『風が強く吹いている』三浦しをん

2010年09月27日 18時38分04秒 | 三浦しをん
「箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」――純度100%の疾走青春小説。」


スポ根青春小説です。竹青荘の住人10人でいどむ箱根駅伝。ほとんどが素人のメンバーで、強豪に挑んでいくストーリーです。

三浦しをんらしい軽快な書きっぷりと、先はある程度読めちゃう感があるけど、それを乗り越え、有り余るほどの構成力。

スポ根小説っていったら、弱小が強豪に打ち勝つってのが規定路線で、でもそれでも先が気になって仕方ないです。


爽やかになりたいときに。

★★★★☆

『定年ゴジラ』重松清

2010年09月19日 21時28分44秒 | 重松清
久しぶりにかく気になりました。

『開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を探す四人組の日々の哀歓を暖かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版』(講談社文庫より引用)


本の感想としてよく使われるのが「次が気になって仕方ない」、「ページをめくる手が止まらない」といった表現がまま見られますね。このブログの読者の皆さんはよくご存じでしょう。自分も使います。


この本の感想としては、


「次を読みたくない」


があったんです。


次に進みたくない。




何でかって言うと…


「今読んでるこの文章が心地よすぎて、終わらせたくない」

から。

「この文章にずっと浸っていたい。」

から。


それだけの文章力、構成力、観察力。さすがといったところ。


定年になったサラリーマンが、老後にすることがなくて退屈で、活力がなくなった定年ゴジラたちが、どう生き甲斐を見つけていくかと言うストーリーです。けしてアドベンチャーみたいなスリリングでエキサイティングな展開がある訳じゃなく、ミステリーみたいにあっと驚くトリックがある訳じゃなく(ただ、最近のミステリーはただただトリックだけで話を進めるんじゃなくて、物語性だったり、人間らしさが求められていたりするんだけど)、ラブストーリーみたいに最高の愛がある訳じゃなく、ただただ定年のおっさんたちの物語。だけども、そこにこれだけの魅力を書き込み、読ませる技術はさすがです。


おすすめですね。

☆☆☆☆★