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雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

風の行方(20) 「仮の町構想」(4) 避難区域再編

2012-12-29 23:12:03 | 風の行方・原発

 福島第一原発が立地する大熊町は12/10、全域にかかっていた警戒区域の指定が解除され、

放射線量に応じて3区域に再編された。

 町の人口1万1千の96%が暮らす地域が「帰還困難区域」になり、今後少なくとも4年間は戻れない。

残りの人口の4%にあたる約390人が住む地域は、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」に指定された。

しかし、町は今年9月「(全町民は)5年間帰町しない」と明記した復興計画を決定していたが、

国は難色を示している。

 

 同様に富岡、浪江町も「五年間帰還しない」宣言をしている。

福島第一原発が立地する双葉町は、今も役場が埼玉県に避難しており、

復興に関わる計画作りが大幅に遅れている。

 国の資料によれば双葉町の住民の75%が帰還困難区域、

残りのほとんどが住居制限区域、ごくわずかが避難指示解除区域の対象になる。

 町は「一部だけ避難指示を解除するのは現実的でない」として、

双葉町全区域を「帰還困難区域」に指定することを国に要望している。

 

 再編の見通しが立っていないのは、富岡、双葉、浪江、川俣の4町。

再編が決まれば、復興計画は一歩前に進み、仮の町構想も具体的に進んでいく。

 なぜ、避難区域再編計画が先に進まないのか     

                                 (つづく)

       用語解説 

  「帰還困難区域」 : 年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、5年を経過しても年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない

                 おそれのある地域で、5年以上の長期にわたって居住が制限される地域。(国が不動産の買い上げを検討)       

  「居住制限区域」 : 年間積算線量が20ミリシーベルトを下回るのに数年かかるとみられる地域。一時帰宅は可。年間積算量が

                              20ミリシーベルト以下であることが確認された場合、避難指示解除準備区域に移行する。

  「避難指示解除準備区域」 : 年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域。早期帰還に向け

                       た除染、都市基盤復旧、雇用対策などを早急に行い、生活環境が整えば、順次解除される。

      ※ 各区域とも宿泊はできない。

                        


「棄権」は無責任ではないか

2012-12-18 15:08:35 | 昨日の風 今日の風

 昨日の風 今日の風 (3)

  棄権は無責任ではないか

 衆議院総選挙が終了し、自民党の圧勝で政権交代を迎えた。

 

 福島第一原発事故では多くの被害を被り、今なお16万人の人々が、避難生活を余儀なくされている。

放射性物質の拡散も、津波で壊滅的打撃を被った東北の太平洋沿岸にまで広範囲に渡った。

風評被害もいまだに沈静することなく、現地の農業、畜産、漁業従事者を苦しめ、復興の妨げとなっている。

 

 安全神話が崩壊し、原発の危険性を私たちは嫌というほど知らされた。

 

 原発をゼロにする公約を掲げる政党が勝つのか、

従来のエネルギー政策を継承し原発推進を掲げる政党が勝つのか、

選挙結果によっては、その流れが大きく変わっていく。

 

 「政権交代になるかもしれない」、「国の方向性が大きく変わるかもしれない」

大切な選挙に、投票率59.32%、戦後最低の投票率である。

国の方向性が決まる選挙に、

国民の誰もが関心を持った「原発の行方」や、私たちの生活に直接影響する「税と社会保障」の問題も

「どうでもいい」と思う人はいないはずだ。にもかかわらず4割以上の有権者が棄権してしまう現実。

 「どの政党にも期待しない」、「誰が総理になっても同じ」……よく聞く町の声である。

だからと言って、「棄権する」というのは、論理の飛躍であり、「国民としての権利」を放棄することです。

「どの政党にも期待しない」ほど、政党のことを理解していますか。

「誰が総理になっても同じ」というほど私たちの代表になろうという人を理解していますか。

選ぶ権利を放棄する無責任さを、一般論に合わせてカムフラージュしてはいないか。

 

 たった一票だけれど、一人ひとりの一票が大きな票になり、政策の決定に繋がっていく。

「私一人の一票がなくったって」と考えるのはよそう。

一票の責任は小さな責任だが、ある方向性と意志を持った時、とても大きな力となるのだから。

間接民主制による議会制民主主義は、この一票の積み重ねがなければ成立しない。

 

 政治や政党を批判はするが、選挙は棄権する、というのではあまりに身勝手ではないか。

 

 政権の座は民主党から自民党に移った。

何が変わっていくのか、私たちにはしっかりとそれを見極める責任がある。

                                       (次回は「原発はどうなるの」)


「金」 今年の漢字

2012-12-17 21:43:15 | 昨日の風 今日の風

「金」 今年の漢字

  日本漢字能力検定協会は12日、今年の漢字を発表した。「金」である。

25万8912通の応募のうち、9156通を獲得

 金環食のほか、ロンドン五輪での日本人選手の活躍や高さ世界一の「東京スカイツリー」の開業、

京都大学教授・山中伸弥氏のノーベル生理学・医学賞受賞など

「多くの金字塔が打ち立てられた」ことがその理由にあげられる。

また、消費増税や生活保護費の増大など「(かね)」をめぐる問題を理由に挙げた人も多かった。 

と、メディアは伝えています

 

 その年の世相を表す字として、1995(平成7)年から毎年12月12日の漢字の日に発表している。

今年の漢字で「金」は二回目の受賞である。

前回2000年には、シドニー五輪や金融機関の破綻・再編などを受けて選ばれたようです。

 

 今年の2位以下は次の通りです。

 ロンドン五輪のチームワークなどから「輪」、領土問題から「島」「領」、政治の混乱などの「乱」が

続く。これを見てなんだかちょっと寂しくなりました。東日本大震災や福島第一原発の放射能拡散が、

たった1年と9か月しか経っていないのに、これに関する漢字がでていない。

ちょっと寂しい。

 人々の中で3.11は徐々に風化し始めている。 

「悲しいことや辛いことは早く忘れて、希望への道を歩みたい」という気持ちも大切ですが、

福島をはじめとする東北の被災地の苦しみを忘れてはならない。

過去の災害を教訓として、未来を担う子供たちに安心して住める社会を手渡すことが、

私たち大人の役割だと思います。 

 

 3.11の悲劇を決して忘れてはいけない。

          (昨日の風 今日の風№2)

          


風の行方(19) 「仮の町構想}(3) 帰還困難区域

2012-12-13 22:16:18 | 風の行方・原発

風の行方(19)  第2部(8)

 「仮の町構想」(3)  帰還困難区域

 原発事故から1年半(2012.10現在)が過ぎた現在でも

16万を超える福島県民が避難生活を送っている。

行政の核となり住民の生活全般を支える拠点となる役場が

住民とともに移転せざるを得ない。

こんな大変な事態が1年9か月も続き原発被災地の復興再生計画は一向に進まない。

 

 全町避難の続く福島県双葉、富岡、浪江、大熊の4町がこの「仮の町構想」に手を上げている。

「仮の町」は避難町村の中で唯一福島県外の埼玉県に役場毎集団移住した

双葉町井戸川町長が名付けたものである。

井戸川町長は「町民が1個所にまとまって一定期間暮らす拠点」を想定し、

「仮の町」というネーミングでその設立を政府に要求した最初の自治体である。

 

 しかし、「仮の町」というネーミングには異論がある。

「町の主体性がなくなる」(馬場浪江町長)、

「落ち着いて生活できない印象がある」(渡辺大熊町長)など否定的である。

有力受け入れ先のいわき市も、

「仮の町は避難者が将来地元に戻ったら廃墟が残る負のイメージがある」と難色を示す。

 

 「町外コミュニティー」と呼ぶのは浪江町と大熊町。

馬場浪江町長は住宅の他に、行政、商業、教育、医療機関を整備する考え。

渡辺大熊町長は県が「町外コミュニティーと言っているのでそれに合わせた」、

しかし、高齢者にはわかりにくいとの声を考慮して、「町外拠点」を併用するという。

 

 「サテライト」は遠藤富岡町長が提唱する。

移住拠点をいわき市と郡山市に分散する考えがあり、「本体は富岡町に置き、

「町外拠点としてのいわき市と郡山市の集団移住地は『衛星』と位置づけする」という考えである。

  (住む人が少なくなり取り壊される仮設住宅もある)

 いずれにしろ、1年9か月も続く避難生活から、一歩でも先へ進み、

同郷の者同士が肩を寄せ合って暮らせる場の法的整備を政府は急ぐべきだろう。

 

 「狭い仮設住宅」、「いまだに雑魚寝同然を強いられる避難所」。

 目をつぶり、「見ざる、言わざる、聞かざる」になってはいけない。

                                            (つづく)

 

 


高速増殖原型炉 「もんじゅ」

2012-12-10 21:56:09 | 昨日の風 今日の風

 高速増殖原型炉「もんじゅ」

  何かと話題に事欠かない「もんじゅ」がまたしても大きなミスを侵した。

12月6日付け朝日新聞は次のように伝える。

  原子力規制委員会は5日、日本原子力開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)で必要な手続きをしないまま

約1万点の機器の点検時期を延長させる管理不備があったとして、保安規定違反にあたると認定した。

 

   原発の危険性を再認識し、「脱原発」へ大きく舵を切ろうとしているこの時期に、

何という自覚に欠けた体質を露見した一件ではないか。

 

   機器の点検時期を延長する場合、安全性を評価したうえで点検計画を変更する必要がある。

しかし、2010年7月以降、点検対象の機器約4万点のうち9679点で変更手続きを怠っていた。

                                                                  (太字は朝日新聞からの引用)

 2011.3.11の放射能拡散事故が起きたにもかかわらず、

点検の不備の改善を怠っていた無神経さに、恐ろしいものを感じる。

  

高速増殖炉はプルトニウムを燃料にし、運転しながら燃料を増殖させる原発。

 原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で燃やして

利用する計画を「核燃料サイクル」という。

 「原発ゼロ」をめざすなら、核燃料サイクル計画は必要ない。

 

 かっては核燃料サイクルの実現を目指して研究、開発していたが、技術的な難しさ、

高いコスト、核拡散の問題を理由に、欧米はすでに撤退している。

 (写真・高速増殖炉「もんじゅ」)

   高速増殖炉「もんじゅ」の計画も遅々として進まない。

 1970年代にはその実用化を「1995年~2005年ごろ」と目標設定していたが、

現在では「2050ごろまでに」実用化を目指すとしている。

 

 「もんじゅ」は発電からまもない1995年12月に冷却材のナトリウム事故を起こした後、稼働していない。

現在までに9千億以上の資金が投入されたにもかかわらず、実用化の目途さえどんどん遠ざかっていく。

 

 しかも、停止中にもかかわらず1日5500万円の維持管理費を費やしている。

「もんじゅ」は原型炉であるから、研究・開発が進めば、実証炉、実用炉と進めなければならず、

ますます実用化から遠ざかっていくことは必然である。

 

 軽水炉の原発が外国から丸ごと輸入されたのに対して、「もんじゅ」は国産開発のシンボルだったから、

「政府も原子力ムラ」の専門家たちも、必死になって自分たちの城にしがみついたといわれても仕方ないだろう。

 

 「もんじゅ」で冷却材に使用されるナトリウムは水と爆発的な反応をするため、

制御が難しく、事故が起きた時の危険性は極めて高い、と専門家は指摘する。

 

 「脱原発」から「自然エネルギー」の活用へと、エネルギー政策の大転換をしなければならないときに、

「核燃料サイクル」は上記の流れに逆行する流れではないか。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す

再処理事業も根本的に見直さなければならない。

 

 脱原発を本気で考えるなら、「核燃サイクル」問題は避けて通ることはできない。

 

 即時「廃炉」とは言わないが、「原発」はいらない。

 未来は「原発」を必要としていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


風の行方(18) 「仮の町構想」 (2) 新しい町

2012-12-06 15:36:01 | 風の行方・原発

  「仮の町構想」(2)  新しい町  ウクライナ市 スラブチチ

 1986年4月、史上最悪の放射能汚染事故を起こしたチェリノブイリ原発の近くにあった

「原発労働者」の町「プリピチャ」は、

前回紹介した消えた村186の村の一つである。

その代替え都市として事故の2年後にウクライナ北部に建設されたのがスラブチチ市である。

チェリノブイリ原発の北東約50㌔にあり、

人口2万6000人のうち約1万人がチェリノブイリ原発関連の仕事に従事しているという。

 だが、原発依存都市「スラブチチ」市は、産業に乏しく工場もない。

ウクライナ政府は同市を「特別経済地域」に指定し、

減税など特典を与えることで投資や企業誘致に取り組んできたが、進展は見られない。

 

 原発事故の風評被害が災いしているのだろう。

 

 ここでテーマとなっているわが国の「仮の町」とは、

すこし意味合いが異なるが、旧ソ連の事故後の対応は早かった。

事故の2年後にはスラブチチ市は建設され、

5つの学校や病院、映画館など日常生活に必要な設備も完備した。

 社会主義だった旧ソ連では、個人が土地を所有することを禁じられ、

国家権力で迅速に政治決着をつけられたという事情はある。

 

 それにしても、我が国の福島第一原発の復興計画が、

遅々として進まないのに比べ、

なんと迅速に進んだ旧ソ連の計画だったことか。

 

 福島第一原発事故から1年9カ月を経過した現在でも、

原発被災地の復興計画にはばらつきがあり、

「帰還困難区域」から避難し、

他の自治体で暮す人々の生活は復興・再生からは程遠い。

               キーワード・「仮の町構想」

                   福島第一原発事故で長期避難を強いられている住民が、

                   帰還の日まで自治体ごとにまとまって暮らすため、自治体が

                   他の自治体のなかに役場機能や病院、学校などの「町」を

                   作る構想。

                     現在の地方自治法には具体的な規定はなく、国が法整備の

                    必要性を検討している。

                      福島復興再生基本方針では、受け入れ先の自治体との間で

                    円滑に進められるよう国が支援することを明記している。

                                                           (つづく)