雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

白鵬連勝記録成らず③ 名力士に向かって

2010-11-29 21:53:13 | つれづれに……
 「心」「技」「体」。
 相撲で大切とされる要素の中で白鵬は、
 「『心』がいちばん難しい」といつだったか語っていた。

 勝ち続ける者は常に追われる立場にある。
 勝負の一番一番を、
 最高のコンディションで臨まなければ、
 勝負の神に見放されてしまう。

 内に秘めた闘志を燃やしながら、
 平常心を保ち、
 勝負に勝つことがどれだけ難しいことか。

 自分との戦いに敗れ、
 消えていった有名無名のスポーツマンは沢山いる。
 
 勝負に向かう闘争心をかきたてながら、
 一方では自分の内面との戦いをどう乗り越えていくのか。

 これは、答えのない、無限の闘いであり、
 名力士になるための一里塚でもある。

 「相撲の中に隙があった」と述懐する白鵬は、
 目標とする双葉山の記録に届かなかったのは、
 なにが足りなかったためか、との質問に
 「ゆっくり考えます」
 と答えている。
 問われて答えの出るような簡単な質問ではない。

 横綱白鵬。
 25歳。
 まだ若い。
 
 ふたたび夢に挑戦し、
 いつの日かその夢を実現してほしい
 夢は大勢の相撲ファンの夢でもあるのだから。
                      (終)
 
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白鵬連勝記録成らず② 勝負師の心

2010-11-17 22:26:59 | つれづれに……
 土俵に落ちた瞬間
 「これが負けかと思った」と語る白鵬。

 連勝記録は63勝でストップした。
 星の一つ一つを、持てる力の全てを尽くして、大切に取り組んできた。
 思えば長い闘いだった。

 63個の白星を獲得するために費やした時間。
 
 297日ぶりの敗戦。

 全てをつぎ込み、精進してきた汗の結晶が
 音を立てて崩れていく。

 たった一つの黒星とひきかえに手にしたカードは
 「無念」というには余りにも重たい、敗者のカードだった。

 土俵に落ち
 全ての緊張から解放され瞬間
 やはり白鵬は微笑んだのだ。

 無残に崩れ去った記録の夢。

 怒涛のように湧きあがる驚きの歓声の中で、
 白鵬はただ一人孤独をかみしめた。
 握りしめた拳に力を込め、
 身体を起こそうとしている白鵬の顔面にアップでせまるカメラに向かって
 
 白鵬は微笑んだ

 それは、悔恨とある種の解放感や安堵感であったに違いない。

 自分自身の内面に「微笑む」しかなかった孤独なヒーロー。

 闘争心に火をつけ、立ち上がるための一瞬のほほえみを、
 「これが負けか」と悔しさをかみしめ、
 負のエネルギーを闘いへのエネルギーに変えていく力強さを、
 私は感じた。
                             (つづく)

  お詫び:文中 ……孤独なヒーロー以下が
  「白鵬連勝記録成らず③名力士に向かって」と一部が重複していたので、
  削除して新たに4行を加え、(終)を(つづく)に改めました。 
 
 
 
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白鵬連勝記録成らず ① 敗者の微笑

2010-11-16 23:35:49 | つれづれに……
 白鵬が敗れ、平幕の稀勢の里はもっとも大きな金星を上げた。
 記録は63連勝でストップ。
 双葉山の持つ歴代一位の69連勝にあと一歩というところで、敗れた。
 あと6勝。
 巨大な壁が、前に立ちふさがり、白鵬は敗者になった。

 取り組みの前半、張り手をかまされた白鵬に、平常心を失う動揺はなかったか。
 一発、二発と張り手をかまされた白鵬。
 体勢が揺らぐ。
 勝負の後半防戦を強いられる白鵬は、
 強引な投げを何度か試み活路を見出そうとしていた。

 しかし、稀瀬の里の突き落としに、体勢を崩し、押し込まれ、最後は寄り切られた。

 19秒0。

 土俵下に転落する白鵬。
 記録達成への道が閉ざされた瞬間である。

 土俵に落ちた瞬間「これが負けかと思った」と語る白鵬。

 土俵際の観客の中に割り込むようにして落ち、身体を起こす姿が
 テレビ画面にアップになる。
 「苦笑」するような笑いが映る。この笑いは何なのだ。
 私には、「苦笑」というよりも、「微笑」に近い笑いに見えた。

 大記録に挑戦し、敗れた者の表情としては、なんと不可解な表情なのだろう。
 私の卒直な感情に、最初は違和感を覚えたが、やがて次のように理解した。
             
                               (明日に続く)
 
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映画「さまよう刃」を観て(4の(6) 「さまよう刃」とは (最終回)

2010-11-15 22:41:23 | 映画
 「さまよう刃」のタイトルの意味するものは何か?
 
 警察はそれ(長峰が追いつめた殺人少年犯を殺すこと)を阻止しなければならない。
 そのために長峰が死んでも仕方がない
 というのが警察の見解である。

 悪を戒め、正義を守るための警察権力。

 だが、自分たちが正義の刃と信じているものは、
 本当に正しい方向に向いているのだろうか。
 若い刑事・織部の苦悩である。

 警察権力と少年法の矛盾の中で
 揺れ動く正義の「刃」、ということなのだろう。

 また、
 「長峰の持つ猟銃には弾丸が装填されていなかった」。
 これをどう解釈すればいいのか。

 ここに、もう一つのタイトルの意味するところがあると思う。

 殺人少年犯を追いつめ、
 復讐を遂げようとする長峰の揺れ動く気持ちをイメージしているのではないか。

 狂気にも近い殺意が徐々に変化し、
 やがて、(4)の(5)で示したように「死の恐怖」を与えることに変わっていく。
 
 同時に、未来に絶望しか見いだせなかった長峰の心に光を灯し、
 支えになったペンションの女も見逃せない。

 頑(かたく)なに心を閉ざし、復讐の鬼と化す長峰が、
 人の情けを受け入れ、人を信じることによって、
 未来にかすかな希望を見出していく過程が、
 「さまよう刃」の意味するところではないか。

      (終)

    最初、2~3回のシリーズで終わる予定だったが、
    9回と長くなってしまいました。
     テーマの内容が重く、映画や原作の小説を読ん
    でいない閲覧者にも理解しやすいように書くうち
    に、だんだん長くなってしまいました。
     続けて閲覧していただいた皆さんに感謝です。
    とりあえず、最終回ということですが、日を改めて
    テーマに沿った関連本の紹介を「番外編」として
    一月から始めたいと思います。

 
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映画「さまよう刃」を観て(4)の(5) 少年法の矛盾

2010-11-06 22:28:26 | 映画
 撃たれた長峰は死んでしまったのか…

 映画も原作もこの点に関しては何も語ってくれない。
 
 私的な解釈をすれば、
 長峰が死んでしまえば、
 殺人犯としての汚名を着ることなく
 娘への復讐を遂げ
 名誉の死を選ぶことができる。

 映画では
 血を流して倒れている長峰の安らかな顔がアップになる。

 まさにそれは
 長峰が望んでいた「死に方」だった、と私は思う。

 長峰の持つ猟銃には弾丸が装填されていなかったことが後日判明する。

 このことは
 猟銃で脅し、少年犯に死の恐怖を与えることによって
 殺された娘への「はなむけ」とすることを意図し
 殺すつもりはなかったのではないかと推察できる。

 その長峰が警察の銃によって射殺されてしまう。

 何とも哀切きわまりない終わりを観客や読者に突きつけて
 「少年法」の矛盾と被害者遺族への憐憫を誘う。

 「少年法」という法律で守られ
 犯した罪の重さに見合わない判決が下される時がしばしばある。
 
 俳優・寺尾は
 「…少年法の罪と罰のバランスってこれでいいんだろうか。
 『自分だったらどうしたろう』とか、『私はこう思う』と考えるための
 ヒントになってくれれば、この映画は成功」と、初日の劇場で挨拶している。
                               (つづく) 

        (友人・知人へのはがきをブログ用に編集して掲載)  
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