「原発事故の賠償費」
なぜ私たちが負担しなければならないのか(1)
(1) 賠償費の内訳と事故原子炉の現状
福島第一原発事故の賠償や廃炉などの費用が21.5兆円になるという。
従来の試算(2013年時点)では11兆円だから、今回の試算は約2倍近くに跳ね上がる。
(下図参照)
原発事故の処理費(朝日新聞2016.12/9引用)
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2013年時点の試算 |
2016年12月 |
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廃炉・汚染水対策 |
2兆円 |
8兆円 |
原則東電負担。送配電子会社の合理化利益は、値下げせずに廃炉に回す仕組みを新設する。 |
賠 償 |
5.4兆円 |
7.9兆円 |
原則東電負担。一部はほかの大手電力や新電力も送電線使用量に上乗せして負担 |
除 染 |
2.5兆円 |
4 兆円 |
国が持つ東電株の売却益を充てる。 |
中間貯蔵施設 |
1.1兆円 |
1.6兆円 |
税金を投入 |
合 計 |
11兆円 |
21.5兆円 |
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一気に4倍になった「廃炉・汚染水対策」に要するお金だ。
なぜ一気に4倍に膨張してしまったのか。
経済産業省は米スリーマイル島原発事故(1979年)費の「約50~60倍」にはなる、と説明。
どんぶり勘定と言われても仕方がない。
本当にこんな金額で処理できるのか疑問だ。
たった3年で合計が倍の21.5兆円に膨れ上がっているのだ。
福島第一原発事故では、
6年経った今でも事故現場は高い放射線に阻まれ、
処理作業は難航している。
溶け落ちた核燃料はスリーマイル事故とは異なり、原子炉を突き破り
内部がどうなっているのか見当がつかない。
1月末、遠隔調査ロボット「サソリ」を投入したが、
メルトダウン(炉心溶融)した原子炉内部は、爆発の残骸と高濃度の放射線に行く手を阻まれ、
2㍍進んで立ち往生してしまった。
溶けた核燃料が原子炉の外に出た事故は、
旧ソ連のチェリノブイリ原発事故に例を見るが、
事故後30年を経過した現在でも、取り出しに着手していない。
老朽化した石棺の上に、さらに石棺を覆いかぶせ、応急措置しかしていない。
廃炉作業を無理に進めるよりも、こうしたやり方は、処理費用が安くてすむ。
原因究明よりも経済優先の政策だ。
数えきれない村が放射線汚染で消滅した。
我が国のように除染をするよりも、帰還困難区域に指定し、
新たな土地を提供し、新しい村を作る方が、費用が掛からない。
広大な国有地があるから可能な方法だ。
つまり、事故から30年以上経過してもチェリノブイリ事故では、
何ひとつ解決していないし、事故の教訓も残されていないのだ。
事故から6年。
事故を起こした原子炉の中にサソリが入り、黒い塊を撮影。
これが、核燃料なのか。
この黒い塊のがどのくらいあるのか、広がりはどうなっているのか。
具体的状態がわからない。
だから、廃炉に向けての具体的計画が立てられない。
溶けた燃料を取り出す方法は、作業員の被曝をどう抑えるのか、
取り出した燃料をどこに保管し、処分するのか。
原発3基がメルトダウンしたのだ。
世界でも例のない廃炉作業は、まだ何も決まっていない。
表に示した「原発事故の処理費」は、
このような現状を踏まえての経済産業省の試算です。
合計21.5兆円ですむわけがない。
一体、廃炉が完全に終了するまでに、
どれくらいの費用と、労力と、時間がかかるのか。
取り出した核燃料を地中深く埋めたとしても、
安全を確保できるまでには、
10万年という膨大な人知を越えた時間が必要とされる。
政府は原発再稼働に向けて、舵を切っているが、
このように考えてくれば、本当に原発による発電電気が
他の発電電気より低コストだなどと言うのは、
信じられないと言われても仕方がないでしょう。
(風の行方№35) (2017.04.15記) (つづく)
次回は、私たちに課せられた負担額はどれくらいなのか、考えてみます。
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