『死亡推定時刻』 朔立木

2013年07月29日 16時56分15秒 | 読書
気温より湿気のほうが苦手です。



「山梨県で地元の有力者の一人娘が誘拐される事件が起こった。警察の指示に従った結果、身代金の受け渡しは失敗。少女は死体となって発見された!県警は、遺留品に付いていた指紋から、無実の青年を逮捕。執拗な揺さぶりで自白に追い込んでしまう。有罪は確定してしまうのか?そして真犯人は?現役の法律家が描く、スリリングな冤罪ドラマの傑作。 」(BOOKデータベースより)

作者の朔立木(さくたつき)さんは現役の法律家だそうで。
この作品は無実の青年を脅迫して自白に追い込み、ほとんど自白のみで死刑判決を受けた事件をえん罪として真実を勝ち取るために奔走する弁護士の話でしょうか。
読者は早々からこの青年が無実であることを知っていますし、警察の捜査もいい加減であることを知っています。
そうであっても警察や検察、裁判所はそれを認めない。
そういった法曹関係者ではないと知り得ないような細緻な状況まで書き綴る作者の力量に脱帽するばかりです。

解説にも書いてあるんですけど、フィクションでありながらもかなりのリアリティがある作品で、あるえん罪事件のドキュメンタリーなんじゃないかと疑ってしまいます。
それくらいうまく練られた構成と執筆力でした。

内容のどうこうを言う以前に、えん罪という一つの問題に対するアプローチとして、この作品を読んでおくことに意味があると思います。
と、書くと面白くないように見えますが、そんなことはなくて後半なんか一気読みしてしまうような面白さです。

ぜひどうぞ。

★★★★☆

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