『模倣犯(三)』 宮部みゆき

2010年04月20日 20時43分28秒 | 宮部みゆき

群馬県の山道から練馬ナンバーの車が転落炎上。二人の若い男が死亡し、トランクから変死体が見つかった。死亡したのは、栗橋浩美と高井和明。二人は幼なじみだった。この若者たちが真犯人なのか、全国の注目が集まった。家宅捜索の結果、栗橋の部屋から右腕の欠けた遺骨が発見され、臨時ニュースは「容疑者判明」を伝えた――。だが、本当に「犯人」はこの二人で、事件は終結したのだろうか?(新潮文庫より)

東野圭吾の「名探偵の掟」という小説に、こう書かれている。

「これは犯人当て小説である。では読者がメモを片手に読めば犯人が分かるのかというと必ずしもそうではなく、小説中の手掛かりだけでは、どう逆立ちしても真相を解明することなど不可能というのが、この種の小説の実態でもある。実はそれでもいいのだ。というのは、小説中の探偵のように論理的に犯人を当てようとする読者など、皆無に等しいからである。」

かつての推理小説といえば、巧妙なトリックを明かす名探偵が主人公であった。現在であってもそういった小説は多くある。

ただ、この模倣犯はそういった小説ではなく、犯人は分かっている。手口も分かっている。
そういった中で繰り広げられていくストーリー。

よっぽどうまくまとめない限り、こういった小説には面白みがない。そこに挑戦してくる作者には期待が高まるばかり。

このあとの2冊でどう話を運んでくるのか。細部に隠された伏線を探り当てながら、これからを楽しんでいこうと思う。

『模倣犯(二)』 宮部みゆき

2010年04月13日 22時53分18秒 | 宮部みゆき
まだ2巻目



「鞠子の遺体が発見されたのは、「犯人」がHBSテレビに通報したからだった。自らの犯行を誇るような異常な手口に、日本国中は騒然とする。墨東署では合同捜査本部を設置し、前科者リストを洗っていた。一方、ルポライターの前畑滋子は、右腕の第一発見者であり、家族を惨殺された過去を負う高校生・塚田真一を追い掛けはじめた――。事件は周囲の者たちを巻き込みながら暗転していく。」(新潮文庫より引用)

1巻目では主に警察の目線、鞠子の祖父の目線、ルポライターの滋子の目線など、事件の周りを取り囲む人からの目線により書かれていた。誰がやったのか、そういった面からとらえた作品であったかのように思う。いわゆる「フーダニット」


この2巻目では犯人や被害者といった当事者からの目線で書かれている。どのようにやったのか。「ハウダニット」の面が明かされていく。

1巻で伏線を張ったというか、謎のまま終わっていたことのいくつかがこの2巻で明るみに出ることになる。それが、当事者たちの行動をもとに明かしていくというスタイルは、今まであまり読んだことがなかったです。東野圭吾の「白夜行」とか「幻夜」で使われているようなスタイル。
1巻目を読んだ後に予想していた展開とは全く違う展開にこの作品を解剖していく作者に、また完敗です。


3巻はどう続くのか。期待してますよ。

『模倣犯(一)』 宮部みゆき

2010年04月06日 22時57分42秒 | 宮部みゆき
宮部みゆきは読者にとんでもない挑戦状をたたきつけてしまった。。。




「墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持ち主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。未曾有の連続殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!(新潮文庫より引用)

この小説は全5巻あるうちの1巻目です。
超長編小説にはよくあることですが、書き出しの100ページぐらいはやっぱりちょっと退屈感を覚えてしまいがちです。これだけの長編となると、最初はいろいろと説明する部分もあるからね。
それでも、100ページを超えるころになってくると、一気にスピード感が増してきて、もう止まることはできないような・・・そんな感じです。

そして1巻の締め方。
ネタばれになるといけないからあまり書けませんが、冒頭に書いたとおり読書に挑戦状をたたきつけたような、そんな締め方です。
あと4巻も続きがあるのに、この終わり方で大丈夫なのか。
心配になってしまうくらい。

まあ、でもある程度は想像できますけどね。
でも、そんな想像を打ち破ってくれることを、わたしは宮部みゆきに期待したいところです。

ところで宮部みゆきは、実は読まず嫌いな面があって、手に取ったのは2冊目、読み切ったものはありません。
前は何を買ったのか忘れました。笑
読書好きな方はわかると思いますが、やっぱり読んだことのない作家の本を買って読むのって、ちょっと抵抗があるというか、自分の嫌いなタイプの書き方かもしれないし、よくわからないから結局よく知ってる作家の本を手に取ってしまう。
まあ、それでもときどき読んだことのない作家の本を手に取ってみるんですが、自分の場合、当たり外れは5分5分ぐらいかな。主観的なものなので何ともいいにくいんですけど。

でも、宮部みゆきは当たりだと思います。
「これだけ有名な作家に何を言う!」といわれそうですが、たしかに読んだことのない作家はストレンジャーであって手は出しにくいのです。

そんなこんなで、明日から第2巻を読み始めます!