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風の行方・原発回帰  あの時の教訓はどこに生かされたか 

2023-02-11 06:30:00 | 風の行方・原発

風の行方・原発回帰  あの時の教訓はどこに生かされたか

原発の運転期間は、2011年の福島第一原発事故後の原子炉等規制法が改正され、
原則40年。
原子力規制委が認めれば20年延長できると定められ、
最長で60年の運転が認められた。

事故以降、歴代政権は原発への依存度を低減する方針を掲げてきた。
岸田首相は再稼働を進める一方で、
新増設や建て替え(リプレース)は現時点では想定していないとしてきた。
新たに建てなければ、いずれ原発はゼロになる。

新増設に転換すれば、将来も長期にわたり原発に依存することになる。
原発は自然淘汰され、再生可能エネルギーが普及していくのか。
それとも、地球温暖化問題で脱炭素を理由に復活し、電力の安定供給に舵を切るのか。
  
福島原発1号機水素爆発の瞬間(2011.3.12午後3時36分)と崩壊した建屋。
左写真は『福島中央テレビ』の映像で、全国放送された。
日本記者クラブ特別賞を受賞。

原発回帰(原発政策の転換)
  あれから11年が過ぎた、2022年秋、突然のように原発政策の転換が示された。
  原発の新増設や建て替えを検討し、
  原則40年の運転期間の延長も検討すると。
   脱炭素の加速化や、ロシアのウクライナ侵攻に伴いエネルギーの供給が不安定になっている。
    電力の安定供給は喫緊の課題だろう。
    しかし、11年前の福島第一原発事故の痛ましい人災事故を忘れてはいけない。
    3基の炉心溶融(メルトダウン)は、日本だけでなく、
    世界をも震撼させたほど甚大な被害をもたらした。
    「在日アメリカ人は本国に帰国すべし」と友好国のアメリカは最大の危機感を持った。
    周辺の住民は故郷を追われ、23年の現在でも帰還困難区域に指定され、
    避難を余儀なくしている人々も多い。

         帰還困難区域の除染もままならず、廃炉などの事故処理の見通しさえつかない。
    汚染水の海洋放出は漁民の反対にあい、保証金をちらつかせながら見切り発車をせざるを得ない。
    高レベルの放射性廃棄物は、
   最終処分地が決まっていない。
   放射能が十分に下がるまでに数十万年もかかるといわれている。
   こんな危険なものを地下深く埋めて、だれが責任をとれるのか。
   使用済み燃料のプルトニウムは核兵器の材料になるから、国際的に厳しく管理されていて、
   日本はプルトニウムの減量を国際公約しているのだが、
   高速炉の開発は、巨費をつぎ込み、挙句の果てにとん挫したままだ(バックエンド問題)。
   経産省の試算によれば、2030年に新設の原発は、事業用の太陽光発電よりも割高になる。
   加えて、新型炉には開発初期のリスクもある。

   原発のコストは規制の厳格化などにより、高騰している。
   原発事故前に1基約4千億円だった建設費は事故後、欧米などでは1兆円を超えるという。
   新規建設はもはや、国による補助なしには成り立たず、国民負担はまぬがれない。

   ざっと上げただけでも以上のような難問がそろっている。
   原発関連の反対運動が起きれば、政府は札束で頬を打ち強引に政策を推し進めてしまう。

   脱炭素問題やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を踏まえて、エネルギーの安定供給
   に舵を切る。
   昨年暮れには、原発が再稼働に必要な審査などで停止している期間を除外する改正案を提出。
   つまり、最大60年とされた運転は、仮に運転停止期間が10年あれば、
   最長で70年間運転できることになる。
   
そうして、廃炉を迎えた原発の代わりに新しい原発をつくる「建て替え」を進める
   方針も明らかにした。
      まとめ・自民党総合エネルギー戦略調査会の骨子
           原発の新増設・建て替えを推進する。
           運転期間の延長。
           使用済み核燃料の処理(バックエンド問題)の推進。
  
 あの悪夢のような11年前、
 
浪江町に住んでいた佐藤さんは
 「原発が爆発して2回も避難した。これからどうなってしまうのだろう」と不安をつぶやく。
 「俺、ちと長生きしすぎたな。いやなもの見ちまった」と被災直後の4月、
 飯舘の自宅で、104歳の命を絶った大久保さん。104歳まで生きて、最後の選択に「自死」を
 思うとやりきれない。(2022.12.24朝日新聞天声人語参照)

  当時の記録や被災者の声を改めて読み直せば、被災者の声が、現在でも生々しくよみがえってくる。
  原発事故からたった11年、その傷も癒されぬうちに、
  前述のような大きな問題を抱えたまま、原発回帰・推進に舵を切る岸田政権に、
  いったいこの国のリーダーは、国の未来にどのような設計図を描いているのだろうと不安になる。
  世界を震撼させた原発事故の教訓はどこに生かされたのだろう。

        (風の行方・原発№42)             (2023.0210記)
  
 


         

   

 


   


   

 

 


    

 

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2 コメント

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おはようございます (九州より)
2023-02-11 08:51:48
エネルギー問題は難しいですね。
基本的には、安全に管理できないものは使用すべきではないと思います。
でも野山に広がる太陽光パネルや、巨大な風力発電の風景も好きではありません。
我ながら、なかなか回答が見つかりません。
返信する
エネルギー問題 (雨上がりのペイブメント)
2023-02-11 09:23:34
コメントありがとうございます。
 人類が生まれてから、エネルギー問題はいつも重要な課題としてとらえられてきました。
 古来から、エネルギーを制したものが、世界を征服できるとまで言われてきました。
 原発問題を含んだ再生可能エネルギー問題の施策でも、「あちら立てれば、こちらが立たず」で、全ての人が賛成できる施策は存在しないと思います。
 だからと言って、「札びら」で強引に決着をつけるやり方も賛成できません。
 いずれにしても、人間が制御できないモンスターを飼うこととだけは賛成できないと思っています。
返信する

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