ときにすごい伝えたくて仕方ない作品に出会う。
「島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが―。渾身の長編小説。 」(BOOKデータベースより)
強い作品。
これほど強い作品に出会うことはなかなかない。
主人公の信之は美浜島で生まれ育つ。住民は271人。
子供は少なく、小学校と中学校の校舎は合同で、信之の学年にはほかに美花がいるだけだった。
美花は芸能界にスカウトされるほどの美貌だったが、学校ではそっけない付き合いになっていた。
信之は美花の親が経営するバンガローで美花とひそかにセックスをするのが楽しみで生きていた。
ただ、このところは客が入っており、バンガローが使えない。
そしてバンガローに泊まっている客は美花に色目を使っているらしいのだった。
そんなある夜、美花は信之を山の上の神社に呼び出した。
夜中に家を抜け出した信之は幼馴染の輔とであってしまう。
輔は父親に暴力を振るわれており、体のあちこちに痣や傷が絶えなかった。
仕方なく信之は輔とともに山を登って美花に会いに行った。
美花と会ってまもなく三人は海の異変に気付く。
海の先にある水平線に見える一筋の線は、やがて島を飲み込む大津波となった。
輔は暴力をふるう父親が死ぬことを喜び、街のみんなが死ぬことを喜んだ。
津波は信之と美花、輔、そして数人の大人を残して全員が死亡した。
しかし、輔に暴力をふるっていた輔の父親と、美花に色目を使っていた客人・山中は生き延びていたのだった。
しばらくは学校で寝泊まりをしていたが、あるとき信之は美花と山中の姿がないことに気付く。
変に思った信之は二人を捜しに神社のある山に登る。
そこで、信之は山中が美花を襲っているところを目撃する。
信之は、美花を助けるべく、山中に手をかけるのだった。
ここに始まった暴力の連鎖が、やがて信之を延々と苦しめることになるのだった。
と、長々と紹介してしまいましたが、ここまでが物語の序盤ですね。
このあと三人は離れ離れになってそれぞれが生活してくのですが、そこがとてもつらくて重い。
だれにもひとりくらいずっと忘れることのできない人がいるものですが、信之も結婚して子供を持っていながらも美花のことが忘れられない。
本能のように美花を守ることを優先してしまう。
輔も父から逃れられず、信之のことを頼ってしまう。
一見利用し、利用されている関係のように見えながらも、実はその逆もしかりだったり。
そこに信之や輔の周辺にいる人たちが巻き込まれ、苦しみながらも生きていく。
決して安易に死にのがれたりしない。安易と言っちゃいけないかもしれないけど。
タイトルの「光」というものが何を意味するのか、この物語が何を語っているのかというのは人それぞれでいいと、作者は言っています。
ぼくがこの作品にすごく惹かれたのが信之の感情。
愛してやまない人を心に秘めながら、日々を過ごしている。だからほかの人を愛せない。
すべてが演技のようになってしまう。だが、それがその人を思っているかのように見えるから、はたから見るといい人に見える。
それがまた苦しい。
重要な役割を果たす信之の妻・南海子も。
夫を支え、思い通りにいかない子供に苦悩しながらも、必死に生きている。
夫に疑いをかけながらも、近所の人を疎みながらも日々をこなしている姿。
背伸びしたいのにうまくできないから子供にあたってしまう。
不器用な子供に不器用な親。
ことばではうまく伝えられないけど、読んで感じてもらえたらと思います。
ここに書ききれないこともたくさんありますので、ぜひ読んでもらってぼくと語らいましょう。
「島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが―。渾身の長編小説。 」(BOOKデータベースより)
強い作品。
これほど強い作品に出会うことはなかなかない。
主人公の信之は美浜島で生まれ育つ。住民は271人。
子供は少なく、小学校と中学校の校舎は合同で、信之の学年にはほかに美花がいるだけだった。
美花は芸能界にスカウトされるほどの美貌だったが、学校ではそっけない付き合いになっていた。
信之は美花の親が経営するバンガローで美花とひそかにセックスをするのが楽しみで生きていた。
ただ、このところは客が入っており、バンガローが使えない。
そしてバンガローに泊まっている客は美花に色目を使っているらしいのだった。
そんなある夜、美花は信之を山の上の神社に呼び出した。
夜中に家を抜け出した信之は幼馴染の輔とであってしまう。
輔は父親に暴力を振るわれており、体のあちこちに痣や傷が絶えなかった。
仕方なく信之は輔とともに山を登って美花に会いに行った。
美花と会ってまもなく三人は海の異変に気付く。
海の先にある水平線に見える一筋の線は、やがて島を飲み込む大津波となった。
輔は暴力をふるう父親が死ぬことを喜び、街のみんなが死ぬことを喜んだ。
津波は信之と美花、輔、そして数人の大人を残して全員が死亡した。
しかし、輔に暴力をふるっていた輔の父親と、美花に色目を使っていた客人・山中は生き延びていたのだった。
しばらくは学校で寝泊まりをしていたが、あるとき信之は美花と山中の姿がないことに気付く。
変に思った信之は二人を捜しに神社のある山に登る。
そこで、信之は山中が美花を襲っているところを目撃する。
信之は、美花を助けるべく、山中に手をかけるのだった。
ここに始まった暴力の連鎖が、やがて信之を延々と苦しめることになるのだった。
と、長々と紹介してしまいましたが、ここまでが物語の序盤ですね。
このあと三人は離れ離れになってそれぞれが生活してくのですが、そこがとてもつらくて重い。
だれにもひとりくらいずっと忘れることのできない人がいるものですが、信之も結婚して子供を持っていながらも美花のことが忘れられない。
本能のように美花を守ることを優先してしまう。
輔も父から逃れられず、信之のことを頼ってしまう。
一見利用し、利用されている関係のように見えながらも、実はその逆もしかりだったり。
そこに信之や輔の周辺にいる人たちが巻き込まれ、苦しみながらも生きていく。
決して安易に死にのがれたりしない。安易と言っちゃいけないかもしれないけど。
タイトルの「光」というものが何を意味するのか、この物語が何を語っているのかというのは人それぞれでいいと、作者は言っています。
ぼくがこの作品にすごく惹かれたのが信之の感情。
愛してやまない人を心に秘めながら、日々を過ごしている。だからほかの人を愛せない。
すべてが演技のようになってしまう。だが、それがその人を思っているかのように見えるから、はたから見るといい人に見える。
それがまた苦しい。
重要な役割を果たす信之の妻・南海子も。
夫を支え、思い通りにいかない子供に苦悩しながらも、必死に生きている。
夫に疑いをかけながらも、近所の人を疎みながらも日々をこなしている姿。
背伸びしたいのにうまくできないから子供にあたってしまう。
不器用な子供に不器用な親。
ことばではうまく伝えられないけど、読んで感じてもらえたらと思います。
ここに書ききれないこともたくさんありますので、ぜひ読んでもらってぼくと語らいましょう。