雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

花火師の恋

2008-08-28 21:36:55 | 季節の香り
 大地を揺るがすような音と同時に
 漆黒の夜空に向かって
 赤い炎が立ち昇る

 見上げる人々の頭上に
 大輪の火の花が鮮やかに開花していく
 
 赤く
 限りなく赤く
 まるで血のように赤い火の花に
 見上げた観衆から
 感動のため息が漏れる

 花火師は
 愛する娘を
 永遠に
 自分だけのものにするために
 娘の心臓を
 スターマインの玉の中に込め
 打ち上げたのでした……

 その夜
 娘が一人
 村から姿を消しました


  花火師の悲しい恋の物語を想像しながら
  果たして、花火師の思いは天に届いたのだろうか
  と、河川敷の草をかきわけながら雑踏から離れ
  仰ぐ夜空にまたひとつ、恋の想いが花開きました
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夕立に濡れて

2008-08-21 10:55:33 | 季節の香り
 前方、北の空を見上げると 黒く重い雨雲。
 一瞬、ウォーキングを中止し、引き返すかどうか思案するが、
 そのまま、愛犬「はな」と歩くことに決めた。

 風が強くなり、丘陵地帯の林を抜ける突風は
 木の葉を吹き飛ばし、枯れ枝を落としてくる。

 「やばい」

 引き返さなかったことをわずかに後悔しながら、
 突風の中を、急ぐ。


 県外の上流ではかなりの雨が降ったのだろう
 G川の水かさが、時間の経過とともに増えてくる。

 水かさが増え、遊歩道まで水が乗り上げれは
 逃げ場はない。

 突風がやんだ。
 予想した通り、豪雨となる。
 増水の状況をみると、水が遊歩道を浸水するまでには、
 まだ時間を要するようである。

 風の吹く前には散策していた人たちもいつの間にか姿を消し
 篠突く雨に煙る、河川敷には私と愛犬だけになってしまった。

 不安な思いをしながら、全身ずぶぬれになり
 一方では、
「こんな経験はめったに出来ない貴重な経験だぞ」
 という、気持もどこかにあって、無事帰宅してみれば
 安堵するとともに、これもいい経験ではないかと
 濡れて冷えた体を、湯船で温めながら、思いを巡らす
 私がいました。
 
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晩夏の風

2008-08-15 21:38:06 | 季節の香り
 蝉時雨の葬送曲に送られて
 晩夏の夕日が
 西の空を茜色に染めて
 墜ちて行く

 対局の東の空から
 宵の薄暮の中を
 橙色の月が静かに登ってくる

 この月の色は
 胎児が母親の羊水の海の中で透かし見る
 危険だけれども
 まだ見ぬ、未知の憧れの世界の色に似ている

 宵の明星が
 最後の夕日を浴びて
 一瞬の輝きを反射する

 葬送の蝉時雨がやんで
 風は
 川面を渡り
 晩夏の時を告げる
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立秋をむかえて

2008-08-10 22:25:54 | 季節の香り
立秋をむかえて つれずれに

 空が茜色に染まりはじめ
 長い夏の日の一日が
 ようやく
 終わろうとする
 黄昏どき

 一瞬涼やかな風が
 緑の林の
 下草をなでて通り過ぎる
 胸いっぱい吸い込んで
 見上げた夏の群青の空に
 まっ白い入道雲が
 夕暮れの光を浴びて
 うっすらと
 淡い茜色に染まっていた

 明日も
 暑くなりそうな予感が流れるなかを
 蜩(ひぐらし)が
 晩夏のときを告げている

 (八月・葉月夕暮れの遊歩道を歩きながら)
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