つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

実は読んでました(笑)

2012-03-17 14:58:44 | ファンタジー(現世界)
さて、1000回までカウントダウンの第996回は、

タイトル:乃木坂春香の秘密(3~14巻:以下続刊)
著者:五十嵐雄策
出版社:アスキー・メディアワークス 電撃文庫(初版:'05~)

であります。

えぇ、イラストの破壊力に屈することなく、地味に読んでいました(笑)
だって図書館にちゃんとあるんだもの、1巻からきちんと(笑)
さすが政令指定都市の市立図書館、ラノベでさえもきちんと新刊がでれば揃えるんだから大したものだ。
ちなみに、司書の人に「これでよろしいですか?」と書庫から出してもらうときの恥ずかしさにももう慣れました(爆)

さて、そんなわけですでに1巻と2巻はレビューしているものの、3巻からまた1冊ずつと言うのも何なので、現時点で借りれる14巻まで一気にストーリー紹介といきます。
(なお、15巻は2012年1月に出ています)

『容姿端麗、頭脳明晰で、ピアノなど習い事はすべてプロ級という完全無欠のお嬢様である乃木坂春香。
彼女の秘密にしていた趣味――アキバ系を知った綾瀬裕人は、その秘密を共有することで親しくなったおかげで、平々凡々とした日常が、良くも悪くも変わっていった。

春香の誕生日にはハッピースプリング島での誕生会があったり、秋の学園祭では椎菜と実行委員になって、そのせいで春香と気まずくなったり。
冬には裕人の家でクリスマスパーティをしたり、ふたりで春香の両親の思い出の場所で初日の出を見たり。
はたまた新年明けて椎菜たちクラスメイトの友人たちと温泉旅行に行ったり、そこで春香が好きなアニメのイベントに参加したり。
バレンタインには春香をアイドルデビューさせようとするプロダクションとのいざこざがあったりと、春香と出会ってからは何かと今までの生活とは違う日々を送っていた。

そんな様々なイベントを乗り越えていく中で、ふたりは徐々に仲を深めていくのだが、北海道への修学旅行で裕人に転機が訪れる。
それは裕人に好意を寄せていた椎菜の告白で、裕人が春香への気持ちを自覚したのだ。

気持ちの変化があった裕人は、3年生になった新学期――イベントで同人ゲームを出したいと言う春香の言葉に、当然のように協力する。
当初はふたりで小さなイベントでの配布を考えていたが、紆余曲折を経て、椎菜たちクラスメイトの友人たちを加え、配布予定のイベントも夏コミに変更、椎菜たちの他、春香の妹の美夏や乃木坂家メイド隊の面々の協力もあってゲームは完売したり、春香が以前通っていた学校の幼馴染みたちと和解したりと3年生になっても春香絡みの日常は過ぎていく。

そんな中、裕人は密かに夏コミを機会に一大決心をして春香に告白することを考えていた。
夏コミが終わり、打ち上げを辞して春香に告白をする裕人――それに対する春香の答えはイエス。
晴れて両思いとなった裕人と春香だったが、ふたりは関係は順風満帆とは言えず、両思いになった数日後、春香の家を訪れた裕人はそこで春香の結婚話を知らされる。』

はい、14巻時点で52話です。
よくもまぁ牛歩どころかカタツムリレベルの歩みを見せるラブコメを書いたものだと、惘れるのを通り越して感心すらします。
もちろん、裕人と春香の話だけでなく、バイトで執事をやったり、美夏が副部長を務める現代舞台芸術文化研究部の活動に付き合わされたり、デートに連れ回されたり、はたまた単なるバイトだったはずの執事勤めが縁になって招待された執事やメイドたちの交流会に参加したりと、脇道に逸れたエピソードがあったりするので、単純に春香とのラブコメだけを扱っているわけではないのですが……。

それでも、裕人、春香ともに、鈍感すぎだろ。

裕人は裕人で何遍告白めいた――と言うより、一般的に見れば告白としか考えられない台詞を言いまくってるし、春香も春香ではっきりと裕人に好意を寄せているシーンは多々ある。
それでも両思いに至るまでに14巻52話を費やすとはじれったいにもほどがある。
完全無欠ながら中身は天然系ドジっ子の春香に萌えられるのなら、それはそれで楽しめるのでしょうが……。
ともあれ、今年の1月時点で15巻出ている長丁場のシリーズなので、このじれったさに耐えられなければ手を出さないほうがいいでしょう。

また、裕人の一人称で語られる文章の比喩表現……これが特徴でもあるわけですが、1冊、2冊程度であれば特徴として見られるのですが、14巻も続くとはっきり言ってうざったい。
たとえば顕著なのが裕人の記憶力のなさを表現する場面。世界最小の蝉を持ち出したりと何かと脳みその容量が少ない動物ネタでしつこく書いていたりするのは鬱陶しくてしょうがない。
文章や文体が気になる人はこういった面でも拒否反応を示すかもしれません。

とは言え、ストーリーの体裁は短編連作で作風も軽く、ベタなネタとお約束で読みやすい作品であることは以前のレビューでも書いたとおり。
キャラも春香の天然系、美夏の甘えんぼな妹系、寡黙・フレンドリー・ロリと言ったメイドさんたちなど、ベタながらも誰かひとりはお気に入りができそうな設定・配置でキャラものとしても見所はあるかと思います。
上記2点を気にされない方は、手に取ってみてもいいかもしれません。
あ、あとイラストの破壊力に負けないと言うところも(笑)

と言うわけで、総評としてはラノベ点を考慮しても、いいところ、悪いところともにあり、やはり及第というところに落ち着いてしまいます。
単純にラブコメが好きという方には比較的オススメできるとは思いますが。

ちなみに、この作品、アニメ化されていて2期までやっているのですが14巻あとがきにて3期が作成・放映されることになったようです。
奇を衒って破綻するより、ベタでお約束な作品だけに安心できるのか、はたまたキャラに萌える方々がたくさんいるのか、3期が放映されるほど人気があるとは思いませんでした。
まぁ、それでもアニメ見ましたけどね、私(爆)
アニメの感想は当ブログの範疇ではないので控えますが、ひとつだけ、春香の声優さん(能登麻美子さん)だけは絵柄やキャラから見てミスマッチだと思いますがね。(大人っぽい声質なので)


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アニメはなかなかだったけど

2012-03-03 15:50:12 | ファンタジー(現世界)
さて、いい世の中になったよなぁの第990回は、

タイトル:オオカミさんと7人の仲間たち
著者:沖田雅
出版社:アスキーメディアワークス 電撃文庫(初版'06)

であります。

最近はこっちじゃやってないアニメもネット配信で1週間無料とか、そんなので見れたりするのでいい世の中になったよなぁと思う今日この頃……。
本書も2010年にアニメ化されていて、確か無料配信されていたので見てました。

なら原作は……と言うことで、遅まきながら1巻を借りてみましたが、ストーリーは、

『大神涼子はとある場所でひとりの男と対峙していた――と言うより、ほぼ一方的に殴り倒していた。
それでもめげない男は……涼子の逆鱗に触れる一言により昏倒させられてしまう。

と、そこへ今度はひとりの少女が現れ、昏倒した男を叩き起こす。
少女は自らを赤井林檎と名乗り、さらに御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行からの「お願い」を聞いてもらうために男を殴り倒した……もとい、男の元を訪れたと告げる。

御伽学園学生相互扶助協会――通称御伽銀行とは、御伽学園にある組織で学生の依頼を受けて依頼を完遂するとともに、依頼した学生に「貸し」を作って、必要に応じてそれを返してもらう、と言う組織だった。
涼子が男を殴り倒した……訪れたのも男のストーカー被害をやめてもらうための依頼を受けていたためだった。

にこにこと男に証拠を突きつけつつ、ストーキングをやめるように迫る林檎。
往生際の悪い男とのやりとりに紆余曲折はあったものの、男にストーキングをやめるよう納得させたふたり。

日が改まったある日、涼子が帰宅途中、不意に声が聞こえて立ち止まる。
振り返ってみても誰もいず、空耳かと思っていると今度ははっきりと「大神涼子さん、好きです」との声が。
けれど姿は見えず、どうやら隠れている模様。
それに苛々として出てこいと怒鳴ると、案外あっさり出てくる告白の主。

告白の主は、森野亮士、御伽学園1年F組で涼子と同じクラスの男子だった。
とは言え、クラスメイトのことなどほとんど覚えていない涼子。当然亮士のことも同じクラスだと言われるまで知らなかった。
――が、まがりなりにも告白された身。どこに惚れられたのか気にはなって聞いてみると出てくるのは「凛々しい」とか「野性味溢れる」とか「男らしい」とか、およそ女性を褒めるにはほど遠い言葉ばかり。

聞いていられないとばかりに途中退場した涼子は、翌日、教室の中に亮士を見つけ、友人でもある林檎に亮士のことを尋ねる。
林檎のほうは亮士のことは知っていて、周囲に溶け込む才能から御伽銀行に勧誘しようと考えていた人物だった。
涼子が告白されたことも聞いた林檎は、本格的に亮士を勧誘しようと御伽銀行の部室に呼び出しをかける。
――のだが、そこで亮士の致命的な弱点、対人恐怖症と視線恐怖症によってヘタレてしまうことが発覚。
逆に人がいなければとても男らしい面を見せる亮士を引き込みたい林檎だったが、涼子のほうはヘタレっぷりに反対の立場。

けれど、先日殴り倒してストーキングをやめさせたはずの男が涼子に仕返しをしに来たときの亮士の対応を見て、亮士は御伽銀行に正式に入ることになり……』

と、序盤はこんな感じ。

まずは最初に一言。

短編連作ならそれらしく書け

ストーリーは、まず上記の序盤から亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話。
それから竜宮グループと言うあらゆる性産業に進出している複合企業の社長令嬢、竜宮乙姫に狙われる浦島太郎の話。
御伽学園ボクシング部所属で学生チャンピオンでもある白馬王子が涼子を狙う話。
……の3つで構成されている。

ストーリーそのものは各キャラの名前からもわかるとおり、童話から題材を取ってそれをアレンジし、コメディ仕立てにしたもので、御伽銀行のキャラや各話に出てくる脇キャラも古今東西の童話から持ってきている。
キャラは個性や特技がはっきりしていてわかりやすいし、ストーリーも奇を衒うようなこともなく、コメディとしてすんなり読めるものになっている。
ラノベとしては読みやすく、各ストーリーに破綻はない。
元ネタも童話なので馴染みやすく、誰にでもわかると言う意味ではパロディとしてもいいほうだろう。

ストーリー、キャラともに無難な点数をつけられる――のだが、書き方に一貫性がないのが気に入らない。

まずは最初の話で亮士が御伽銀行に入って初めての依頼をこなす話だが、ここまでに副題がついている章がいくつもある。
けれど、次の浦島太郎と竜宮乙姫の話、白馬王子の話には最初に副題があるだけ。
ある程度の章ごとに副題をつけるならつける、つけないならつけないではっきりせんかい、と言いたくなる。

ついでに序盤、涼子が天の声(いわゆる著者)に反応する場面があるが、これも最初だけでそれっきり。
こういう天の声に反応する書き方は好きではないけれど、それをさておいても、そういう書き方をするならする、しないならしないでこれもまたはっきりせんかいと……。

ラノベとしてはせっかく悪くないと思えるのに、どうも書き方にアラがあるのは前シリーズの「先輩とぼく」のときと同じ。
「先輩とぼく」も6冊出ていると言うのに、書き方に進歩が見られないと言うのは何だかなぁ。
(文体が違うとは言え、結局ムラっ気があるのに変わりはない)

アニメにもなるくらいだから、それなりに人気のあるシリーズなのだろうが、いろいろ気にかかる点があるのは残念。
まぁ、そういうわけで総評として良品と言えるはずもなく、かといってラノベとして落第にするほどストーリーとかが悪いわけでもないので、及第というところに落ち着くわけで。
なんかこう、これはいいぜ! って言いたくなるようなラノベってないもんかねぇ。


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あぁ、やっぱり……

2012-02-26 14:47:15 | ファンタジー(現世界)
さて、そろそろ普通のも読まないとなぁと思いつつもの第988回は、

タイトル:お釈迦様もみてる 紅か白か
著者:今野緒雪
出版社:集英社 コバルト文庫('08)

であります。

「マリア様がみてる」(通称マリみて)の姉弟編として刊行された本書。
はっきり言って、まったく興味がなかったので手を出していなかったのですが、図書館にあったこともあって、ようやく1巻を手にしてみました。
まぁ、多大な期待はこれっぽっちもせず、読んでみましたが、はてさて……。

さて、ストーリーは、

『花寺高校入学の日の朝、福沢祐麒は校門からしばらく行ったところにあるふたつの分かれ道の前で立ちすくんでいた。
それぞれの分かれ道の入り口には机があって、上級生が待っている。
だが、そこに留まっているのは祐麒ひとりで、他の入学生は何に疑問も持たず、次々と分かれ道を選んで進んでいってしまう。

このまま留まっていても埒があかないと判断した祐麒は、同じ附属中学からの持ち上がり組でも見つけて聞いてみようと踵を返したとき、不意に誰かとぶつかってしまう。
幸か不幸か、ぶつかった誰かからこれが花寺学院高校で有名な源平関所であり、源氏は白、平氏は紅と分かれているらしいことを知る。

だが、それを知ったところで祐麒にはどちらも選べなかった。
そして祐麒の選んだ道は、そのどちらでもなく、真ん中の山を突っ切っていってしまう。

祐麒は意識していなかったが、関所破りと称される祐麒の行為にひとりの上級生が追いかけてくる。
体格の差か、はたまた上級生だからか、程なく捕まってしまった祐麒は、その上級生から関所破りについて脅され、源氏か平氏かを選ぶことを迫られる。
関所破りは重罪だの、選べなければお仕置きだのとのたまう上級生にかちんと来た祐麒は、その上級生が所属していない方という回答をする。

結果的に、それは無所属であることを選択することになり、入学早々、祐麒は無所属のつらさを味わうことになる。』

いやー、もうこの話、まったくもって潤いがないねぇ。

まぁ、舞台が男子校なんだから仕方がないとは言え、唯一の潤いが祐麒の姉で、「マリみて」の主人公祐巳ちゃんだけというのはちょっと……。

それはさておき、ストーリーは関所破りをしてしまった祐麒に無所属を決定づけた原因であり生徒会長でもある柏木優との出会いから、生徒会に関わっていくことになる祐麒の受難を描いた作品と言ったところだろうか。
それに、花寺学院高校伝統の源氏(体育会系)と平氏(文系)と言った厳格な派閥、烏帽子親と烏帽子子という「マリみて」の姉妹制度に似たシステムを絡めて話は進んでいく。

何故か生徒会に呼び出されて、生徒会役員である上級生と勝負することになったり、ひょんなことから友達ができたり、中学時代の祐麒のエピソードがあったりと、話そのものは程よくネタをちりばめつつ、けっこうテンポよく流れていく。
私みたいに読むのが速いほうの人間からすれば、一時間半もあれば一冊読み終わってしまうくらいで、そういうところは「マリみて」に通じるところがあるかな。
まぁ、「マリみて」も本書もページ数はさほど多くないし、この著者の作品は「マリみて」以外読んだことないので、これがこの人の特徴なのか、単に両方学園コメディとしての軽さを意識してであるのかはわかんないけど。

ただ、潤い云々を別にして、学園コメディとして見た場合、「マリみて」よりもおもしろみがない。
と言うか、姉弟編としてどうしても比べてしまうんだよねぇ。
それを除けば、学園コメディとしてのおもしろさはあるし、「マリみて」同様、軽く読むには適した作品ではないかと思われる。
「マリみて」は百合要素があるので、読み手を選ぶところがあったけど、こっちは薔薇要素がないのでむしろ手に取りやすいのかもしれない。

個人的には「マリみて」の大ファンなので、それに見劣りする本書は落第と言いたいところではあるけれど、客観的にはいい部分もあるし、取っつきやすさで言えばこちらのほうが上。
さすがに良品と言うまでには至らないけれど、総評としては及第点をあげてもいいと思う。

それにしても……。
結局2011年は「マリみて」が出なかった……。
「マリみて」のファンとしては本書の続きよりも、「マリみて」の続きのほうが気になってしょうがないってのに、なんか著者は書く気がないのか、祐巳ちゃんたちが三年生になった最初の「リトルホラーズ」以降、外伝二冊出たっきりだしなぁ。
まぁ、祐巳ちゃんと祥子でやり尽くした感はあるだろうけど、祐巳ちゃんたちの卒業まで書いてくれ、今野緒雪。
そこまで出たら満足するからさー。
(実はこっちが本音だったりして(笑))


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超妹大戦シスマゲドンって……駄洒落?

2008-07-30 11:11:35 | ファンタジー(現世界)
さて、多分深く考えてはいけないんだろう、な第980回は、

タイトル:超妹大戦シスマゲドン1
著者:古橋秀之
出版社:エンターブレイン ファミ通文庫(初版:'06)

であります。

ひょんなことから、イモコン(妹コントローラー)なる怪しげな機械を手に入れた烏丸サトルが、妹・ソラの操縦者となって、数多に存在する『妹使い』の争いに巻き込まれていく物語です。
ぶっちゃけ、機動武闘伝Gガンダムのメカを全部妹にして、『S-1妹グランプリ』と名を変えた、超人オリンピックに放り込んだよーな話。
各超人――じゃなくて、妹の解説が妙に凝っており、民明書房ならぬ民萌書房の解説があったり、妹強度(単位は×万シスター)が設定されてたり、ジョジョのスタンド能力そのまんまの六角グラフ(精密動作性とか成長性などの表記も同じ)が付記されてたりと、無駄に熱いです。

熱い……?
そもそも古橋秀之って熱いか?
熱いもの(メカとか武術とか格ゲーとか)が好きで、それをネタにすることが多いようだけど、作品自体はちっとも熱くない気がするのは私だけか?
さー、盛大に喧嘩を売るぞ! ファンの方は今すぐ引き返すべきだ。つーか、読んだら絶対怒る!(自信アリ)








いいんですか? 本当に喧嘩売っちゃいますよ? かめ○め波で吹っ飛んた所に野獣の腕が炸裂し、落ちたらドリルが待っていて、挙げ句の果てに鎌で切り刻まれるなんて目に遭っても知りませんよ? あ、もちろんそーなるのは私の方だけど。(爆)


一見すると、異色作に見える本書ですが……古橋秀之作品であることを考えるとちっとも異色ではありません。
相も変わらずの物量作戦です。
ここで言う物量とはネタのことを指します。ネタとは、所謂『パロディ元』だけでなく、カテゴリーやジャンルのことも意味します。
尋常でない量のネタを投入し、そのド迫力をもって読者を圧倒する! これはデビュー作の『ブラックロッド』から続く古橋秀之のカラーであり、それ故に物量作戦と書きました。
彼の物量作戦には二つの特徴があり、これは初期から全く変わっていません。良い方と悪い方があるのですが、まず、良い方からいきましょう。

☆ネタが解る人に対してのサービス精神が凄まじい。

これはパロディを書く人に必須の能力だと思います。
書くからには、それ、が好きな人を楽しませなくては話になりません。
車の話を書くなら車について調べ、格闘ゲームのパロディを書くなら指が折れるまで遊び尽くし、レンズマンの外伝を書くなら(笑)、本家レンズマンを可能な限り研究するのは当然でしょう。
その点において、古橋秀之は隙がありません。何というか、作品から雄叫びが聞こえてくるぐらい愛を詰め込んで下さいます。恐らく非常に真面目な方なのでしょう。

しかし、問題は次です。

☆ネタの加工が壊滅的なまでに下手。

はっきり言いますが、古橋秀之の作品はとにかくくどい。何がくどいって、ネタに関する説明が。そして、くどすぎる説明の割に、ネタそのものはストーリー上さほど重要ではなかったりする。つまり、ネタを作品内で生かす能力が決定的に欠けているのです。

前述の機動武闘伝Gガンダムの監督・今川泰宏と古橋秀之が、似ているようで似てないのは、ひとえにこの能力の差だと思います。
アニメの話で恐縮なのですが、今川泰宏の作品に『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』というのがありまして、これが原作丸無視ぶっこいて横山光輝キャラを手当たり次第に出すという凄い話なのですが――これ、いちいち元ネタ知らなくても全く問題なく楽しめます。何故なら、監督の作った『ジャイアントロボの世界』の中に無理なく溶け込んでいるからです。
しかし、古橋秀之の作品にはそういった点が欠片も存在しません。一番マシだと思える『ブラックロッド』からして、興味のない人にとっては退屈な説明が延々と続き、読む気力を減退させます。(まぁ、サイバーパンクってそういう面があるのは否めませんが)
見せ方がとにかく下手な上、ストーリーの流れにもそっていない――これって致命的なのではないかと。

例えば、このS-1妹グランプリには『秘湯☆湯けむり地獄』というチェックポイントが出てきます。
ここは飛行タイプのキャラであろうと徒歩で渡らなくてはならず、しかもタオル以外のものは身に付けてはいけない。
もうこれだけで、どんな事が起こるのかは想像がつきます。まー、よーするにあれ――読者サービスという奴です。
期待を裏切らず、間欠泉が吹き出して女性陣のタオルが落ちる。そんなことは、ネタが提供された時点で最初っから解ってます。(笑)

でも、それ以上がないのだ。

本当に、ヒネリもなく、それしか起こらない。
そしてこれは、他の数多に存在するイベントでも同様なのです。まったくと言っていい程、決められたこと以外が起こらない。
スポット的にネタが投入され、ストーリーはそれと無関係に進んでいく……どうにかして下さい、ホント。
もっとも、ストーリーが素晴らしいかと言うと、物量作戦で投入されたネタをさっ引いたら極めて脆弱な物語しか残らなかったりしますが。(←これも、初期の頃から変わらない)

とどめに、対照的な作家として、古橋秀之と同じく初期の電撃文庫を支えた高畑京一郎の名を挙げておきます。
元ネタがあるという点では彼も同じでした。『タイム・リープ』は『時をかける少女』のオマージュだし、『クリス・クロス』は『クラインの壺』の影響下にあります。
が、しかし、ネタの処理という点において高畑京一郎の能力は古橋秀之の比ではありません。

高畑京一郎の作品はネタを知らなくても全く問題なく読めます。
しっかりとしたストーリーに、スパイスとして元ネタがちょっとだけ添えられており、全体的に見ると原作よりパワーアップした感すらあります。
何故なら、古橋がネタに対する過剰までの愛を作品に注ぎ込んでいるのに対し、高畑は飽くまで自分の物語を構築することに終始しているからです。

本書のカバーの著者紹介にある、「~『鬼才』『逸材』『この人もうちょっと売れるといいね』などの評価を恣にする~」という一文に引っかかって、長々と書いてしまいました。
結局、この方が爆発的に売れない理由って、やっぱり本人自身にあるような気がしますね~……逆に、それは熱狂的な固定ファンを生む土壌でもあるんだろうけど。
あ――本書の紹介そのものが頓挫してる。(爆)



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レベルアップってなに?

2008-03-23 18:20:27 | ファンタジー(現世界)
さて、こういうパターンは初めてだなぁの第957回は、

タイトル:付喪堂骨董店3 ”不思議取り扱います”
著者:御堂彰彦
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'07)

であります。

1巻はクロスレビューで、2巻がおしゃべり、そして3巻は個人記事……って、初めてのパターンだよなぁ。
しかし、2巻であれだけボロクソ言ったのに3巻かよ! ってツッコミはなしの方向で(笑)

というか、やっぱ少しくらいは期待したいものじゃない。
1巻の出来がよかったんだし、2巻でこけたとはいえ、3巻は……って気になるっしょ。
でも買うんじゃなくて借りてるあたり、一抹の不安ってのがあったりするんだけど(爆)

では、いつものように4話構成の短編集なので各話から。

「第一章 箱」
『いつものように暇な付喪堂。長らく買い付けに出かけ、留守にしていたオーナーの都和子は、いくつもの戦利品を持って戻ってきた。
そのどれもは偽物ばかりで役に立たないものだったが、その偽物のせいで、刻也は咲とその友達の小学生、麻美ちゃんとともに、麻美ちゃんが可愛がっていた猫のミイを探す手伝いをさせられることに。

麻美ちゃんの心当たりである猫屋敷……この家の屋敷さんが怖いおばあさんらしくひとりでは行けなかったので咲についてきてもらった……でミイを探すものの見つからず。
だが、麻美ちゃんはミイが屋敷さんの家にいることに確信を持っていて、夜、屋敷さんの家を訪ね、そしていなくなってしまった。

後日の似たような時刻、刻也は屋敷さんの家で不思議な箱を目撃し……』

いちおう、いちばんミステリらしい話……になるんだろうか。
都和子が買ってきて偽物だった「永久に腐らない保存箱」といなくなったミイ、麻美ちゃん、本物の「箱」の持ち主の屋敷さんの一人称で語られる箱にまつわる罪……などなど、いちおう謎解き要素はあるし、ラストもちょいと捻ってたりと悪くはない。

……のだが、ミステリ好きには物足りないものと思料。

「第二章 人形」
『かつてまるで人間のような人形を作り出すふたりの人形師がいた。ひとりは自動人形の人形師でオートマタ、もうひとりは操り人形の人形師でマリオネット。
その再来と言われるふたりの人形師が、ある町におり、自動人形は西の人形師、操り人形は東の人形師と称されていた。

その西の人形師のお世話係アゲハは、人形にも関わらず主人の言葉を理解し、自ら行動できる人形だった。
朝起きて、自動人形たちに螺子を巻いたり、買い出しに出かけたり……そんなとき、アゲハはクモと名乗る少年に出会う。
アゲハとおなじ東の人形師に作られた人間のように振る舞うクモと出会うことによって、アゲハの運命は徐々に狂い始める。』

咲が「糸の絡まった螺子」であるアンティークに触れたことで語られる人形の切ない物語。
……つーか、1巻の第二章も咲がアンティークに触ってどうにかなったなぁ、と思い出してかなりげんなり。

ミステリ要素もなんか前も書いたんじゃなかったっけな、こいつ、と思ってしまう言葉遊びだし、アゲハとクモの切ない話を持ってきながら結局は刻也と咲のラブコメ一直線ってのもなんだかなぁ……。

「第三章 夢」
『七瀬麻耶は、もうずっと学校を休んでいた。大好きだった部活の先輩で彼氏でもある志賀が交通事故で即死。そのショックから立ち直れなかったからだった。
そんな麻耶が、ふらりと出かけたある日、道を聞こうと思って入った店……骨董店で、自らが望む夢を見ることが出来るアンティークの香炉を得る。

それにより、夢と言えど死んだはずの志賀と自らが望むふたりの生活を見ることが出来るようになった。
だが、所詮夢は夢。麻耶は、ついに夢に耽溺し、起きることをやめてしまった。

志賀とクラスメイトで、さらに志賀の友人でもあった新庄の頼みで麻耶の見舞いに訪れ、アンティークの存在を知った刻也は、都和子からそのアンティークの能力の詳細を聞き、麻耶を現実に引き戻そうとするが……』

個人的にはこの短編集の中でいちばんマシな物語。
ストーリーとしてははっきり言って、定番。ミステリ的な要素は希薄だが、定番だけあって安心して読める。
この手の物語だと、ラストは2種類しかないのだが、どっちを選んだか……まぁ、ここは好みの問題ではあろうが、個人的にはこのラストのほうが好き、かな。

ただねぇ……、そこまで書くんならとっとと刻也と咲をくっつけて完結させればいいじゃん、って気になるのは私だけではないはず。

「第四章 眠り姫」
『前章で使われた香炉のアンティーク。その中に残されていた灰による副作用で、刻也は朝八時から夜八時まで、咲は夜八時から朝八時までしか起きていられなくなってしまった。
副作用とは言え、刻也は学校とバイトだけで自由な時間のない日々。咲は天職と自認している接客業が出来ない時間帯にしか起きていない日々。

ストレスがたまるふたりに、解決策を探していた都和子がついにその方法を見つけた。
都和子は、その方法を告げた。
「キスをすればいいんだ」』

……
……
……

さいでっか……。

第二章、第三章であれだけ豪語(行動込み)しておいて、葛藤するなよ、刻也。
つーか、1巻2巻と甘々ベタベタだが、まだ耐えられる範囲だったが、これは私でさえも痒くなりかけたくらいげろ甘……。
感想とか評価とか以前に、「好きにして……」と投げときます。


というわけで、全4話。
総じて言うなら、第三章のところにも書いたけど、4巻か、せめて5巻くらいでもう咲の過去とか、いろいろとネタばらしして、ふたりをくっつけて終わらせてくれ。
っつーか、もうラブコメ街道一直線ね、この巻。

確かに、第二章、第三章と雰囲気のある作品もあるのだが、やはり1巻のクオリティには及ばない。
2巻よりは……若干マシだが、マシって程度。
むしろ、ラブコメ要素が強いぶん、そういうのがダメなひとにはもっと評価が下がるかもしれない。
逆に、キャラ萌えメインのひとにはそれなりにおもしろく読める、とは言えるが。

てなわけで、総じていまいちながら、特定のひとにはおもしろく読める要素がある、2巻よりは少しだけだけどマシ、ということで、総評としてはぎりぎり及第、と言ったところか。
ミステリではなくラブコメとして読むことをオススメします。



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これは一発ネタだと思うのだが……

2008-03-02 23:59:31 | ファンタジー(現世界)
さて、予告通りガガガ文庫な第951回は、

タイトル:学園カゲキ!
著者:山川 進
出版社:小学館 ガガガ文庫(初版:'07)

であります。

さー、やって参りました。
ラインナップ見ただけで、「やべぇ! 地雷原だ!」と叫びたくなるガガガ文庫です。
看板作品の『人類は衰退しました』はかなり面白かったのですが、果たしてこれは……?



放送の多極化と、極端なチャンネル数の増大により、テレビ局は深刻な人材不足に陥っていた。
事態を憂慮した放送事業者は、未来の人材を育成するための一大計画『KAGEKIプロジェクト』を立案する。
それは、歌劇学園と呼ばれるタレント養成校を中心に、許可を得ずとも撮影が出来る放送芸術特区『歌劇市』を造るという凄まじいものだった。

何の知識も持たずに入学した会澤拓海にとって、歌劇学園はまさに異空間だった。
昼の食事は全国中継されて視聴者のチェックが入るため気が抜けず、かと言って、放課後は至る所で撮影が行われるため現実と非現実の区別が付けづらい、では教室は安心かと言うと、何の前触れもなく始まるアドリブタイムによって演技力を問われる。
おまけに、クラスがそれぞれ一番組を受け持ち、出演・制作を行う学園ドラマ『学園カゲキ!』の存在があり、いきなり主役に抜擢されて早くも他の生徒とは別格の扱いを受ける者もいるなど、ひたすらテレビ番組制作を優先した仕様に、拓海はただ驚くばかりだった。

入学当初から『学園カゲキ!』の主役に抜擢されて注目を集めている橘九月、歌劇学園の内情に詳しく、着実にエリート街道を進んでいく加賀雅弥、上昇志向が強いがやることなすことすべて裏目に出る愛すべき自爆男・唐木亘、といった個性的すぎるクラスメイトに囲まれて、拓海は次第に歌劇学園に順応していくが――。



例によって、感想を一言で言うと――
引っかかるところは多々あるけど、一応面白かったです。
おお! 珍しく褒め言葉だ! え……褒めてない?

何と言っても目を引くのは、物語の舞台となる歌劇学園でしょう。
一つのことに特化した学校というネタは少なくありませんが、限られたページ内で結構凝った設定を披露してくれてます。
矛盾や突っ込み所も多いですが、上手く利用すれば色んなタイプの話を書けそうで、割と好み。

何も知らない拓海を主人公にすることで、奇妙な空間である歌劇学園の紹介と、エリートコースまっしぐらの九月との身分違い(?)の恋を両立させる、と、ストーリーラインは基本に忠実。
これに、クールに見えて実は熱くて照れ屋でエロス全開な雅弥の活躍、天然自爆男・唐木亘の失敗、プロ意識が強すぎる故に、普通に後輩として接してくれる拓海に惹かれていく二年生・姫儀千里の話、等の枝話で色付けをしています。
王道まっしぐらのキャラ小説、と言えますが、充分楽しませて頂いたので問題なし。

で、お待ちかねの引っかかる点。(待ってない?)

本作は、放送業界の毒に染まっていない主人公に、他のキャラ達が惹かれていくという体裁を取っているのですが……当の拓海のキャラがイマイチ定まってません。
ずばっと言ってしまうと、読んでいて、拓海をイイ子ちゃんにしたいという作者の願望しか伝わって来ないのです。だから、場面によって性格がズレるし、台詞もイマイチしっくりこない。
仮に作者を監督、拓海を主役とすると――演技指導がなってないと言えます。

あと、ストーリーについて。
本作には重要な隠し要素があり、そのため拓海は一度奈落の底に叩き落とされるのですが……某映画を視ていた場合、速攻でネタが割れます。(つーか、パクリと言い切っちゃっていいと思う、正直な話)
仮に映画を知らない方でも結構早い段階で気付き、終盤の真相明かしで脱力されるのはないかと。私は映画視てた方なので何とも言えませんが。

ただ、一応フォローしとくと、ネタは割れてもどう始末を付けるのかが気になって最後まで読めることは読めます。
オチそのものに関しては賛否両論でしょうが、当の拓海が納得してるんで、まぁいいか……ってとこでしょうか。
ちなみに、私なら学園を訴えるけどね。つーか、明らかに犯罪だろ。

色々と微妙なのでオススメは付けません。
主役以外のキャラは良くできてるので、キャラ物が好きな方は手に取ってみてもいいかも。
ただ、本作で大がかりなネタを使っちゃってるので、二作目は……あははははは。(爆)



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私って時代遅れですか?

2008-02-24 14:39:44 | ファンタジー(現世界)
さて、まさかファミ通文庫を再び読むとは思ってなかった第949回は、

タイトル:学校の階段
著者:櫂末高彰
出版社:ファミ通文庫(初版:'06)

であります。

個人記事ではお久しぶりでございます。
最近方々で――
「ガガガ文庫だって読み漁ってやるぜ! でもスーパーダッシュ文庫だけは勘弁な!」
と叫びまくってるSENです。

今回、何を血迷ったのか、ラノベ三大地雷原と呼ばれる内の一つ、ファミ通文庫に手を出してしまったので、久々に筆を取りました。
薦めて下さった方曰く、「単に学校の階段を走り抜けるだけの部活のお話」(そのまんまやんけ)ということなのですが――さて、結果は?



特にこれといった目標も持たず高校に入り、何とはなしにバスケ部に入ろうとしていた矢先、神庭幸宏は奇妙な光景を目にした。
猫目の小柄な少女が、スカートを大きく翻して宙を舞っていたのだ――しかも階段の上を。
彼女は、「ごめーん」と軽く言うと、ポカンとした神庭を残して、あっという間に行ってしまった。

彼女の名は九重ゆうこ。
多くの生徒から忌み嫌われる非公認部『階段部』の部長である。
とにかく走りたい! というシンプルな欲求に従って、彼女達は校内を走り回り、仲間内でタイムを競っていた。

だが、神庭はそのことを知らない。
なぜ彼らが校内を走るのかも、自分の中に眠っている欲求も。
そして無論、これから始まる非公認な日常のことも――。



まず結論から言いましょう、超弩級地雷です。
と言うか、コメディ読んでこれだけ腹が立ったのは初めてかも知れません。
多分、派手に喧嘩売ることになると思うので、ファンの方は以下の文は読まないことをオススメします。

文章は、基本的に神庭視点の三人称。
流れ的には、何にも知らない主人公が階段部という奇妙な集団と接触し、次第に染まっていくというスダンダードな形式を取っています。
途中、神庭と家族の絡みもあったりするのですが、ほとんど添え物なので割愛。(つーか、「四人姉妹出して、ホームドラマもどきやってみました」ってだけなので、書く気が起こりません)

キモとなる、階段部というアイディアについてですが、かなり上手く処理していると感じました。
いかにして校内を速く駆け抜けるか、という命題に対して、部の面々が様々なアプローチを試みており、それが各人の個性ともリンクしています。
見てるだけだと簡単そうだが、その背後には驚く程多くの研究と鍛錬がある、というスポーツ物の基本を踏襲し、主人公が少しずつ階段走りの技術を学んでいって、ラストの一対一の対決でそれらを生かすという展開もお見事。

で・も・ね――(ここから毒ラッシュ)

最初から最後まで、他人にぶつからないよう注意して走ってるからオッケーで通すのってどうよ?

スポーツ青春物の皮を被った本作には、それが持つべき重要な要素がさらっと抜け落ちています。
一言で言っちゃうと、この主人公まったく成長してません。
普通に考えれば、これといったビジョンを全然持っていなかったのが、熱心に部活に打ち込むようになったことが成長、なのでしょうが、「情熱を燃やし、ひたむきに階段や廊下を走る」って……前半であれだけ強調されてた騒音公害だとか、危険行為だとかって話はまるっきりスルーですか? もっともこれは主人公に限ったことではなく、部員全員に言えることですが。

そう……この作品、階段を走るという行為のシミュレートは非常に面白く書いているのですが、それに伴って発生するトラブル関連のまとめがおざなり過ぎるんです。
階段部の行為を咎める人々は多数登場しますし、その主張も至極真っ当な感じに書かれています。でも、それに対する部員の反論があまりにも稚拙、と言うか幼稚で、かなり萎えました。
一応、そこらへんをまとめるキャラとして副部長がいるのですが、屁理屈こねるだけのインテリ崩れで他と大して変わりなし。要するに、揃いも揃ってただのクソ餓鬼です。
(ちなみに、部長の思考回路は幼児並み……つーか、こういう脳の腐ったヒロイン増えましたねぇ、やれやれ)

作者としては――悪いことだと解っていても、この気持ちは止められない! ってな感じの、いわゆる青春小説の王道に持っていきたいのでしょうが、生憎、爽やかさの欠片も感じませんでした。

一番引っかかったのは、俺達は自分達の迷惑行為を自覚してるんだ! とか、それでも走りたくてたまらないんだ! とか、部活が終わったらちゃんと清掃を行う! とか、色々言い訳を用意してる割には、何だかんだ言って、他人を障害物に見立てて走ることをゲームにしている点です。
人のすぐ側を駆け抜けてはいけない、ぶつかってもいけない、もし違反したら必ずお詫びする……ハァ? そういう事態が発生しても、走ることをやめる訳じゃないんでしょう? そんな形だけの謝罪に何の意味があるんですか? しかも、そういう事態が発生した時のため、部活の初めには必ず謝罪練習って、他人を馬鹿にするのも大概にしましょう。
それでも階段走りたいなら、休日に学校貸し切ってやって下さい。自分達が負うべきリスクを他人にも押しつける時点で、こいつらは下衆以外の何者でもありません。

仮に陸上部の人とかにぶつかって、選手生命断ったらどうするんでしょう?
それでも、走りたくてたまらないから走るとかぬかすんでしょうか? 言えたらもう人外ですが。
その程度の想定もできないんですかね、このゴミ集団は。

総評――反吐以下。
階段部という部活、及び、そこに所属する面々が生理的に受け入れられません。
敢えてちょっとだけフォローを入れるとすれば、「まぁ、ラノベに登場する学校はファンタジー空間だから、こういう連中でも生息出来るだろう」と割り切れる方なら、スポ根コメディの亜種として楽しめるかも知れません。
それでも、私は決してオススメしたりはしませんが。

(しかし、この作品七冊目まで出てる人気作で、映画化までされてるんだよなぁ……さっぱり解らん)



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意外な効能

2007-12-09 16:10:53 | ファンタジー(現世界)
さて、「振り返れば目録」も意外に役立ってんなぁの第927回は、

タイトル:我が家のお稲荷さま。3
著者:柴村仁
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'04)

であります。

目録ネタをやっていて、2巻の記事を読み返してみると3巻に期待したいと言ったのが一昨年の7月……。
素で2年以上経ってんのに気付いて予約を放り込み、読んでみました。

では、ストーリーは、

『高上家ご一行……兄、昇と弟の透、ひょんなことから居候になっている天狐空幻ことクー、兄弟を護るために同じく居候になった護り女のコウは、昇の学校の文化祭に来ていた。
女姿のクーにまとわりつかれて男子どもの痛い視線を浴びながら、ともに微妙な好意を持っている佐倉美咲にプチ嫉妬されたりと何となく受難。

そんな文化祭の最中、クーはおなじ天狐の玉耀に、巷で鬼が起こしていると言う事件のことを聞き、一緒にそのお宝を横取りしないかと誘われる。
興味を惹かれないクーはあっさり断ったそんなころ、コウとともに文化祭を楽しんでいた透は、何故か修道服を着ていた女性に出会う。

とは言え、文化祭は昇の受難以外、さしたる問題もなく終わり、10月。
透宛にクロネコ便……ほんとうにクロネコが配達してきた宅急便が届く。
大きなダンボールには、全身をぐるぐる巻きにされ、拘束具で厳重に縛られたひとりの少女。

ついでに透は野球チームの試合のときに黒ずくめの少年に出会い、似た時刻、昇はダウジングに勤しむ怪しげな女性を目撃する。
怪しさ満載の日常の中、昇は下駄箱に手紙が入っているのを見つけ、好奇心と期待を押し殺しながら、手紙の場所に向かった途端、怪しげな男二人組に拉致されてしまう!』

えー、素でふつーに、あっさりすっきり楽しんで読めました(爆)

いちおう、著者あとがきにあるように、4巻に向けて微妙に引いている作りにはなっているけれど、メインの鬼絡みの話はきちんとオチをつけてくれているのでOK。
引きも「そんなとこで終わるんかいっ!」と怒マークを付けたくなるほどではなく、微妙に続きが気になるくらいのものなので、逆に興味をそそられたり……(^_^;
まぁ、実際、4巻の予約がなかったのであっさりと図書館で予約してしまったけど(笑)

さておき、実際のところ、印象としては1巻にあったような「日常」をベースにした展開がメインでほのぼの感は十分感じられる出来。
怪しげな新キャラも、いまのところ、作品の中の「日常」を壊さない程度の「怪しさ」なので、作品全体の雰囲気を壊すことはない。

クライマックスとなる後半は、お約束の戦闘シーンがあるわけだけど、これも意外にあっさり。
2巻ほど戦闘に比重が傾いていないところはいい。
あっさり、と言う言葉通り、ホントにけっこうあっさりと戦闘シーンは終わってくれるので、そういうところを期待するひとには物足りないだろうと思うが、作品としてはこれくらいが妥当だろうね。

文章は……ん~、地の文に会話文が続いたり、間に挟まっていたり、と言う文体は正直あんまり好きではないけれど、個人的な好みを除けば過不足なく、及第。
引っかかるようなところも特にないし、重くなりすぎず適度に軽い文章は作風にも合ってる。

久々に読んだけど、2巻ほど目立って悪いところはなく、あっさりと軽く読むにはかなりいい。
ただ軽すぎるきらいがあるので、200ページあまり、1時間半もあれば読めてしまうのはちと残念。
ってか、私、1時間半もかかったかな、これ……(爆)

ともあれ、1巻にあるようないい雰囲気が戻ってきた、と言うところもあって、おもしろく読めたので、ラノベ点を加えて良品、と言うところにしておこうかね。
久々だし、かなり甘々な点の付け方ではあるけれど。

……って、4巻車ん中に置き忘れたまんまだ……取ってこよ……(爆)



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追うのはどっち?

2007-09-16 15:03:34 | ファンタジー(現世界)
さて、週一くらいはやっぱ書こうと思ってるの第903回は、

タイトル:鬼ごっこ
著者:青目京子
出版社:講談社 講談社X文庫ホワイトハート(初版:H18)

であります。

デビュー作の評価がよかったので2作目を買い、いまいちだったものの、きちんと読める作品を書いてくれる新人さんだと言うことで、今回3作目。
2作目はデビュー作の続き物ってことだったけど、今回はオリジナルの現代ファンタジー。

どんなものかと期待しつつ、ストーリーは、

『和歌山のある町に住む沢村莉子は、近付いてきた7月7日で17歳になる高校生だった。
女のコにしてはさばさばしているほうだが、そうした性格的なところを除けば、両親と姉の4人家族で、家族のことやちょっとした出来事で喜んだり不安になったりするような平凡で、ふつうの子だった。

誕生日を明日に控えた7月6日。
授業中の居眠りで説教が長いことで有名な教師に呼び出されてしまった放課後、学校で人気の高い旧家の御曹司である草野冬記が若菜を訪ねてきたところに出くわす。
その後、うんざりしながら説教を聞くために職員室を訪れた莉子は、その教師から不可解な言葉を告げられる。

教師の言葉を気にしながら、若菜と莉子は、そこで冬記と、冬記の遠縁だと言う転校生の零とともに七夕祭りに出かけることに。
その日の夜中、若菜の母親から、若菜がまだ帰っていないことを告げられる。
7日の朝、不可解な言葉を告げたままの教師も一家揃って行方不明となっており、短い間で身近な人間が消えてしまうことに不安が募る莉子。

そこへ冬記が若菜を捜すために、真夜中の学校に来るように告げてきた。
心当たりがあるらしい冬記に、莉子は同行することを決意し、真夜中に学校へ向かう。
そこで冬記は自らが陰陽師の家系で、「鬼」の存在を明らかにする。
非現実的な話についていけない莉子だったが、学校の体育倉庫に若菜がいると言われ……しかし、冬記にそこに閉じ込められてしまう。
体育倉庫には、行方不明となっていた教師一家と若菜がおなじように閉じ込められていた。

そこでも教師一家から「鬼」の存在を語られ、莉子自身も「鬼」の血統だと聞かされる。
冬記や教師たちから語られる「鬼」、教師から聞いた「払暁の星」……17歳の誕生日を前後して、莉子の人生は否応なしに変わっていく。』

……なげぇ……(T_T)
つーか、マジでストーリー紹介の書き方を忘れている~(爆)
以前はもっともっと要約して書いてたはずなのに……。
やはり、継続ってのは偉大だね(笑)

さておき、本書だけど、ストーリーは主人公の高校生、莉子を中心としたいわゆる学園ものの和風ファンタジー。
時間的にはかなり短く、本編の大部分を7月6日~7月9日くらいまでの間に起きた出来事が描かれている。
構成は、最初は莉子の視点で描かれた三人称で6日からを。2章に挿話的な解説、3章で莉子の相手となる木名井零の三人称で、おなじ7月6日からの時間を描く、と言う手法を採っている。

その分、おなじ時間を経過しながら、異なるキャラの心理描写などがしっかりと描かれていて、短い期間での話ながら、物語に厚みを持たせることが出来ていると思う。
文章も適度に分量があり、不足はあまりなく、表現もやや引っかかるところがないわけではないが、しっかりしている。
デビュー作から、文章力には一定の評価が出来るひとだと思ってたけど、このあたりは安心できる。

ただ、ストーリーを全体的に見渡してみると……「う~む(悩)」って感じ。
おそらくは、続きを意識してプロットを作ったのだろうと思う。
もちろん、いちおうの決着をつけてはいるので、ラストにオチがない、なんてことはないのだが、クライマックス後の引きが冗長気味。
また、クライマックスも盛り上がりに欠けているきらいがあって物足りないところがあるのが残念。

他にも、ストーリー展開と説明部分とがきっちりと分けられていて、そういう書き方はありだとは思うが、ストーリーの流れを考えると、無理なく展開の中で説明してもらいたい、と言う気持ちがある。
特に2章なんかは、すべて説明に終始しており、莉子から零への視点の変化をするためのインターバルと考えたとしても、どうかと思う。
まぁ、まだ展開の途中で流れを分断するような説明部分になるよりは、章立てを分けているぶん、まだ考えられているほうだと思うが……。

なんか、あんまりいいところはないように見えるが、作品の雰囲気は十分感じられるし、プロローグに語られるダークな桃太郎の異聞っぽいところなんかはきちんと本編を補完しているし、悪いところばかりではない。
良品、とはさすがに言えないが、デビュー作からこっち、「×」にはならないだけの力量はあるひとだとは言える。
まぁ、良品ではないのでオススメしやすいかと言われると、悩むところではあるのだが……(^_^;

しかし、作者紹介を見て、そういやこの人、広島県在住だったんだよなぁ、と改めて思ったなぁ。
同郷……出身は違うかもしれないけど、少なくとも、現在広島県在住ってことは、広島の人間というわけで。
やっぱりおなじ広島在住としては頑張ってもらいたいもの。

贔屓?
まぁ、しょうがないじゃん。
同郷の有名人は、同郷ってだけで応援したくなるのが人情ってもんでしょ(笑)



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さよか~(投げやり)

2007-04-22 22:41:41 | ファンタジー(現世界)
さて、GWは読むだめするぞ~と思ってるの第873回は、

タイトル:リバーズ・エンド
著者:橋本紡
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H13)

であります。

今週は、なんのかんのとラノベが3つも続いてしまった……。
別に企画でも狙ったわけでもないんだけどねぇ。
まぁ、たまにはこんな週があったっていいよね、と言うことで、今回の日曜ラノベであります。

では、早速ストーリー。

『14歳の中学生、瀬川拓己ひろきはある日、不思議なメールを受け取った。
「海はありますか?」
そんな件名のメールの差出人はyui。
友人でもない差出人だったけれど、拓己は返信する。

そこからyui……同い年の少女、藤木唯は拓己のメル友になった。

その後、唯は偶然、拓己の学校に転校してくることになり、二人の距離は非現実のメールだけではなく、実在の友人として拓己の前に存在することとなる。

友人の良太、良太の彼女で幼馴染みの有香を交えた4人で過ごす学校生活……次第に拓己の中で唯の存在が大きくなっていく。
しかし、唯には誰にも言えない秘密があった。
それを巡り、拓己と唯は突然窮地に追い込まれる。』

まず、ストーリーだの何だのを云々する前に……。

白っ!!

何がすごいって、ここまでページが白い小説は夢枕獏以来……というか、夢枕獏にも匹敵するか、もしくは凌駕するほどに白い。
昔、あまりの白さにあかほりさとるを毛嫌いしていたけど、あかほりさとるなんざ敵じゃねぇぜ! ってくらい、白い。

私は読むのが早いほうだが、昼休憩の残り30分で100ページ以上を読めてしまうくらい、と言えば、どれほど白いかを想像してもらえるだろう。
とは言え、やっぱり読み慣れてきたのか、丸くなってきたのか、ラノベだからこんなもんさね、と割り切ってたりはするんだけど。

さておき、まじめに評価しよう。
まず、ストーリー展開。
プロローグの掴みはOK。構成の仕方として、ラストのほうの描写をプロローグに持ってくる、と言うのはよく使われるものだが、ここで物語全体に渡る作品の雰囲気をうまく伝えている。
また、雰囲気とともにストーリーの方向性を決める描写も、今後を期待させるに十分なものがある。

プロローグはOK……なのだが、その後の展開は……。
基本は、拓己、唯を中心として、良太、有香を加えた4人の日常と、唯の秘密について語られ、ラストにプロローグで描写されたところに戻ってくる、と言うものなのだが、唯の秘密とプロローグに至る理由が、マジで「さよか~」(ホントに投げやりに)な程度で、インパクトはないし、説明不足だし、かなり中途半端。
続きを意識して、ぼやかしてると言うのはわかるのだが、それにしてもインパクトがなさすぎ。
これでは続編を読もうと言う気にならない。

Amazonで2巻のレビューを見ると、興味は湧いたが、他人のレビューでしか興味が出ないのはどうよ? って気にはなるわねぇ。

次にキャラだが、メインキャラはステロタイプの方々ばかり。
拓己と唯を窮地に追い込むファクターとなるキャラも、なんか理由があったほうがいいからつけました、くらい必要性を感じない。
むしろ、他のキャラは薄くてもいいから、拓己と唯のふたりをもっときっちり描いたほうが、ストーリーにも厚みが出ていいのではないか、と言う気がする。

あとは文章だが、まぁ、白いところを除けば、きちんとしているほう。
目についたところでは、読点で区切るところを句点で区切って段落をつける、と言う手法を使っているが、あまりしつこく使わず、適度に使っているところはいい。
頻出するとうざったいだけだが、これは効果的に使っている。

全体的に、ラノベにしては比較的少ないセンシティブな物語で、そうした雰囲気も十二分に感じられる作品、と言えよう。
ただ総評とするなら、及第と落第の境目ぎりぎり、ってところ。
やはり続編への訴求力に乏しい、と言うのは致命的。
それに、電撃文庫ではめずらしい作品と言えるだろうが、それ以外、特に少女小説や少女マンガではまったくめずらしくない雰囲気の作品だし。
むしろ、こういう雰囲気の作品なら、少女小説とかそういうほうを読むだろうなぁ。

とは言え、はっきりと総評をつけるなら、雰囲気のある作品は嫌いではない、と言う一点で及第、ってところか。
逆に言えば、そうしたところを楽しめないひとにはオススメできない、ってことだけど。



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