『迷宮』 清水義範

2011年10月28日 19時12分24秒 | 読書
秋ですね。



「24歳のOLが、アパートで殺された。猟奇的犯行に世間は震えあがる。この殺人をめぐる犯罪記録、週刊誌報道、手記、供述調書…ひとりの記憶喪失の男が「治療」としてこれら様々な文書を読まされて行く。果たして彼は記憶を取り戻せるのだろうか。そして事件の真相は?言葉を使えば使うほど謎が深まり、闇が濃くなる―言葉は本当に真実を伝えられるのか?!名人級の技巧を駆使して大命題に挑む、スリリングな超異色ミステリー。」(BOOKデータベースより)


名人級の技巧を駆使して大命題に挑む!
確かに名人級みたいですよ。

いろんな書き方を変幻自在に使い分ける能力にはすごい長けてるのかな。



ただし、、、


技術も面白みがあってこそだよねー笑

最後には飽きてきます。
そして、後味の悪さだけが残ります。


記憶喪失の男が自分がだれか気付くのも読まされた文章から思い出すのではなく、それ以外の手を使って推理します。
書き方に凝りすぎているからか、面白みがないし疲れて来るよねー。

技巧派という点で★1個ふやしときます。

★★★☆☆

next...「風の中のマリア」百田尚樹
「「女だけの帝国」が誇る最強のハンター。その名はマリア。彼女の身体はそのすべてが戦いのために作られた。堅固な鎧をまとい、疾風のように飛ぶ。無尽蔵のスタミナを誇り、鋭い牙であらゆる虫を噛み砕く。恋もせず、母となる喜びにも背を向け、妹たちのためにひたすら狩りを続ける自然界最強のハタラキバチ。切ないまでに短く激しい命が尽きるとき、マリアはなにを見るのか。」(BOOKデータベースより)

『ピース』 樋口有介

2011年10月21日 20時25分42秒 | 読書
花金も何もせず帰宅です。



「埼玉県北西部の田舎町。元警察官のマスターと寡黙な青年が切り盛りするスナック「ラザロ」の周辺で、ひと月に二度もバラバラ殺人事件が発生した。被害者は歯科医とラザロの女性ピアニストだと判明するが、捜査は難航し、三人目の犠牲者が。県警ベテラン刑事は被害者の右手にある特徴を発見するが…。 」(BOOKデータベースより)


正直、うーん。。。です。


読者をなめとるのかな。俺の読み込みが悪いのか。うーん。。。

個性豊かな登場人物が多数登場するんですが、それぞれの印象が薄くて、なんともいえない。
梢路のことはよく書かれているから深まっては行くんだけど、それ以外の人物の登場する意味がよくわからないし。
アル中の咲なんかすごくいいキャラしていると思うんだけど、過去のことが少しわかるだけで最後まで物語にかかわることがない。山奥の集落に住む老人なんかももっと物語に噛んで来ていいと思う。
犯行の動機も薄いとしか言えないし。

とある本で、有川浩先生と児玉清がこういっているんですよ。

有川「作家にとって一番大事な作業は、膨大に調べて膨大に捨てる、ということだと思うんですよ。(中略)調べたことを全部かいたらいけないんです。調べたことを読者に必要な部分だけピックアップして使う、そうなると、私の場合は調べたことの9割は捨てています。」
児玉「(略)「俺はこれだけ調べて知っているぞ」みたいなうんちくを、えんえんと書いている。邪魔なんです。プロの作家さんたちというのは、それを調べて知っていたとしても、作品に不要だという判断で捨てるわけですよね。」


この作品は特にうんちくが多いなあって思います。
まあ読んでて知識は多くなるから(かといって信憑性の観点で言えば未確認)いいけど。
作品としてはいらんよねーってところが多い。



本屋での取り扱いが大きかった反面、失望も大きかったです。

★★☆☆☆

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『空飛ぶタイヤ』 池井戸潤

2011年10月17日 19時18分16秒 | 池井戸潤
タイムアウトで消えた―!だからかなり短めになります笑
本当のやつはもっと魂こもってました。



「走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。」
「事故原因の核心に関わる衝撃の事実を知り、組織ぐるみのリコール隠しの疑いを抱いた赤松。だが、決定的な証拠はない―。激しさを増すホープグループの妨害。赤松は真実を証明できるのか。社員、そして家族を守るために巨大企業相手に闘う男の姿を描いた、感動の傑作エンターテインメント小説。 」(BOOKデータベースより)


運送会社である赤松運送と財閥系(とはいってなかったか?)の自動車会社であるホープ自動車との争いの物語。


記憶に残っている方も多いと思いますが、あの三菱ふそうの起こした横浜母子三人死傷事件を題材とした物語です。
内容自体はもちろんフィクションですけど、読めば絶対にこの事故のことだろうと思うはずです。

話のプロットを予想するなら、赤松とホープ自動車ひいてはホープグループと争う中で赤松が追い詰められながらも悪役であるホープに勝つというおきまりのものでしょう。
というかそうです。

だから読者としては「簡単には感動しねーぞ!?」的な挑戦的な態度で挑むわけです。少なくとも私はそうです。


作家としてはそんな読者に勝たなくちゃいけませんよね。巧妙なトリックものじゃないですし。
読者を欺くか、読者の想像を超えるものを提供するか。
それは、あなたの目で確かめてください。

この物語の中で、幾度となく発せられる言葉があります。

「どこ見て仕事してんだ!」


今どこを見てるかってわけじゃないですよ。
誰のために仕事しているのか。

大企業のおごりがあるホープグループは自分たちの利益のことしか考えていないわけですよね。
だれでもそうかもしれません。自分がかわいいです。

赤松はそれにNo!を突き付けるわけですよね。

最後には感動です。また池井戸潤にやられました。

★★★★☆

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『図書館革命』 有川浩

2011年10月13日 21時11分43秒 | 有川浩
中日ドラゴンズ強いです!



「原発テロが発生した。それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。郁たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。動謡する郁。そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―「お前はやれる」。表現の自由、そして恋の結末は!?感動の本編最終巻。」(BOOKデータベースより)


郁がこんなに成長するなんて。。。
それだけでうれしいです笑


原発テロが発生したとか、それだけで小説一つ作れるよね。
でもあえてそこは無視というか、犯人全員死亡ということにしてさらっと流すあたりとか、物語の本流をしっかり作っててさすがですよね。
だって舞台は図書館ですもんね。

今回のお話は図書館での話っていうより、キーパーソンの当麻蔵人を守る!っていう話。舞台は図書館より図書館がいのほうが多いし、そっちのほうがメインです。
そしてそして、シリーズ最終作ですので、図書館VS良化特務機関にも一応の結末が。完全なるネタばれだから書きませんが。
もちろん郁と堂上の恋物語にも進展がありますよー!そっちのほうが楽しかったり笑


有川浩っていう作家は、小説を書くのにしっかりストーリーを練って書くタイプじゃなくて、ある程度の設定を決めたらあとは勝手にキャラクターが動き出すっていう作家なんですって。
最初は手塚光の兄である慧は出てくる予定じゃなかったらしいですよ。でも最終的には絶対になくてはならないキャラクターになっちゃってる。最初は悪い人設定だったのにいい人になっちゃってる。
もうなんていうか才能!?頭の構造が違うと思います。
これからも期待してます。有川さん!


別冊にも期待です。

★★★★☆

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『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子

2011年10月05日 00時39分38秒 | 読書
たまにコメントくれるとやる気出ます笑



「一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。 」


この小説の冒頭の「はしがき」のいちばん最後の一文を引用します。

「読者のみなさんが、この小説を途中で放り出すことなく、「あとがき」まで辿り着かれることを心から祈りながら。」


この小説は、ここがミソです。
この小説は、あとがきまでが物語です。


最後にひっくり返してくれます。
しかもあとがきで。

あとがきで「実は○○でした!」と言っているのか。
否。

読んでみりゃわかります。


ちなみに、この小説ははしがきからが物語です。
はしがきから「ええっ!?!?」ってなります。
のっけから読者はやられます。
真梨ワールドの始まりです。

ちなみに、とってもノワールな小説で、系統は明野照葉さんに似てるかな?不都合なことがあれば殺すという点では東野圭吾の「白夜行」、「幻夜」の方が近いかな?
ただ、「白夜行」、「幻夜」ほど込み入った話じゃなくて一気読みできちゃうくらいの面白さがあります。

すこし不満な点というか、気になったといえば、あまりに主人公が簡単に人を殺すというか、あまりに簡単にこと切れてしまうので、殺人っぽくないです。
人を殺したことがあるわけじゃないですけど、他の小説ではいろいろと抵抗している場面があるのに、この物語では首しめたらころりと逝っちゃうので。
ま、その点もこの小説を一気読みできるほどのスピード感に仕立てているんでしょう。
帰りの電車で90ページの新記録です。
普通の面白い小説で50ページ、よくて70ページのところ、大幅な記録更新です笑


真梨幸子、期待の作家です。

★★★★☆

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