つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ようやく読みました

2007-01-02 23:15:48 | ファンタジー(現世界)
さて、買ってはいたけどなかなか読んでなかった第763回は、

タイトル:バイトでウィザード 流れよ光、と魔女は言った
著者:椎野美由貴
出版社:角川書店 角川スニーカー文庫(初版:H14)

であります。

相方が以前読んで褒めていたので、自分も読んでみるか……と思って積んだままだった作品。
光流脈矯正術者見習いの兄妹が、ご町内の平和を守るために戦う学園ファンタジーです。
多少、視点がふらついている感じはするものの、三人称の文章は割といい感じ。後はストーリーなのですが――。



かつて、この国には光儀大神と呼ばれる精霊と、その加護を受けた巫女がいた。
精霊の力の恩恵により、巫女の里は実り豊かに栄えていた。
だが、その繁栄をねたんだ者達によって里は滅ぼされ、光儀大神も体を粉砕されてしまう。

残された光儀大神の欠片には、まだ精霊の力が宿っていた。
それを埋葬すると、清浄な力が土地を癒し、さらに欠片同士が自然に連結して『光流脈』を形成する。
巫女の一族は光流脈を拡大、維持することで光儀大神の加護を広めようと日本全国に散った――光流脈使いの誕生である。

そして現代……ここ、虹原町にも巫女の末裔がいた。
一条京介、一条豊花の兄妹は二人で一人の光流脈矯正術者として、虹原町五丁目から七丁目までの平和を守る!
しかし今回の澱みは、見習い術者が相手するにはあまりにも危険なものだった――。



軽めの表紙とは裏腹に、淡々と進む静かなお話です。
つーか――

暗っ!

死んだ恋人を思い続け、ひたすらネガティヴ思考を繰り返し、何となく生き延びている高校生・京介。
自分の欲望のおもむくままに京介をこき使いながらも、彼が生きることに興味がないのをちょっと気にしている豊花。
この双子の兄妹が、ドタバタな学園生活を送りつつ、光流脈を汚す人の暗い感情を処理していく……というのが物語のコンセプトなのだろうけど――ダークサイドに比べてライトサイドが余りにも杜撰。

本来ならば、作品全体を覆う京介のネガティヴな空気を払拭するために豊花がいる筈なのですが……彼女の場合、澱んだ空気をさらにドス黒いものに変えてるだけだったりします。
自分の欲望にはひたすら忠実、一般人は顔で騙す、京介が自分のために働くのは当たり前、そして、自分の行動で事態が悪くなっても決して反省しない! トラブルメーカーなんて可愛いものではなく、ただの悪魔ですね。
作者としては、暗い話を明るくする役回りを与えたつもりなのでしょうが、絶対一緒にいたくないタイプにしかなっていません。

さらに、ボケキャラとして出てくる風紀委員二人組がもっとひどい。
いわゆる、小説に登場する風紀委員――自分達が学校内の警察だと思っている馬鹿――の典型で、脳が腐ってるとしか思えない無思慮な行動で最悪の事態を引き起こします。
LINN君が二巻のレビューで書いてたけど、思いこみの激しい馬鹿に権力を持たすとロクなことにならない、って本当ですね。

せめてキーパーソンに期待したいところですが、本巻の鍵を握る倉田君香――キャラ薄っ!
序盤は思わせぶりな態度と謎めいた言動で大いに期待させてくれるのですが、後半は、あんたいたの? ってぐらい存在が薄くなり、そのまま消えます。
死者にこだわり、今回の事件を引き起こすという、モロに京介の影キャラの位置にいる筈なのにこの扱いはどうかと……。

うーん……きちんと小説にはなっているのですが、読む毎にテンションが下がっていくのはちと難。
暗い話は好みなのですが、それを必死で中和しようとして、逆にもっとドス黒くしちゃってるのは痛いですね。
でも、下手な方ではないので二巻も一応読んでみるかなぁ……。



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