『真夜中のマーチ』 奥田英朗

2011年09月28日 22時26分46秒 | 読書
彼岸花のきれいな季節です



「自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指す!が…!?直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。」(BOOKデータベースより)


奥田英朗(おくだひでお)

なんとまあ多才な作家だこと。
『最悪』では次から次へとわいてくる災難に対処する話だったり
『インザプール』はご存じのとおりのトンデモ小説だったり
『サウスバウンド』はなんじゃこりゃ!って話じゃん。

ここにきて「真夜中のマーチ」ですよ。
クライムノベル。完全犯罪を目指します。
テンポが良すぎで一日で読んじゃいましたよ。

最初は簡単に何百万円か盗めると思ってた矢先にクロチェに邪魔されるし、
なぜかクロチェと十億円強奪を目指したり。

メインキャラクターのヨコケンこと横山健司はイベントを開催したり、抱えているアイドルの卵をAVに出演させたりしてせこくお金を稼ぎ、
ミタゾウこと三田総一郎は記憶力と集中力が百万人に一人といわれるがおっちょこちょいで周りが見えないダメリーマンで、
クロチェこと黒川千恵は美人だが親が嫌いで親から金をふんだくろうとしている。

この三人に絡んでくるサブキャラクターがまたユニークで話の盛り上げに貢献している。

最初は簡単に成功しそうだったものがどんどんあらぬ方向へ進んでいき・・・
これ以降は読んでくださいねー。

人に読ませるのが上手。
文章自体は難しい言葉も使わないし、かといって不十分さは感じさせない。
十分に楽しませていただきました。

★★★★☆


next...『殺人鬼フジコの衝動』真梨幸子

『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる

2011年09月27日 17時06分48秒 | 読書
秋です。


「高校生の一人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲で次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのか―。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。」(BOOKデータベースより)

第5回ホラーサスペンス大賞受賞作
おすすめ文庫王国2008第1位


この作品は本当に賛否両論というか。
★1つから★5つまでまんべんなく評価がわかれている。


読んでいて引き込まれるかというと・・・・・そうでもなく。でも次が気になる。
大どんでん返しがないわけではないけど・・・・・おどろきもなく、あぁそうかと納得してしまう。

ただ、なにか人間の奥底にある本当の人間らしい感情というか、そういうのがよく書かれているっていう印象があって悪い評価にはならないよね。
すっきりしない感は、ノルウェイの森には劣るけどすっきりしなかったり。

エロくてグロくてコワい
ただ、エロシーンでも他の恋愛小説と比べてエロいわけじゃない。ごくありきたりの描写。
グロいといっても猟奇殺人ものとくらべたら軽くて。
コワいとは思わなかったかなぁ。

その点、キャッチコピー負けしてるかな。

ただ、否定できない点からすると。。。

★★★☆☆


next...「真夜中のマーチ」奥田英朗

蔵書

2011年09月16日 22時24分08秒 | 読書
何というわけでもないですが、大橋家文庫の蔵書一覧です。
未紹介のものも多く含まれていますので、反響があれば紹介します。


重松清
・ビタミンF
・カシオペアの丘で(上)(下)

海堂尊
・チームバチスタの栄光(上)(下)

湊かなえ
・告白

誉田哲也
・アクセス
・疾風ガール
・ガールミーツガール
・ストロベリーナイト
・ソウルケイジ
・武士道シックスティーン
・武士道セブンティーン
・妖の華
・ジウⅠ~Ⅲ
・国境事変

宮部みゆき
・模倣犯(一)~(五)
・R.P.G.
・楽園(上)(下)

伊坂幸太郎
・重力ピエロ
・ゴールデンスランバー
・オーデュボンの祈り
・ラッシュライフ
・終末のフール

明野照葉
・25時のイヴたち
・汝の名

加納朋子
・いちばん初めにあった海

小川洋子
・博士の愛した数式

森絵都
・風に舞い上がるビニールシート
・カラフル
・DIVE!!(上)(下)
・つきのふね

山崎マキコ
・ためらいもイエス

三浦しをん
・まほろ駅前多田便利軒
・風が強く吹いている

法月綸太郎
・一の悲劇

灰谷健次郎
・太陽の子

米澤穂信
・ボトルネック

雫井脩介
・虚貌(上)(下)
・火の粉

福井晴敏
・川の深さは
・終戦のローレライⅠ~Ⅲ

江國香織
・がらくた

森見登美彦
・夜は短し歩けよ乙女

筒井康隆
・時をかける少女

サイモン・シン
・フェルマーの最終定理
・宇宙創成(上)(下)

津原泰水
・ブラバン

三崎亜記
・となり町戦争

久間十義
・放火

佐々木譲
・笑う警官

道尾秀介
・向日葵の咲かない夏

恩田陸
・六番目の小夜子
・夜のピクニック

村上春樹
・ノルウェイの森(上)(下)

矢野健太郎
・すばらしい数学者たち

竹内薫・茂木健一郎
・脳のからくり

竹内薫
・99.9%は仮説

D・M・ディヴァイン
・災厄の紳士

T・R・スミス
・チャイルド44

アガサ・クリスティー
・オリエント急行の殺人

桐野夏生
・東京島

山本昌
・133キロ怪速球

石田衣良
・LAST
・エンジェル
・娼年
・うつくしい子ども
・波の上の魔術師
・池袋ウエストゲートパークⅠ~Ⅹ
・池袋ウエストゲートパーク外伝 赤・黒
・IWGPコンプリートガイド
・4TEEN
・6TEEN
・ブルータワー
・アキハバラ@DEEP
・40翼ふたたび
・眠れぬ真珠
・東京DOLL
・1ポンドの悲しみ
・てのひらの迷路
・愛がない部屋
・スローグッドバイ
・ぼくとひかりと庭園で
・約束

池井戸潤
・下町ロケット

宮本延春
・オール1の落ちこぼれ、教師になる

オムニバス
・Love Letter
・I LOVE YOU

奥田英朗
・イン・ザ・プール
・空中ブランコ

垣根涼介
・サウダージ

落合信彦
・名もなき勇者たちへ

朱川湊人
・花まんま

片山恭一
・世界の中心で、愛をさけぶ

村上龍
・半島を出よ(上)(下)

岩崎夏海
・もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

ステファノ・フォン・ロー
・小さいつが消えた日

東野圭吾
・放課後
・卒業
・宿命
・変身
・仮面山荘殺人事件
・ある閉ざされた雪の山荘で
・同級生
・名探偵の呪縛
・むかし僕が死んだ家
・パラレルワールド・ラブストーリー
・天空の蜂
・どちらかが彼女を殺した
・名探偵の掟
・悪意
・私が彼を殺した
・時生
・赤い指
・鳥人計画
・さまよう刃
・ブルータスの心臓
・ゲームの名は誘拐
・使命と魂のリミット
・流星の絆
・容疑者Xの献身
・探偵ガリレオ
・予知夢
・片思い
・レイクサイド
・分身
・白夜行
・幻夜
・白銀ジャック
・ダイイング・アイ
・美しき凶器

野沢尚
・リミット

今邑彩
・i 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・青島柊志

湯本香樹実
・夏の庭 The Friends

堂場瞬一
・8年

結城充考
・プラ・バロック

百田尚樹
・永遠の0

朝倉かすみ
・田村はまだか

濱嘉之
・警視庁情報官 シークレット・オフィサー
・警視庁情報官 ハニートラップ

貴志祐介
・黒い家

梨木香歩
・西の魔女が死んだ

坂井三郎
・大空のサムライ(上)(下)

富樫倫太郎
・SROⅠ~Ⅲ

有川浩
・図書館戦争Ⅰ~Ⅲ




あと友達に貸してあるやつ、売っちゃったやつ、どっかいったやつがあります笑



『リミット』 野沢尚

2011年09月15日 21時25分18秒 | 読書
好きです。ハンマーカンマー♪



「連続幼児誘拐事件の謎を追う警視庁捜査一課・特殊犯捜査係勤務の有働公子。婦人警官でなく、一人の母親として事件の当事者となってしまった彼女は、わが子を取り戻すため、犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに…。驚愕の展開、そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。ミステリーの到達点。」(BOOKデータベースより)


野沢尚先生の本は前々から面白いと思ってて、でもここに本の紹介を書く前に読んだものだったから紹介していませんでした。
なぜ、世間に野沢尚の名がこれほど知れ渡っていないのか私には不思議で仕方ありません。
私が読んだのは、「魔笛」、「深紅」に次いで3作目です。すべて外れなしです。


さて、この小説は上の紹介文を読んでも「??」だと思いますので補足。

小学校低学年程度の児童が相次いで失踪する事件の描写からこの話は始まります。
そして、かなり初期の段階で犯人の誘拐目的が判明します。
誘拐した子供をタイに運んで、臓器移植のドナーとして売却すること。

主人公の公子は、事故死した夫との間に生まれた子供である貴之との二人暮らし。
公子は新たに勃発した児童誘拐事件で1億円の身代金を要求された楢崎夫妻の母親役として犯人との電話交渉にあたります。

誘拐発生から数日たった後、公子の携帯電話に貴之を誘拐したとの電話が入ります。
息子を返してほしかったら警察を振り切って1億円を届けろ。

この1億円を犯人に届けるべく、公子は警察を敵に回し、自力で貴之を助けようと話は進んでいくのです。


これ以上はかなりのネタばれになってしまうので気になる人は読んでください。

さて、このストーリーメイクの素晴らしさといったら、さすが脚本家上がりといったところでしょうか。
でも映像なしでもかなり情景が浮かぶ文章力はさすが。
先が読めない展開。最後に期待通りのどんでん返し。
犯人たちの本当の目的は何だったのか。
圧倒的な戦力の差をどうやって乗り切っていくのか。
どうやって息子を救い出すのか。

野沢尚、今後にも期待です。

★★★★☆

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『図書館危機』 有川浩

2011年09月07日 20時57分42秒 | 有川浩
涼しくなってきました。



「思いもよらぬ形で憧れの“王子様”の正体を知ってしまった郁は完全にぎこちない態度。そんな中、ある人気俳優のインタビューが、図書隊そして世間を巻き込む大問題に発展。加えて、地方の美術展で最優秀作品となった“自由”をテーマにした絵画が検閲・没収の危機に。郁の所属する特殊部隊も警護作戦に参加することになったが!?表現の自由をめぐる攻防がますますヒートアップ、ついでも恋も…!?危機また危機のシリーズ第3弾。」(BOOKデータベースより)


第1作目の図書館戦争、第2作目の図書館内乱に続く第3作目になります。


話は前作の最後、王子様がだれか知ってしまったあとからはじまります。

メインストーリーは、表現の規制についてでしょうか。

なんか、とても紹介しにくいのでサブストーリーの郁と堂上の恋物語を。笑
二人の関係はどんどん進展していきます。

郁は郁で、堂上のことを確かに好きになっていくし、
堂上は堂上で、それを受け止めつつ、郁のことが気になって仕方ない。

これは、第4作目の図書館革命を読むっきゃないっすねー!

面白みとしては前作よりも好きです。

★★★☆☆


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『下町ロケット』 池井戸潤

2011年09月03日 21時20分28秒 | 池井戸潤
読みたくて先に読んでしまいました。



「その特許がなければロケットは飛ばない――。
大田区の町工場が取得した最先端特許をめぐる、中小企業vs大企業の熱い戦い!
かつて研究者としてロケット開発に携わっていた佃航平は、打ち上げ失敗の責任を取って研究者の道を辞し、いまは親の跡を継いで従業員200人の小さな会社、佃製作所を経営していた。
下請けいじめ、資金繰り難――。
ご多分に洩れず中小企業の悲哀を味わいつつも、日々奮闘している佃のもとに、ある日一通の訴状が届く。
相手は、容赦無い法廷戦略を駆使し、ライバル企業を叩き潰すことで知られるナカシマ工業だ。
否応なく法廷闘争に巻き込まれる佃製作所は、社会的信用を失い、会社存亡に危機に立たされる。
そんな中、佃製作所が取得した特許技術が、日本を代表する大企業、帝国重工に大きな衝撃を与えていた――。
会社は小さくても技術は負けない――。
モノ作りに情熱を燃やし続ける男たちの矜恃と卑劣な企業戦略の息詰まるガチンコ勝負。
さらに日本を代表する大企業との特許技術(知財)を巡る駆け引きの中で、佃が見出したものは――?
夢と現実。社員と家族。かつてロケットエンジンに夢を馳せた佃の、そして男たちの意地とプライドを賭した戦いがここにある。」(amazonより引用)


内容については上に書いた通り。あまりにいい紹介文だったので引用しちゃいました。


日本の中小企業の持つ技術力とプライドに涙しました。。。

なんて書いていいかよくわかりませんが、とりあえず読んでみてください。
さすが直木賞ってとこです。


佃製作所の成功には偶然の産物も多いんです。
でも本当の技術力をもっている会社は強い。

人もしかり。
本当の技術、能力をもっている人は強い。

この本の中では大企業vs中小企業っていう対比があるのはもちろんのこと、
そこで働いている人たち、さらにその会社の中でも対比されている。

規模だけでかくなって背伸びしすぎている人はしぼみ、
しっかりとした技術力、能力をもった人は成功する。



小さな工場を巡る、熱い熱いお話でした。



★★★★☆


next...「図書館危機」有川浩

『楽園 上・下』 宮部みゆき

2011年09月01日 22時05分11秒 | 宮部みゆき
宮部みゆきは1年以上ぶりですね。



「未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。12歳で亡くした息子、等が“超能力”を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。」(上)

「16年前、土井崎夫妻はなぜ娘を手に賭けねばならなかったのか。等はなぜその光景を、絵に残したのか? 滋子は二組の親子の愛と憎、鎮魂の情をたぐっていく。その果てにたどり着いた、驚愕の結末。それは人が求めた「楽園」だったのだろうか――。進化し続ける作家、宮部みゆきの最高到達点がここにある!」(下)(ともに文芸春秋より)


上巻を読んだときは、

「等はサイコメトラーなの!?そうじゃないの!?はっきりしてよー!!」

って感じで、なんか煮え切らないような感じで終わりました

でもこういった小説って、

「サイコメトラーでした。ちゃんちゃん」とは絶対に行かないじゃん。
意外性も何もないし。いや、むしろなさ過ぎて意外かも。w


そんなこの小説は、主人公の滋子と、超能力を持っていたと思われるが12歳で事故死した等の母親である敏子、16年前に殺した娘を家の下に埋めて16年間親子3人で暮らした土井崎家を中心に進んでいきます。

最初は等の超能力に疑いをもっていた滋子だが、調べれば調べるほどその能力に確信をもっていく。
調べているうちに発覚した土井崎家の事件。後半はほぼ土井崎家のことがメインです。

上下に巻に分かれた作品だからなかなか概要を書くのは難しいけど、そんな感じ。

上巻はわかりやすいというか、とっつきやすい内容ですが、下巻になるとどんどん細かい描写が入ってきます。
だんだんつらくなってきますが、ここは物語を深く掘り進めるために必要でしょうか。

この本で書きたかったのは、たんに誰がどのように殺したかといったミステリではなくて、なんで親が子に手を挙げなければならなかったのか、親の責任とは何か、そういった現代社会の問題に正面から向き合っていった作品じゃないかと思います。

結論は読んだ人それぞれが感じ取ったことでいいと思う。
簡単なことじゃないけどね


★★★☆☆

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