雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

祭囃子が聞こえる 騒音 雑音 妙音

2022-07-31 06:30:00 | つれづれに……

祭囃子が聞こえる 騒音 雑音 妙音
  
祭囃子が聞こえてくる。
   午後5時から8時まで、7月末の祇園祭りのための練習が、
   本番2週間前頃から各町内ごとに行なわれる。
   夏休みに入ったばかりの子どもたちが会所に集まり、
   大人たちに混じって、子どもたちも横笛、鉦、太鼓練習に励む。
         
  多くの町内が、「お囃子」のメンバーが確保できず、
  太鼓とカセットに吹き込んだテープを流して場を凌いでいる。
  私の町内はお囃子も太鼓も本物で、毎年練習を重ねて、本番でお披露目をしている。
  事件が起きた。
  近所のお年寄りが、包丁を片手に練習場に来て、「うるせー」と威嚇してきた。
  幸い、周りに居た若い衆のはからいで事なきを得た。

  祭りは、郷土芸能の一つであり、五穀豊穣を願う「祇園祭り」は、町の大イベントである。
  しかし、こういうものにさえ、「うるさい」とクレームをつける人がいる。


  守り育てて来た地域文化は、そこで生き、
  生活している人たちが長い時間をかけて育て、守って来た文化である。
  寄付はしない、打ち合わせにも出てこない。
  でも、自分の思い通りにならないと文句を言う。
  離れて暮らしている孫たちが来れば、率先して孫たちを祭りに参加させ、
  握り飯弁当を貰い、お土産の花火セットを貰っていく。

  あなたは寄付もしないし、地域の打ち合わせにも出てこないから
  弁当もお土産花火もありません、なんて野暮なことはことはいわない。

  ある人にとっては、祭囃子の笛の音や鉦、太鼓の音がうるさく聞こえるらしい。
  郷愁を呼び起こすような囃子も、雑音や騒音に聞こえてしまう。

  地域社会の中で起こるクレームには、我がままにしか思えないことが沢山ある。
  学校部活のテニスの練習の「かけ声」がうるさいから、かけ声を止めさせろ。
  これで聞き入れられなければ、「教育委員会」に連絡すると脅しともとれる言動に、
  学校側は、「沈黙の練習」を生徒に強いることになる。
  長い歴史の中で育んできた部活にクレームをつける人、
  それを了承してしまう弱腰学校運営。

  道路のキワに植えてある桜の木の花びらが風に舞い、
  民家の屋根に落ち問いが詰まるから桜の木の枝はらいをしろ。

  街のはずれにある大きなしだれ柳は、地域のシンボルであり、
  小さな村社があり、枝垂れ桜やサルスベリの木などがあり、
  縁日には屋台が出る。
  この地に新興住宅地ができ、新しい住人が増えた。
  秋になれば落ち葉が落ち、新しい家の屋根に落ち場が落ち、雨どいを詰まらせる。
  だから、木を切って欲しいと、自治会にクレームをつける。

  保育園建設反対、施設建設反対。
  総論賛成、しかし各論反対という意見が多い。
  なんでこの地域に…と虫のいい自分勝手な意見が多いようだ。

  朝日新聞7/20の記事にこんな話が紹介されている。
     作家の宮本輝さんが軽井沢に別荘を買った。避暑地として有名なここには、
     文化人の別荘が多く、静かな林の中に無点在する別荘があり、静かな書斎で
     仕事ができると宮本氏は思っていたが、窓の外に広がる林は、野鳥の生息地
     でもあり、野鳥が巣をつくり、子供が生まれると餌を求めて泣く泣き声が癇
     に障り、気が散って小説が書けない。かんしゃくを起こした氏は家族に八つ
     当たりする。
      鳥のことで怒鳴り散らす息子に、氏の母は次のように言ったという。
     「鳥が気になって書かれへんのやったら、小説家なんてやめてしまいなはれ」
     と。
     この随筆を紹介した記者は、コラムの最後を次のように結んでいる。
     神経を逆なでするような音も、どう感じるかは聞く人の意思や気分によって
     大きく変わる。
     雑音と妙音の間を揺れ動く音に、人は常に試されているようにも思えてくる。

     最後の一行は自分への戒めとして記憶にとどめておこう。

       (つれづれに……心もよう№130)         (2022.7.31記)
    

 

 

 

 

 

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逝きて還らぬ人を詠う ⑦ 「ありがとう」を言うと最後になりそうで……

2022-07-24 06:30:00 | 人生を謳う

逝きて還らぬ人を詠う ⑦ 「ありがとう」を言うと最後になりそうで……

      『大切な人が逝ってしまう。
    
人の世の宿命とは言え、余りに辛い体験はいつまでたっても心が癒されない。       
    悲しいことではあるけれど、
人間(ひと)はいつかはこの試練を乗り越えて生きていかな
 ければならない。
死は予測された時間の中をゆっくり訪れる場合もあり、突然訪れる
 場合もある。
どちらの場合も、無常観と切り離すことはできない』

〇 聞こえるかお前の好きなあの頃の軽いロックが出棺の曲
                         …… (神戸市) 松本淳一 朝日歌壇2021

      最期のお別れだ。お前と俺が今でも共有している軽いロックを聞きながら送りだす葬送曲だ。
      出棺の時は、なんの憂いもなく、ただこの曲ももう一緒に聴くとはないのだと思うと寂しさがこみあげて
      くる。「あの頃」をなつかしく思い出している作者がいる。


〇 
花を待つ人亡くて花咲きにけり
              ……(横浜市) 生田康夫 朝日俳壇 2021.04.11

      主のいなくなった朽ち果てていく廃屋の庭に今年も花が咲いた。花の咲くのを待っている人もいな
      いのに花は咲いている。この句を詠んで、今ではあまり使われなくなってしまった『苫屋』(とまや)
      という言葉を思いだしました。屋根を菅(すげ)や萱(かや)などで葺いた古い民家という意味かと思いますが、
      『われは海の子』という歌を思い出しました。
      われは海の子 白波の   さわぐいそ辺の松原に
      煙たなびく苫屋こそ    わがなつかしき 住み家なれ

       今と違って地方文化が生き生きと営まれていたころに、海を故郷として真っ黒に日焼けした子どもたちが
       パンツ一枚になって遊ぶ姿が描かれています。「煙くたなびく」というところに当時の生活の実感がこも
       っています。
       この句は、過疎化で年々さびれていく苫屋に咲く花に思いを託し、さびれていく過疎の村の風景を謳って
       いるのでしょう。また、『年々再々花相似たり、年々再々人同じからず』と昔の中国の人が詠んだ漢詩を
       思い出し、変わりのない自然の営みと、人の世のはかなく移りやすいことなど、想像の翼を広げました。

 

〇 「ありがとう」を言うと最後になりそうで言えないままに父を看取りぬ 
                       …
… (前橋市) 町田 香 朝日歌壇 2021.04.25
       ついに言えなかった父への最期の言葉。これを言ったら父がすぐに逝ってしまうようで言えなかった
       「ありがとう」。「あの時、言えばよかった」と悔恨の気持ちがわき上がってくる。
       「ありがとうって言えなくて、父さんごめんね」という声が聞こえてくる。


〇 
十年は昔にあらず慰めは未来にならず子の墓洗ふ 
                    
…… (盛岡市) 及川三治 朝日歌壇 2021.04.04
       子を亡くした親の気持ちが、『墓を洗う」という最期の言葉に表現されています。
       子との想い出が昨日のことのように浮かんでくる。
       やさしい慰めの言葉をかけられても、いやされることもなく、
       生きるすべを奪われたような寂寥感が胸のうちを漂う。
       墓を洗いながら子を失った現実を噛みしめる。
       わたしの母は二女をお産で母子ともに亡くし、残された3歳の子を前にして、
       「私が代わってあげるから、戻ってきておくれ」ともの言わぬ娘に何度も何度もささやいていた。

〇 徘徊の妻を語りて涙ぐむ友を励ます妻なしわれは 
                    
…… (小美玉市) 津嶋 修 朝日歌壇 2021.02.28
       男どうしの友情が感じられる一首です。日々子どもに還っていく妻。やさしく、美しかった妻が
       少しづつ壊れていくのを見るのがつらいと涙ぐむ友人を励ましながら、
       「それでも、生きていてくれるだけでいい……」と、妻を亡くした哀しみを新たにする。


〇 知らなくていいことまでも知りそうで父の遺品は手つかずのまま 
                     …… (相馬市) 根岸浩一 朝日歌壇 2021.02.28
       喪の作業は逝ってしまった人を偲び、残された人の悲しみを癒していくプロセスです。
       遺品整理は故人を偲び、個人の在りし日の姿を思い出す作業ですが、悲しくつらい作業になることもあ
       り、整理した遺品を形見分けするにも時間がかかる場合もあります。腕時計、眼鏡、財布などを見れば
       在りし日の元気な姿が蘇ってきます。一つひとつに思い出があり、時によっては個人の知らなくてもいい
       秘密まで知るようなことになります。
       大切な人を亡くし、情緒の不安定な時期が訪れます。孤独で、とても辛い時期です。
       同時に「どうして私を置いて逝ってしまったの」「どうして私だけが…」と相手を攻める、
       自分を責める時期が同時進行的に起きてくるようです。そして最終的には、死を「受容」できる段階に至
       ります。個人差はあるものの、人生の定離を認め人生の終わりを静かに見つめることができて、
       心に平穏が訪れる時が訪れます。と、書いてしまうと何だか味も素っ気もない文章になってしまいます。
       「グリーフケア」のセオリーはセオリーとして、悲しみを克服し、立ち直るには個人差があり、
       いつになったら悲しみが癒されるのかはわかりません。
       残された遺品を見て、故人に思いを馳せることが、故人からの大切な贈りものなのでしょう。

       

           (人生を謳う)          (2022.07.23記)

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ニュースの声(15)  狂気の凶弾に倒れた安倍さん

2022-07-15 06:30:00 | ニュースの声

ニュースの声(15)  狂気の凶弾に倒れた安倍さん
  安倍元首相撃たれ死亡む  (朝日新聞7/9一面トップ)
   自民党をはじめ、警護に当たった警察関係者、突然の凶事に号外を出し、
   唖然としたのは関係者だけではない。
   テレビのテロップを見て一瞬目を疑い、「まさか」という気持ちがやがて数時間後に
   流れたテロップは、「心肺停止」の後流れた「死亡」の文字だった。
   信じられない思いと同時に、泡立つような鳥肌が沸き立ち、私はオロオロした。
   
   朝日は一面に社説を張った。特別の措置に事件の重大性と驚きが厳しい言葉で綴られていた。
   銃弾が打ち砕いたのは民主主義の根幹である。
   前身の怒りをもって、この凶行を非難する。
   ……戦後日本の民主政治へのゆがんだ挑戦であり、決して許すことはできない。
   その罪の危険さ、深刻さを直視しなければならない。
   民主主義をなんとしても立て直す。決して手放さない。
   その覚悟を一人ひとりが固める時である。
         感情を抑え、冷静に伝えるべき内容を吟味し、主張し、ときには啓蒙し
         世論をリードしなければならないジャーナリストとしての理性が揺らぎ
         部分的には感情過多な社説になっている。
         衝撃の深さを物語っている。
   天声人語も、抑制されたてはいるが激しい言葉を紡ぎ出している。
   世を震撼させる事件だが、(テロは)前代未聞というわけではない。
   ……まさか現代の日本で、と書いたが、政治家への暴挙は残念ながら時折
   起きている
   ……どんな政治であっても、それをただすのは言論、そして民主主義の手続
   きである。
         道半ばにして倒された戦前、戦後の政治家の事例をあげながら、
         「暴力の卑劣さは、何度非難しても避難し足りることはない」と
         天声人語氏の激しい息遣いを時々のぞかせる。
         だからこそ私たちは明治半ばの自由民権運動で「言論の自由」や
         「普通選挙制」を獲得し育ててきたのだ。
         
  どんなに立派な法律や条文を作ろうとも、社会は変容しその中で生きている私たちの
  考え方や行動も変わっていく。人間にとって基本的な規範は変わらなくても、いつの
  世にも規範から逸脱してしまう人間や社会的規範から落ちこぼれ、底辺を漂い鬱屈し
  た生活をせざる得ない人間は存在する。
   ただ近年は、動機の曖昧な事件や自分の不遇を他者に転化してしまう事件が多くみ
  られる。どちらの事件も短絡的で、無責任極まりなく自己の正当性を主張するのみで、
  倫理観の欠片も持ち合わせないような人物が存在する。
   例をあげれば、「大阪キタ新地クリニック放火殺人事件」(令和3(2021)年12月17日)
  の谷本盛雄被告や、「京都アニメーション放火殺人事件」(令和元(2019)年7月18日)の青
  葉真司被告の事件などが思いおこされる。安部元首相を襲った事件も短絡的で無節操な、
  自分の不遇を他者に転嫁し、手製の銃を作り負のエネルギーを一気に特定の人にむけてし
  まった事件なのではないか。
   
   歴史に残るようなこの襲撃事件で、無節操な暴漢によって、有為な人材が失われたとす
  れば、倒れた本人の無念さは計りがたく、遺族の方々の悲しみは深く時の流れを経ても癒
  されないだろう。
   
         前回の「 ニュースの声(14)」で次回「ニューの声(15)」では、招待者に「長年にわたりふ
  るまい酒」を提供したのは誰なのかを掲載することを約束した。
  しかし、安倍元首相は凶弾に倒れてしまった。
   バイタリティに富んだ政治活動は評価され、在任中は政治家としての資質を充分に発揮し
  た安倍氏の死を惜しむ声は日本ならず世界の国々や地域からも聞こえてくる。
   「モリカケ問題」は安倍氏の大きな汚点として残ってしまった。同様に「桜を見る会」に
  於いても政治資金規正法違反と公職選挙法違反の疑いがもたれていた。このことを私は私な
  りに糾弾したかったのだが、凶弾に倒れた安倍氏に、死者に鞭打つような行為は今の私には
  できない。従って「桜を見る会」のシリーズは前回の「ニュースの声(14)」で幕を閉じるこ
  とにしました。
   「余人をもって代えがたい」政治家の一人として、私は元総理の安倍氏が大好きだった。
  今はただ、安らかに眠れと祈り手を合わせるばかりである。
 
             (ニュースの声15)       (2022.7.14記)

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ニュースの声(14)  安倍晋三「桜を見る会前夜祭」②ふるまい酒 

2022-07-08 06:30:00 | ニュースの声

ニュースの声(14)  
  安倍晋三「桜を見る会前夜祭」②ふるまい酒
                          (2022.5.29号 赤旗日曜版)
     前回の会費補てん問題に続く赤旗日曜版のスクープ記事だ。
     以下、ヘッドラインから引用する。
      「桜を見る会」前夜祭をめぐる新たな重大疑惑が浮上しました。
      安倍晋三・元首相側が会費を上回る費用を補てんしただけでなく、
      会場に大量の酒を持ち込み、有権者に提供していました。安部氏の
      秘書の供述調書によると、大量の酒の持ち込みは、公職選挙法違反
      の指摘を怖れて、補てん額を抑えるためのいわば、『隠蔽工作』。
      しかも、違法寄付の疑いもーー。
           ※ 「費用補てん問題」は前回ニュースの声14を参照にしてください。
     「安倍晋三後援会 桜を見る会前夜祭」の会場となった某高級ホテルの職員が作成
    した「宴会ファイル」には、酒の種類や本数まで明記されています。

     安部氏側が会場に持ち込んだ酒と本数
      2017年             2018年              2019年
       ウイスキー30本         
  ビール        80本           ビール500ml 20本
       赤ワイン 24本           ウイスキー30本            ウイスキー  42本
       白ワイン 24本           赤ワイン 24本          赤ワイン   24本
            焼酎   12本           白ワイン 24本                白ワイン   24本
                         焼酎720ml 12本          焼酎     12本
     これまでに判明しているホテルへの補てん額
      2017年              2018年              2019年
       186万860円            144万9700円           250万7732円

            ※ 会費は安倍氏の地元後援者らを対象に、一人5000円を参加者から徴収したが、
              不足分は安部氏側が補てんしていた。
              補てん額など政治資金市有志報告書に記載がないということで、
              安倍氏の公設第一秘書は政治資金規正法違反で、略式起訴された。
               一方選挙区内の有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反容疑について、
              「参加者に寄付を受けた認識がなかった」などとして不起訴処分(東京地検)。
              不起訴処分となった安部氏は検察審査会で「不起訴不当」の議決を受ける。
              つまり、わかりやすく言へば、「安倍氏への不起訴処分」は、
              納得がいかないということなのだ。
               だが、21年12月に嫌疑不十分で、再び不起訴処分になった。
              「持ち込みふるまい酒」であっても、「参加者に寄付を受けた認識がな」ければ、
              その是非は問われないことになり、なんともすっきりしない事件の顛末である。
    秘書供述によれば、費用補てんが公選法に違反する恐れがあると認識し、
   その補てん額を抑えるために大量の酒を持ち込んだという。
   これは隠蔽工作で、悪質な行為だ。
    有権者への利益供与は、
     会費不足分の補てんだけでなく、酒の提供があり、該当する支出の記載もない。
    政治資金規正法違反と公職選挙法違反に抵触するのではないか。
           会費収入で不足する支払い分を補てんするのは有権者への寄付になり、
            
公選法違反になるということを秘書は認識していた。これを検察が公選
             法違反で起訴せず、嫌疑不十分で不起訴にしたのはふとうなしょぶんで
             ある。企業からの酒の無償提供を受けたのは政治資金規正法違反になる
             ので収支報告書にも記載しなかったのではないか。
                               (神戸学院大学教授 上脇博之)
  ホテルが作成していた「宴会ファイル」には、
 酒の本数と共に「〇〇様より持ち込み」として電話番号が付記されていた。

 
『持ち込みふるまい酒』はどこから持ってきたのか。
                                   (つづく)

(ニュースの目№14)       (2022.7.7記)


       

   

  

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