなど、嘘をついていたことに罪悪感を覚え、奈槻と再び会うことにする。
そこから、春菜は奈槻との恋人関係を始めていくことになる。
その奈槻が殺された。しかも遠く沖縄の地で。
抵抗した様子もなく、物盗りでもない殺人事件――怨恨の可能性が高いと判断された警察から、春菜は事情聴取を受けることになる。
春菜と奈槻の関係をすでに知っているらしい刑事は、まるで春菜が犯人であるかのように事情聴取を進めていく。
夫にはもちろんのこと、周囲にも秘密にしていた関係……それを知るのは「イリス」の常連としか思えない。
さらにふたりの関係を記事にした週刊誌が出回り、奈槻との関係を夫にまで知られてしまう。
激昂する夫の姿に耐えられず、家を飛び出してしまった春菜は、離婚の相談をしていた弁護士の荻津の助けもありながらも一所に落ち着くことができたかに見えたが、そこにも刑事の姿があった。
発作的に荻津まで振り切って逃げ出してしまう春菜は、自身に罪はないとわかっていながらも、そのまま逃亡者になってしまう。』
まず、同性愛に関して寛容になれない方は、ちょっと手を出しづらいかと思います。
性描写などはまったくと言っていいほどありませんが、春菜と奈槻の関係に嫌悪感を抱くのであれば読みづらいでしょう。
私は気にしませんし、同性愛者の友人もいますし、BLだって読もうと思えば読める人間なので、まったく苦になりません。
(BLもレーベルが確立されていない昔は、スニーカー文庫のレーベルで出てたりして、表紙買いで間違えて買ってもったいないから読んだりしたものです。今は進んで読もうとは思いませんが、読めと言われれば読めるでしょう(笑))
この1点をクリアできたならば、本書はいい作品だと言えるでしょう。
まずよい点から上げていくと、春菜のキャラ。描写のほとんどが春菜視点で描かれていますが、春菜の心の動き――心理描写が巧みで、過去に起きた出来事や、それに関連して形成された人格など、まったく無理がありません。
また、春菜視点と言うことで散りばめられた伏線も無理なくストーリーに溶け込んでいて、犯人はいったい誰なのかと言う想像を二転三転させてくれます。
ただ、逆に春菜の視点からの情報だけですので、奈槻を含めた他のキャラが薄い印象は否めません。これだけはちょっと残念なところ。
ストーリー展開は、起伏に富んでいると言うわけでもなく、割合淡々と進みます。
描写が春菜視点であること、春菜の心理描写が多用されていることからも、盛り上がりに欠けるきらいはあります。
読むひとによっては、春菜の逃亡劇にどきどきしたりはらはらしたりすることもできるかもしれませんが、私にはそれはありませんでした。
ラストで犯人が誰なのかが判明しますが、劇的なものがあるわけでもありません。
まぁ、その結末には納得できますので、ストーリーとしてはうまくまとまっている作品でしょう。
……あれ? なんか最初にいい作品と書いた割にはあんまり褒めてないような……(爆)
あー、でもサスペンスって初めて読んだ(と思う)のですが、著者の特徴なのか、やはり心理描写の巧みさは特筆すべき点でしょう。
これがなければ落第を決定づけてしまいかねない凡百の作品に成り下がってしまいそうです。
少々気になるところはあるものの、ストーリー展開に無理はないし、結末も納得できるものですし、心理描写は秀逸。
読んでも損はない作品で、比較的オススメしやすい作品と言えるでしょう。
ちょっと甘めの評点ながら、総評、良品。
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