雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内 「終列車」・森村誠一著

2010-01-26 23:12:02 | 読書案内
  新宿発23時20分「急行アルプス号」は松本方面へ向けて出発する「終列車」である。

  週末は、信州・上高地方面の登山客で混雑する「終列車」で、この終列車は、
   翌朝四時頃には松本に着き、終点の南小谷駅へは六時頃に到着した。

 「急行アルプス」に偶然乗り合わせた2組の、
それぞれに重い荷物を背負った男女を巡るミステリーである。

  赤坂直司:
    40代半ば窓際族で、仕事に失望し、家庭に吹く隙間風に人生の侘しさを感じている。
   「急行アルプス号」が発車しても浮気旅行の相手・山添延子はついに現れず、
   空席になった隣の指定席を深草美那子に譲ることになる。

  深草美那子:
     愛人・大中和幸との旅行のはずが、男は現れず、「急行アルプス号」で、赤坂に空いている指定席を譲ってもらったことから、相手に振られた者同士の奇妙な旅が始まる。

  北浦良太:
    チンピラやくざの良太は、鉄砲玉の指名をされて相手を殺しに行くが、すでに標的    の男は何ものかに殺害されていた。犯人として指名手配された良太の逃避行が始ま    る。

  塩沼弘子:
     夫を亡くし、最愛の息子を事故で亡くし、生きる術を失くし、傷心の旅をする。

 行きずりに隣り合った終列車「急行アルプス号」で、二組の男女の旅が始まる。
 ある事件を中心に、暗い人生を抱えた者たちの「接点」が見えてきて、殺人の全容が徐々 に見えてくる。

  森村誠一の小説に流れる「虚無感」が、この小説にも流れている。と同時に「哀感」が  読後に読者をほっとさせるところに、森村ワールドの根強い人気が、あるのかも知れない。最終章ではそれぞれの男女が再生に向けて歩む姿を暗示して、小説は終わる。 昭和63年刊行

  「終列車」の小説の発端となった「急行アルプス号」は、
   2002年12月のダイヤ改正で、その任務を終了し、現在は「快速ムーンライト信州号」が、新宿発23:59→白馬着05:39
   週末の夜のみ運転。全席指定。

  廃止になった「急行アルプス号」は、毎日運転で自由席もあって、人気がありました。    
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人生の盛り(新年のあいさつに代えて)

2010-01-01 23:41:57 | つれづれに……
 「人の一生で、いったいいつが盛りかと問えば、
  それは、若い時とは限らぬもの  だなぁ……」

 「人によっては、不惑を過ぎてから、
  あるいはもっと年をとってから、その盛りを迎える方もあろう。
  いずれにしろ、それは人それぞれの心の持ちようであろうし、
  死ぬその時までわからぬものであろう。
  人によっては、
  自分にはそのような盛りなどなかったといわれる方もあろう」

  秋の庭を眺め、
  酒を飲みながら安陪晴明とその友人のしみじみと語りあう場面である。

  大気は透明で、庭の隅々にまで月光が行き届いており、
  月の色が花のごとく匂ってくるような、秋の宵である……。
  すだく虫の音がかすかに聞こえてくる。
   
   (小説・陰陽師安陪晴明 夢枕 漠著より)

   吟逐のある言葉です。

   どんな時代にも、どんな時にも人間は、
   くじけようとする心と闘い、自分の道を探しながら、
   人生行路を真摯に歩んできたのだと思います。

   たった一握りの幸せでも、ある人にとっては、
   たゆまぬ努力と信念の末にやっと手に入れた幸せならば、
   それはその人にとっては、とても大きな、
   何ものにも代えがたい幸せになるものだと思います。

   年頭に当たり、皆様の健康を願い、新年の挨拶といたします。
   2010年 正月
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