『武士道セブンティーン』 誉田哲也

2011年02月28日 23時01分39秒 | 誉田哲也
群馬県は遠かった



「「強さは力」の香織と「お気楽不動心」の早苗。対照的な相手から多くを吸収したふたりだったが、早苗は、家の事情で福岡の剣道強豪校に転入。そこでの指導方法の違いに戸惑う。一方、香織は後輩の育成に精を出す。互いを思いつつも、すれ違うふたりは、目指す剣道に辿り着けるか。大人気剣道青春小説、二本目。」(「BOOK」データベースより)

青い!青臭い!

だがそれがいい。

以前こちらで紹介した武士道シックスティーンの続編です。
当時私が「漫画」と評したように、頭の中でまさに映像が動き出す、そんな書きっぷりが今回も登場します。
話はもちろん、香織と早苗をダブルヒロインに進んでいきます。
青春時代だから、まだわからないことも多い、けど、大人への過渡期、いろいろ悩む時期です。
本書もいっぱい悩みます。とくに早苗。
よくわからないけど悩む。
それが解決したとき、彼女たちは一つ成長しているんですね。

結局のところいい話です。1作目よりちょっと勢いがなかったかなぁなんて思いますが、次にも期待ですね。
「武士道エイティーン」はまだ文庫が出てないので、出次第こちらで紹介したいと思います!

★★★☆☆

『海の底』 有川浩

2011年02月26日 23時28分53秒 | 有川浩
また、有川浩です。



「4月。桜祭りで解放された米軍横須賀基地。停泊中の海上自衛隊潜水艦「きりしお」の隊員が見たとき、喧騒は悲鳴に変わっていた。巨大な赤い甲殻類の大群が基地を闊歩し、次々に人を「食べている」! 自衛官は救出した子供たちと潜水艦へ立てこもるが、彼らはなぜか「歪んでいた」。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は壮絶な戦いを強いられていく――ジャンルの垣根を飛び越えたスーパーエンターテインメント!!」(角川文庫より)

いやー、有川浩は面白い。
この作品は有川浩の「自衛隊三部作」と呼ばれる本の3作目。
ただ、3部作とはいえ話はすべて独立していて、登場人物も別なのでどれから読んでも大丈夫!
なにやら、コンセプトは「一つ大きな嘘をつきながら」、「それ以外の話はとことん真実を追求し」、「陸・海・空の自衛隊が関わる」話とのこと。

この作品は、「巨大なザリガニが横須賀基地から上陸し」、「警察の機動隊と自衛隊が奮起している」、「海軍」の話です。
そもそも体長が1~3メートルも成長したザリガニ(正しくはザリガニではないけど、便宜上ザリガニといいます)が大量発生して人を襲うなんてことは到底考えられないことです。
ただ、そんな嘘八百を隠すこともなく堂々と描き切るところは清々しく、それ以外がリアルに描かれているから案外嘘じゃないように思えてくる。
たとえば(決して悪く言っているわけではないが)I坂K太郎なんかの作品はあり得ないことが重なって書かれているから、「ありえない」がぬけないんですが、この作品はそうではない。
いや、この三部作すべて(まだ2作目を読んでないのは秘密)、清々しく読めてしまう。

ま、実際のところザリガニを排除する策はあまりに偶然が重なりすぎてる面があって、ちょっとあっけなさも感じましたが、それはそれでまだ駆け出しの時だった有川浩ならではということで。
それを差し引いても面白かったですね。

あと、忘れてはいけないのが、陰に陽に書かれている警察、官邸、公務員への批判。
圧倒的戦力をもっていながら政治的に出動できない自衛隊と、ザリガニに打ち勝てる能力がほとんどなく多くの重傷者を出した警察、米軍との関係や市街地ということもあって自衛隊の出動を決めれない官邸、すべて大きく言えば公務員。
みんな分かっているのになんにもできない大人の事情っていうのが、この話に奥深さを与えているのかな。

それと人間関係ね。好きなことを言えない、正しいことが分かっていてもできない、そんな現代への批判も垣間見れます。
あと、ちいさな色恋ごとも。欠かせませんね。

★★★★☆

『大空のサムライ』 坂井三郎

2011年02月22日 21時38分49秒 | 読書
カテゴリーがいっぱいになってしまいました笑



「世界で最も速く強かった撃墜王は、16歳で海軍の一兵士として誕生した。飛行機乗りの夢を全うした少年の闘いは、ここからはじまる。以後九六艦戦、零戦で200回以上の空戦を闘い、64機を撃墜して世界のエースとなっていく。本書は、日本の栄光を信じて二度と還らない青春時代を、闘いと大空に賭けて散っていった多くの戦友たちと坂井の迫真の記録である。」(上)
「ガダルカナル上空、絶体絶命の危機。敵弾にやられたのだ。頭をやられ、目をやられ、左手も左足もやられてしまった。しかし、死に急ぎをしてはいけない。最後の瞬間まで、生きる努力を怠ってはいけないのだ。「死の誘惑」を振り切り、坂井はついにラバウルへ還り着く。死と直面し死に打ち勝った坂井。日本には、こんな強者がいた。」(下)(いずれも講談社プラスアルファ文庫)

撃墜王、坂井三郎のノンフィクションの話。坂井三郎が戦場で経験したことをあますことなく描いてある作品です。
戦後40年に生まれた自分として、戦争というものがものすごい遠いもので、ずっと昔のことと思いながらも、現在進行形で行われている戦争がある。
そんななかで、かつて日本が経験した太平洋戦争の凄まじさを感じられました。

自分が戦争として想像しているものとは大きく違ったところもあり、すごい勉強になったし、知っておいて損はない話だなと。

ただ、戦争のことを広く知りたい場合には、この本は戦争のほんの一部しか焦点になっていないことをご承知置きいただいて。

★★★☆☆

『塩の街』 有川浩

2011年02月08日 23時04分55秒 | 有川浩
この人の作品を紹介していなかったことをお詫びします


「塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが―「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってくる。『空の中』『海の底』と並ぶ3部作の第1作にして、有川浩のデビュー作!番外編も完全収録。」(「BOOK」データベースより)


宇宙から降ってきた塩の塊からの伝染病??塩害という、人が塩になってしまうという正体不明の現象により人口が3分の1ぐらいまで減少してしまった日本で起こる、恋愛物語。
簡単に言えばこういうことでしょうか。

ただ、こんな陳腐な表現ではだれも興味はそそられないでしょう。
そもそも、人が塩になるわけないし、人が塩になるなら動物たちも塩になっていってもおかしくなくて、生物多様性がどうなっているのか想像もできません。

でも、そんなことはどーだっていいことです。
作者いわく「拙い」文章。たしかに、他の有名な作家の作品に比べたら拙い文章かもしれません。
ただ、作者がいう、「うまく書くんじゃなくて書きたいように書いた」からこそ伝わってくる感情。
本当の人が持つ、大切な人に抱く感情。
そういうのがストレートに入ってくる。とってもここちのいい文章。

技法にばかり気の取られた最近の雑多な小説とは異なる、清々しい小説です。

★★★★☆

『ダイイング・アイ』 東野圭吾

2011年02月03日 22時32分33秒 | 東野圭吾
東野圭吾の限界??


「記憶を一部喪失した雨村槇介は、自分が死亡事故を起こした過去を知らされる。なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める…。 」(「BOOK」データベースより)


オカルトチックな話の展開。
東野圭吾には期待していたからこそ、ちょっと残念。
話は読み進めやすいし、楽しく読めるんだけど、死者の怨念とか、そういった表現方法で書くとこうも軽くなるのかなぁという感じ。

東野圭吾の作品から感じていたのは、推理小説という枠の中で人間の本性であったりとか、隠れた悪とかエゴみたいなのに焦点を当てたような作品が多いということ。
今回の作品にも一部そういったことがあるんだけど、今までの作品のようなリアリティはあまり感じられず、こうしか書けなかったのかなぁと。

出版社の企画ものなのかな?

★★☆☆☆