さて、いちおうラノベの範疇に入るのかなの第871回は、
タイトル:傀儡覚醒
著者:鷹野祐希
出版社:講談社 講談社X文庫ホワイトハート(初版:H11)
であります。
最近、日曜ラノベのネタは、専らAmazonのマイページなんぞに出ているのを中心に選んでいる。
で、なんかいかにもなタイトルの作品が出てきて、なんかなぁと思っていたら、ここしばらく読んでいなかったホワイトハートの作品まであるじゃん、と言うことで借り。
ホワイトハートというと少女小説系の中ではファンタジーのクオリティが高いほうだと思っているので、ちと期待してみたところ……。
こんなストーリーでした。
『いつもの日常。……蓮川菜樹は、父、貴巳の帰りに合わせて弟の汰月を呼びに行こうとしていた。
父が帰宅し、毎月給料日恒例の夕食が始まろうとしたとき、突然、母の遙花が倒れ、そのまま帰らぬひととなってしまった。
突然の出来事に思考が働かない菜樹は、母の通夜すらしないまま、父に連れられ、からくり寺の異名を持つ唱壽寺に預けられることになる。
菜樹を置いて行ってしまった父、荼毘に付す間もないままの母、隣家に預けたままの弟……不安を誘う出来事の中で、さらに菜樹はからくり寺で自らの力を知り、戸惑う。
菜樹の力、それは宇津保。自らの身体に神霊や精霊を宿し、力を行使するというものだった。
その力を五鬼衆と言う、宇津保を物のように扱う者たちが狙っていた。
からくり寺で人形……傀儡を操り、宇津保を守る傀儡回しの海生とともに、菜樹は宇津保の過去を知り、自らの力をもって五鬼衆と対決する決意をする。』
えー、物語としては素直におもしろく読めました。
第6回ホワイトハート大賞佳作と言うことでデビュー作なんだけど、新人だと言うことを差っ引いても、十分読める作品だろう。
ただ、物語はいいのだが、やはりデビュー作だからだろうね。
アラが目立つ。
まずストーリー展開。
母の死をきっかけにして、菜樹が五鬼衆に狙われるようになるわけだが、この辺りの説明不足がまずダメ。
序盤はまだ突然のこと、と言うことでいいのだが、中盤以降、ほとんどそれらに触れられず、母の持つ能力のために見つからなかった、と言うだけの説明で終わらせているのはいただけない。
他にも、菜樹を置いて去っていった父のほうも説明不足。
こうしたところは、からくり寺に来て、宇津保として戦うことを決意する菜樹の背景を薄くしていて、説得力に乏しい。
中盤以降、ともに不安と苦悩を抱え、克服しようとする菜樹と、傀儡回しの海生の姿がよく描かれているのに、その土台がふらついているのは残念。
これ以外にも、話の繋がりがまずいところが見受けられ、展開に甘さがある。
こうしたところがしっかりしていれば、もっといい作品だと言えるのだが。
あと、文章も難あり。
表現力においては問題はないのだが、視点の切り替えがダメ。
基本は菜樹の視点なのだが、行を区切ることなく、菜樹の視点から突然海生の視点になったり、菜樹を狙う五鬼衆のひとりの視点になったりするところはマイナス。
まだ、菜樹から海生になるくらいならいいのだが、区切りなしでころころ視点が変化するのは読みにくい。
表現力に不足がないのだから、こうした視点のふらつきをどうにか出来ていればいいのだが……。
まぁ、ストーリー展開も、文章も、新人らしい荒削りな作品、と好意的に見ればまだ我慢できる範囲だろう。
実際、物語そのものがおもしろく読めたのでいいが、これでつまんなかったらきっと毒吐きまくりだよなぁ。
と言うわけで、欠点はあるもののストーリーはよし、さらには新人さんと言う甘さも加えて及第と言ったところか。
でも、欠点が改善されれば十分読める作品だと思うので2巻以降に期待したいところ。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:傀儡覚醒
著者:鷹野祐希
出版社:講談社 講談社X文庫ホワイトハート(初版:H11)
であります。
最近、日曜ラノベのネタは、専らAmazonのマイページなんぞに出ているのを中心に選んでいる。
で、なんかいかにもなタイトルの作品が出てきて、なんかなぁと思っていたら、ここしばらく読んでいなかったホワイトハートの作品まであるじゃん、と言うことで借り。
ホワイトハートというと少女小説系の中ではファンタジーのクオリティが高いほうだと思っているので、ちと期待してみたところ……。
こんなストーリーでした。
『いつもの日常。……蓮川菜樹は、父、貴巳の帰りに合わせて弟の汰月を呼びに行こうとしていた。
父が帰宅し、毎月給料日恒例の夕食が始まろうとしたとき、突然、母の遙花が倒れ、そのまま帰らぬひととなってしまった。
突然の出来事に思考が働かない菜樹は、母の通夜すらしないまま、父に連れられ、からくり寺の異名を持つ唱壽寺に預けられることになる。
菜樹を置いて行ってしまった父、荼毘に付す間もないままの母、隣家に預けたままの弟……不安を誘う出来事の中で、さらに菜樹はからくり寺で自らの力を知り、戸惑う。
菜樹の力、それは宇津保。自らの身体に神霊や精霊を宿し、力を行使するというものだった。
その力を五鬼衆と言う、宇津保を物のように扱う者たちが狙っていた。
からくり寺で人形……傀儡を操り、宇津保を守る傀儡回しの海生とともに、菜樹は宇津保の過去を知り、自らの力をもって五鬼衆と対決する決意をする。』
えー、物語としては素直におもしろく読めました。
第6回ホワイトハート大賞佳作と言うことでデビュー作なんだけど、新人だと言うことを差っ引いても、十分読める作品だろう。
ただ、物語はいいのだが、やはりデビュー作だからだろうね。
アラが目立つ。
まずストーリー展開。
母の死をきっかけにして、菜樹が五鬼衆に狙われるようになるわけだが、この辺りの説明不足がまずダメ。
序盤はまだ突然のこと、と言うことでいいのだが、中盤以降、ほとんどそれらに触れられず、母の持つ能力のために見つからなかった、と言うだけの説明で終わらせているのはいただけない。
他にも、菜樹を置いて去っていった父のほうも説明不足。
こうしたところは、からくり寺に来て、宇津保として戦うことを決意する菜樹の背景を薄くしていて、説得力に乏しい。
中盤以降、ともに不安と苦悩を抱え、克服しようとする菜樹と、傀儡回しの海生の姿がよく描かれているのに、その土台がふらついているのは残念。
これ以外にも、話の繋がりがまずいところが見受けられ、展開に甘さがある。
こうしたところがしっかりしていれば、もっといい作品だと言えるのだが。
あと、文章も難あり。
表現力においては問題はないのだが、視点の切り替えがダメ。
基本は菜樹の視点なのだが、行を区切ることなく、菜樹の視点から突然海生の視点になったり、菜樹を狙う五鬼衆のひとりの視点になったりするところはマイナス。
まだ、菜樹から海生になるくらいならいいのだが、区切りなしでころころ視点が変化するのは読みにくい。
表現力に不足がないのだから、こうした視点のふらつきをどうにか出来ていればいいのだが……。
まぁ、ストーリー展開も、文章も、新人らしい荒削りな作品、と好意的に見ればまだ我慢できる範囲だろう。
実際、物語そのものがおもしろく読めたのでいいが、これでつまんなかったらきっと毒吐きまくりだよなぁ。
と言うわけで、欠点はあるもののストーリーはよし、さらには新人さんと言う甘さも加えて及第と言ったところか。
でも、欠点が改善されれば十分読める作品だと思うので2巻以降に期待したいところ。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
◇ 『つれづれ総合案内所』へ