『プラチナデータ』 東野圭吾

2012年08月08日 18時13分11秒 | 東野圭吾
暑さも小休止。



「国民の遺伝子情報から犯人を特定するDNA捜査システム。その開発者が殺害された。神楽龍平はシステムを使って犯人を突き止めようとするが、コンピュータが示したのは何と彼の名前だった。革命的システムの裏に隠された陰謀とは?鍵を握るのは謎のプログラムと、もう一人の“彼”。果たして神楽は警察の包囲網をかわし、真相に辿り着けるのか。」(BOOKデータベースより)

東野圭吾のSF的要素の含まれたミステリってとこでしょうか。
話の核をなすのはDNA捜査システム。
このシステムは国民の協力によりあつまったDNAデータをもとに、犯罪者の身体的特徴をかなり正確に割り出し、モンタージュ画像をかなり正確に作り出す。
さらに、血縁者が登録されていれば、その人の親族に犯人がいることになり、捜査がかなり簡便になることになる。
しかし、まれに血縁者が合致しない場合がある。今回はNF13と呼ばれる殺人犯を捜査することになるが、DNAで早期に犯人が分かることから初動捜査はあまり行われておらず、なかなか犯人の足取りをつかむことができなかった。
このシステムを構築したのは警察庁の特殊解析研究所。そして天才的数学者の蓼科早樹。
特殊解析研究所の研究員である神楽龍平が今回の主人公になるのだが、実は神楽は二重人格者で、週に1度別人格のリュウが姿を現す。
その神楽がリュウの人格であったとき、なんと蓼科が殺されてしまった。しかもそのとき、神楽の記憶は残っていない。
また、その時使われた銃はNF13の銃と同一であった。
蓼科の衣服には犯人の遺留品と思われる頭髪が残されていたのだが、そのDNAを解析した結果、その頭髪は神楽のものであった。
神楽に迫る捜査陣、逃げながらリュウの記憶を解明する神楽、そしてDNA操作システムに隠された謎。
それらが絡まりあって進むミステリです。

まえまえから東野圭吾さんに対して批判的な僕です。たしかに過去の作品は賞賛すべきものがかなりありますが、最近の本はちょっとねーっていつも言ってます。
今回のもまあいつも通り。。。w
期待せずに読んだのでその分はよかったかな。技法自体はものすごいものをもっているんだけど、前提条件に凝りすぎたところが僕はあんまり好きじゃないです。

★★☆☆☆

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税金滞納者を取り立てる皆の嫌われ者、徴収官。なかでも特に悪質な事案を扱うのが特別国税徴収官(略してトッカン)である。東京国税局京橋地区税務署に所属する新米徴収官ぐー子は、鬼上司・鏡特官の下、今日も滞納者の取り立てに奔走中。カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に立ち向かいつつ、人間の生活と欲望に直結した税金について学んでいく。仕事人たちに明日への希望の火を灯す税務署エンタメシリーズ第1弾。(BOOKデータベースより)

『美しき凶器』 東野圭吾

2011年07月13日 20時35分26秒 | 東野圭吾
最近よく晴れて気持ちいいです。


「安生拓馬、丹羽潤也、日浦有介、佐倉翔子。かつて世界的に活躍したスポーツ選手だった彼らには、葬り去らなければならない過去があった。四人は唯一彼らの過去を知る仙堂之則を殺害し、いっさいのデータを消去。すべてはうまく運んだかに思われたが…。毒グモのように忍び寄る影が次々と彼らを襲った!迫りくる恐怖、衝撃の真相!俊英が贈る傑作サスペンス。」(BOOKデータベースより)

まんまと騙されました。


よく本屋にこんな文句の書かれた広告を目にします。
そんなにだまされるわけねーだろがと思いながら手に取ったこと数知れず。
そのたびにだまされたり、反則技だと罵ったりしています。

この本、まんまと騙されました。
だまし方としては東野圭吾っぽい。だまされるだろうと思って読んでると面白くない。
この本に騙されてください。
きっと面白い。

そしてなんといっても東野圭吾の終わり方がきれい。
どんな人間味のない殺人鬼も所詮人の子と思わせるような。

また東野圭吾に騙された人が増えました。
あなたもだまされましょう。

★★★☆☆

『ダイイング・アイ』 東野圭吾

2011年02月03日 22時32分33秒 | 東野圭吾
東野圭吾の限界??


「記憶を一部喪失した雨村槇介は、自分が死亡事故を起こした過去を知らされる。なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める…。 」(「BOOK」データベースより)


オカルトチックな話の展開。
東野圭吾には期待していたからこそ、ちょっと残念。
話は読み進めやすいし、楽しく読めるんだけど、死者の怨念とか、そういった表現方法で書くとこうも軽くなるのかなぁという感じ。

東野圭吾の作品から感じていたのは、推理小説という枠の中で人間の本性であったりとか、隠れた悪とかエゴみたいなのに焦点を当てたような作品が多いということ。
今回の作品にも一部そういったことがあるんだけど、今までの作品のようなリアリティはあまり感じられず、こうしか書けなかったのかなぁと。

出版社の企画ものなのかな?

★★☆☆☆

『白銀ジャック』 東野圭吾

2011年01月05日 21時40分45秒 | 東野圭吾
ゲレンデの下に爆弾が埋まっている――「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス!



しょっぱなから東野圭吾の初期を彷彿とさせるような物語が進んでいきます。
早い段階から、犯人らしき人が分かってくるんだけど、やっぱりそこは東野圭吾でした。
しっかりと読者をだましてくれます。

みえみえのフーダニットから現代のスキー場が抱えるような問題にまで。
東野圭吾からはまだ目が離せそうにないですね。

★★★☆☆

『使命と魂のリミット』 東野圭吾

2010年05月10日 23時41分30秒 | 東野圭吾
やっぱり東野圭吾は偉大



「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」突然の脅迫状に揺れる帝都大学病院。「隠された医療ミスなどない」と断言する心臓血管外科の権威・西園教授。しかし、研修医・氷室夕紀は、その言葉を鵜呑みにできなかった。西園が執刀した手術で帰らぬ人となった彼女の父は、意図的に死に至らしめられたのではという疑問を抱いていたからだ……。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起こるのか? 大病院を前代未聞の危機が襲う。(角川文庫より引用)


この作品は、半分も読めば犯人や手口、動機など、主要な推理小説の根幹となる部分が分かります。
東野圭吾にとって、そこはサブストーリーであって、「一番言いたいこと」、それをより際立たせるためのお膳立てにすぎません。

医者というものの存在、医療ミス、親と子の関係、師弟関係、それらをひっくるめて、最後の一言に集約されるんじゃないかと思います。


「最後の一行」

それは、小説においてその出来を左右する締めくくり。
読者への訴えかけ。

その一行によって、その作品が、その本の中でとどまるのか、それとも、読者の心の中、そして世間に訴えかけるような外向的なものになるのか決まる。

自分は、この作品の最後の一行に、思わず微笑んでしまいました。

★★★★☆