『心はあなたのもとに』 村上龍

2013年10月15日 21時22分41秒 | 読書
ずいぶんお久しぶりになってしまいました。しばらくインターネットがつながっていなかったもので。

「投資組合を経営する西崎は、風俗嬢「サクラ」と客として出会う。香奈子という本名の彼女は、難病・1型糖尿病を患っていた。二人の逢瀬は二年半続き、突然断ち切られた―。西崎の手元には、香奈子からの六百四十三通のメールだけが残された。この時代に生きる男女の「愛」の形を問う。著者渾身の長編小説。 」(BOOKデータベースより)

とりあえず、読むのに2週間かかりました。
本編が約600ページと大容量であるのもありますが、文字数が多いのと考えながら読んでいたのとありますが。

物語は投資組合を経営する西崎の一人称で進んでいき、そこに風俗嬢の「サクラ」こと、香奈子のメールを絡めてくる。
上の紹介では643通と書いてありますが、実際それくらいのメールが本文に書かれています。
さて、香奈子は1型糖尿病患者です。
wikipediaによると「1型糖尿病(いちがたとうにょうびょう、ICD-10:E10)は、膵臓にあるβ細胞が死滅する病気である。以前は「インスリン依存型糖尿病」や「小児糖尿病」とも呼ばれていた。1型糖尿病は糖尿病の一種である。しかし、生活習慣の影響による糖尿病は2型糖尿病といい、それに対し1型は自己免疫性疾患であるため、両者は全く異なる病気である。」(抜粋)だそうです。
その理解を深めるためにもこの本は読んだ価値があります。

西崎はいうなればお金持ちで、何人もの女を侍らす男で、その何人ものうちの一人である香奈子を特別な人と認識するようになった。
香奈子は普段は糖尿病ということを隠して生活(生活習慣病と勘違いされていやな思いをすることも)していたが、西崎にはそのことを打ち明ける。
そして、西崎は香奈子に食事療法などを学ばせるため、香奈子に管理栄養士になるよう勧めることになる。
香奈子が糖尿病と闘いながら栄養士になるための学校に通い、そこに現れる苦労や葛藤、苦しみや楽しみを描く作品です。

正直明るい作品ではありませんし、風俗嬢が出てくるからと言って別段下ネタが多い作品でもありません。
ただ、重点に置いているのが糖尿病です。
正直糖尿病と聞いて普通は2型の生活習慣病のことを思い浮かべるかと思いますが、こういった生活習慣とは関係なく。
こういった偏見を失くしたいみたいな。

一度読んでみる価値があるかもしれないですね。

★★★☆☆

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