雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

脱原発に向けて⑦ 核と人間

2011-06-28 21:55:05 | つれづれ日記

核と人間

 福島第一原発の事故は、

原子エネルギーが持っている潜在的な危険を白日の下にさらし、

「安全神話」という仮面をはぎ取ってしまった。

 さらに、

地震動については「残余のリスク」を避けることはできないという。

 原子炉が存在する限り、私たちは、

これが内蔵する「見えない危険」に怯えながら暮らさなければならない。

 

 我が国の「エネルギー政策」は変更を余儀なくされるだろう。

 

 G8サミットで、管直人首相は、

「発電に占める自然エネルギーの割合を2020年代に20%超にする」

と述べている。

一方で、政府の国家戦略室がまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」の素案では、

重要戦略の一つに原子力を明記、

とりあえずは原発推進路線を続ける姿勢を示している。

 

 問題は、「原発か、自然エネルギーか」という二者択一ではなく、

生活へのしわ寄せを回避し、

無理のない脱原発へのゆるやかな移行が必要だと思う。

 

 人間が創り出した「」飛行機や新幹線」など最先端の科学技術を駆使くしたものにも、

「残余のリスク」はついてまわるが、

原発の抱える問題は、

利点よりもリスクがあまりにも大きく、

人間が許容し、解決できる範囲を遥かに超えている。

 

 核と人間は共存できない。

私たちは、

ヒロシマ、ナガサキの原爆の悲劇を、

チェリノブイリ原発のメルトダウンの恐怖を決して忘れてはならない。

                                        (完)     

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脱原発に向けて⑥ 残余のリスク

2011-06-25 23:12:27 | つれづれ日記

 残余のリスク

  海際の小さな市町村に設置された原子力発電が、設置場所の周辺に増設されていく事情を、

 「原発銀座」、「原発依存症」と揶揄(やゆ)さるれ原因であることを⑤、⑥で述べました。

 

  福島第一原発の事故で私たちが見せられたものは、「安全神話」の崩壊である。

モンスターに変容した原子炉は、人間が関与することを徹底的に拒絶し、

専門家さえ事故終結の予測を立てることができない。

 

 2006年9月原子力安全委員会は、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の中で、

「残余のリスク」を次のように述べています。

(原文は専門用語が多く、理解しずらいので要約します)

 

 どんなに大きな地震を想定し、耐震設計しても、

それを超えるような地震動に襲われる危険性は否定できない。

施設に重大な損傷事故が起き、大量の放射線物質が放散され、

その結果、

周辺住民に対して放射線被ばくによる災害を起こす危険性(リスク)がある。

 

  つまり、どんなに安全を心掛けても、「残余のリスク」は避けられないから、

このリスクを最小限度に抑える努力をしなければならない、と指針で述べています。

 

  国が「安全神話」を強調する一方で、

地震動については、その限りではないと、

安全神話を否定している現実があり、

実際に福島第一原発の事故は、

「残余のリスク」をそのまま物語る展開となりました。

                              (つづく)

 

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脱原発に向けて⑤ 原発依存症(2)

2011-06-21 21:08:38 | つれづれ日記

 原発依存症(2)

  「原発マネー」が奔流のように流れ込み、

   双葉町を例にとれば、1978、79年に5、6号機が運転を開始し、

  1983年のピーク時の原発関連固定資産税だけでも約18億円にもなり、

  当時の双葉町の歳入総額33億円の54%にも達した。

  町は下水道や道路整備、ハコ物建設に巨額の税を投入した。

  巨大な原子力産業に携わる人も増え、いつしか冬期の出稼ぎもなくなり、

  「どんどん生活が良くなり」、「原発から饅頭と飴玉をたっぷりもらった」と、当時を振り返る。

  だが、運転開始から10年もたてば、原発施設は老朽化し、

  それに伴って固定資産税は激減し、期限付きの交付金も減ってくる。

 

  「原発バブルの崩壊」である。

 

  しかし、タガの緩んだ財政の立て直しは容易ではない。

  豊かにしてくれた「原発マネー」が激減し、

  早期健全化団体にまで追い込まれた双葉町は、

  「第二の夕張」(財政再生団体)寸前まで、財政が逼迫(ひっぱく)する。

 

  夢よもう一度。

  7、8号機建設の容認である。

  これにより、毎年9億8千万円、4年間で39億2千万円の

  電源立地等初期対策交付金を手にすることになる。

  清水修司・福島大副学長(財政学)は言う。

  「どの地域も初めは原発をてこに地域を発展させたいと願う。

  しかし、産業の乏しい過疎地に押し寄せる原発マネーはあまりに巨額」で、

  原発依存症からの脱皮は容易ではない。

                                                       (つづく)

※ 早期健全化団体:自治体財政の健全さをはかる4指標のいずれかが、一定値を超えると指定される。

  財政破綻のイエローカードにである。これは、財政破綻の一歩手前にあたる。借金返済のための財政健全化

  計画を作り、外部の財務監査を受けなければならない。自治体財政健全化法の施工で2008年度決算から

  適用されるようになった。さらに財政の状態の逼迫(ひっぱく)してしまえば、北海道・夕張市が指摘された「財

  再建団体」になってしまう。レッドカードということになる。

                                    (朝日新聞キーワードの解説を参考に手を加えた)

 

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脱原発に向けて④ 原発依存症(1)

2011-06-17 21:43:32 | つれづれ日記

  ③で示したように運転開始後10年たった原子炉の交付金と固定資産税の総計は、

運転開始時の半分以下になってしまい、

以後どんどん自治体の収入は減少していく。

 

 自治体の収入維持のためには、

新たに原発を誘致し第二、第三の原発を設置し収入を確保しなければならない。

 

 人口数千人の過疎の村や町が、

合併もせずに生き残っていくための原発誘致施策は、

泥沼に足を踏み込むようなもので、

そこから抜け出すことはもはや不可能に近くなってしまう。

 

 まさに、「原発依存症」に陥ってしまうのである。

 

 多くの地元民が原発関連の仕事に従事し、電気料金も大幅に値引きされる。

人口も増え、街も人も豊かになっていく。

 

 だが、何かがおかしい。

 

 つまり、原発という打出の小槌に依存するばかりで、

経済的な自立がされていないのだ。

 

 福島県双葉郡の双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町などそれぞれ合併もせず、

北海道・夕張市のように財政破綻することなく豊かに存続できるのは、

電源三法交付金の影響が強いのである。

 

 平成21年度の総務省の財力指数が、それを裏付けている。

全国平均0.55であるのに対して、

双葉町0.78,富岡町0.92,楢葉町1.12と全国平均を大きく上回り、

特に、福島第一原発で発電機が多数立地している大熊町に至っては、

1.50と突出して大きい。

(指数の大きい方が財政の豊かさを示す。都道府県の自治体で指数1を示すのは東京都一都のみである)

                                                          (つづく)

 

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脱原発に向けて③ 原発銀座の苦悩

2011-06-11 22:41:06 | つれづれ日記

原発銀座の苦悩

  通称「原発銀座」と呼ばれる原子力発電所の集中している地域がある。

  福井県嶺南に14基(美浜、大飯、高浜、敦賀発電所)、 福島浜通り10基(福島第一、第二発電所)、 新潟県柏崎7基(刈羽発電所)。 

  日本の原発銀座ベスト3である。

  一歩間違えば、チェリノブイリや福島第一原発のような大惨事になりかねない危険な発電所の設置がどうして、一地方に偏ってしまうのか。

  ②で示した経済産業省エネルギー庁のモデルケースを詳細にみてみよう。

  運転開始までの最初の10年間には固定資産税が付加されないので、自治体に降りる交付金は年平均39億円ぐらいであるが、10年目に運転を開始した翌年(環境影響評価開始から11年目)からは、固定資産税が付加され交付金と合わせると年額77.5億円にも膨れ上がる金が自治体に入ってくる。

 

  だが、運転開始後の固定資産税は、設備の減価償却に伴い年々減少しいてく。

 

  11年目に63億円の固定資産税の税収が確保できたのに、以後、固定資産税はどんどん減少していき、運転開始の翌年に交付金と合わせて77.5億円あった原発による収入は、20年目には半分以下の31.4億円にまで減少していく。

 

  以後、原発による税収はどんどん減り続けるから、

  自治体は次の原発を誘致しないと、

  高額の税収を確保できなくなる。

 

  「原発銀座」出現の所以(ゆえん)である。

                                   (つづく)

   

 

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脱原発に向けて② 原発交付金

2011-06-07 22:02:26 | つれづれ日記

 原発交付金

 「電源三法交付金」に基づく多額の交付金の見返りに原発を建設する仕組みが、財政の乏しい市町村の地方自治体にとっては大きな魅力になっている。

 経済産業省資源エネルギー庁が原子力発電所の立地にともなう財源効果を試算したモデルケースがある(2004年作成)。

 出力135万kw(この出力を福島第一原発にあてはめてみると2号機と3号機を合わせた出力に近い出力である)の原子力発電所を誘致した場合、いったいどのくらいの交付金等が地方自治体に支払われるのか。内訳の詳細は紙面の都合で割愛し、概略で説明すると次のようになる。

 環境影響評価開始の翌年から運転開始までの10年間で約391億円。運転開始の翌年から10年(通産20年目)間で502億円の「電源三法交付金」の交付である。実に893億円の交付金が転がり込んでくる。この893億円の大雑把な内訳は、電源立地地域対策交付金が545億円、固定資産税348億円である。

 過疎に悩む自治体にとって、20年間で総額893億円の電源立地地域対策交付金と固定資産税は大きな魅力であり、原子力発電所の立地が推進されるゆえんである。

 しかし、この仕組みには大きな落とし穴があり、原子力発電所を誘致した市町村地方自治体の苦悩が露呈することになる。

                                       (つづく)

 

 

 

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