『ラブコメ今昔』 有川浩

2012年07月28日 10時49分36秒 | 有川浩
溶ける。愛知の夏。



「「自衛隊員の皆さんに恋愛や結婚の経験談を語ってもらいたいんです」。二等陸佐・今村和久の前に現れたのは、隊内紙の記者の元気娘・矢部千尋二等陸尉。訊けば、夫婦の馴れ初めを、コラムに掲載したいというのだが!?「みっともない」と逃げる今村、ねばる千尋。一歩もひかない攻防戦の顛末は―!?様々な思いが交錯する、自衛隊員の結婚を綴った表題作を含む、十人十色の恋模様6編を収録した、国を守る男女の本気印恋愛百景。 」(BOOKデータベースより)


有川浩の、自衛隊を題材にした、不器用な男たちの恋愛短編小説です。

有川浩といえば、自衛隊系(図書特殊部隊ってのもありましたが)、そして甘いラブコメディ。
そのど真ん中を突き進むこの作品です。

簡単にそれぞれの紹介をしますと、

・ラブコメ今昔
習志野空挺部隊の第一空挺団で大隊長を務める二党陸佐、今村和久は、陸上自衛隊の広報を務める矢部千尋二等陸尉に、広報誌「あずま」のコラムで今村の奥さんとの馴れ初めを紹介したいと打診される。
今村は50すぎのベテラン自衛官であり、お見合いで出合った古女房との馴れ初めなんて書けるわけがないと一刀両断。
しかし、矢部は持ち前の粘り強さで今村に迫り、だんだんと逃げ場をなくしていくのであった。

・軍事とオタクと彼
営業職の桜木歌穂は5日間の出張を終え大阪の本社へ帰るのぞみで席が取れず、立ったまま帰るはめになってしまった。
出張で疲れ果てていた歌穂はどうにか席に座れないかと、品川、新横浜と過ごしていったのだが、なかなか席をとることができなかった。
そのとき、背後から声をかけられた歌穂は、その青年にトイレに行っている間、席に座っていてほしいと頼まれる。
少しでも休みたかった歌穂は、彼がトイレに行っている間、つかの間の睡眠を取ろうと思ったのだが、ふと眼を覚ましたらまもなく名古屋に到着するころまで熟睡してしまったのであった。
歌穂とその青年は、歌穂が下りる新大阪まで話をし、歌穂が下りるギリギリになって歌穂が名刺を渡し、連絡を待つこととなった。
その後、歌穂と青年は何度か交流をしながらも、なかなか交際まで進展することはなかったことから、業を煮やした歌穂は、他に女がいるのではないかと青年を尾行するのだった。

・広報官、走る!
海上自衛隊の広報室に勤める政屋征夫は、上司に女たらしと呼ばれる一尉。
自衛隊のイメージアップのため、ドラマを二本引き受けることになり、政屋はテレビ局と連絡調整課係を命じられる。
テレビ局の連絡係は鹿野汐里。鹿野は長い髪を後ろでまとめた、地味目な美人ADだった。
テレビ局は予定が遅れることが通常であり、常に5分前行動を信条とする自衛隊とは相いれない存在であり、たびたびテレビ局と自衛隊でもめ事になってしまい、その尻拭いを鹿野がさせられていた。
その理不尽な状況を打開すべく、政屋はある行動に出るのであった。

・青い衝撃
航空自衛隊の花形である、松島基地所属、第四航空団第十一飛行隊、通称「ブルーインパルス」。
そのパイロットを夫に持つ、相田公恵は夫がモテすぎることが悩みである。
多くの航空ショーではトリを務め、女性ファンも多い。
そんな夫、鉱司を取り囲む女性ファンの中に、一人公恵を見つめる視線があった。
ロングヘアを軽く縦に巻いた美人であり、公恵に挑戦的な視線を向けてくるのである。
ある日、鉱司の制服を洗濯しようと襟を確かめていたとき、うなじに当たる襟の折り返しの中にメモを見つける。
そこには、「あなたにだったら、勝てそう」と書いてあったのだった。

・秘め事
陸上自衛隊明野駐屯地第十飛行隊に所属する手島岳彦二尉は、ブルーインパルスに知名度こそ及ばないものの、難易度の高い「明野レインボー」という回転翼機アクロバットチームのメンバーである。
その上官である水田章介三佐の娘、有季と秘密裏に交際しているのである。
その有季との馴れ初めと上官への決死の報告のストーリー。(これ以上言えない。。。)

・ダンディ・ライオン~またはラブコメ今昔イマドキ編~
「ラブコメ今昔」で出てきた矢部と今村の、隠された事情です。


最後の二つは手を抜いたわけではないですよ?
ただ、書いたら面白みがなくなってしまいそうだから。
一つ一つの話は短いのでとても読みやすくて感じがいいです。
ただ、内容が自衛隊縛りなので、連続して読むと混乱しそう。w
まだ読解力が足りませんね。
ただ、短いながらも引き込まれる文章です。さすが有川さんって感じ。

★★★★☆

next...「インビジブルレイン」誉田哲也
姫川班が捜査に加わったチンピラ惨殺事件。暴力団同士の抗争も視野に入れて捜査が進む中、「犯人は柳井健斗」というタレ込みが入る。ところが、上層部から奇妙な指示が下った。捜査線上に柳井の名が浮かんでも、決して追及してはならない、というのだ。隠蔽されようとする真実―。警察組織の壁に玲子はどう立ち向かうのか?シリーズ中もっとも切なく熱い結末。 (BOOKデータベースより)

『氷菓』 米澤穂信

2012年07月24日 21時01分14秒 | 読書
部屋が暑い。



「いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。」(BOOKデータベースより)


なんかまあ、平和な話。w
ミステリなんだけどね。

なんかねー、評価したくないw
やる気のそがれる作品でした。

★★☆☆☆

next...「ラブコメ今昔」有川浩
「自衛隊員の皆さんに恋愛や結婚の経験談を語ってもらいたいんです」。二等陸佐・今村和久の前に現れたのは、隊内紙の記者の元気娘・矢部千尋二等陸尉。訊けば、夫婦の馴れ初めを、コラムに掲載したいというのだが!?「みっともない」と逃げる今村、ねばる千尋。一歩もひかない攻防戦の顛末は―!?様々な思いが交錯する、自衛隊員の結婚を綴った表題作を含む、十人十色の恋模様6編を収録した、国を守る男女の本気印恋愛百景。」(BOOKデータベースより)

『硝子のハンマー』 貴志祐介

2012年07月20日 20時14分28秒 | 読書
暑かったり寒かったり。ただ、梅雨明けはうれしい。



「日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。」(BOOKデータベースより)



お見事。
久しぶりに密室ミステリで唸りました。

若く美人の女性弁護士である青砥(あおと)純子。
泥棒と表裏一体の防犯コンサルタント榎本径(けい)。

この二人を主人公に、話は進んでいきます。
まず紹介していかなければならないのが、この二人の立ち位置。

純子は密室の謎を解くため、さまざまな推理を試みます。
しかし、それはことごとく否定されることになります。
ときにはほぼ正解と思えるような推理をすることもあれば、トンデモ推理を披露することも。
古典的な推理物には必要不可欠な存在です。コナンでいえば毛利小五郎的存在になります。

一方、径は泥棒稼業(!?)で鍛えた能力を駆使し、純子のトンデモ推理を覆し、また一つ一つ確実に可能性をつぶしていきます。
ときには鍵を複製して侵入したり、防犯カメラの盲点を突く推理をしたり。
技術と知識で戦う、ちょっとコナン君とは似つかない存在です。


さて、物語は複数人の登場人物の行動を追いながら、事件当日の様子を描写していきます。
警備員の目であったり、秘書の目であったり、窓ふき業者の青年であったり。
いつも通り仮眠していた社長が何者かに撲殺されるところまで描写されます。

そこで話は二人の主人公の視点に移ります。
二人で様々な検証がなされるわけですが(ほぼ径です)、どんな方法を用いても密室の謎は解けません。
これだと思って実験をしてみたら、まったくだめだったり。

まあ、書き続けたらどこまでも語ってしまいそうなのでここまでにしておきます。
こんなトリックあり!?脱帽というか、よくそんなこと思いつくなって思います。
いろいろこっちも考えたんだけど、そんなテクニックがあるなんて思いもしませんよ。
まあ、それまでにヒントが少なかったんじゃない??ていうせめてもの抗議をしておきます。

★★★★★

next...「氷菓」米澤穂信
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。 (BOOKデータベースより)

『5年3組リョウタ組』 石田衣良

2012年07月14日 09時24分28秒 | 石田衣良
7月13日アクセスランキング 8,560位 / 1,739,192ブログ中。 ありがとう。



「希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪…教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説。 」(BOOKデータベースより)


久しぶりの石田先生作品を読んでみた。
まえまえから気になってはいたんだけど、今更手に取ったこの1冊。
小学校教諭4年目のリョウタこと中道良太は単純でまっすぐなことが取り柄の教師。
学年のクラスごとに順位付けがされており、リョウタ組は万年ドベかドベ2。
そんなリョウタ組には様々な問題が起きるが、リョウタは純粋にまっすぐにその問題へと立ち向かっていく。

そんなストーリー。

なんでもかんでも、こんなにうまくいくのかなぁ。
現実の小学校教育がどうなっているのか、俺には分からないけど、石田先生、テレビに出すぎて、「生」の「生き生き」とした以前の文章みたく訴えかけてくるものを書けなくなったのかなぁ。そう感じる部分がままあったなぁって。

石田先生だからこそのキビシメの評価かもしれないけど。
ただ、「十二月、みんなの家」での記者会見のシーン。
これは、石田先生が普段から感じているような、隠蔽体質への痛烈な批判であると思うし、俺の意見ともあう部分だから共感したなーって。

他はまあ、ぼちぼち。

★★★☆☆

next...「硝子のハンマー」
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。(BOOKデータベースより)

『とんび』 重松清

2012年07月09日 18時39分05秒 | 重松清
最近ときどきブログランキングに載るようになりました。ありがとうございます。




「昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。 」(BOOKデータベースより)


とんび(とび)が鷹を産む。

=平凡な親がすぐれた子を生むことのたとえ。

不器用な父親(ヤスさん)と息子(アキラ)の物語。

昭和の父親というものを俺は知らない。
むしろ平成の父親も知らない。

だが、理論よりも情や直感で生きているようなヤスさんには、昭和の父親という称号がとっても似合うのじゃないかと思う。
アキラが幼い時に事故で母親(美佐子)を失くしてしまう。
アキラをかばって死んだ美佐子。
その事実をアキラに伝えることができず、一人心の奥底に秘めているヤスさん。
不器用ながらも、アキラを愛し、懸命に子育てをするヤスさんにとっても感動してしまいました。
電車で涙流してたら、変な人に思われるじゃないですか。
いや、変な人かもしれないけど。

去年、父親を亡くしてからか、こういった親の愛を描いたような物語に弱くなってます。
親と別れて長い人、親に反抗的な態度しか取れない人、そして親のことが大好きなあなたに読んでほしい一冊です。


★★★★★

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希望の丘小学校5年3組、通称リョウタ組。担任の中道良太は、茶髪にネックレスと外見こそいまどきだけれど、涙もろくてまっすぐで、丸ごと人にぶつかっていくことを厭わない25歳。いじめ、DV、パワハラに少年犯罪…教室の内外で起こるのっぴきならない問題にも、子どもと同じ目線で真正面から向き合おうと真摯にもがく若き青年教師の姿を通して、教育現場の“今”を切り取った、かつてなくみずみずしい青春小説。 (BOOKデータベースより)

『無理』 奥田英朗

2012年07月05日 19時48分05秒 | 読書
最近金が吹っ飛んでいきます。



「合併で生まれた地方都市・ゆめので、鬱屈を抱えながら暮らす5人の男女―人間不信の地方公務員、東京にあこがれる女子高生、暴走族あがりのセールスマン、新興宗教にすがる中年女性、もっと大きな仕事がしたい市議会議員―。縁もゆかりもなかった5人の人生が、ひょんなことから交錯し、思いもよらない事態を引き起こす。 」(上)
「真面目に働くことの馬鹿馬鹿しさを知り、自分の地位が脅かされることにおののき、信じていたものには裏切られ…。5人の男女が心の軋みに耐え切れなくなった時、それぞれの人生は猛スピードで崩壊してゆく。矛盾だらけのこの国を象徴するかのような地方都市・ゆめのを舞台に、どん詰まり社会の現実を見事に描き切った群像劇。 」(下)(ともにBOOKデータベースより)


ゆめの市に住む5人の話。いい感じの紹介が帯についてたので紹介します。

・相原友則
 弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。
・久保史恵
 東京の大学に進学して、こんな田舎とおさらばしたい高校2年生。
・加藤裕也
 暴走族上がりで悪徳商法の世界に飛び込んだ若者。バツイチ子供あり。
・堀部妙子
 スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な中年女性。
・山本順一
 県議会に打って出るつもりの市議会議員。妻の浪費が悩みのタネ。


なんかイライラしてくる結末でした。w
ふつう、こういった5人の話がばらばらに進んでいく場合って、最後にまとまっていくじゃない。
この作品は、ばらばらに進んでいった話を一緒にゴミ袋に入れて捨てたみたい。
一つ一つの話も完結できていない気がする。

あー、無駄に時間食ったな。そんな感じでした。

★★☆☆☆

next...「とんび」重松清
昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。(BOOKデータベースより)