『血の轍』 相場英雄

2014年01月12日 18時13分42秒 | 読書
4本目、ラストです。初めて紹介する作家さんですね。

「元刑事が絞殺された。警視庁捜査一課の兎沢は、国家を揺るがす大事件の真相に元刑事が辿りついていたという糸口を掴むも邪魔が入る。立ちはだかったのは公安部の志水。兎沢に捜査のイロハを叩き込んだ所轄時代の先輩だった。事件の解決を泣ぐ刑事部と隠蔽を目論む公安部の争いが激化。組織の非情な論理が二人の絆を引き裂く…。胸打つ警察小説! 」(BOOKデータベースより)

刑事部(捜査一課)と警備部(公安総務課)の抗争の話。うん、これはまぎれもなく抗争でしょうw

ある公園で元刑事が絞殺された。
その刑事は元SITで、簡単に殺されるような軟な男ではなかったが、首を絞められ、自殺と見せかけて首をつった状態で発見されていた。
捜査一課の兎沢は元刑事の勤め先であるデパートで関係者から話を聞き始めるが、兎沢はある男に目をつけることとなる。
その男は給料がいいわけではないようだったが、時計を見ると数十万円するような限定品の高級時計をしていた。
そして何かを隠しているような感じであった。
兎沢はその男に目をつけ、関係者から話を聞くが、じつはその様子を公安部の志水たちが秘密で監視していたのだった。

兎沢と志水はある事件から犬猿の仲になっていたのだが、実はもともと二人とも上司と部下の関係であり、初めて刑事になった兎沢が刑事のイロハを教え込んだのが志水だったのだ。

物語は、兎沢の視点、志水の視点、そしてふたりの過去の視点をメインに、多方面から一つの事実へ向かって突き進むのだった


途中まですごくスリルあふれる物語で、次が気になって仕方ないという感じでしたが、最後の捜査一課と公安の泥の掛け合いはあんまりなぁという印象。
ただ、話自体は面白いので読む価値は十分にあると思います。
ドラマ化も決定しているみたいで、第1回は1月19日夜10時ですよ。(宣伝か)


『贖罪の奏鳴曲』 中山七里

2014年01月12日 17時57分25秒 | 読書
3本目です。



「御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇! 」(BOOKデータベースより)


ある保険金殺人事件の国定弁護士になった御子柴。
御子柴は金に汚く、高額の弁護報酬を要求する辣腕悪徳弁護士だ。
そんな御子柴は、何を思ったか金にならない国定弁護士を引き受けた。

この保険金殺人の概要は

ある男は3億円の生命保険を妻にかけられたが、自分の経営する材木会社で起きた事故で意識不明になった。
集中治療室で延命措置をするだけとなった男だったが、妻はその延命装置の電源を切り、故意に男を死なせたというのだ。

しかし、男の事故は材木を運ぶトラックのワイヤーが切れ、その下敷きになったものであって、妻に作為はない。
それに、延命装置を切ったということも、監視カメラでそのように見えるというだけで、妻自身は電源が切れたのでとっさに電源ボタンを触ったと証言しているのだった。

御子柴はこの妻に対し、どのように弁護するのか。
御子柴はあらゆる証言を洗い直し、裁判に挑むのだった。

うん、ここには書ききれないほどいろんな要素が詰まった作品です。
つい最近までドラマでやっていた「リーガルハイ」を思い浮かべるような御子柴。
その御子柴が死体を遺棄する場面からこの話は始まります。
BOOKデータベースの解説のように、それは過去をゆすってきたライターの死体。
当然、読者は御子柴に対し「ひどい弁護士」というレッテルを張りながらこの作品を読むわけですね。

しかしそんな簡単な話ではないです。
この先は本を読んでもらうとして、個人的には中山さんらしくもっと「奏鳴曲」(と書いてソナタとよむ)を強調してほしかったなと。
すごい面白い作品でしたが、そこだけなんか絡んできてほしかったなというのが感想。

ただ、なかなか面白い弁護士のお話でした。

『感染遊戯』 誉田哲也

2014年01月12日 17時45分52秒 | 誉田哲也
2本目です。



「会社役員刺殺事件を追う姫川玲子に、ガンテツこと勝俣警部補が十五年前の事件を語り始める。刺された会社役員は薬害を蔓延させた元厚生官僚で、その息子もかつて殺害されていたというのだ。さらに、元刑事の倉田と姫川の元部下・葉山が関わった事案も、被害者は官僚―。バラバラに見えた事件が一つに繋がるとき、戦慄の真相が立ち現れる!姫川玲子シリーズ最大の問題作。 (BOOKデータベースより)

誉田哲也さんの「姫川玲子」シリーズの第何作目でしょうか。5作目ですかね。
スペシャルドラマになった「ストロベリーナイト」
ドラマ化された「ソウルケイジ」や「シンメトリー」
映画化された「インビジブルレイン」

そしてこの作品は「インビジブルレイン」の後、解散した姫川班のその後の物語ですね。
映画の後にスペシャルドラマ化されていますね。

この作品は今までの4作品とは異なって、主人公が姫川ではなく、脇役であった「がんてつ」こと勝俣、子供が殺人を犯し妻が殺された元刑事の倉田、そして元姫川班の若手巡査部長の葉山。

それぞれが主人公の短編が3本と、それらが合わさり混ざり合い、中編くらいの長さの話で完結します。
あまり明かされなかった「がんてつ」の苦悩だったり、警察官の正義感だったり、まあ警察小説でありながら、その人間性を絡めたあたりがさすがです。

今までみたいなえぐい殺し合いとかはなく(殺しはありますが)、おもいのほかすっきりするような話もあれば、現代の問題に切り込んだような話もあります。

姫川シリーズが好きな方は必読ですね。

『殺気』 雫井脩介

2014年01月12日 17時31分08秒 | 読書
いつもため込んですいません。4本行きます。

「このざわめきは事件の予兆!?12歳で何者かに拉致監禁された経験をもつ女子大生のましろは、他人の「殺気」を感じ取る特殊能力が自分にあると最近分かってきた。しかし、起因を探るうち、事件当時の不可解な謎に突き当たってしまう。一方街では女児誘拐事件が発生。ましろは友人らと解決に立ち上がるが……。一気読み必至のミステリー。 」(BOOKデータベースより)


殺気!
とは裏腹に主人公は女子大生のましろ。
ましろは12歳のころに拉致監禁された経験を持っているが、カウンセリングの結果、当時の記憶を封印し、それ以来当時のことを思い出すことなく過ごしていた。

そんなましろは、地元のショッピングセンターでご飯を食べようとエスカレータに乗っていたところ、なんか暑いような不快な熱気を感じるようになった。
耐え切れなくなったましろは帰ろうとするが、そのときましろは悲鳴を聞くことになる。ある女性が男性を階段から突き落としたというのだ。

また別の日、ましろはバイト先でまた不穏な空気を感じる。それは店の前を歩いている不審な男から発せられているようだった。
その不穏な男は店に入ってしばらくすると包丁を突出し、金をよこせと言い始めたのだった。

この2つの事件からましろは自分に特別な能力があるのではないかと思い始めるのだった。
そしてましろは、過去の事件の記憶に迫るのだった。



わりと切迫した雰囲気があるんだけど、登場人物がなんか抜けていたり面白いキャラクターだったりして、そのギャップが面白い。
雫井さんは「火の粉」とか「犯人に告ぐ」とか、本格的なミステリ系もあったり、「クローズドノート」みたいなラブストーリーがあったり。
そんな要素が融合したような作品がこの「殺気」でしょうか。

ミステリーでありながら、ヒューマンストーリーみたいな。
その辺のバランスがいいのか悪いのか、まあいいとして、最後は一気読みですね。