雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

風の行方(11) 宮城県被災地を訪ねて(11)

2012-07-24 21:32:52 | つれづれ日記

被災地との温度差

  3月25日に止むにやまれぬ思いで、早朝車で自宅を出発。

震災が起きてから1年が経過しており、メディアのニュースも日増しに少なくなり、

思い出したように回顧記事が多くなった。

 

 忘れるには余りにも無残で過酷な体験に、

被災地では生々しい「東日本大震災」の記憶をぬぐい切れずに、

それでも悲しみや絶望を乗り越えて生きていこうとする人たちがいることを忘れてはいけない。

 河北新報等地元紙は、中央メディアがカバーしきれない被災地の生の声を伝え、

被災の検証をし始めた。

 

 被災地からの発信は、悲惨な記憶が日々薄れていく中で、

事実の重みをしっかりと受け止め、

未来への教訓と復興への足がかりを探り始めているように感じられた。

しかし、被災しなかった多くの地域と、

復興ままならない被災地との落差、温度差は、日を追って大きくなり、

「絆」とか「がんばれ東北」という言葉だけが、虚しく繰り返されることに違和感を覚え、

私は被災地に再び足を踏み入れた。

目で見たもの、この手で触れたもの、肌で感じたものを

紀行文として、誰かに伝え、被災地の痛みを共有したいとの思いが、

果たして、伝えることができたのか。

不安は尽きない。

 

 被災地のの復興は何年かかるのか。

 

 多くの考えがあり、意見があるが、

自己主張ばかりしても、復興は先へ進まない。

 「A」か「B」か。

という択一的な議論ではなく、、「A」も認め「B」も認めたうえで、

さて私たちは、この苛酷な現実から立ち直り、

「いかにしてより良い未来への道筋を、子どもたちに残してやることができるのか」を

真剣に考えなければならない。

 今を生きるのに精一杯で、

この子たちが大人になった時、

「先人たちはこんな生きづらい社会しか作れなかったのか」

と言われないよう肝に銘じなければならない。

 

 吹いている「風の彼方」は、

私たちの手にかかっているのだから……。

                         (終り)

        「宮城県被災地を訪ねて」は、今回で終了します。次回からは

     「原発」に関することを書いていきます。

 

 

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風の行方(10) 宮城県被災地を訪ねて(10)

2012-07-14 17:30:14 | つれづれ日記

 女川町・被災の爪跡(2)

   こんなことが本当に起きるのか……。鉄筋のビルが横倒しになる。

  横倒しになっていた鉄筋の女川交番。同じく鉄筋コンクリートの江島館(写真一番手前)も見事に横倒しになり、

その残骸を無残にさらしている。今では撤去されているが、女川駅から200メートルも流された電車は、山際の林に

引っかかってかろうじて止まった。写真江島館の奥には七十七銀行、一番奥の茶色い建物がマリンパレス女川です。

 

 倒壊、そして、かろうじて外壁だけが残った建物は、解体、撤去を待つばかりである。

銀行があり、交番があり、商業施設があるこの一帯は、女川町のメインストリートであったのだろう。

だが今は、写真の三つの建物以外、何も残っていない。

津波のすさましい痕跡を残して、町はひっそりとたたずんでいた。

 

 一部、「震災遺構」として、残すかどうかの議論もあり、

「保存による津波津波防災の喚起」と「負の遺産は残したくない」という被災者感情との板挟みで、

自治体の判断も容易に結論を出せないようである。

 

  津波による浸水は海抜20メートルに達した。風の行方(9)「女川町・被災の爪跡」のように、

津波は鉄筋の建物をなぎ倒すほどの威力で、

遥か遠くの岬の先端にあった高さ6メートルの防潮堤をいとも簡単に乗り越え、

大きなうねりとなって高台にある町立病院一階フロアーにまで牙をむいた。

 商業ビルの立ち並ぶ港一体では至る所で水が噴水のように噴き出した。

液化現象による地盤沈下である。

 

 気象庁が大津波警報を発令した3月11日午後2時50分頃、防災無線の放送が始まった。

「大津波警報が発令されています。沿岸の人はただちに高台に避難してください」。

20分後、女川町庁舎は屋上を残して浸水した。

                                                     (つづく)

 

 

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