『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

2011年11月29日 19時44分38秒 | 伊坂幸太郎
寒いっす。



「恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。」(上)
「5年前の惨事―播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか?追手はすぐそこまで…大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むには―問いかけと愉しさの詰まった傑作エンターテイメント。 」(下)(ともにBOOKデータベースより)

ちょっと気になった一文があったので引用しますね。

「昔はよかった、とかよく言うけど、昔もよくはねえんだよ。いつだって、現代ってのはよくなくて、だからな、俺たちは自分の生きてるその時代と向き合わないといけねえんだ。音楽も映画も、その時の自分たちの時代と立ち向かうために作られたものなんだよ。チャップリンの、『独裁者』にしたって、今見たら、ただの説教臭いコントだけどな、当時は命がけだ。ジョン・レノンの『イマジン』だって、当時の社会に向かって投げられただけだ。」(下、243頁から引用)

話の本流からすると、大した一文じゃないんだけど、なんかグッとくるものがありましてねー。ちょっと引用しました。


伊坂作品って、いつも読んでて違和感があるんだよね。
大体の小説ってものは少しの変な設定もほとんどの普通の描写によって真実味が増してくるから普通に読めちゃうんだと思うんだけど、
伊坂作品って少しの変な設定を少し変な世界で描くからなんか全体が歪んで見える。

今まではそれが苦手だったんだけど。

今回はそれを見直したというか。
確かにおちゃらけた文章だけど、伝えたいことはストレートに、何度も何度も波状攻撃のように伝えてくる。
そこにぐっとひかれるものを感じたなぁ。

ワンピースだとか、ドラゴンボールだとか、おとぎ話のような設定の物語でも伝えたいことをストレートに伝えられる話は胸に染みるというか。
いい話だなって思えるんだね。

★★★☆☆

next...「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」三上延
「鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。」(BOOKデータベースより)

『別冊 図書館戦争Ⅱ』 有川浩

2011年11月17日 21時08分04秒 | 有川浩
一気に読んじゃいました。



「“タイムマシンがあったらいつに戻りたい?”という話題で盛り上がる休憩中の堂上班。黙々と仕事をしている副隊長の緒形に、郁が無邪気に訊くと、緒形は手を休め、遠くを見つめるように静かに答えた―「…大学の頃、かな」。未来が真っ白だった無垢な時代。年をとるごとに鮮やかさを増す、愛しき日々。平凡な大学生であった緒形は、なぜ本を守る図書隊員となったのか!?過去と未来の恋を鮮やかに描く、シリーズ番外編第2弾。」(bookデータベースより)


まりえちゃんと小牧が長年の関係を経て結ばれ、
郁と堂上が王子様を乗り越えて結ばれ、
最後までいがみ合ってるのが手塚と柴崎です。


最初から読んでない人にはもうだいぶネタばれしっちゃってますよね。
まあでもシリーズものを紹介してたらネタばれなりますよ。

でもネタばれても面白いからいいじゃん。


今回は美人な柴崎がストーカーに狙われます。
今まで十分ストーカーに狙われていましたが、それ以上のストーカーで、しかも悪質です。
柴崎は強がりながらも徐々に疲弊していって・・・。まああとはご想像のとおり。


俺はなんか柴崎に共感しちゃいまして。
なかなか素が出せなくて仮面ばっかかぶっている柴崎。
頼りたいのに頑張っちゃって頼れない。

それに、郁たちの関係がうらやましくて。
本気で信頼できて、ばか騒ぎができて、困った時は本気で助けに行く。
そんな仲間がうらやましくて、一員になりたくて。
でも自分に自信が持てなくて。

そんな感情にさせてくれる作品だから読んでて心地よい。

友情と恋愛と、それを超えた信頼とを感じられるよい作品でした。


★★★★☆

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「恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。 」(bookデータベースより)

『別冊 図書館戦争Ⅰ』 有川浩

2011年11月15日 21時24分15秒 | 有川浩
秋を通り越して冬に行っちゃいそうですね。



「晴れて彼氏彼女の関係となった堂上と郁。しかし、その不器用さと経験値の低さが邪魔をして、キスから先になかなか進めない。あぁ、純粋培養純情乙女・茨城県産26歳、図書隊員笠原郁の迷える恋はどこへ行く―!?恋する男女のもどかしい距離感、そして、次々と勃発する、複雑な事情を秘めた事件の数々。「図書館革命」後の図書隊の日常を、爽やかに、あまーく描く、恋愛成分全開のシリーズ番外編第1弾。本日も、ベタ甘警報発令中。」(BOOKデータベースより)


ちょ、ちょっとスピードワゴンの井戸田潤連れてきて!!







アマーーーーーーーイ❤



はい、これやりたかっただけです。

だがしかし、本編からスピンオフしたこの作品ですが、とっても甘い青春ラブストーリー的な物語になっています。
甘いだけじゃなくて、ちゃんと書くべきものは書いてるんだけど。
この甘い部分がうまくぼかしてくれる。うまいですよね。有川先生にはほれぼれします。

そんだけ!!

★★★★☆

『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』 深町秋生

2011年11月10日 19時44分06秒 | 読書
八神瑛子までがタイトルです。


「暴力を躊躇わず、金で同僚を飼い、悪党と手を結ぶ。上野署組織犯罪対策課の八神瑛子は誰もが認める美貌を持つが、容姿から想像できない苛烈な捜査で数々の犯人を挙げてきた。そんな瑛子が世間を震撼させる女子大生刺殺事件を調べ始める…。真相究明のためなら手段を選ばない、危険な女刑事が躍動する、ジェットコースター警察小説シリーズ誕生。」(BOOKデータベースより)


はい、僕の大好きな警察小説です。
どうも警察小説だと評価が甘くなってしまうきらいがあります。w

まあ、俺の評価はすべて主観的なんでその辺はお構いなく!

はい、ところでこの作品です。
本の帯にも書いてあります通り、「この女、危険。」です。
真相究明のためなら、暴力をふるい、お金で同僚を飼い、暴力団や中国人マフィアとも密接に手を組み、違法捜査も辞さない。
しょっぱなから男を殴りつけ、金を奪うシーンからはじまります。
こういうキャラクター、たまらないっすね。物語に厚みができるというか、面白みが増すというか。
警察官ってこうも個性豊かなのかと(思いっきり偏見)。


女子大生殺害事件というより、連続女子殺害事件といったほうがいいかな。
最初に殺されたのが暴力団の組長の娘というところからも、暴力団がらみの犯行というのが想像されますね。
警察小説と暴力団っていうのは切って切れない関係なのか。
暴力団ってのもほんと個性豊かで(偏見)。
すべて小説の話ですが。w


そして暴力団関係にも強い瑛子が犯人を追い掛けながらも・・・おっとこれ以上は言えません。

なんといっても瑛子のキャラクターがいいっすね。
頭もキレキレだし容姿端麗で酒に強くて腕っぷしもあって。凄すぎで男としては手が出せない人です。
こんな瑛子にも過去にいろんなことがあって。まあそれはまだ明らかにされてはいないんだけどね。
たぶん次回作等で明らかにされていくんじゃないかと思います。

ただ、この小説はいろんな暴力団系とか中国マフィア系とかの小説を読んだことある人には面白いかなーって思ったけど、その辺の造詣が浅い方だと難しいかなって思おいました。
蛇頭とか何事もなく書かれても・・・。って人には多少難しいかも。

でも十分面白かったです。

★★★☆☆

『ジーンワルツ』 海堂尊

2011年11月08日 22時29分13秒 | 雑談
秋も深まってきましたか



「桜宮市・東城大学医学部を卒業、東京・帝華大学に入局した32歳の美貌の産婦人科医、曾根崎理恵―人呼んで冷徹な魔女(クール・ウィッチ)。顕微鏡下人工授精のエキスパートである彼女のもとに、事情を抱えた五人の妊婦がおとずれる。一方、先輩の清川医師は理恵が代理母出産に手を染めたとの噂を聞きつけ、真相を追うが…。 」(BOOKデータベースより)


チームバチスタの栄光で有名な海堂尊先生の不妊治療についての小説です。
海堂先生の官僚に対する痛烈な批判も相変わらず。
ただ、バチスタほどの衝撃はなかったかな―。
バチスタを読んだのが学生時代だから久しぶりの海堂作品なんだけど。当時とは読みこんだ小説の数も違うから単純に比較はできないけどね。

んー。今回はあんまり書くことがないかな。
面白いことは間違いないし、伏線もちゃんと回収していくとこもさすが。

バチスタと比べると丸くなったかなーって、ただそれだけです。


★★★☆☆


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『風の中のマリア』 百田尚樹

2011年11月01日 19時57分49秒 | 百田尚樹
空気清浄機にカモミールのアロマ。図書館戦争ファンならカミツレの香りが心地よいです。



「命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。」(BOOKデータベースより)



人間が主人公じゃない話を読んだのはいつぶりでしょう?
というか読んだ記憶がないですねw

今回のお話はスズメバチの話です。
正確に言うとオオスズメバチ(ヴェスパ・マンダリニア)です。


(フォトライブラリーよりhttp://www.photolibrary.jp/)

こわっ!

働き蜂で3~4センチ、女王蜂だとセンチにもなる巨大な蜂で、牙が5mmもあるとか。
凶暴でミツバチやキイロスズメバチの巣まで襲撃することもある恐ろしい奴です。


そんなオオスズメバチのワーカー(戦士)であるマリアの一生(30日ほど)のお話です。

小説といっても、かなりオオスズメバチの生態について詳しく書かれています。
それも無駄なく。

かといって学術的であっても面白みがないわけじゃない。
実は人間味(蜂味?)あふれる物語なんですよ。

ファイターとして生まれてきたマリアには産卵することはできなくて、でも自分の妹たち(女王蜂が産む子供は基本的にメス)を育てるために狩りに出るんです。
他の昆虫とは違って、子孫を残せない働き蜂。

若かったころにはなかった恋(交尾)への葛藤が芽生えてきたり。
私も恋がしたい、そうマリアも思うんです。


まあネタばれはこの辺にしといて。
以前紹介した「永遠の0」とは一味もふた味も違う作品です。

オオスズメバチの宿命と決意に皆さんも感動してみては?

★★★☆☆


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