『贖罪』 湊かなえ

2012年06月30日 09時19分14秒 | 読書
いい天気



「15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った―あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?特別収録:黒沢清監督インタビュー。 」(BOOKデータベースより)

贖罪。
まさに贖罪というお話。

小説というより、ほぼ独り言。
湊氏処女作の「告白」の冒頭に似た独白調で、上記の4人(紗英、真紀、由佳、晶子)と娘(エミリ)を失った母親(麻子)の5人がそれぞれ章を分けて語っていきます。

「バカの一つ覚えみたいに、顔は思い出せない、思い出せないの繰り返し。あんたたちがバカだから三年も経つのに犯人が捕まらないのよ。こんなバカたちと遊んでいたから、エミリは殺されてしまったのよ。あんたたちのせいよ。あんたたちは人殺しよ!」
「わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。そのどちらもできなかった場合、わたしはあんたたちに復讐するわ。わたしはあんたたちの親より何倍もお金も権力も持っているのよ。必ず、エミリよりもひどい目にあわせてやるわ。エミリの親であるわたしにだけは、その権利があるのだから。」

そう麻子に言われた四人は、その後交流がなくなり、それぞれの人生を歩むこととなります。
四人はそれぞれが心に罪を抱えながら生きていきます。
そして、時効を迎える今、それぞれの口調で幼少から現在に至るまでをそれぞれの形で語り始めます。


湊氏らしいというか、おもーい話です。
少女たちの心情とか、罪の意識だとか、なかなか興味深い描写だったと思います。
ただ、救いがないなーってw
まあ、最後に多少の救いあります。
明りはそこぐらいで、98%は暗い話ですw

★★★☆☆

next...「無理」奥田英朗
合併で生まれた地方都市・ゆめので、鬱屈を抱えながら暮らす5人の男女―人間不信の地方公務員、東京にあこがれる女子高生、暴走族あがりのセールスマン、新興宗教にすがる中年女性、もっと大きな仕事がしたい市議会議員―。縁もゆかりもなかった5人の人生が、ひょんなことから交錯し、思いもよらない事態を引き起こす。(BOOKデータベースより)

『果断 隠蔽捜査2』 今野敏

2012年06月27日 17時55分11秒 | 読書
最近涼しいですね。



「長男の不祥事により所轄へ左遷された竜崎伸也警視長は、着任早々、立てこもり事件に直面する。容疑者は拳銃を所持。事態の打開策をめぐり、現場に派遣されたSITとSATが対立する。異例ながら、彼は自ら指揮を執った。そして、この事案は解決したはずだったが―。警視庁第二方面大森署署長・竜崎の新たな闘いが始まる。山本周五郎賞・日本推理作家協会賞に輝く、本格警察小説。 」(BOOKデータベースより)


もしかしたら、この作者なかなかやるのかも。そう思えてきました。
内容もしっかりしているし、なおかつ面白い。読者をあきさせないプロットと読者を引きつける執筆力。

今回の内容は上の通りでほぼ間違いないから今回は書きませんが、面白いです。
そして、しっかり現代社会に問題提起してる。
ちゃっかりしてる小説です(笑)

全作に引き続きおすすめです。

★★★★☆

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15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った―あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?特別収録:黒沢清監督インタビュー。 (BOOKデータベースより)

『傍聞き』 長岡弘樹

2012年06月22日 22時27分41秒 | 読書
トイレ行きたい。



「患者の搬送を避ける救急隊員の事情が胸に迫る「迷走」。娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心揺さぶられる「傍聞き」。女性の自宅を鎮火中に、消防士のとった行為が意想外な「899」。元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」。まったく予想のつかない展開と、人間ドラマが見事に融合した4編。表題作で08年日本推理作家協会賞短編部門受賞。 」(BOOKデータベースより)


ただ純粋に、いい話だなって思った。
一つ一つは短編だからすぐ読めてしまうんだけど、だからこそすんなり理解できて。
ただ、俺としては長編が好きだったりするわけで。そこを考慮しての評価となりますが。


一話目は「迷走」
人間関係がちょっと複雑なんだけどこんな感じ。
主人公で消防隊員の蓮川潤也は隊長の娘と結婚することになったが、その娘は事故により車いす生活を余儀なくされる。
事故を起こした者は不起訴となったのだが、その時の検事をした葛井が何者かに刺され、蓮川たちに救急搬送されることになった。
しかし、どの病院も受け入れ不可となり、最後の望みとして蓮川たちが電話をかけた相手は、事故を起こした張本人で医師でもある増原であったのだが・・・。

これ以上書くともう結論なっちゃう。w
でもこれもいい話。

二話目は「傍聞き」
主人公の羽角啓子は強硬犯捜査係の女刑事。
小学生の娘を一人で育てながら、仕事をこなす主任。
ある日裏手にある羽角フサノの家が居空き(空き巣は留守宅に入るが、居空きは老人たちがいるのに盗みに入る)の被害にあう。
他方、啓子は通り魔事件を捜査しているのだが、以前啓子が逮捕した犯人が出所し、世に出ていることが判明。
かつ、先に起こった居空きの目撃証言によると、居空きの犯人は啓子が逮捕し、出所した受刑者に似ていることが分かった。
また、娘の菜月は啓子に対する不満を直接言わず、筆談したり、手紙に書いて送ったりするのだが、字がわかりにくく、うらのフサノの家に配達されることもままあった。
啓子は復讐の恐怖におびえながらも捜査を進めていくのだが・・・。

最初はどうなんかなーと思ったけど、最後はなるほどねって。
なかなかのやり手だなって思ったのはこの辺から。


三話目は「899」
これも主人公は消防署員。好きなのかな?わかりませんが。
諸上将吾はとなりに住む新村初美に惚れていた。
将吾は偶然を装って朝あったり、初美の働いている蕎麦屋に閉店間際に食べに行ったりしている。
初美は離婚したのか死別したのかわからないが、乳児をもつ独身女性である。
ある日、初美の隣の家で火災が発生し、初美の家に煙が立ち込めるようになったのだが、そこには初美の娘が一人寝ていた。
将吾は初美の娘を救助に向かうのだが、娘がいるはずのベビーベッドにはなぜかおらず、刻一刻と煙が立ち込めてくるのであった・・・。

考えさせられる作品。
一人で子育てをすることの苦しみとか、ストレス発散ができないとこうなるのかと。
それに対し、主人公たちがとった行動が何とも言えない。
いちばんお勧めかも?いや、どれもお勧めだけど。

最後は「迷い箱」
主人公の設楽結子は刑務所を出所したものの更生保護施設の施設長。
さまざまな問題を抱える元受刑者たちをささえつつ、社会への復帰を目指している。
自転車事故を起こし、女児を死なせた碓井は名前以外の漢字もかけないような定年間近の男だが、女児の命日である日にこの施設を出所した。
女児の母親からの手紙により、364日世のために働き、女児が死んだ日になったら同じ苦しみをして死んでくださいと言われていたことから、結子は碓井が自殺するのではないかと不安なのであるが、無事命日は自殺することなく過ごすことができたのだが・・・。

命と罪についてこれも考えさせられる。
難しい話題なんだけど、作者は過不足なく訴えかけてくる。


基本的に短編は嫌いなんだけど、久しぶりにいい作品に出合ったという感じ。
いや、ずっと前から気になってはいたんだけど、短編だからというだけで避けていたんだけどね。
読んでよかったです!


★★★★☆

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長男の不祥事により所轄へ左遷された竜崎伸也警視長は、着任早々、立てこもり事件に直面する。容疑者は拳銃を所持。事態の打開策をめぐり、現場に派遣されたSITとSATが対立する。異例ながら、彼は自ら指揮を執った。そして、この事案は解決したはずだったが―。警視庁第二方面大森署署長・竜崎の新たな闘いが始まる。山本周五郎賞・日本推理作家協会賞に輝く、本格警察小説。(BOOKデータベースより)

『不正侵入』 笹本稜平

2012年06月21日 18時28分19秒 | 読書
台風のおかげで一晩会社で過ごしました。



「警視庁組織犯罪対策部の刑事・秋川は、自殺とされた旧友の死に不審を覚える。彼の妻から「夫を殺した連中に狙われている」との電話が―。直後、彼女は謎の失踪を遂げた!独自の捜査を始めた秋川の前に立ちはだかる検察の影、背後で暗躍する暴力団組織…。さらに浮かび上がってきた、四年前の殺人事件の真相とは?一刑事が巨悪に迫る、警察小説の新たな傑作。 」(BOOKデータベースより)


どんな話といえばいいんでしょう。
まあ、不正侵入ってのはおそらくインターネットによるハッキングを指しています。
いわゆるネット犯罪。
ただ、メインの話となるとそこじゃないのかな。
自殺した有森の妻の失踪、それにまつわる様々な不可解な事件。
その辺を一体として話は進んでいきます。
そしてそれだけじゃなく、背後にある巨悪。

ページ数が600ぐらいで、割と長いほうの話になるんだけど、それ以上に読むのに時間がかかった印象。
ちゃんと読まないとわからなくなりそうで。さまざまな事件が絡んできて多くの人が出てきます。

すっきりしたぶぶんともやもやしたところと。
まあ、いろいろありますが。警察小説とネット犯罪。うまく書いてると思います。


★★★☆☆

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患者の搬送を避ける救急隊員の事情が胸に迫る「迷走」。娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心揺さぶられる「傍聞き」。女性の自宅を鎮火中に、消防士のとった行為が意想外な「899」。元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」。まったく予想のつかない展開と、人間ドラマが見事に融合した4編。表題作で08年日本推理作家協会賞短編部門受賞。(
BOOKデータベースより)

『三匹のおっさん』 有川浩

2012年06月06日 18時34分47秒 | 有川浩
暑くなりました



「還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。 」(BOOKデータベースより)


三匹のおっさんの話。
以上。


といったら怒られるな。
三匹のおっさんとは、主役級で剣道の師範の清田清一、柔道が得意な立花重雄、機械が得意な有村則夫の三人。
おっさんという言葉からすると、中年の男性に対する少し侮蔑の混じった言葉のように聞こえるけど、そうではなくて愛情のある「おっさん」らしいです。

そんなきけんなおっさんたちが、町内の悪に立ち向かって、解決していく短編集です。まあ、つながってはいるけども。

ちょっと今回は簡単な紹介になってしまいましたが、軽快な語り口にもかかわらず、現代の問題点にも切り込んだよい話になっております。

★★★★☆

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警視庁組織犯罪対策部の刑事・秋川は、自殺とされた旧友の死に不審を覚える。彼の妻から「夫を殺した連中に狙われている」との電話が―。直後、彼女は謎の失踪を遂げた!独自の捜査を始めた秋川の前に立ちはだかる検察の影、背後で暗躍する暴力団組織…。さらに浮かび上がってきた、四年前の殺人事件の真相とは?一刑事が巨悪に迫る、警察小説の新たな傑作。 (BOOKデータベースより)