『ルームメイト』 今邑 彩

2010年12月31日 14時38分33秒 | 読書


私は彼女の事を何も知らなかったのか……?大学へ通うために上京してきた春海は、京都から来た麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧、嗜好までも変えていた。茫然とする春海の前にすでに死体となったルームメイトが……。(中公文庫より引用)

なかなか読みやすくて、話も面白いいい作家さんと出会いました。
この作品は、上の説明からもわかるように、多重人格者を話の中心に持ってきた物語です。
伏線をいくつも張って、ことごとく回収していくこの手のミステリは読んでて飽きが来ないというか、次から次へと読めてしまいます。
真犯人が判明するところの記述はまさに驚き。
いろいろ疑いながら、犯人を想像しながら読み進めていきましたが、まさかねー。

現実とは別に、とっても楽しい作品でした。

★★★★☆

『田村はまだか』 朝倉かすみ

2010年12月27日 22時08分31秒 | 読書
今年のクリスマスは・・・。


深夜のバー。小学校のクラス会三次会。男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。それにつけても田村はまだか。来いよ、田村。そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。`09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。傑作短編「おまえ、井上鏡子だろう」を特別収録。(光文社文庫より引用)


このタイトル。

「田村はまだか」

印象的すぎます。
でも、思わず手に取ったのはそのタイトルからではありませんでした。

「どうせ小便するからって、おまえ、水、飲まないか? どうせうんこになるからって、おまえ、もの、くわないか? 喉、乾かないか? 腹、すかないか? 水やくいものは、小便やうんこになるだけか? どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」

この言葉を見たとき、もうこの本を手に取らないわけにはいきませんでした。

内容としては、田村を待つ三次会の間に、5人とマスターがそれぞれ過去を振り返りながら綴っていく物語。
決して華々しい話があるわけではなく、決して盛り上がりがあるわけでもないけど、こうこころにきざみつけてくるなにかを感じました。

田村は来るのか。

それはご自身の目で確かめてください。
解説にもありましたが、べつにそこは重要なところではないので明かしても問題はないと思います。
でも、せっかくだから読んで確かめてみましょうよ。

★★★☆☆

『ノルウェイの森(下)』 村上春樹

2010年12月24日 23時15分53秒 | 村上春樹
雪、降らないですね。降ったらふったで困るんですけど笑



あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと――。新しい僕の大学生活はこうして始まった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同じ学部の緑。等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。(講談社文庫より引用)

結局この物語の意味は何なのか。まだわからないでいます。2回目なんだけどね。またそのうち読もうか。

自分が感じたことを書いていくとこうなります。

昔のことはわからないけど、自分自身がなぜ生きているのか。なぜこうも苦労しながら生きているのか。
はたまた、今自分はどこにいるのか。どこに向かっているのか。

わからないでいる。

なぜ生きているのか。

わからない

ただ、愛する人がいて、愛すべき人を失って、楽な愛に溺れそうになりながらも、何か使命に駆られながら愛すべき人を愛す。
愛すべき人を失って、自暴自棄になったり、放浪の旅に出たり、それでも忘れられない。
そして、自分を愛してくれる人に好意を持ってしまっている自分自身に苦しんでいる。
でも、それを乗り越えて、自分を愛してくれる人・自分が愛している人と結ばれようとする。
そういうところにしか、自分を感じることができないという、人生の辛さを感じる。

愛と死。セックスと病。

多くの対比を用いながら、生きづらい世の中を描いている作品なんじゃないかなあと。


わかんないんだけどね。
ただ感じたこと。

答えは書いてないから、自分の答えは自分で探してね。
ちなみに、この本には解説もあとがきもありませんので・・・汗

『ノルウェイの森(上)』 村上春樹

2010年12月22日 23時16分53秒 | 村上春樹
以前書きましたけど、改めて話題になってるので読んでみました。



暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ二十歳になろうとする秋の出来事を思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失感と再生を描き新境地を拓いた長編小説。(講談社文庫より引用)


結局この話は、この一行に尽きるんじゃないかと思う。

「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」(P.54)

この上巻では、キズキの死、ワタナベの大学生活、直子の変化等が書かれている。
でも正確には、「ワタナベの大学生活の中でのキズキの死の影響」とか、「キズキの死が直子に与えた影響」とも言えるかもしれない。
結局、キズキの死はワタナベの生活に大きな影響を与えているし、直子の精神にも大きな影響と与えている。
まだ、その意味を少ししか解読できていないと思うが、死が生の一部として確かに存在している。

ネタばれできないのが悲しいというか、気になる人はぜひ読んでいただきたい。
我々のような、特に若い世代にとって、自分の死というのはまったくもって想像が付いていない。
なぜ生きているのか。自分は何なのか。わからなく生きている。
それに悩んで死んでいく人もいるし、気にせず生きている人もいる。

何を書きたいのか分からなくなってきました。笑

また、下巻で会いましょう笑


『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎

2010年12月19日 21時49分06秒 | 伊坂幸太郎
衆人環境の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ?俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物たち。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテイメント巨編。



伊坂ワールド炸裂!
物語は時系列を追わず、後から先から話が進んでいきます。
逃げる青柳、追う警察。逃がす仲間。助ける民衆。

みんなが青柳が犯人じゃないとわかっていながらの警察の追跡。
スリルと迫力と友情が垣間見れる作品です。

まあ、実際警察が街中で拳銃とかバズーカを使うわけ無いけど、まあそれをおいておいて楽しい作品でした。
伊坂ワールドではそういった概念は考えないと面白くないよね?

★★★☆☆

ちなみに、こんなに更新しなかったこのブログですが、更新したら普段の5倍ぐらいの人が見に来てくれました。
期待されてると思うと、感無量です。
これからもできるだけ更新頑張りますねー♪

『PRIDE 池袋ウエストゲートパークⅩ』 石田衣良

2010年12月18日 22時23分36秒 | 石田衣良
新しすぎて簡単な書評がありませんでした。



あ、久しぶりです。オオハシです。寒すぎて手がかじかんでるので、誤字脱字等ご容赦ください。

わが敬愛する石田衣良の代表作、「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの第10作目。今回も短編の4作品です。

1話目は携帯電話のデータを盗まれたITエリートの話。
個人情報はもちろん、スケジュールや、あんな写真まで・・・携帯にはたくさんの情報が入ってますよね。
ほら、あなたの携帯にも。みなさん、盗まれて困るようなものを携帯に入れていませんか?

2話目は弟に重傷を負わせた暴走自転車を探す姉の話。
最近のエコブームで自転車が路上で大にぎわいですよね?でも、チャンとルールを守っている人はそんなに多くない。
イヤホンをつけて音楽を聴きながら走る自転車にぶつかられて有望なサッカー選手の足の骨が折れてしまう話です。

3話目は三十路になっても夢を諦めない地下アイドルの話。
ちまたではAKB48とかKARA?とかアイドルが世間をにぎわせていますよね。
でもそれとは別にどこかのビルの地下のちっちゃなステージで頑張っているようなアイドルもいます。それが地下アイドル。
その人に群がるストーカー?の話です。

4話目は暴行被害から立ち直ろうとする美女の話。
暴行はただの暴力じゃなくて集団レイプのこと。車に連れ込んで何度も何度も暴行され、捨てられる。
そこから立ち直った美女がその集団を追い掛ける。


このシリーズに言えることはその時代時代の流行や問題を敏感にキャッチして、みんなが見て見ないふりをしているところに真正面から向き合っていく。
切り口が爽快で、決して力だけで相手を打ち負かすだけじゃなく、それでいて確かなダメージを与えて問題を解決していく。

そして今回の作品では主人公のマコトと重要な役割を担っているGボーイズのキング・タカシが今まであまり色恋ごとの描写が少なかったのに、少しずつそういった雰囲気が増えていきます。
この本は連作でシリーズものなんだけど、サザエさんとかみたいにいつまでたっても同じ年じゃなくて、ちゃんと年をとっていっている。
おそらく彼らの年齢は20代半ばから後半。そういった話がないほうがおかしい。
多くの長編小説では、主人公もしくはその周辺の登場人物が成長して結末を迎えるんです。
頼りないノビタ君も立派に成長して敵を打ち負かすように。
この作品では一話一話ではあまり成長というのは感じられませんが、全体として成長が目に見えるんですよ。
これは最初から通して読んでる人じゃないとわからない楽しみじゃないかなと。
ここだけ切り取って読んでみても面白いんですよ。でもそれ以上に最初から読むと面白いんです。

もう来年まで待てない!早く次の作品を作ってくれ!

★★★★☆