雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

新型コロナウイルス  ① 世界の感染状況

2020-04-26 08:50:51 | 昨日の風 今日の風

新型コロナウイルス ① 世界の感染状況

 世界の死者数が20万人にせまる(米ジョンズ・ポプキンス大 集計)。
  4/25午後5時の時点で前日より6,000人以上増えて19万7162人
       感染者は前日より10万人以上増えて281万1891人

 終息の兆しが見えて来た国(中国、韓国)もあるが、
 世界的には感染の拡大はもっと増えるのではないか。
 アフリカ大陸諸国の医療体制は、ご承知のように充実しているとはいいがたい。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
 当初は世界の豊かな国を襲ったが、
 拡大するに従ってアフリカでの感染者も急増している。
 人口12億のアフリカ大陸で初の感染者が出たのは2020年2月14日、場所はエジプトだった。
 しかし、わずか2カ月足らずで、新型コロナウイルスはアフリカ大陸全域に広がった。 
   【 夜が明けたばかりですでににぎわい始めているキベラの路地 。写真右側の壁画は 「一緒にコロナと闘おう」と訴える。キベラのように人が密集したスラム街では、その戦いに勝利することはむずかしい。文・写真=NICHOLE SOBECKI】

 写真でおわかりのように、
 上下水道はままならないから、手洗いなども満足にはできない。。
 トイレは共同で、衛生管理もままならない。

 アフリカ大陸全土における感染者の合計は、4月上旬に1万人を超えた。
 大半の国は医療水準が低く、機材や医療従事者も少ない。
 起爆剤を握っているアフリカ大陸が今後、
 コロナウイルスの感染拡大をどのように押さえ込むのかが大きなカギになるのではないか。

 新型コロナウイルスの世界の死者を見てみよう。
      今月3日…………5万人
        11日…………10万人
        18日…………15万人
             つまり約1週間で5万人づつ増えている。
   なんでも一番のアメリカは感染者90万5333人
                    5万1949人
    
    感染拡大を防ごうと外出規制などが続くアメリカだが、
    一部の州(ジョージア州等)では、美容院などの営業再開を認めた。
    経済活動の再開に向けた動きで、
    疲弊した経済を1日も早く回復させたいということなのだろうが、
    感染がまだ収まっていない時期に、早すぎるのではないかと危惧されている。

    「傘をさしているから雨に濡れていないのに、
   『大丈夫だ』と思い違いして傘を捨てるようなもの」

   とアトランタで働く救急専門医・中嶋優子さんは経済活動の再開に不安を呈する。
   ジョージア州の死者数は減少傾向にあるが、
   それは外出規制という傘をさすことが前提だと考えている。

   中国の動き
    中国 感染第二波を警戒。移動制限復活も。
    新型コロナウイルスの押さえ込みが進んでいるとされる中国だが、
    感染拡大の「第二波」につながりかねない動きに神経をとがらせている。
    帰国者からの感染拡大や、無症状者の発見が続いているためで、
    克服の難しさが浮き彫りになっている。(朝日新聞4/26)

    罰則を設けず、強権力で私権を押さえ込むことなく、
    歯がゆい思いはあるが、
    規律を乱さず、
    個人の良識ある行動でこの災厄を乗り切れることを
    世界に示すことができればよいのだが……

    国内での感染者 ………… 13227人(+366人)
         死者 …………   358人  (+13人)

     東京都感染者 ………… 3836人(+103人)
         幾分感染者が落ち着いてきたようですが、100人を割らないと安心できません。
                                                                           (25日午後9時現在
)
    

    (昨日の風 今日の風№108)       (2020.4.26記)
   
    

    

 

 

 




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感染を題材にした小説 (4) 「アウトブレイク・感染」 他

2020-04-22 09:34:53 | 読書案内

感染を題材にした小説 (4) 「アウトブレイク・感染」 他
  
(ハヤカワ文庫「アウトブレイク・感染」ロビン・クック著)
 今から30年以上も前に書かれた小説です。

 1日目 体調を崩す。寒気がして熱もある。診療所で注射をし気分はよくなった。
 2日目 体調は回復した。
 3日目 症状は急に悪化した。
      激しい頭痛、つづいて悪寒、発熱、吐き気、下痢が急にはじまった。

       アフリカ、ザイール 1976年九月七日
    ひと晩じゅう震え続けた。暗闇の中で何度か吐き、朝までに彼は
    すっかり衰弱し、脱水症状になった。ようやくの思いで荷物をま
           とめ、よろよろと病院へ向かい、構内へ入ったところで鮮血を吐き、
           病院の床へ倒れて失神した。(引用) 
  最初の発症から二か月後、この奇病は、
  数週間患者が発生していないところから、封じ込めに成功したと考えられた。

  話は十年後のカルフォニア、ロサンゼルスに飛ぶ。
   頭痛、高熱、吐血をへて最後は死にいたる。
  病名はエボラ出血熱。
  アフリカでしか流行しなかった伝染病が、
  なぜ、突然アメリカで発生したのか?
  医学サスペンス「アウトブレイク・感染」は新米女医の奮闘を通して
  アメリカ医学会の暗部を描き出す。


  (東京創元社文庫「汚染 イエローストーン完全封鎖」レス・スタンディフォード著 1994年初版) 現在絶版
 
イエローストーン国立公園について
   アイダホ、モンタナ、ワイオミングの三つの州にまたがる米国の公園で1872年に世界初の国立公園に指定され
   る。8,980㌔平方メートルの広大な場所にに間欠泉、温泉、地熱による観光スポットが散在する。

 夏の観光客で賑わうイエローストーン国立公園。
ある日、一台のタンクローリーが公園内で横転。
軍事用に極秘開発された病原菌が流失し、その猛威を振るい始める。
感染したものは全身から血を噴き出して死にいたる。
しかも、事故を知った開発元の企業は、公園を封鎖し、
誰ひとり生きて出さぬため殺し屋たちを送り出してきた。
退路を断たれた人々の運命は。
パニック小説+冒険小説。
国家機密を厳守するために、全員皆殺し作戦という隠ぺい工作を描く。 

 (「首都感染」高嶋哲夫著 講談社文庫 2013.11第一刷刊 書き下ろしとして2010単行本) 未読の本ですが、当ブログ①~④の本の中で一番新しい本です。
簡単に紹介します。

     中国でワールドカップの中止と謎の感染症発生が発表されてから、北京にいる
     外国人たちの帰国ラッシュが始まった。外国メディアによって北京空港に殺到
     する外国人の映像が放映された。前日、中国国営テレビが流したワールドカッ
     プ継続を求めるサポーターの熱狂とは全く違った光景だった。そこには恐怖が
     前面に出ている。(略)
     

     12時間後、WHOは正式に中国で新型インフルエンザが発生したことを伝えた。

     日本ではそれを受けて直ちに閣議が開かれ、、「新型インフルエンザ対策本部」
     の設置が決定された。
                                                                                                                 (第2章から要約引用)

  本書は、中国で流行したSARSから8年目に書かれた小説である。
  SARSは全世界で8000人ほどが罹患し、800人ほどの人が死亡したとと言われている、
  死亡率10%ほどの「新型肺炎」でした。実際この時の中国の対応は、国際的な面子を等を重視し、
  発表を遅らせ隠ぺいに走った経緯がありました。

  小説の内容に話を戻します。
   小説で登場する「新型インフルエンザ」は致死率60%という、猛毒性のある殺人ウイルスです。
   この猛毒ウイルスの侵入を防ぐために、「首都東京封鎖」を敢行する。

  「ウイルスから身を守る一番有効な方法は、感染者との接触を断つことです。感染者を収容し、
  すべての公共交通を止め、学校を閉鎖し、店を閉じ、集会を中止し、家に閉じこもっていることです」
                                      ー政府高官の発言ー
  「機動隊と自衛隊を使って東京を封鎖するなど、前代未聞の民主主義を否定する行為だ。
  戒厳令と同じじゃないか。戦前に逆戻りだ。わが党は徹底的に反対するぞ」
                                       -野党議員の発言-

 パニック小説というより、ウイルスが都市を襲った場合、政府はどう対応するのか、
国民は
どう反応するのかを細菌感染に対する資料を集め徹底的に検証したシュミレーション小説。
新型コロナウイルスが世界を席巻している今だからこそおすすめの一冊です。

 そのほかの細菌の脅威を扱うパニック小説の紹介。
  ① 『レッド・デス』マックス・マーロウ著
       太古の病原菌が現代によみがえり、地球規模のパニックを引き起こす。
  ② 『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン著
       大気圏外の細菌によって滅んだ街を描く。ベストセラーにもなり、お薦めです。
  ③ 映画『カサンドラ・クロス』
       軍の細菌兵器に感染した男の乗った列車内部で病原菌が猛威をふるう。軍の機密が絡んでくると
       内容が暗くなってくる。秘密漏洩、そして隠ぺい工作が描かれるからです。  

 人間社会を脅かすような感染症対策に求められるのは、徹底した危機管理です。
 その国のリーダーは迅速に施策を打ち出しすための必要なことは、
 国民との信頼関係に基づいた、勇気と英断だと思います。

 首相の新型コロナ対応について朝日新聞全国世論調査(電話) (4/21新聞に掲載)
 
  ① 「指導力発揮していない」57%
  ② 生活不安「感じる」58%
  ③ 緊急事態宣言後「外出自粛」76%
  ④ 緊急事態宣言を出すタイミングについて
     「遅すぎた」77%  「適切だ」18%

   調査とは別問題ですが、「里帰り出産お断り」のニュースは痛ましいですね。

  一向に営業自粛をしない業者(最初は要請のみで保障システムが施策されてなかったから)。
  都市封鎖を今日権力で施策するには、私権の問題が絡んできます。
  厳戒令は絶体に容認できません。
  東京都知事の「ただひたすら、お願いします」の姿勢に、都知事の苦しい胸の中が理解できます。

     このシリーズは、今回で終了します。

 (読書案内№151)        (2020.4.22記)




 


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感染を題材にした小説 (3) 首都消失

2020-04-19 10:33:28 | 読書案内

感染を題材にした小説 (3) 首都消失
 首都東京がブラックアウトされた……  小松左京著
               お詫びと訂正 4/16日アップした記事は下書きでした。
           改めて訂正し完成記事を公開しました。

   ブログタイトルは、「感染を題材にした小説」としてありますが、
  今回の「首都消失」は、ある事情により首都(東京)が完全に封鎖されたとき、
  (小説ではこれを「消失」と表現しています)
  どんな危機が訪れ、人々はどんな考えや行動をとるのかをテーマにした小説です。

  (ハルキ文庫 1998年刊)

 (トクマノベルス 1985年刊)
 私が所持している本はリアルタイムで購入した徳間ノベル版ですが、35年も前に購入して経年劣化で黄ばんでしまった本です。表紙のデザインは後年発刊されたハルキ文庫の方がより小説の内容を伝えていると思います。第六回日本SF大賞

霧の朝
 濃霧が東京をはじめ、その周辺都市を覆うなか、早朝六時二十七分定刻、上り新幹線ひかり五四〇号は名古屋駅を定刻に発車する。東京本社で開かれる重役会議への報告の為、浅倉達也は東京に向かう。始発駅名古屋を発車した「ひかり五四〇号」桶狭間のあたりにさしかかる。

  あたりの霧は、ますます濃くなってきている。発車前には、まだプラットホームに
  薄く朝日がさしていたが、いまはあたり一面、灰白色のヴェールに閉ざされて、森
  も、岡も、人家も、うす墨色に朦朧と流れていくばかりだった。視界がどんどん悪
  くなってきているようだ。(引用)
 やがて、社内の電話が通話不能になっていること、
特に東京への通話はまったくつながらないと車内アナウンスが告げる。
ひかり五四〇号は速度を落としたまま、深い霧の中を進んで行く。
乗客が取得できる情報は、車内アナウンスのみ。
次のアナウンスで乗客の不安は、一層かきたてられる。

  新幹線はただいま小田原以東が停電で、コンピューターの制御系統も不調の模様でご
  ざいます。もっか状況を問い合わせておりますが、東京方面、電話回線が不通のため、
  連絡がとれておりません。通信の回復次第、今後の運行状況をお知らせいたしますが、
  この列車は、当浜松駅で、しばらく停車いたします……(引用)

ブラックアウト(首都封鎖)
 何の前触れもなく、いや、あれがブラックアウトの前触れだとすれば、
おびただしい濃霧が首都圏を中心に約30キロの範囲を覆っていたことだろうか。
厚い雲の層が首都圏をすっぽりと覆い、
雲と思われるものは高さ千メートルにもなる得体のしれない物体だ。
交通電波通信が途絶え、雲の中の情報はいっさい外部に流れてこない。
首都から脱出もできず、首都への侵入も拒む「雲」の正体は……。
孤立した首都に政治的機能やリーダーシップを望むことはできない。

封じ込められた家族はどうしているか。
友人は? 重役会議は?
異常気象か? 超常現象か?
封鎖は一時的な現象なのか?
国家中枢を失った日本の将来は……
様々な危惧をはらんだまま、雲は一層その厚みを増していく。

10日後、緊急全国知事会議が名古屋で開かれ、地方に残された政治家、財界人、学者、帰国した外交官などにより「臨時国政代行会議」が樹立された。
日が立つにつれ、国民の不安は動揺に変わる。

アメリカが「雲」の軍事利用を画策、
ソ連では日本の外交官が拘束され、
北方海域に大艦隊を送り込んできたソ連など、日本に対する外圧も強まっていく。
異常寒波が日本列島を襲う。
「雲」出現から4か月ほど経った3月末、「雲」の国際調査が行われ、
「雲」は単なる自然現象ではなく、
地球外の知的生命が何らかの意図をもって送り込んできた観測装置である可能性が高い、
という結論が発表される。
そして4月初め、「雲」は……

 一極集中の中で繰り広げられる「雲」の正体は、
 不明のまま物語は終焉を迎える。
 単なる「パニックSF小説」として読んでも面白いが、
 著者が描こうとした「雲」が象徴するものは一体何だったのか。
 国家間の緊張。国家の危機。不安。パニック。人間の心に宿る非日常の不条理の象徴なのか。
 国家がその機能を失ったとき、
 国家を構成する一人一人に課せられた責任と役割は、あまりにも重い。


作家 小松左京について
 この小説の終わりは唐突に訪れ、
 次回作が予想されましたが、読者はそれを見ることなく
 このたぐいまれなるスケールの大きな作家を失ってしまった。
 1931年1月生まれー2011年7月 (80歳没)

  昭和四十八年(一九七三年)の大ベストセラー「日本沈没」では、海に没する日本列島から、一億の日本人が苦闘のすえ避難を果たす。パニック小説ではあるが、未来への希望も力強く描かれていた。日本SFの草分けの一人であるが、同世代の仲間に人間へのシニカルな視点があったのに比べ、小松の物語には人間性への信頼が強く描かれていた。それは、「復活の日」「さよならジュピター」などにも貫かれている。

  東日本大震災からの復興を願い、「これから日本がどうなるのんか、もうちょっと長生きして、見てみたいいう気にいまなっとんのや」と記していたが、今年(2011年)七月二十六日、満八十歳で逝去した。
                                      (文芸春秋より引用)    
  NHKウエブニュース
     東京都 新たに201人感染確認 1日で最多 都内2794人に (4/17)
                                ▽大阪府は1075人 
                     ▽神奈川県は711人
                     ▽千葉県は632人
                     ▽埼玉県は590人
          国内感染確認 9861人 (クルーズ船除く) 新型コロナ (4/18) 
                  中国 武漢の死者数を大幅に訂正 (4/17)
                          死者の数を2500人余りから3869人へと大幅に訂正しました。
                          感染者の数も、これまでの5万8人から325人増えて、5万333人に訂正するとしています
                   一律10万円 住民基本台帳に記載の人 対象の方針 国籍不問 (4/18)
                           新型コロナウイルスの感染拡大を受けた10万円の一律給付について政府は、国籍を問わ 
                          ず、住民基本台帳に記載されているすべての人を対象にする方針で、原則、世帯主から申
                          請があった口座に家族分をまとめて振り込む方向で調整を進めています。
(読書案内№150)         (2020.4.18記)




 

 

 

 

 

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感染を題材にした小説 (2) 復活の日

2020-04-16 17:16:14 | 読書案内

感染を題材にした小説 (2)「復活の日」 小松左京著
              人類は滅亡するのか
    MM-88によって地球は汚染されていく。

( 写真文庫本は1975年角川文庫より刊行)
 手元の本は角川文庫の本で経年劣化でスレや黄ばみが激しい。
初版は1964(昭和39)年 書き下ろし 早川書房から刊行。
56年も前に書かれたSF小説だが、
一部書評は今日の新型コロナウイルスが蔓延する社会を予言する書ともてはやす。
この年東京オリンピックが開催された年だが、
三波春夫のオリンピック音頭がながれ、
アスリートとスポーツファンが世界中から東京に集まってきた。
お祭りムード一色に染まったこの時代だから、
書き下ろしとして上梓せざるを得なかったのだろう。
新聞、雑誌、週刊誌もお祭りムード漂う中「人類滅亡」の危機を描く小説を連載する勇気は、
オリンピックに水を差すようでできなかったのだろう。
 人気に火が付いたのは文庫本が出版された後の1975年以降だろう。
1980年には、つまり書き下ろし版が発行されてから16年後、
巨額の製作費をかけた映画がつくられたことを見ても理解できる。

プロローグ
 原子力潜水艦ネーレイド号の潜望鏡がするすると上がる。
 東京湾口の浦賀水道。
 三浦半島の東端の観音崎に向けて2000㍉望遠がとらえた映像が、
 17インチの画面いっぱいに俯瞰された。
 驚愕の光景が出現した。やはり……

 家々の戸や窓はほとんどとざされ、ところどころ、うつろな暗い口を
 ポッカリあけている。電柱に、色あせた質屋の看板が見える。街路に
 は、舗装のこわれた所から草がはえ、赤錆のスクラップと化した自動
 車が、塀や電柱にぶつかったり、道路の真ん中にのりすてられたりし
 ていた。無人の、あれはてた街の上に、春の陽のみがいたずらに明る
 く、あたたかく、さんさんと湯のようにふりそそいでいる。草ぼうぼ
 うの庭や空地には、春の花が咲きみだれ、四辻の一角に、真っ赤にさ
 びた小さな三輪車が、そのままにおきさられているのを見つけて、吉
 住は思わず胸をしめつけられた。そのかたわらに、白っぽいぼろぎれ
 のようなものが地面にへばりついてた。眼をこらすと、それはぼろぼ
 ろの服をまとった白骨だった。

 無人と化した風景を作者・小松左京は延々と続ける。
 で……。人類社会の終わりを告げるような描写なので続きを引用します。

 気がついてみると、いたる所に白骨がちらばっていた。玄関わきにく
 ずおれ、溝に半分はまり、辻におりかさなり、あるものは二階の窓か
   ら
首のおちた上半身をのり出して……風雨にさらされ、くわえさる動物
 た
ちもなく、犬猫もまた白骨死体となっていた。二年半前は、この古く
   活気に満ちた港街の、にぎやかだった何万という人々は、今は春の陽の
  中に白く光る、動かぬ白骨となって、声もなく横たわっている。チラリ
  と黄色の小さなものが動く。白骨に蝶がたわむれている。

 原子力潜水艦ネーレイド号の潜望鏡が静かに閉じられ、
八万五千キロさきの南極の基地に向かって波の下の潜航を開始する。
目に見えぬ恐怖が人々を急速な勢いで覆いはじめ、世界のメディアは地球の危機を訴え、研究者は自分たちの研究の手の届かぬところで起き始めた異変に手をこまねいて傍観するのみだった。全地球を飛び交った情報の電波も衰え、やがて最後の電波が途絶えたとき、世界は沈黙の暗闇に覆われた。天よりおそいかかる閃光と白熱と火の柱による核戦争が起こした滅亡の道ではない。

 なぜ、こんなことになってしまったのか?
 どうして?
 起こってしまったあとで、その原因を知ったところで何になろう?
 ほろびたものは、もはやかえってこない。

 作者の懊悩は続く。

三十数億の人間と、五千年の歴史と、
最近百年の目覚ましい発展を遂げた巨大な世界は1960年代の末突如としておわりを告げた。
たった一つ忌まわしい災厄から奇跡的に救われた地を除いて。
酷寒と荒れ狂う吹雪と、永遠の氷で閉ざされた過酷な世界・白い大陸に閉じ込められた、
わずか一万人そこそこの人々に託された人類復活の希望が託される。


 細菌兵器「MM-88」
生物化学兵器として開発されたMM-88が盗まれた。
カプセルに詰め込まれた猛毒のMM-88は小型飛行機に積まれ、
敵国に輸送される途中、吹雪きの大アルプスで墜落。
黒焦げの乗員と部品や胴体の破片が発見される。
……春になり雪解けが始まると、奇妙な死亡事故が報告され始めた。

 MM-88
  摂氏マイナス十度前後で、増殖しはじめる。
  マイナス三度を超えると、増殖率は100倍以上になり、
  零度を超えるときちがいじみた増殖を開始する。
  摂氏五度で、猛烈な毒性を持ち、
  増殖率はマイナス十度の時の約二十億倍になる。
  動物実験の結果。
  感染後五時間でハツカネズミの98%が死滅、
  一番早いものは感染後二時間で死んだ。

 得体のしれない死亡例が、
各国から報告され人類滅亡の序章の幕が静かに、
上がり始める。

 唯一生き残ったのは、南極大陸に滞在していた各国の観測隊員1万人と原子力潜水艦「ネーレイド号」等の乗組員たちだ。
人々は国家の壁を越えて「南極連邦委員会」を結成。
力を合わせて食料や子孫の問題など乗り越え、
世界が再び復活する日にに向けて活動を開始する。
 

  新型コロナウイルス 最新ニュース 
世界の感染者数198万人余 死者12万人超 (朝日4/16) 
日本の感染者数8722人 死者178人(クルーズ船を除く) (4/16)
東京・新たに127人の感染者 (4/15)
東芝・国内全拠点休業 (4/15)
「対策しなければ最悪40万人が死亡」と厚労省専門家チーム(4/15)
               (表記のないものはNHKウェブニース)

  新型コロナウイルス 最新ニュース (NHKニュース ウエブ)
  〇 「緊急事態宣言」全国に拡大。
    さらに、これまでの宣言の対象の7都府県に北海道、茨城県、石川県、岐阜県、
               愛知
県、京都府の6つの道府県を加えたあわせて13都道府県について、特に重点的に感染拡大防止の取り組み
    を 進めていく必要があるとして、「特定警戒都道府県」と位置づけました。(4/17)


  〇 東京都 新に201人感染確認 1日で最多 都内2794人に(4/17)

  〇 10万円一律給付 自己申告に基づいて行われる見通し 麻生財務相(4/17) 

     全国の感染確認 16日は574人 計9200人超に(クルーズ船除く)(4/17)

 (読書案内№149)   (202004.16記)

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感染を題材にした小説 (1) ペスト

2020-04-11 07:34:29 | 読書案内

ウイルス感染を題材にした小説(1) ペスト
(新潮文庫 昭和44年発刊 令和2年3月87刷  著者カミュ ) 
 70年以上も前に書かれたカミュの『異邦人』と並ぶ代表作である。
 194〇年、アルジェリアの海岸に位置する小さな町オランで事件(ペスト)は発生した。
 なんの取り得もないない小さな港町オラン。
  四月十六日の朝、医師ベルナール・リウーは、診療室から出かけようとして、
 階段口の真ん中で一匹の死んだネズミにつまずいた。……同じ日の夕方、ベル
 ナール・リウーは、アパートの玄関に立って、自分のところへ上がっていく前
 に部屋の鍵を捜していたが、そのとき、廊下の暗い奥から、足もとのよろよろ
 して、毛のぬれた、大きな鼠が現れるのを見た。鼠は立ち止まり、ちょっと体
 の平均をとろうとする様子だったが、急に医師のほうへ駆け出し、また立ち止
 まり、小さな泣き声をたてながらきりきり舞いをし、最後に半ば開いた唇から
 血を吐いて倒れた。

 宿主の鼠に憑りついたペスト菌が人間の前に現れた最初の一日はこうして始まる。
前兆はあった。鼠の死は、医師に不快感を与えた者のこれがペストの流行の前兆であり、
まさか小さなオランの街が封鎖され、人々が不安と恐怖の渦に巻き込まれようとは、
誰にも予測できない。
 この小説はある種の群像劇です。
ペストと闘う強靭な意志と自己犠牲を持った医師がいるわけでもない。
閉塞感に囚われた町の人の多種多様な考え方は、
当然ペストに関しても深刻に対処する人、不安におののき疑心暗鬼に囚われる人、
楽観視する人等々、様々な登場人物の言行が静かに綴られています。
 最近、新聞やネット等でこの小説「ペスト」が話題になっているようです。
しかし、この小説はパンデミックス(感染症が世界的規模で同時に流行する)
パニック小説とは異なり、
小さな港町・オランで起きたペストの流行を淡々と語る。
小説の根底に流れる、「不条理(人間存在の)絶望的状況」をカミュは淡々と描いている。
得体のしれないペストという不条理の現象の中で、
教条主義(ペストという感染症の蔓延する状況や現実の不安や恐怖をある特定の原理や原則に当てはめようとする融通の利かない教えや態度)的な経験主義に陥ってしまうある種の人々を登場させている。

「誰でもでもめいめい自分のうちにペストをもっているんだ」
小説の終盤、謎のような言葉を登場人物のひとりがつぶやきます。
ペストとという疫病が持っている、「おぞましい、悪意に満ちた病原菌」を心の奥に
人間は持っているのだ。ということなのだろうか。
 解説の中で訳者の宮崎嶺雄は次のように表現しています。
 
 ペストの害毒はあらゆる種類の人生の悪の象徴として感じとることができる。
死や病や苦痛など、人生の根源的な不条理をそれに置き換えてみることもできれ
ば、人間内部の悪徳や弱さや、あるいは貧苦、戦争、全体主義などの政治悪の象
徴をそこに見いだすこともできよう……

 なんだか、自分で記事を書きながら、いったい何を書いているのか理論の混迷が見られ、
カミュの「ペスト」を取り上げたのは失敗だったのではないかと後悔しています。

小説の最後は以下のように結ばれている。
 ペストとの闘いに勝利し街には再び平安とやすらぎぎ訪れようとしている。
 しかし、最初に登場した医師リウーは、彼自身の心の不安を次のように述懐して幕を閉じる。

 ペスト菌は死ぬことも消滅することもないものであり、数十年の間、家具や下
 着類の中に眠りつつ生存することができ、部屋や穴倉やトランクやハンカチや
 反故(ほご)のなかに、辛抱強く待ち続けていて、そしておそらくはいつか、人
 間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びその鼠どもを呼びさまし、ど
 こかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろうことを。(宮崎嶺雄 訳)


 そして現在、カミュが「ペスト」の中で70数年前に予言
 したように新型コロナウイルスは世界を席巻し、パンデ
 ミックスの恐怖や不安を現実のものにしている。

 安部首相にも、小池都知事の顔にも日に日に疲労の色が濃く表れています。
 政治が国民を助けるのではない、政治の力を借りて私たちがこの病原菌と
 決然と戦う強い意志が今望まれているのだ。

 (読書案内№148)         (2020.4.10記)

 

 
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忘れないよ ユカちゃんのこと 

2020-04-06 10:06:43 | つれづれに……

忘れないよ ユカちゃんのこと
 
また来ん春……

     また来ん春と人は云ふ
      しかし私は辛いのだ
      春が来たって何になろ
      あの子が返って来るぢゃない
     
      おもへば今年の5月には
      おまへを抱いて動物園
            象を見せても猫(にゃあ)といひ
         鳥を見せても猫(にゃあ)だった

      最後に見せた鹿だけは
      角によっぽど惹かれてか
      何とも云はず 眺めてた

      ほんにおまえもあの時は
      この世の光のたゞ中に
      立って眺めてゐたっけが……
               中原中也「在りし日の歌」より

 中原中也の詩集は、生前に彼が刊行した『山羊の歌』と『在りし日の歌』だけである。
  
本書の冒頭には「亡き児文也の霊に捧ぐ」とある。
 中原の愛児・文也は1934年10月に生まれた。詩集『山羊の歌』が刊行される2か月前のことである。
中也の喜びもつかの間、『在りし日の歌』が編集・清書される10ケ月前に病気で急逝する。
2歳と1ケ月の短すぎる命だった。
中也の悲しみが詩集「在りし日の歌」の冒頭に「亡き児文也の霊に捧ぐ」と
挿入したのも、中也の深い悲しみが感じられ、その心中を思えば痛々しい。
このことが中原の過敏な神経をいためつけた。
神経衰弱に結核性脳膜炎を併発し、
1935年文也が亡くなった1年後に文也の後を追うように逝ってしまった。
享年30歳。
早すぎる死であった。
「在りし日の歌」の原稿は親友・小林秀雄の手に託され1938年創元社より刊行された。
中也没後三年後のことである。

 かけがいのない人を喪うこと、
 愛しい人を喪うことは、
 辛く果てしのない悲しみを引きずって、
 苦しい人生行路を歩んでいくことになる。

 「時が過ぎれば、また春がめぐってくるよ」。
 一見、優しい言葉のように思われるが、
 当事者にとっては部外者の心無い慰めにしか聞こえない。
 黙って見守り寄り添うことが、
 暖かい掌で傷ついた部分をそっと包んでくれる人がいれば、
 人は立ち直ることができます。

 この詩を紹介した遠藤豊吉氏は、編者の言葉として
 次のような言葉を載せています。
 生徒を愛する教師の気持ちが読む者の心を捉えます。

 二学期がはじまった九月一日。ユカちゃんという女の子が無人踏切で電車に触れて死んだ。
 上りと下りの電車のすれちがいに気づかず、一方の電車が通りすぎたとき、飛び出したのだ。
 美しい死に顔だったという。
  担任の先生は、その日から二か月ほどの間、げっそりとやせ、ほとんどものも言わずに、ぼ
 うっと日を送ることが多かった。まわりがいくらなぐさめても「ユカちゃん、まだ夢に出てく
 るもんな」と言って目をうるませるのだった。
  そのできごとがあってから、何年もの間、A先生は九月一日が近づくと、ゆううつになってく
 
るのだった。その九月一日が無事にすぎると、かれはわたしに言ったものだった。「遠藤さん、
 あの事故にあわなければ、ユカちゃんは、いま○年生だな。」
  やがて、中央線は高架になった。わたしたちは地上から五メートルも高いところを走る電車を
 見ながら「ああ、子どもの鉄道事故もなくなる」と話し合ったものであるが、A先生はそのつど
 「でも、ユカちゃんはもどってこない」と、ことぱ少なに、そうつぶやくのだった。

 「でも、ユカちゃんはもどってこない」。
 この最後のフレーズに、A先生の悲しみが続いていることが読者に伝わってきます。
 そして、A先生の孤独と無常感が表れているようにわたくしは思うのです。

     (つれずれに……心もよう№100)     (2020.4.6記)




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