つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

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映画は無視する方向で

2007-04-07 23:55:42 | SF(海外)
さて、これも読んでたな、の第858回は、

タイトル:われはロボット
著者:アイザック・アシモフ
出版社:早川書房 ハヤカワ文庫(初版:'83)

であります。

ロボット物の古典です。
作者はもちろんアシモフ先生
短編集なので、例によって一作品ずつ紹介します。


『ロビイ』……ミセス・ウェストンは、八歳の娘・グローリアのことで頭を痛めていた。子守ロボットのロビイとばかり遊んでいて、人間の友達を作ろうとしないのだ。娘のことを案じた彼女は、夫を強引に説得してロビイを排除しようとするが――。
すべてはここから始まった。ロビイの事ばかり気にしているグローリアは未だ決定されていない未来であり、彼女の両親はロボットを受け入れる側と拒否する側の代表である。ところで、このロビイってやっぱりロビタの元ネタだったりするんだろうか?

『堂々めぐり』……第二次水星探検隊のメンバーであるパウエルとドノバンは不毛な議論を延々と続けていた。新型のロボット・スピーディが、セレンを取りに行ったまま、戻ってこないのである。果たして、スピーディに何があったのか――。
さすらいのトラブルバスター、パウエル&ドノバンの話その一。本作に限ったことではないが、ロボット三原則によって生じるジレンマを上手く利用し、ロボットを路頭に迷わせている。ハチャメチャな台詞を叫びつつ、うろうろするスピーディの姿は結構怖い。しかしなんでギルバートとサリバンなんだ?(笑)

『われ思う、ゆえに』……何度言い聞かせても、ロボットQT一号は、自分が人間に作られたことを認めようとしなかった。ちっぽけな中継ステーションが、彼の世界のすべてだったからだ。パウエルとドノバンは意地になって説得を繰り返すが、事態はさらに奇妙な方向へ進んで――。
暴走する内に、宗教家じみてくるQT一号の姿はひたすら不気味。自分の知識だけを材料に、世界のすべてを処理しようとする思考回路は、単にロボットだからと片付けられるものではない。貴方の近くにもいませんか、こういう人?(怖)

『野うさぎを追って』……パウエルとドノバンは、DV5号が仕事をサボることに苛立っていた。自分達が監視してさえいれば、件のロボットは配下となる六体のサブロボットを使ってちゃんと業務をこなす。しかし、ちょっと目を離すと――。
パウエル&ドノバン三部作のトリ。前二作よりさらに困った事態のように思えるが、物理的な方法で解決出来る問題だったりするのはなかなか面白い。ダジャレのようなオチも結構好き。

『うそつき』……何の変哲もない量産型ロボットの一体であるハーヴイに読心力があることが判明し、USロボット社は大騒ぎになった。ロボット排斥運動が進む中、他にもこんなイレギュラーが発生すれば、社は一気に潰されかねない。彼らは必死で調査を行うが、ロボ心理学者であるスーザン・キャルヴィン博士ですらハービイに心を読まれて動揺してしまい――。
一押し。心を読める力を授かりながら、三原則に従って罪を犯したハーヴイの姿は哀れだ。最後の一文も強烈な名品。さらに、後のロボット長編のネタ元にもなっている。気になる方は、イライジャ・ベイリ・シリーズをチェックして頂きたい。

『迷子のロボット』……意図的に第一条が弱められたロボットの内の一体が、宇宙基地から消えた。同型の六十二体のロボットに紛れて、外部に逃走しようとしたのだ。秘密裏に危険なロボットを製作した会社に怒りを覚えつつも、キャルヴィン博士は消えた一体を探す――。
ロボット陽電子頭脳に刻み込まれた第一条は、人間にとって最後の生命線である筈だが、人間自身がそれをさっ引いてしまうという設定が秀逸な作品。キャルヴィン博士とロボットの知恵比べが面白く、最後まで一気に読める。逃げ回るために嘘をつき続けたロボットの断末魔の叫びも強烈。

『逃避』……合同ロボット社から持ち込まれた奇妙な依頼。それは、USロボット社の誇る巨大思考マシン・ブレーンに、星間航行用エンジンを作るための問題を解明して欲しいというものだった。合同ロボット社の思考マシンを破壊した問題を、ブレーンは解けるのか――。
キャルヴィン博士が主人公だが、パウエル&ドノバンもゲスト出演してたりする美味しい話。何も知らされず、ブレーンが作った宇宙船に放り込まれる二人は本当に悲惨である。アシモフ版宇宙開発史の一部としても読める、興味深い一編。

『証拠』……新政派の政治家フランシス・クインはUSロボット社を訪れ、市長選に立候補しているスティーブン・バイアリイがロボットであるか否かを調査して欲しい、と執拗に迫った。もし、人間そっくりのロボットが秘密裏に作られていたとしたら、大変な問題になるのだが――。
俗物を絵に描いたようなクインをバイアリイが煙に巻く、ある意味コメディ。真相は伏せられているが、十中八九、キャルヴィン博士が正解であろう。ちなみに、これもある長編のネタ元になってたりするが……秘密。(読んだことがある方はすぐ解る筈)

『災厄のとき』……世界統監スティーブン・バイアリイは、困り果てた顔でキャルヴィン博士に助言を求めた。地球経済を完璧に管理する筈のマシンが誤作動しているのだ。キャルヴィン博士の出した驚くべき結論とは――。
ロボット開発史である本作のトリに相応しい作品。実際、行き着くところはこれしかないだろう。問題は、人類はその後の選択をどうするかだ。かくて物語はイライジャ・ベイリの時代へと移る……。


久々に読みましたが、満腹しました。
初期作品でありながら、後のロボット物にも見られる『三原則破り』の挑戦は目一杯行われています。
解説にもちょっと書いたけど、後の長編のネタ元と思われる作品もあり、アシモフをぐるっと一巡りした後、もう一度読んでみて欲しい一冊です。

SF好きは必読。
相変わらずミステリの要素も入っており、ロジック好きな方も楽しめると思います。
各短編の間に入っているキャルヴィン博士のお喋りも面白いのですが、アシモフ先生の解説も欲しかった……かな。



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