つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

主人公どっち?

2007-04-20 20:42:11 | ファンタジー(現世界)
さて、いちおうラノベの範疇に入るのかなの第871回は、

タイトル:傀儡覚醒
著者:鷹野祐希
出版社:講談社 講談社X文庫ホワイトハート(初版:H11)

であります。

最近、日曜ラノベのネタは、専らAmazonのマイページなんぞに出ているのを中心に選んでいる。
で、なんかいかにもなタイトルの作品が出てきて、なんかなぁと思っていたら、ここしばらく読んでいなかったホワイトハートの作品まであるじゃん、と言うことで借り。

ホワイトハートというと少女小説系の中ではファンタジーのクオリティが高いほうだと思っているので、ちと期待してみたところ……。
こんなストーリーでした。

『いつもの日常。……蓮川菜樹なみきは、父、貴巳の帰りに合わせて弟の汰月を呼びに行こうとしていた。
父が帰宅し、毎月給料日恒例の夕食が始まろうとしたとき、突然、母の遙花が倒れ、そのまま帰らぬひととなってしまった。

突然の出来事に思考が働かない菜樹は、母の通夜すらしないまま、父に連れられ、からくり寺の異名を持つ唱壽寺に預けられることになる。
菜樹を置いて行ってしまった父、荼毘に付す間もないままの母、隣家に預けたままの弟……不安を誘う出来事の中で、さらに菜樹はからくり寺で自らの力を知り、戸惑う。

菜樹の力、それは宇津保。自らの身体に神霊や精霊を宿し、力を行使するというものだった。
その力を五鬼衆と言う、宇津保を物のように扱う者たちが狙っていた。
からくり寺で人形……傀儡を操り、宇津保を守る傀儡回しの海生とともに、菜樹は宇津保の過去を知り、自らの力をもって五鬼衆と対決する決意をする。』

えー、物語としては素直におもしろく読めました。
第6回ホワイトハート大賞佳作と言うことでデビュー作なんだけど、新人だと言うことを差っ引いても、十分読める作品だろう。

ただ、物語はいいのだが、やはりデビュー作だからだろうね。
アラが目立つ。

まずストーリー展開。
母の死をきっかけにして、菜樹が五鬼衆に狙われるようになるわけだが、この辺りの説明不足がまずダメ。
序盤はまだ突然のこと、と言うことでいいのだが、中盤以降、ほとんどそれらに触れられず、母の持つ能力のために見つからなかった、と言うだけの説明で終わらせているのはいただけない。

他にも、菜樹を置いて去っていった父のほうも説明不足。
こうしたところは、からくり寺に来て、宇津保として戦うことを決意する菜樹の背景を薄くしていて、説得力に乏しい。
中盤以降、ともに不安と苦悩を抱え、克服しようとする菜樹と、傀儡回しの海生の姿がよく描かれているのに、その土台がふらついているのは残念。

これ以外にも、話の繋がりがまずいところが見受けられ、展開に甘さがある。
こうしたところがしっかりしていれば、もっといい作品だと言えるのだが。

あと、文章も難あり。
表現力においては問題はないのだが、視点の切り替えがダメ。
基本は菜樹の視点なのだが、行を区切ることなく、菜樹の視点から突然海生の視点になったり、菜樹を狙う五鬼衆のひとりの視点になったりするところはマイナス。
まだ、菜樹から海生になるくらいならいいのだが、区切りなしでころころ視点が変化するのは読みにくい。
表現力に不足がないのだから、こうした視点のふらつきをどうにか出来ていればいいのだが……。

まぁ、ストーリー展開も、文章も、新人らしい荒削りな作品、と好意的に見ればまだ我慢できる範囲だろう。
実際、物語そのものがおもしろく読めたのでいいが、これでつまんなかったらきっと毒吐きまくりだよなぁ。

と言うわけで、欠点はあるもののストーリーはよし、さらには新人さんと言う甘さも加えて及第と言ったところか。
でも、欠点が改善されれば十分読める作品だと思うので2巻以降に期待したいところ。



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もともとは白組

2007-04-19 19:59:30 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、珍しいメディアミックスだよなの第870回は、

タイトル:しにがみのバラッド。(1~2巻:以下続刊)
著者:和泉明日香 (原作:ハセガワケイスケ)
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:H18)

であります。

鈴:もういい季節が過ぎちゃったなぁのLINNで~す。

扇:ああ、墓場巡りか? と聞いてみるSENでーす。

鈴:彼岸はもう1ヶ月も前じゃっ!!

扇:ちょっと違ったか……。
じゃあ、地獄巡りか?

鈴:ひとりで鬼と散策でもしとれっ!!

扇:血の池地獄でオリエンテーリングかぁ……。
むか~し、そんなゲームがあった気がせんでもない。

鈴:妖怪道中記だな?

扇:間違ってはないが、ちょっと古過ぎやせんか?

鈴:古くはないぞっ!
80年代だ。70年代が得意な相棒よりは新しい話だ(爆)

扇:蹴倒すぞ。
あれほど歳をバラすなと言うたのにおのれと言う奴はだなぁぁぁ~!!!

鈴:歳をバラすなって……。
やっぱり鯖読んでたんだな。(笑)
……あぁ、いかんいかん、重要な個人情報をおおっぴらにしてはあかんよなぁ。

扇:死ぬか?

鈴:やーなこった。
こんな若い身空で死んでたまるかい。
もっとあんなことして、あんなもの買って……。

扇:おのれ亡者めが……。
木劇108回目にして、煩悩が消えるどころかさらに増えるとは、まこと欲深き男よ。

鈴:趣味には亡者にもなるわさ~(笑)
……って、108回目だったのか……煩悩の数だけ木劇がある。
う~ん、いいフレーズだ。

扇:さすが、煩悩だけで生きてる奴は言うことが違うな。(皮肉)

鈴:まぁな。
なぜか、最近、その単語の前に「子」あたりがつきかけてるのが、かなり痛いんだが(爆)

扇:やはり、隠し子がいたのか……。
鬼畜もここまで来ると立派なものだ。

鈴:隠し子なんかおるかぁっ!!
って、鬼畜はそのままカーバンクルで跳ね返してくれるわっ!

扇:たわけ。
鬼畜でも何でもない私にそんな攻撃が通じる筈がなかろう。

鈴:じゃぁ、備蓄?

扇:何を貯めるんだ?

鈴:金っ!
ぜんぜん貯まらんが……(T_T)

扇:お前、俺にリアルファイト売ってるだろ?(現在金欠)

鈴:( ̄ー ̄)ニヤリッ

扇:ちょっと気功が飛ばせるからっていい気になってんじゃねぇぞっ!

鈴:誰がそんな非常識なことが出来るかぁっっっ!!!

……ったく、どんどんわけわからん方向に行きそうだから、そろそろまじめにストーリー紹介をしておこう。
本書は、原作があるように、もともと電撃文庫で出版された人気シリーズのメディアミックス作品。
主人公の死神が、様々な人物(キャラ)、またはそうした人物の身近なキャラの死に際して、生きているほうの人間のために死神らしからぬ気遣いを見せて、生きているほうの人間の心を癒すオムニバス形式の物語であります。
……って、なんかまじめすぎてさぶいぼ……(笑)

扇:慣れってのは怖いねぇ。(笑)
毒の「ど」の字も感じられない時点で、かな~り俺向きではないが、お前さんが好みそうな話ではあるわな。
んじゃ、今回も楽に解説が終わったところでCM行っとくか。

鈴:そうねぇ。
ハッピーエンドも、この手の切ない話も私好みだねぇ。
まぁ、そうは言っても、小説より、こっちのマンガのほうがいいけどね。
じゃぁ、CM行っとくかね。


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鈴:では、まずは主人公兼ヒロインのモモ。
死神Aの100100号と言う番号の100と100をもじってモモと言う通称にしている。
無表情系の属性を持つヒロインで、死神なので死をもたらす存在なのだが、お約束のように感情的にならないだけで、基本的に人間好きな子。
死ぬ予定の人間、又は死んだ人間と、その死者に関わる関係者の思いに答えて、あれこれ世話を焼いたりするのが得意。
……なんか、これ以上書くネタがない……(爆)

扇:では、狂言回し兼ナレーターのモモ。
ストーリーのメインは飽くまでこれから死ぬ予定、あるいは死んだ存在であり、モモは積極的に介入すると言うよりは見守ることの方が多いので、キャラとしては――薄い。
人気取りのためか、単に奥ゆかしいのか、かなり静かな性格なので、迷いまくっている人間に大してやきもきすることもなく、ほんのちょっと手を差し伸べる程度。
どこぞの死界の門を守っている女性のように、「お逝×なさい」とかゆー決め台詞でもあればまだ良かったのだろうが、それすらないため、二巻まで通して読んでも空気のような印象しか……あ、言っちゃったよ。
(盛大に喧嘩売ってますな)

鈴:まぁ、基本的にこいつが出張るよりは、そのときのゲストキャラがメインの話がほとんどだからなぁ。
では、次にモモの仕事仲間のダニエル。
黒猫に羽根が生えたいかにもなビジュアルで、感情を表に出さないモモの代わりに、あれこれ怒ったり喚いたり自分やモモの紹介をしたりするものの、たいていは口の出し過ぎでモモに止められる、と言うお約束しか存在意義がない子。
……あれ? なんかさりげにとんでもないことを言ってる気がしないがまぁいいや。

扇:お目付役として、もうちょっと強力なら面白かったんだがな。
一応、怒りはするが、基本的にはモモのやりたいようにやらせてるし。
少年漫画だと、まんま監視役だったり、『死神の処刑役』だったりするのが素直なラインだが……それはないだろうなぁ。
ま、相棒共々、ただの進行係なので薄い奴ではある。

鈴:絵柄もあっさりしてるから余計そんな感じだよなぁ。
……しかし、もうこのふたりを紹介すると他に紹介するキャラがいないな。
オムニバスで毎回ゲストキャラ変わるし。
なんか、この話でこのキャラは紹介しときたい、ってヤツいる?

扇:いないな。
と言うか、どの話のキャラもステロタイプで魅力に欠ける。
定番じゃない奴が出てきたと思ったら、頭のネジが飛んでるだけで、中身は砂糖七杯ぶち込んだミルクティーに等しい甘々人間だったりで……なんだかなといった感じだ。
基本的にハッピーエンドに持っていくタイプの作品だし、恋愛要素も濃いので仕方ないっちゃ仕方ないんだが、死を扱った物語にしちゃキャラが軽いわな。

鈴:まぁ、軽いからモモとかは人気あるんだろうけどな。
だが、もともとがラノベにしてはマシなほうだとは思うけどね。
白泉社でマンガにしても、他のがけっこうレベル高いマンガ多いから、もとの小説の人気がなけりゃ埋もれてる作品だとは思うがねぇ。
橘裕みたいに毒でもあれば、またおもしろいんだろうが、原作を考えると無理か。

扇:モモは、狙いまくってるからな。
女性の人気はともかく、男性の人気はそれなりに取れるだろうて。
その意味では確かに、原作の人気がなくて、単品で白泉社で出てたらいい感じに消えてそうな作品ではある。

鈴:まぁ、もともとラノベだし、キャラ人気が出なけりゃどうしようもないところがあるからなぁ。
それを花ゆめのコミックスにしたのが意味不明だが。
それにしても、消えるのは確かだろうな。単行本すら出してもらえないで消えそうだ。

扇:作品として評価する気がこれっぽっちもなさそうなことを言ってんなぁ……。
何か気に入ったエピソードとかないのか? 当然、俺はないが。(爆)

鈴:いちおう、ないわけではないが……単行本未収録なんだよ(爆)
まぁ、もうとりあえず、書くことないし(毒)、そろそろ終わっとくかぁ。
では、何か微妙に褒めてないですが、今回の木劇はこの辺で閉劇であります。
ちなみに、NG集とかはありませんのであしからず。
では、さよ~なら~

扇:微妙にどころか、全然褒めてないぞ。
ともあれ、毒にも薬にもならない薄味な作品です。(大毒)
NG集……? LINN君が山から落っこちかけたシーンとか、トロッコを止めきれずに吹っ飛んだシーンとかありますけど、本作とは無関係なので割愛。
では、ファンを盛大に敵に回しつつ、閉幕致します。さよーならー

帝国?

2007-04-18 23:59:19 | ファンタジー(現世界)
さて、本を読む時間とレビューを書く時間の配分に悩んでいる第869回は、

タイトル:光の帝国 常野物語
著者:恩田陸
出版社:集英社 集英社文庫(初版:'00)

であります。

微妙に登場回数の多い恩田陸の連作短編集です。
『常野』と呼ばれる謎の地からやってきた超能力者の物語。
例によって、一つずつ感想を書いていきます。


『大きな引き出し』……春田家の人々には、あらゆる知識を『しまう』力があった。長男の光紀はクラスメートにその話をしたくなったが、姉の記実子に強く止められてしまう。疑問と不満が溜まっていく中、彼は一人の老人が死ぬ瞬間に居合わせ――。
本書中、最も出来のいい一編。光紀の能力が事件に非常にマッチしており、問題の発生から解決まで綺麗にまとまっている。少年の成長物語としても、連作短編のプロローグとしても完成度が高い。

『二つの茶碗』……三宅篤は、非常に奇妙な形で妻の美耶子と出会った。あの日あの時、茶碗が割れなければ、彼女と結婚することはなかっただろう。入口で水を一杯もらうことが慣例だった、あの風変わりな店で――。
運命の出会い話。それ以外に何かあるかと言うと、な~んにもない。最後に『黒い塔』のネタフリがあるが、短編のシメとしては蛇足な感が否めないのもマイナス。

『達磨山への道』……泰彦は友人の克也とともに達磨山に来ていた。常野一族の聖地と言われるこの山で、父は不思議な体験をしたという。別れた恋人・藍子について思い返しながら、泰彦は先を目指すが――。
泰彦と藍子の関係、泰彦の父が見たという幻とその意味、映画『ピクニック・アット・ハンギング・ロック』を思わせる女子大生四人組の失踪事件など、短い中に多くのネタを放り込んだ作品。取って付けたようなオチは正直弱いが、一個の短編としてはまとまっている。

『オセロ・ゲーム』……拝島暎子は、何の前触れもなく現れる『それ』と戦い続けていた。裏返される前に裏返すには膨大な努力が必要だが、決して負けるわけにはいかない。主人がいない今、娘の時子を守れるのは自分だけなのだから――。
常野一族と謎の存在との戦いを淡々と描く異色編。謎だけ放り投げて終わっているため、連作短編の一本としては不満が残るが、単品で考えると結構好み。これだけは続きを読んでみたい、と思う。

『手紙』……手紙形式で情報を羅列しているだけの話。重要キャラである『ツル先生』が出てくるが、解説する価値なし。

『光の帝国』……ツル先生こと遠山一郎は、戦時中のことを思い返していた。分教場と呼ばれる場所で、あの子達を暮らした日々のことを――。
特殊な能力を持つ者達が寄り添い、崩壊するまでを描く過去編。ノリはほとんどラノベで、旧日本軍が常野の者達を狩っているという、ベッタベタなネタで最後まで引っ張る。場面を区切りすぎていて落ち着きがない、という印象しかなし。

『歴史の時間』……矢田部亜希子は、前の席の春田記実子とともに不思議な幻を見ていた。無数の人形が水面を渡っていく、奇妙な光景を。すべての始まりは、唐突に聞こえてきた、「あたしたちのことを思い出してくれた?」という言葉だった――。
後で再登場する亜希子と、『大きな引き出し』の記実子が出会い、読者ほったらかしで二人だけの世界を作ってくれる、そんな作品。幻想的だが、魅力は薄い。

『草取り』……『私』は、『草取り』を見学するためにアルタ前に来ていた。その男は、世界平和のためにそれを行っているのだと言う。不審に思いながらも、『私』は彼の後についていった――。
日常に潜伏している常野の人間と、彼らが行っている仕事を描く番外編。退屈、それ以外に感想なし。ここに登場するキャラに限らないが、常野一族ってロボットみたいな連中ばかりだと思うのは私だけだろうか。

『黒い塔』……ここ数日間、矢田部亜希子は眠れない夜を過ごしていた。頭痛に悩まされ、ちょっと休むために喫茶店に入る。しかし、そこで奇妙な出来事が――。
今まで登場したキャラが揃い、何か凄いことをやろうとしている……と臭わせただけで終わる、壮大なハッタリ作品。亜希子の能力がとんでもない域に達しており、読んでるこっちとしてはひたすら萎える。黒い塔の正体もまったく面白みがなく、あと一編で終わりなのに、読むのやめようかと本気で考えてしまった……。

『国道を降りて…』……田村美咲と川添律は、律の田舎で行われるパーティに参加するため、あぜ道を歩き続けていた。二人の手には楽器があり、世界中から集まってくる律の一族の前で演奏することになっている。歩きながら、美咲は律と出会った時のことを思い返していた――。
可愛らしいショート・ラブ・ストーリー。常野への里帰り、ということで、一応連作短編のトリとしての役目も果たしている。ただし、ほったらかしの問題が多すぎるため、終わった気はまったくしない。


連作短編としては落第ですね、これ。

常野一族の生活を描くという点では一貫しているのですが、わずかな情報を除いて関連性が皆無な短編が多く、連作にする意味はありません。
『二つの茶碗』『歴史の時間』『黒い塔』はストーリー的につながっているのですが、前二つは尻切れトンボで終わっており、三つセットでようやく一作品になる時点で、独立した短編として論外。
いくつかの話にまたがって登場する人物はいるものの、どいつもこいつも超能力漫画にありがちな『能力以外に個性が皆無の薄っぺらキャラ』を地で行っており、同じ名前が出てきても、どんな奴だったかさっぱり思い出せないのもマイナスです。

好きな作品はあるけど、正直オススメしません。
揃いも揃って小綺麗な顔(美醜のことを言っているわけではない)で、能力以外の印象が薄い常野一族に興味がある方のみ、駄目元で読んでみてもいいかも。(毒)



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ようやくこれから

2007-04-17 22:30:21 | ファンタジー(異世界)
さて、このあたりが起承転結の起が終わったところかなの第868回は、

タイトル:空ノ鐘の響く惑星で3
著者:渡瀬草一郎
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H16)

であります。

ほぼ2週間ぶりに登場の本作の第3巻であります。
少し古い……と言っても3年前だけど、それでも図書館の蔵書検索で見てみると、たいてい借りられていないのでうれしいかぎり。
とりあえず、2巻まで読んで読める作品だと確認できたので、全巻読むつもりだから、こうしてさくさく借りられるのはいいね。

さて、ではこの3巻のストーリーは。

『国王、皇太子の突然の死によって政局は荒れていた。第二王子レージクの策謀に、危機を感じたフェリオと外務卿のラシアンは、ラシアンの領であるローム領へと逃げることとなってしまう。

だが、フェリオは逃げたと見せかけて王都に戻ってきていた。
王宮を掌握しつつあるレージクに対抗するために、捕らわれた政務卿ダスティア、そして敬愛するウィスタル・ベヘタシオンを助け出すために。

気心の知れた王宮騎士団の騎士ふたりとウルクとともに、小さな教会を拠点として王宮に忍び込む算段をするフェリオたち。
しかし、放蕩王子と悪名高かったレージクに、王都に戻っていることを知らせ、罠を張られてしまう。
それを知らず、忍び込んだフェリオは、同行したふたりの騎士とともに絶体絶命の危機に陥る。』

ストーリーの基本線は、2巻の政変の続き。
王都に戻ってきたフェリオたちがレージクと対抗するための行動を中心に描いており、これはこれでアクション要素がいままでよりも強く、勢いが感じられる。
また、政変の話で隠れがちだったウィータ神殿側の思惑や、カシナート司教の策謀なども語られており、なんかほんとうに3冊で起承転結の「起」をやったな、って感じ。

1巻2巻とも、まじめなストーリー展開で、レベルも高く、いい作品だとは思うが、物足りなさが残るところがあった。
だが、3巻に至ってこれまで語られていたストーリーが大きく動き出す気配が出てきて、俄然続きが気になり始めたり。
全12巻だから、この辺りからストーリーが動き始めておもしろくなってくるのは、うまく構成してるんだろうねぇ。

ただ、3巻まで読まないといけない、ってのはちょっと……。
1巻2巻にもっとインパクトがあれば、初手から読者をぐっと引きつけられるとは思うのだが……まぁ、いまさらだからしょうがない。
少なくとも、3冊目を読んでダメになるより、おもしろくなり始めてるんだから、よしとすっか。

以上、ストーリー評価でした。

……あ、いや、別にキャラとか文章とかのことが書けないわけじゃないのよ。
ただ、1巻で唯一ふらつき気味だったフェリオのキャラが2巻でしっかりしてきて、ここに来て確実に固まったので、さして言うべき欠点もないのよね。
文章は文章で相変わらず平易で読みやすいし。
なんかこう、ストーリー的なところを語ってしまうと、あとはとても欠点の少ない著者だし、なんか2巻でこのあたりの評価は固まってしまった感があるんだよね。

となるとあとはどのキャラに萌えられるかしか……(爆)
ウソです。
まじめなSFファンタジーで、「物語」がおもしろい作品なので、私的にはこの作品に萌え要素は感じられません。あしからず(笑)

と言うわけで、総評は言うまでもないとは思うけど、良品。
そろそろラノベ点は考慮しなくてもいいだろうね、ここまで来ると。



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ベタベタ台風(タイフーン)

2007-04-16 23:59:40 | ファンタジー(現世界)
さて、888が近付いてきたなと思う第867回は、

タイトル:カレとカノジョと召喚魔法3
著者:上月司
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H16)

であります。

学園ファンタジーラブコメ『カレとカノジョと召喚魔法』の第三巻です。
今回のネタは学園祭と恋敵と謎の召喚術具。
これに、雪子の親友・高嶺美樹が絡むという盛り沢山な内容になっています。



年に一度の大イベント『台風祭』を前に、学園は異様な熱気に包まれていた。
だが、一人の少女が通り過ぎる時、喧噪は一時的に終息する。
剣呑な空気をまとい、顔に不機嫌を貼り付けて、白銀雪子は学校中を走り回っていた。

すべては一週間前、生徒会室に呼び出されたことにあった。
雪子はそこで、今までの器物破損などを盾に特別執行委員に任じられた……平たく言えばトラブルバスターである。
いくら潰してもトラブルは減る気配が無く、演劇部の練習に参加している遊矢とはろくにコミュニケーションが取れず、知らない内に恋敵まで現れて、雪子は心身共に疲労していた。

一方、雪子の親友・高嶺美樹の元にも嵐が訪れていた。
偶然手に入れた、見た目は何の変哲もない小さな宝石箱。
それを開いた時、彼女の平穏な日常は一瞬にして吹き飛んだ――。



高嶺美樹って誰だっけ?(暴言)

一巻から出ているのに、見事に存在忘れてました。
雪子の友人で、彼女と正反対の引っ込み思案で大人しい娘、ってことだけは憶えてたのですが……それ以外特に印象なし。
まー、何と言いましょうか、影の薄いキャラにもスポットを当ててやろうってことで、唐突に担ぎ出されてきた感じですね。(をい)

ストーリーは、学園の騒動を叩いて砕く雪子と、ひょんなことから上位悪魔シゼムを招来してしまった美樹を交互に描くというもの。
前巻の二重構造はちとアレでしたが、今回はメインの二人が友達同士ということもあって、綺麗に最後までつながっています。
雪子が今までうやむやだった遊矢との関係に一つの区切りを付け、それを見た美樹が悪魔との契約を決意してしまうという流れはお見事。

あと、特徴として、前二巻に比べてラブコメ要素が濃くなっています。
演劇部部長のまどかと濡れ場を演じる遊矢、そんな遊矢に告白して振られた少女A、真っ正面から雪子を挑発する少女B、そんな逆境に燃えたのか、いつになく積極的に動く雪子……と、雪子サイドは王道まっしぐら。
一方、美樹の方は、前々からネタフリがあったように井沢玲狙いなのですが……ちょっと無理があるかも。どう考えてもこの娘は玲が嫌うタイプだし、実際ほとんど相手にされてないし。ただ、オチは上手く処理したなと思います。

もはや恒例と化している雪子のバトルのお相手は――上位悪魔シゼム。
ここまでスペック差があると勝負にすらならない気がしますが、そこはシゼムの性格と、契約者である美樹の葛藤で上手く処理しています。
力業で決着を付けていないあたり、小説におけるバトルシーンのお手本と言えるでしょう。(これが漫画なら、絵で魅せる方法が使えるのだけど……)

シリーズ中の一本としては、単に遊矢君がある切り札を手に入れるためだけの話なのですが、単発で考えると結構面白かったです。オススメ。
次巻では、私のお気に入りキャラ・井沢玲の過去が明らかになります。



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これは納得

2007-04-15 20:53:21 | ファンタジー(現世界)
さて、そういえばちょっと前に666のナンバーの車を見たなぁの第866回は、

タイトル:お留守バンシー
著者:小河正岳
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

なんか不吉なナンバーだなぁとは思ったけど、禍転じて福と成すのつもりなんだろうか。
こういうナンバーを選んでつけてるひとのを見ると、やっぱナンバー変えたかったなぁ、ってちょっと思うね。
当然、「7」のみだけど(^^

さて、いつもの日曜ラノベは、これもいつもの電撃文庫。
第12回電撃小説大賞で大賞を受賞した、19世紀のヨーロッパを舞台にしたコメディ。
ストーリーは。

『オルレーユ城で、城の家事全般を担うバンシーという妖精のアリアは、突然主人のブラド卿の旅支度に戸惑っていた。
旅支度は、過去に戦った経験のあるクルセイダー、ルイラムがブラド卿のもとへやってくる、と言うことを知り合いの魔女トファニアの使いから聞いたからだった。

ルイラムはブラド卿を狙っている。だから城にいる他の魔物たちは安心なはず。
そのため、しばらく身を隠すことにしたブラド卿から、アリアはオルレーユ城の留守を任されることになる。

敬愛する主人の頼みとあって意気込むアリア。
個性的な魔物の同僚たちに悩まされたり、ルイラムが来たりする中、アリアは無事、ブラド卿が戻ってくるまでの間、留守を守ることが出来るのか!?』

大賞にふさわしいかどうかは別として、何らかの賞を受けるだけの作品には違いない、と言うのがまず思ったね。
ストーリーは、前半が城の同僚たちとのホームコメディ。
後半がルイラムが訪れてからの軽快なアクションシーンを織り交ぜたドタバタコメディ。
意外性はないが、ストーリー展開の軽快さと、笑みを誘う個性的なキャラが揃っており、コメディとしての要素は十分。

特にキャラはおもしろい。
主人公のアリアはバンシー。バンシーと言うとアイルランドの伝承に出てくる、死を告げる妖精として有名だが、もともと、死を告げること以外の特徴が伝承には残っている。
そうした伝承をもとに、少しアレンジを加えて作ったアリアのキャラは、12歳くらいと言う見た目に合った、かわいらしく、ほほえましいキャラに仕上がっている。
若干、気になるところがないわけではないが、目を瞑れる程度。

また、おなじアイルランドからのデュラハンも死に関わる妖精だが、アリア同様、死にまつわる暗さはなく、愛すべき間抜けな好青年として描かれている。
他にも、サキュバスなのに貞操観念の強いイルザリア、丸々としたペンギンにしか見えないガーゴイルのセルルマーニ、リビングデッドのため、土に詳しく城の庭師になったフンデルボッチなど、暗さのないキャラたちが、物語の雰囲気を明るく、ほほえましいものにしている。

だが、だからと言ってキャラもの一辺倒かというとそういうわけでもなく、バンシーの伝承を余すところなく使って作られたストーリーは、キャラ同様、明るくほほえましい雰囲気に溢れており、展開にも無理はない。
魔を滅ぼすクルセイダー、ルイラムが出てくると言っても、魔物であるアリアたちが滅ぼされることもなく、やや盛り上がりに欠けるきらいがあるものの、クライマックスの収め方もうまく作っていて納得がいく出来。

文章も、デビュー作にしては作法をきちんと知った書き方で、表現の破綻もない。
ラノベの新人でデビュー作となると、だいたい作法の難点が必ず出てくるものだが、それがないのはかなり好印象。

作品分析を得意とする理性派の読み手には物足りないものがあろうが、私のような感性派のタイプには、ほほえましい雰囲気に溢れ、世界に浸れるのでオススメ。
まぁ、そんな好みを別にして、さらに物足りなさを考慮したとしても、十二分に良品と言える出来であろう。
やっぱり、電撃文庫の新人って、いろいろと欠点はあったりするものの、全体的に他のラノベのレーベルよりもレベルが高いね。



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敢えて本編ではないものを

2007-04-14 23:27:52 | その他
さて、死兆星見えてるかも知れない第865回は、

タイトル:横山光輝三国志事典
編者:論風社
出版社:潮出版社 希望コミックス(初版:83')

であります。

お食事処に置いてある漫画ランキング一位(つれづれ取材班調べ)である『三国志』の解説本です。
原作全六十巻を通して読む気力はありませんが、これはたまーに読み返す時があります。
2003年に『横山光輝三国志大百科』が出ている時点で、無理にこれを読む必要はないかも知れませんが……そこは突っ込まない方向で。(爆)

今でこそ珍しくなくなった漫画解説本ですが、当時としては珍しい存在でした。
長年に渡って読まれてきた古典の漫画版であり、コミックトムの顔だったことが、本書を生むきっかけとなったのではないかと思います。
ちなみに、当時のコミックトムのキャッチコピーは、『驚異の200ページ連載!』……って、驚異を通り越して、異常……。

で、気になる中身なのですが、七章構成+カラーページで、余すところなく横山三国志の魅力を伝えています。
各章について、かいつまんで書くと――

第一章……名場面集です。桃園の誓いや赤壁の戦いなど、厳選した20の名場面を、漫画の絵とともに紹介しています。しかし、孫策との約束を守って太史慈が三千の兵を連れてきたシーンって……名場面なんだろうか?(笑)

第二章……名勝負集です。いずれ劣らぬ名将達の対決を十個紹介。基本は一騎打ちですが、中には複数の人間が絡み合う乱戦もあります。さりげに最後は、知謀の対決だったりするのが面白い。

第三章……戦略集です。一騎打ちが武将の華なら、こちらは軍師の華といったところ。作中で使用された計略を、当初の目論見から実際の結果まで、さらっと紹介しています。個人的に、一番オススメの章。

第四章……名言集です。メインは曹操と劉備三兄弟ですが、一般人の味のある台詞も入ってたりします。しかし曹操、名言多すぎ……。(笑)

第五章……人物事典です。人数が多すぎるため、全員をカバーできているわけではありませんが、記憶を掘り起こすには役立つかも。解説は少なめ。

第六章……雑学集です。本作の元になった『三国志演義』や、三国時代の豆知識を紹介しています。漫画、もしくは原作を知らない方でも楽しめるのはポイント高し。また、最後に地名事典が付いています。(かな~り有り難い)

第七章……三国志から生まれたことわざのリストです。意外な言葉のルーツが判明するかも。

この他、作者である横山光輝のインタビューや、参考資料のリスト、三国時代の地図、年表なども収録されており、三国志を読む際のハンドブックとしてはかなり質の高い内容になっています。
これが出た時、横山三国志はまだ完結してなかったりするという些細な欠点はありますが、ファンなら拾ってみても損はないかと。

あなた邪魔よね~♪

2007-04-13 22:22:57 | ミステリ
さて、某有名曲のフレーズでお楽しみくださいの第864回は、

タイトル:未来形J
著者:大沢在昌
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H13)

であります。

あれ? またミステリだ……。
おかしい……加納朋子以外でここまでミステリが続くなんて……。
誰かの呪いか?(笑)

呪いかどうかはさておき、確か、それなりに有名なひとだったような気がするはずの著者ですが、検索してみると、第679回で相棒が読んでいました(爆)
図らずも(定型文)クロスレビューとなった本書ですが、ストーリーは。

『フリーターで作家を目指している菊川真のワープロに奇妙なメッセージが表示されていた。
「午後五時、丸池公園噴水前。あなたの助けが必要です。J」
おなじように、宇宙物理学を学ぶ大学院生、茂木太郎のパソコンに。また丸池中学3年の立花やよいの携帯電話にも。
そのメッセージに導かれて指定の場所へ行った3人の他、別の理由で占い師の赤道目子まなこも、同時刻におなじ場所にいた。
そして通りがかったスポーツ少年の高校生、山野透。

Jと名乗る謎の人物に選ばれた5人は、「助けが必要」だと言うJと、現代の技術では説明できない通信方法で会話を交わしながら、Jに近く訪れる運命を覆すために行動を起こす。

接点も何もない5人は、Jを助けるための手がかりを探すうちに、大きな手がかりになるはずの人物が行方不明になっていることを知る。
Jを助けるために行方不明となった人物を捜す5人は……』

ストーリーは、助けを求めるJと言う人物に応じて、5人がそれぞれの個性を発揮しながらJを探すために、様々な手がかりを求め、解決する、と言うもの。
なんか、ミステリと言うより、「とらわれのお姫さまを救い出すために立ち上がった勇者パーティの冒険記(現代版)」と言ったほうがしっくり来るんじゃないんだろうかしらん。
ミステリっぽい謎は用意されてるけど、あんまりミステリっぽくないし、この程度の謎なら、いまどきのRPGならゴロゴロしてるだろうしなぁ。
実際、本気でカテゴリをミステリにするか、小説全般にするか、迷ったくらい。

展開はとても素直。
なんか、Jの助けに応じるあたりが唐突な感じはするが、手がかりを求めて行動するところからは、すらすらと読めてテンポがいい。
キャラに宇宙物理学を学ぶ茂木やら、作家志望の菊川、占い師の目子とかがいて、ともすれば説明文過多になりそうなところだが、そういうところもあんまりなく、読みやすい。
キャラも菊川と茂木のキャラが若干被り気味なのがいまいちだが、それ以外は個性がわかりやすく、菊川と茂木を除いて話し言葉で誰が話しているのかがわからない、と言うことも少ない。

ミステリとして読むと、物足りないかもしれないが、RPGとして読むと、軽めのストーリーでそれなりに楽しめる作品であろう。
オチもちゃんとついているし、ラストの透のほんとうの役目とか、その後を予想させる余韻とか、個人的にもいい感じの終わり方になっているのでなかなか高評価。

ただ、この作品、エンディングコンテストというのをやっていて、その最優秀賞受賞作が掲載されているのだが、はっきり言って「邪魔」
完結した本編のその後……というのはいいのだが、まぁ、なんか説明好きのSF作家みたいな説明の多さは本気で辟易する。
ストーリーとしては、きちんと作ってあるのだが、それを宇宙の彼方まで蹴飛ばしてもあまりある説明文が全部台無しにしてるよなぁ。

これさえなければ、本編は軽めのRPG風の小説で高評価のままだったのにねぇ。
まぁでも、著者本人とはまったく違うひとの書いた後日談だし、そこまで評価を下げる必要もないだろう。

と言うわけで、本編はけっこう評価高めだけど、ミステリとしては弱いし、ラストとかもひとによっては「何じゃそりゃ」だろうと思うので、良品まではいかない及第、と言ったところかな。


☆クロスレビュー!☆
この記事はLINNが書いたものです。
SENの書いた同書のレビューはこちら

卑屈なエースって初めてかも

2007-04-12 19:57:21 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、相棒がアフタヌーン系読んでるのは意外な第863回は、

タイトル:おおきく振りかぶって(1~7巻:以下続刊)
著者:ひぐちアサ
出版社:講談社 アフタヌーンコミックス(初版:H16)

であります。

扇:頭の中で『キザ×ラのCM』が延々と流れているSENでーす。

鈴:未だに「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が流れているLINNで~す。

扇:だからその、「アイン・クレイン・ナイアルラトホテップ」って誰よ?

鈴:知らん。
と言うか、長すぎて言いづらいよ、その名前。
日本人じゃないだろ。

扇:亜院・暮印・無在羅斗穂手婦って名前の日本人だ。

鈴:……日本人だったのか……。
じゃぁ、志○けんの親戚か?

扇:それはこっちが聞きたい。
何でそこでビートルズの前座が出てくるんだ?

鈴:そのころのドリフターズには志村○んはおらんかったわいっ!
……って生まれる前の話をなんで知ってんだ……。
鯖読みは相棒の専売特許なのに……。

扇:誰がいつ鯖を売ったって?
まったく……呪い売りまくってる君じゃあるまいし。

鈴:誰が呪いなんぞ売りまくっとるかいっ!
道具なら売るかもしれんが……(爆)

扇:道具?
ああ、ヘリトンボとかか?
(このネタが一発で解った人は結構凄いかも知れない)

鈴:それと呪いといったいどう関係するんだ?

扇:それを言うなら、何で呪いじゃなくて道具なんだ?

鈴:呪いだから呪いの道具ではないのか?

扇:LINN君は実は魔女だったので~す。

鈴:んなわけあるかぁっ!
ったく、なんで私が魔道に落ちねばならん。
どっちかって言うと茶道……ってやばいやばい……(爆)

扇:めでたくLINN君が茶道に堕ちたところで、今週の木劇は――。

鈴:……どうするんだ?
どおするとゆうのじゃ?

扇:記憶を失えぇぇぇっ!!!(1000t)

鈴:どっかのエロスナイパーと一緒にするなぁっ!!(真剣白ハンマー取り)

扇:チッチッチ……違うな、tはタウリンのt!
ファイトォォォ!!!

鈴:いっぷぁぁぁっっっつっっっ!!
……ってなにやらせんねんっっ!!

扇:乗ったのは君だ。(笑)

鈴:何を言っている。
あれに乗らずして何に乗ると言うのかね。

扇:まぁなぁ……CM視たことがある人間なら、八割が乗るわな。
ツーと来たら、トロワと答えるようなもんだ。

鈴:答えるかいっ!
ツーと言えばカー。
ファイト→一発も使い古されたものなのだから、それが正しいものなのだよ。

扇:使い古されてりゃいいってもんでもないと思うが……。
ま、それは置いといて、本題に入ろう。
本作はいわゆる一つの高校野球漫画です。
主人公がピッチャー、二番手役がキャッチャー、監督が女性と、表面上はどこにでもありそーな話なのですが、一つだけ珍しい点があったりします。
それは、主人公が弱気で卑屈なこと。
周りを支えるメンバーが、それを悲観するどころか、むしろ楽しんでるとゆーのが非常に珍しい。(笑)
これで、主人公が『隠された真の力』とかに目覚めたりしたら興醒めなのですが、そういう安易な救いは用意されておりません。
(一応実力はあるみたいだけど)

鈴:そうね。だいたい高校野球に限らず、野球マンガはどんどんエスカレートして、必殺技オンパレードのピッチャー、バッターになったりするものだが、これはそれがないから珍しいんだよな。
マジで卑屈だし、主人公……。
では、恒例のキャラ紹介。……の前にCMだな。


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では、主人公の三橋廉。
制球力はあるが、球速に難がある県立西浦高校の一年生エース。(つーか、この野球部には一年しかいない)
いわゆる、××以外はまるで駄目という、典型的な一点集中型主人公で、マウンドに上がると、カラオケ屋でマイクを放さない人間と同じような態度を見せる。
ただし、中学時代に自分の我が儘からチーム全体を敵に回したという過去があり、精神的攻撃に対してはとにかく脆弱だったりする。
恋女房である阿部に対しては同級生とは思えない程従順であり、褒められると犬のように尻尾を振り、睨まれると怯えた小猫のように小さくなってしまう。(つーか、この子ホントーに動物ですね)
野球漫画の主人公としては珍しいタイプだが、この方の漫画のキャラとしては、割と定番かも知れない。

鈴:では、廉の女房役の阿部隆也。
シニアのチームにも所属していたキャッチャーで、かなり的確な分析とリードを見せる実力派。バッターとしても実力があり、たいてい上位、もしくはクリーンナップを任されるほど。
性格は廉と正反対で、「首を振るピッチャーは嫌いだ」などとかなり尊大な性格に見えるが、睨むとビビる、話を聞かないなどの廉の行動に怒ったり、無頓着なところにやきもきしたり、しすぎるほどの努力に涙ぐんだりと、表面上は性格悪そうだが、基本的にはいい子である。

扇:ツリ目で無愛想だけど、確かにいい子だぁね。
ではさらに、野球部主将の花井梓。
真面目を絵に描いたような男で、メインキャラでは珍しい丸坊主頭。
中学時代は一級品の選手だったが、高校に入ってからは野球への情熱が冷めてしまい、監督が女性だったのが気に入らないこともあって、最初は入部するつもりがなかった。
もっとも、自ら苦労人を引き受けてしまうとゆー損な性格は直しようもなく、入部後はメンバー全員の精神的支柱かつまとめ役として奮闘する。
ただ、単なる模範的人物というわけではなく、天才バッター田島には密かにライバル心を抱いているあたり、味のある子である。(もっとも、競うには相手が悪すぎたが……)

鈴:何のかんの言っても、花井がいないとこのチーム、まとまらないからなぁ。
さて、その花井を苦労させる原因のひとり(もうひとりは廉)、田島悠一郎。
廉に負けず劣らずの天然キャラで、廉とともに、監督に「○○(教科名)やばいひと~!」と言われ、すべてに手を挙げるものの、廉と違い、そのことをまったく気にしない、明るいほうの天然。
だが、野球センスはチーム随一で、「1試合やって打てなかった球はない」とのたまうなど、特にバッティングセンスは1年生ながら超高校級である。しかし、身体の線が細いため、ホームランよりも打率のバッターである。(イチロータイプ)

扇:ある意味ムードメーカーなんだが、ある意味核爆弾だよなぁ……こやつ。
では最後に、野球部監督の百枝まりあ。
「モモカン」の愛称で親しまれる(?)、元西浦高校軟式野球部マネージャー。
とてつもない握力と、有無を言わせぬ迫力で部員達を引っ張る……と言うか引きずり回す、情熱の人。
ただ、単なる勢いだけの人物ではなく、選手の資質を見抜く観察力、それを伸ばしていく指導力など、監督としての能力は一通り備えており、ノックも自らこなす。
プライベートに関しては殆ど謎だが、この方の漫画の傾向からして、軟式野球部時代に何か暗~い出来事があったんじゃないかなぁ、と邪推してしまうのは私だけではなかろう。(笑)

鈴:まぁ、いろいろと脇のエピソードは描いたりしてるし、そのあたりもありそうではあるわなぁ。
あとは……とりあえず、メインは書いたから、あえて西浦高校野球部絡みで出すとすれば、シガポこと顧問の志賀先生と、マネジの篠岡千代ちゃんかねぇ。
シガポは、モモカンと一緒に硬式野球部を立ち上げた数学教師で、発足までいろいろと勉強した野球関係の理論を、数学教師らしくあれこれと説いて、実践する、と言うことをやっている。
マネジの篠岡ちゃんは、中学までソフトボールをやっていて、高校に入ってマネージャーになった天真爛漫な子だが、かなりの高校野球通。制服でどの高校かわかるなど、単なる天真爛漫なキャラではなく、どことなくマニアックさを感じさせる、なかなか味のある子である。
ちなみに、このマンガ中の紅一点(?)

扇:紅一点? まー、確かにモモカンはなぁ……やめよう、首を絞められる。
ともあれ、普通の野球漫画と違って、試合に勝ち進むこと自体はさほど重要ではない話だぁね。
飽くまで、野球を題材にした青春群像劇と言った方が正しいだろう。
じゃ、こいつら弱いかって言うと、打撃面はやたらスペック高かったりするんだけどな。(笑)

鈴:首じゃなくて頭だろ(笑)
……しかし、打撃面、スペック高いかなぁ。
桐青戦じゃ、序盤は相手ピッチャーに助けられた面はあるが、田島はシンカーにダメダメになってるし。
三星戦でもけっこう叶のフォークにきりきり舞い(古!)させられたり、けっこう打ってないぞ、このチームのバッター(笑)
まぁでも、ほいほい打たれるより、こういう感じでやってくれたほうがおもしろいっちゃぁおもしろいんだがね。

扇:つーか、そんなガンガン打ってたら試合にならないし、現実味も薄れるって。(笑)
とりあえず、三、四、五がバッティングセンスあるってだけでも、打撃不審のチームからすりゃ羨ましいと思うぞ。
ともあれ、今のところ面白い作品だと思います。
因縁の相手との決着をどう付けるか、なんて要素も残っているので、まだまだ楽しめそうな感じかな。
そんなところで、今回の木劇リバイバルは閉幕致します。次回をお楽しみに、さよーなら~

鈴:まぁね。
でも、けっこう小技も織り交ぜたりして、マンガとしては地味だが、野球としてはかなりまともで、まじめに描いてるからなぁ。
実際、興醒めな必殺技だの魔球だのがないから、逆に新鮮でおもしろいんだよね。
この先は……単行本刊行のペースが遅いから、けっこうじりじりするところもあるけど、期待はしたいところだね。
と言うわけで、今回の木曜劇場はこの辺でお開きであります。
では、みなさん、さよ~なら~


☆リバイバルレビュー!☆
本書のレビューには旧記事が存在します。
過去のレビューはこちら

映画好き必携

2007-04-11 23:54:24 | 映像関連
さて、夜勤明けは辛い第862回は、

タイトル:外国映画ベスト200
編者:NHK&JSB衛星映画マラソン365共同事務局
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H2)

であります。

実は私、映画館が苦手です。
映画自体は好きなのですが、大音量の音を聞くと耳が痛くなるのです。
視たい映画はいくつもあるんですけどねぇ……。

とまぁ、無関係な話は置いといて……外国映画のハンドブックです。
映画人・著名人が選んだ名画を人気順に並べ、解説、あらすじ、コメントを載せています。
栄えある一位は――

『第三の男』

でした。
何と言うか、不動の人気ですね……。

以下、十位まで挙げると――

二位 『天井浅敷の人々』(知らん)
三位 『望郷』(名前しか知らん)
四位 『風と共に去りぬ』(さすがに、『スカーレット』は映画化せず)
五位 『駅馬車』(同じ西部劇なら『明日に向って撃て!』の方が好み)
六位 『自転車泥棒』(面白そうだけど視てない)
七位 『ローマの休日』(オードリーのプロモです。だが、それでいい)
八位 『カサブランカ』(そんな昔のことは憶えていない……)
九位 『エデンの東』(ジェームズ・ディーンに尽きますね)
十位 『アラビアのロレンス』
    『禁じられた遊び』
    『ウエスト・サイド物語』

でした!
古典映画の名作がズラリといった感じですが、私は声を大にして言いたい。

『太陽がいっぱい』が三位以内に入ってないたぁどういう了見だっ!
(十七位にランクされてました。ざけんな)

映画の他に、役者のランキングもあったりします。
男女別に三位まで挙げると――

男性一位 ジャン・ギャバン
男性二位 ゲイリー・クーパー
男性三位 チャールズ・チャップリン

女性一位 イングリッド・バーグマン
女性二位 オードリー・ヘップバーン
女性三位 ヴィヴィアン・リー

ドロンとモローが三位以内に入ってないたぁ――!(以下略)

とまぁ、色々と言いたいことはあるのですが、古典映画好きにはオススメの一冊です。
これ、日本版作ったら、間違いなく『七人の侍』が一位に来そうだなぁ。