つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

中国の幽霊ってのは

2005-01-21 23:01:34 | 古典
さて、いつの間にか過ぎてしまった50回を記念する間もなく第52回は、

タイトル:聊斎志異(上)(下)
著者:蒲松齢
出版社:岩波文庫

であります。

清代に書かれた、神仙や幽霊、狐などなどが出てくる怪奇譚を集めたもの。
もちろん、著者の手が入っているから、集めた話のまんま、というわけではない。

ともあれ、そんなことより、日本と中国の幽霊ってのはここまで違うかねぇ、と言う感じかな。

日本は番町更屋敷に代表されるように、恨み辛みで出てきて、呪い殺すとか、どろどろしたのが多いけど、中国の幽霊(鬼(キ)と呼ぶ)は極めて人間的。

ある幽霊は、ある書生と所帯を持ったりするし、ある幽霊は釣りの途中で酒を飲んでた人間と仲良くなって酌み交わすし、あげくの果ては土地神様になって恩を返すわ、日本の感覚で幽霊を見ると、その違いがとてもおもしろい。

本書は精選した92編の訳文を収めたもので、ひとつひとつの話も短く、通勤通学の電車やバスの中で読むには最適。

古典だしなぁ、と言うひとにもさらっと読めておもしろいと思う。

あとは全491編を読むだけだな(爆)

やっぱホラーは女性作家の方が怖い

2005-01-20 12:25:24 | ミステリ+ホラー
さて、特に何も記念しないまま続く第51回は、

タイトル:MAZE〔メイズ〕
著者:恩田陸
文庫名:双葉文庫

であります。

ホラーは夜中に読んでナンボだ。

人を飲み込む小さな建物を巡るミステリ仕立てのホラー。
人間消失の謎――恐怖物の定番と言えば定番ですな。
(イメージとしては、009ノ1の〈地平線の家〉かな?)

アジアの荒野にぽつんと立つ、直方体の白い建物。
中に入ったらこの世から消えます……。

入ってみたくなりますよね。(笑)

壊せばいいじゃん→誰が金出すんだよ。
チームで入ればいいじゃん→チームごと消えるんだよ。
無視してほっとけばいいじゃん→世の中には命知らずと物好きが沢山いるのさ。

そんなわけで、四人のメンツが人を飲み込む建物の謎に挑みます。

ホラー仕立てのミステリと言いたいところですが、そこはそれ――。

超常現象大好きの恩田陸ですから。

一応謎解きはできるものの、論理だけで完全な説明はできないようになってます。
最後の1ピースが合わないパズルのようなものです。

いわゆる、新本格派が好きなバリバリのミステリマニアには不向き。
不思議時空が好きな人は、途中でなんだつまらんと言ってしまう可能性アリ。
どちらに勧めてよいのやら迷う作品です。

過度に期待せずに読むのが一番いいかも。
ネタとその見せ方は好きなんですけどねぇ……。



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相変わらずと言うか何というか

2005-01-19 20:49:06 | 伝奇小説
さて、とうとうここまで来たかの第50回は、

タイトル:夜叉姫伝シリーズ
著者:菊地秀行
出版社:祥伝社

であります。

菊地秀行得意、と言うよりライフワークと言ってもいいのかな、魔界都市シリーズ。

美貌のせんべい屋、秋せつらの繰り広げる吸血鬼との戦い……。

つか、相変わらず、このひとはこういう話ばっかりやなぁ、と思うね。

メフィストもそうだし、魔界都市ハンターもそうだし、すごい強い主人公と同等レベルの敵との戦い。

でもこの人、テンポはいいし、娯楽性は高いし、いくら主人公が強かろうと解決が困難にしてしまうネタはあるし、何のかんの言ってもふつうに読むぶんには申し分はないと思う。

昔の話、ある本で読んだけど、だいたい作家ってのは月産300枚程度らしい。
すべてがそうだとは思わないけど、平均するとそうなんだろう。
概ね文庫1冊分くらいかな。

けど、この人は月産500枚を軽く超えるらしい。

昔、文庫のシリーズを買ってたけど、2ヶ月に1冊出てたな。
マンガでもそうだけど、早くて3ヶ月くらいじゃないかな、だいたい。

それを軽く超えるし、買ってたシリーズ以外にもぼちぼち出てたから、この人の筆の速さは異常。

この人を超える筆の速さのひとは、知らない。

好き嫌いにかかわらず、物書きにとってこの人の速さは、はっきり言って、かなり羨ましいぞ。

かみはひかりあれでこうげき!

2005-01-18 18:15:44 | 学術書/新書
さて、第50回目前の第49回は、

タイトル:旧約聖書を語る
著者:浅野順一
出版社:NHKブックス

であります。

悔い改めよ~

深い意味はないです。ちょっと緑色を使ってみたくて……。

ユダヤ教とキリスト教、双方の聖典である旧約聖書の解説本です。
天地創造、アダムとイブ、カインとアベル、ノアの箱船、バベルの塔など、どっかで聞いた話について解説してあります。

天下のNHKだけあって(?)、内容は非常に真面目ですが、語り口調で丁寧に書かれているので割とすんなり読めます。
原典を読むのがおっくうだとか、ちょっとした知識を仕入れたい人向き。

無論、読んだからと言って、宗教にはまることはないです。
ただ、他のメディアでこれでもかと引用されているお話の原典を知っとくのも悪くないかと。

かなりきつかった、読み終わるのが

2005-01-17 22:12:51 | 小説全般
さて、50回までとうとう2回の第48回は、

タイトル:蛇にピアス
著者:金原ひとみ
出版社:集英社

であります。

読むのがきつかった。

悪い話ではないし、よくここまで書いた、と思う。

ただ、生理的に受け付けないネタだった。
ふつうに耳にピアス、ならわかるけど、鼻だの舌だのへそだのと来ると、んー、ついていけない……。
でもわざわざ知人に借りた手前、読まざるを得なかったから読んだけど……

えぐい、と言うのは年食ったからというところもあるとは思うけど、描写に容赦がない。
二十歳にしてこの筆力は確かに、とは思うし、賞を取るだけのことはある、とも思う。

でも、これくらい生理的に受け付けないものを読んだのは初めてだな。

たいていはダメだったら50ページも読まないで売りに行くから。

地雷だ、俺は地雷を踏んだのだぁ!

2005-01-16 12:00:25 | ファンタジー(現世界)
さて、50回まであと三つの第47回は、

タイトル:涼宮ハルヒの憂鬱
著者:谷川流
文庫名:角川スニーカー文庫

であります。

魔が刺したのだ。

多分、十五年ぶりぐらいに手にする角川スニーカー文庫。

何となく書店で見かけて、何となく売れてそうな気配があった、それ。
気分に流されて買ってみたのが運の尽き。

カチューシャ、ロリで巨乳、眼鏡っ子を揃えたベーシックな布陣。
一人称単数の地の文(要するに狂言回しの少年がしゃべりまくる)。
やたらと飛び交うSFネタ、漫画ネタ……。

ギャルゲのシナリオですか?

私自身はかなり引っかかったのですが。
ケチ付けずに読めば、テンポよく読める楽しい話です。

かなり変な性格のヒロインが狂言回し+周囲を引きずり回しつつ暴れます。
彼女の凄まじいパワーは学園の日常を破壊するだけに留まらず、常識、物理法則、時間軸なんかも歪めてついに世界すらも……おいおい。

ただし、彼女の力の源がねぇ。

結論を伏せ字で言っちゃうと――。
要はこのヒロイン、狂×回×にラブラ×・ファイ×ーなのですよ。

さぶいぼ全開だぁ!

取って付けたようなフォローだけど、オチの付け方は御上手です。
これは学んでもいいかも。



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名作RPGが題材なのに……

2005-01-15 20:10:37 | ファンタジー(異世界)
さて、50回までもういくつ? の第46回は、

タイトル:隣り合わせの灰と青春 ~小説ウィザードリィ
著者:ベニー松山
出版社;JICC出版局

であります。

RPGの不朽の名作、ウィザードリィを小説にしたもの。
けっこう古い作品だけど、いま読むと……

結局ラストはラブコメかいっ!

いやぁ、主人公の侍がレベル低いクセに「居合い」なんてどー考えても極めて高度な技を使ったり、いまどきのガンダムみたいに、都合のいい無敵街道まっしぐらな話。

とは言うものの、いま読んでも懐かしく、この辺りのへたれぶりもいい味になってたり(笑)

なんつーか、ウィザードリィ(ただし初代)は大好きだし、まぁ、こういうもんでもいいか、ってな感じになってしまったり。

ちなみに、イラストは、末弥純先生以外は認めませんっ!

貴方はなぜ……と言われても困るよな

2005-01-14 21:21:50 | 学術書/新書
さて、ひねるネタもない第45回は、

タイトル:シェイクスピア劇の名台詞
著者:P・ミルワード
文庫名:講談社学術文庫

であります。

シェークスピア(イよりーの方が私はしっくりくる)劇の中から有名な台詞をピックアップし、場面の紹介と、劇の解釈を載せたもの。

紹介されている作品は、『ロミオとジュリエット』『夏の夜の夢』『ヴェニスの商人』『お気に召すまま』『十二夜』『リチャード三世』『リチャード二世』『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』『ジュリアス・シーザー』『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』『あらし』……しかしよくこんなに書いたもんだ。

うんうん、と納得してしまうものから、おいおい、と呆れてしまうものまで、多種多様な台詞が出てきます。
どの作品にも悲劇と喜劇両方の要素を入れるシェークスピアならではですね。
やっぱ一流のエンターテイナーだわ、この人。

ちなみに私のお気に入りはマクベス。
特にラストのどんでん返しが。

透明感とはこのひとのために

2005-01-13 19:01:09 | 文学
さて、第44回は、(ひねれよ!(爆))

タイトル:若山牧水歌集
著者:若山牧水
出版社:岩波文庫

であります。

ときどき、あまりに透明すぎてさらっと流してしまいそうな短歌が多く、大好きな歌人のひとり。

「白鳥は 哀しからずや 海の青 空のあをにも 染まずただよふ」
とか、
「幾山河 超えさり行かば 寂しさの 終てなむ国ぞ 今日も旅ゆく」
など、国語の教科書には欠かせないひと。

ただ、「白鳥は~」に代表されるように、とても透明感溢れる叙情的な歌を詠むひとで、近代文学はほとんど読まないのに、このひとの歌集だけは持っている。

たまにはこういう歌集の中のお気に入りを読みつつ、ゆったりと余韻に浸る……
なんて贅沢な時間はいかが?

短いが、サボっているわけではない……多分。

2005-01-12 12:00:04 | ホラー
さて、けっこう続いて第43回は、

タイトル:1999年のゲーム・キッズ
著者:渡辺浩弐
文庫名:幻冬舎文庫

であります。

最先端テクノロジーをガジェットにしたブラック・ショートショート。

え? これで終わっちゃ駄目?

某週間ゲーム雑誌に連載されていた小説です。
一編5頁、残念ながら連載時のイラストはカットされてます。
ひょっとしたら近未来にこういうことがあるかも、と思わせるところが怖い。

ショートにはクリープもブライトもクレマトップもメロディアン・ミニも不要だという人向き。
別に、それ以外の人は読んじゃ駄目とは言わないけど。

2000年のゲーム・キッズは出てるのかなぁ……。