さて、二夜連続でSFの時点で誰が書いてるかバレバレな第385回は、
タイトル:マイノリティ・リポート
著者:フィリップ・K・ディック
文庫名:ハヤカワ文庫
であります。
ディックの短編集です。
映画化された表題作を含む七編を収録。
例によって、一つずつ感想を書いていきます。
『マイノリティ・リポート』……三人の予知能力者による予測で未然に犯罪を防ぐシステムを作り上げ、犯罪予防局長官となったアンダートン。ある日彼は、オートメーションで発行される容疑者カードの中に信じられない名前を見てしまう――。
短編ながら、状況が二転三転する忙しい話。ひたすら主人公が状況に巻き込まれいくタイプの話だが、ちゃんと推理はできるし、オチもまとまっていていい感じ。
『ジェイムズ・P・クロウ』……近未来、地球はロボットに支配されていた。彼らに比べて能力的に劣る人間達は専用の居住区に押し込められ、鬱屈した日々を送っていたが――。
人間に対するロボットの反乱、ではなく、ロボットに対する人間の反乱の話。タイトルネームであるクロウがロボットと対決する方法はいかにも人間らしく、またそれに対してぐうの音も出ないロボット達の姿も面白い。
『世界を我が手に』……太陽系には地球以外に居住可能な惑星がないと判明した時、人は世界球という玩具に手を染めた。主人公は、極小の世界の創造に熱中する人々に警鐘を鳴らすが――。
世界を作り上げた挙げ句、破壊してしまう人々の姿は非常に説得力がある。ラストは予想がつくものの、結構ブラックで私好み。
『水蜘蛛計画』……宇宙植民計画に行き詰まりを感じた未来人達は、タイム・マシンで過去に行き、予知能力者達の知恵を借りようと画策する――。
いわゆる内輪ネタ。未来では予知能力者と認識されているSF作家達が実名で登場する。主役は『大魔王作戦』のポール・アンダースン。個人的にこういう遊びは大っ嫌い。
『安定社会』……進歩の頂点を極め、そこからの衰退ではなく安定を選んだ未来世界。ロバート・ベントンは自分が発明していない筈の発明品について統制官から呼び出しを受ける――。
SF、に見えて実はファンタジーかも。一つ解けていない謎がある(一文字で表現できる存在を認めれば説明はつくけど、それは何か嫌)が、最後のオチが上手いので気にしない。
『火星潜入』……地球と火星は緊張状態にあった。そんな中、最後の地球行きの便が火星から飛び立つ。しかし、その中には三人のスパイが――。
嘘発見器による乗客尋問でも火星の都市を消滅させた犯人が見つからなかった理由、についてのアイディアは面白いが、ストーリー(特にオチ)はイマイチ。
『追憶売ります』……なぜか執拗に火星行きを望む男。しかし金銭的な余裕がないため、最新技術による仮想記憶の刷り込みで代用しようとする――。
イチオシ。『マイノリティ・リポート』と同じく二転三転する話だが、こちらの方が密度が濃い。次々と記憶が切り替わるため大変そうに見える主人公だが、実は周囲が一番苦労しているというのも笑える。映画『トータル・リコール』の原作らしいが、見てないので比較はできない。
全体的にレベルの高い短編集だと思います、素直にオススメ。
好みはあるかと思いますが、どの作品も破綻してないというのはかなりポイント高し。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『フィリップ・K・ディック』のまとめページへ
◇ 『海外作家一覧表』へ
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タイトル:マイノリティ・リポート
著者:フィリップ・K・ディック
文庫名:ハヤカワ文庫
であります。
ディックの短編集です。
映画化された表題作を含む七編を収録。
例によって、一つずつ感想を書いていきます。
『マイノリティ・リポート』……三人の予知能力者による予測で未然に犯罪を防ぐシステムを作り上げ、犯罪予防局長官となったアンダートン。ある日彼は、オートメーションで発行される容疑者カードの中に信じられない名前を見てしまう――。
短編ながら、状況が二転三転する忙しい話。ひたすら主人公が状況に巻き込まれいくタイプの話だが、ちゃんと推理はできるし、オチもまとまっていていい感じ。
『ジェイムズ・P・クロウ』……近未来、地球はロボットに支配されていた。彼らに比べて能力的に劣る人間達は専用の居住区に押し込められ、鬱屈した日々を送っていたが――。
人間に対するロボットの反乱、ではなく、ロボットに対する人間の反乱の話。タイトルネームであるクロウがロボットと対決する方法はいかにも人間らしく、またそれに対してぐうの音も出ないロボット達の姿も面白い。
『世界を我が手に』……太陽系には地球以外に居住可能な惑星がないと判明した時、人は世界球という玩具に手を染めた。主人公は、極小の世界の創造に熱中する人々に警鐘を鳴らすが――。
世界を作り上げた挙げ句、破壊してしまう人々の姿は非常に説得力がある。ラストは予想がつくものの、結構ブラックで私好み。
『水蜘蛛計画』……宇宙植民計画に行き詰まりを感じた未来人達は、タイム・マシンで過去に行き、予知能力者達の知恵を借りようと画策する――。
いわゆる内輪ネタ。未来では予知能力者と認識されているSF作家達が実名で登場する。主役は『大魔王作戦』のポール・アンダースン。個人的にこういう遊びは大っ嫌い。
『安定社会』……進歩の頂点を極め、そこからの衰退ではなく安定を選んだ未来世界。ロバート・ベントンは自分が発明していない筈の発明品について統制官から呼び出しを受ける――。
SF、に見えて実はファンタジーかも。一つ解けていない謎がある(一文字で表現できる存在を認めれば説明はつくけど、それは何か嫌)が、最後のオチが上手いので気にしない。
『火星潜入』……地球と火星は緊張状態にあった。そんな中、最後の地球行きの便が火星から飛び立つ。しかし、その中には三人のスパイが――。
嘘発見器による乗客尋問でも火星の都市を消滅させた犯人が見つからなかった理由、についてのアイディアは面白いが、ストーリー(特にオチ)はイマイチ。
『追憶売ります』……なぜか執拗に火星行きを望む男。しかし金銭的な余裕がないため、最新技術による仮想記憶の刷り込みで代用しようとする――。
イチオシ。『マイノリティ・リポート』と同じく二転三転する話だが、こちらの方が密度が濃い。次々と記憶が切り替わるため大変そうに見える主人公だが、実は周囲が一番苦労しているというのも笑える。映画『トータル・リコール』の原作らしいが、見てないので比較はできない。
全体的にレベルの高い短編集だと思います、素直にオススメ。
好みはあるかと思いますが、どの作品も破綻してないというのはかなりポイント高し。
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結構気に入りました。
ただ次に読んだ『シビュラの目』はちょっと……。
(待て、次週!)
これを機に購入するしか