『永遠の0』 百田尚樹

2011年01月31日 22時40分56秒 | 百田尚樹
最近雪が多いですね。鳥インフルエンザも大変です。


「「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる―。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。」(「BOOK」データベースより)


第2次世界大戦中に、当時日本が世界に誇った戦闘機「零戦」に乗っていた祖父、「宮部」がなぜ特攻により命を落とすことになったのか。祖父は祖母を愛していたのか。なぜ祖母と娘(母)をおいて死んでいったのか。それを孫である主人公が戦時中の同士の話を聞くことで解明していく話。
祖父は戦時中にありながら、臆病なほどに「死」を恐れ、「生」に執着していた。戦闘機に乗っているときは常にまわりを警戒し、自らの戦闘機を犠牲にして味方を助けることはしない。どんな過酷な作戦でも、機関銃を何発撃ち込まれようとも命をつないで帰ってきた。そこまでしてまで生きてきたのに、なぜ終戦間際になって、成功する可能性が極めて低く、無謀な作戦だった神風に参加したのか。

この作品を読んで、歴史の教科書には出てこない特攻隊員の無念、司令部の腐敗、国民の悲しみを知った。
そしてそこに絡めて明らかになる、祖父の愛、人の愛の温かさ。

驚くべきはこの作品が百田尚樹氏のデビュー作。
会話文や感情の持っていきかたに、ちょっと「ん??」となるときもありましたが、それを超えるほどの感動、構成。

また恐ろしい作家が生まれてしまいました。

★★★★☆

『SROⅠ 警視庁広域捜査専任特別調査室』 富樫倫太郎

2011年01月23日 21時08分21秒 | 読書
イチゴが好きです。


「警視庁に新設された広域捜査専任特別調査室、通称「SRO」。総勢7名の小所帯にもかかわらず5人がキャリアという、管轄の枠を越えた花形部署のはずが、その内実は訳ありだった。山梨で発見された白骨死体をきっかけに、史上最凶の連続殺人犯「ドクター」を追う調査員たち。警察組織の限界に迫る、新時代警察小説の登場。」(中公文庫より)

7人の部署に、警視長が一人、警視正が二人、警視が一人、警部が一人、それと事務担当の課長と若手。
警察小説ファンならこのいびつな組織に不自然さを覚えないわけがありませんよね。
警視庁の役職は上から、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、(巡査長、)巡査。

どれくらいの役職に就くかというと、(【 】は会社でのたとえ、≪ ≫は県庁のたとえ)
警視総監:警視総監【社長】≪知事≫
警視監:副総監、本部部長【事業部長、取締役、専務、常務・・・】≪部長、顧問、次長≫
警視長:参事官級【部長】≪技監等≫
警視正:本部課長、署長【本社課長、支社長】≪課長、事務所長≫
警視:本部課長、署長、本部理事官、副署長、本部管理官、署課長【本社課長、支社長、支社課長】≪主幹、事務所課長≫
警部:署課長、本部係長、本部課長代理【支社課長、本社係長】≪課長補佐≫
警部補:本部主任、署係長【本社リーダー、支社係長】≪主査≫
巡査部長以下:ひら≪主任以下≫

余計分からなくなる??(笑)

簡単に言うと、一つの部署に部長がいて、課長が三人いて、係長がいて、平社員がいないという感じ。
こんな部署に行きたくない(笑)息ぐるしくてたまらない。。。

この組織、「SRO」がシリアルキラー(連続殺人犯)を追う話です。
前半はなんかあんまりスピード感がなくて、また個性が強すぎる登場人物にちょっと違和感を感じなくもないですが、
後半に行くにつれて、どんどん犯人を追い詰めていく、その緊張感からどんどんスピード感が出てきて、最後は一気に読み進めてしまいます。

最後は少し犯人にたどり着くのが急な感じもしたし、犯人を確保するのも少しあっけない感じでしたが、それを考慮しても楽しく読めました。
警察小説は卑怯ですね。楽しいです。

★★★☆☆

『25時のイヴたち』 明野照葉

2011年01月18日 22時40分26秒 | 読書
雪が降ると大変ね。雪国頑張れ!



「ネットの闇が繋ぐ“友情”に仕組まれた黒い罠!? 何不自由なく暮らす39歳の主婦。充実した日々をおくる36歳のキャリアウーマン。幸福そうに見える二人は、実はある感覚を失っていた。自身の「欠陥」を家族にも同僚にも隠し通し生活する彼女たちは、インターネット上の女性限定“隠しサイト“に救いを求めるが――現代社会のどこにでもいそうな女性たちの狂気と悪意をリアルに描く、傑作サスペンス!」(実業之日本社文庫)


まさに『闇』
人間の持つ悪意が、あるきっかけに拠って表に出、その深みにはまっていく。
誰しもが持っているような、些細な嫉妬や悪意を集約したような話です。

こういった作品を「ノワール」というらしいですけど、同じ「ノワール」でも、東野圭吾の「白夜行」や「幻夜」といった「ノワール」ともちがう。
「ノワール」なんて作品は世にあふれているんだろうけど、あんまり読んだことないから評価はできないんだけど、人の持つ悪意をここまで刻々と書きあげる能力は私は知りません。

これを読むと、世の中を疑ってかかりそうです。。。

★★★☆☆

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』 岩崎夏海

2011年01月14日 19時54分06秒 | 読書
ミーハーな本もたまには。



公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本。(「BOOK」データベースより)

高校野球のマネージャーになったみなみがドラッカーの「マネジメント」にであい、野球部、学校、ひいては高校野球界もマネジメントしていくストーリー。
冒頭から無名の都立高校の野球部を甲子園に連れていくという無理難題な目標を打ち立てます。
その目標を果たすため、ドラッカーのマネジメントが随所に引用され、それを野球に当てはめて考えるという感じに物語は進んでいきます。

ドラッカーの理論をわかりやすく解説するという意味において、とてもいい作品だと思いました。
内容も面白いですし、絵も萌えキャラです(笑)
ただ、経営学士である私は、在学中に全くドラッカーの勉強したことはないので、本当のところはわかりません。
これを機にドラッカーの「マネジメント」を読んでみるのもいいかもしれませんね。


★★★☆☆

『伝える力』 池上彰

2011年01月13日 18時05分27秒 | 読書
健康が第一と思い知らされました



「仕事の様々な場面でコミュニケーション能力は求められる。基本であるにもかかわらず、意外と難しい。相づちを打ったり、返事をしたり、目をジッと見たり、あるいは反対に目をそらしたり……。『伝える』には、『話す』『書く』、そして『聞く』能力が必須。それらによって、業績が左右されることも往々にしてある。現代のビジネスパーソンに不可欠な能力といえる「伝える力」をどうやって磨き、高めていったらよいのか。その極意を紹介する。」(PHPビジネス新書)

話題の人、池上彰の著書です。
池上彰は確かに聞いててわかりやすい。魅力的な話し方をする人だという印象です。

そういった話し方、説明ができるという面において、彼のことを評価しています。
そのスキルを少しでも得ることができないかということでこの本を手にしました。

内容もやはり判りやすい。難しい話は出てこないですし。
中身には触れませんが、伝える力に自信のない方は一読してみるのもいいかもしれません。
いや、むしろ伝えることがうまいと思っている人こそ読んだほうがいいかもしれませんね。

★★★☆☆

『警視庁情報官 シークレット・オフィサー』 濱嘉之

2011年01月10日 21時41分48秒 | 読書
近頃ほんとに寒いです



警視庁情報室。それは警視庁が秘密裏に組織した情報部門のプロ集団である。情報室へ舞い込んだ一通の怪文書。エース情報官・黒田は、抜群の情報収集力と分析力で、政・官・財界そして世界的な宗教団体までもが絡む一大犯罪の疑惑を嗅ぎつけるが…。公安出身の著者による迫真の「インテリジェンス」小説。(講談社文庫)

「情報ってのは結局、『人』と『センス』なんだよ」
「警察組織の心臓部で極秘情報捜査に携わってきた著者。はびこる『悪の顔』、それを追う『警察の顔』を、かつてこれほど生々しい輪郭をもって描いた小説はあっただろうか。」

帯から引用しました。

まさにその通り。
この話はフィクションで会って、どこまで確かな情報かは知る由もないけど、警察という組織に興味を持っている人であればこの作品は面白いはず!
情報捜査の末、逮捕に導くまでの詳細な描写はかなりリアルな感じが出ていたし、逮捕の場面はあっけなかったけど、そんな手法もありなんだなって納得。
警視庁、恐るべし!っていう内容の本です。

★★★☆☆



『白銀ジャック』 東野圭吾

2011年01月05日 21時40分45秒 | 東野圭吾
ゲレンデの下に爆弾が埋まっている――「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス!



しょっぱなから東野圭吾の初期を彷彿とさせるような物語が進んでいきます。
早い段階から、犯人らしき人が分かってくるんだけど、やっぱりそこは東野圭吾でした。
しっかりと読者をだましてくれます。

みえみえのフーダニットから現代のスキー場が抱えるような問題にまで。
東野圭吾からはまだ目が離せそうにないですね。

★★★☆☆