雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

老いをみつめる ② 忘れないでとささやく

2018-05-25 08:30:00 | 人生を謳う

老いをみつめる ②
     記憶力が衰えてくる。だからいつの間にかメモを取る習慣が身についてくる。
      歩くスピードがずいぶん遅くなってきた。
     一歩一歩老いの坂道を下っていく。
     老いて死を迎える。そんな歌を集めてみました。
    
 
心よりはるかにはやき身の老いに追いつけぬままひとつ歳とる
                                                                      
…………… (武蔵野市)野口由梨 朝日歌壇2015.5.4
     今年も誕生日が来て、ひとつ歳をとった。
     若いつもりでいても無意識のうちに歳をとったことを感じるときがある。
     心は若いと思っていても、肉体の衰えを感じるこの頃だ。
     老いの狭間から寂しさと諦観が忍び寄ってくる。 

 忘れられぬ思い出があり忘れたき想い出もある生きて九十年
                        
…………… (南魚沼市)五十嵐とみ 朝日歌壇2015.6.8
     90年、良く生きてきたと思う。楽しいことも、悲しいことも、
     許せないと思ったことも今となっては永い人生の一こまとして浮かんで泡沫のように消えていく。
     得るものよりも失うものの方が多くなった年齢になったが、
     それでもまだ、数々のしがらみを捨てきれずに今日を生きている。

 

 手を握りしめて生まれて手の力ゆるめて終わる人の一生
                           
……… (福島市)美原凍子 朝日歌壇2015.9.25
     このシワの多い手でどれだけ幸せをつかむことができただろうか。
     このてのひらで人のぬくもりをどれだけ感じとることができただろうか。
     温かく包み込むてのひらであり、時には心を閉ざす手のひらにもなった。
     今はもう、全てのものから解放され天空へ飛び立つ悟りの手のひらになる。
     産声を上げ、握りしめた小さな手の中につつんできた希望という名の拳を、
     「さようなら」という代わりに開く

 

 本当は死にたくないと言うべきを忘れないでとささやき逝った
                           
……… (栃木県)岡田智子 朝日歌壇2016.01.04
     あともう少し生きたい。
     心を通じ合った人へ、
     長年連れ添った伴侶へ、
     「ありがとう」というだけのほんのわずかな時間をください。
     でも、出てきたささやきは、
     「さようなら」の代わりに「忘れないで」という小さな希望だった。

 

 知らぬ間に誰か消え去る日常に慣らされて行く老人ホーム             
                                  ……… (筑紫野市)二宮正博 朝日歌壇2016.07.25
     「死」がありふれた日常になっていく老人ホーム。
     細やかな感性を持っていたのに、歳をとるということは残酷なことだ。
     感性の襞(ひだ)を削り落とし、「死」という非日常の出来事まで、
     「肉体の消滅」という無味乾燥の情景に置き換えてしまう。
     老人にホームの「死」は肉体の消滅と同時に、生きてきた人の痕跡まですべて消し去ってしまうのだ。

                          (人生を謳う)   (2018.5.25記)
     
※ 関連ブログ
        2018.1.14 ブログ 老いをみつめる ①

 

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原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 ①

2018-05-19 07:57:19 | 風の行方・原発

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 
 ① 原発を取り巻く状況と残余のリスク
 第5次エネルギー基本計画の原案によると、
  政府が2030年度にめざす原発比率を20~22%とすること。
  そのために必要な原発の稼働は約30基程度を稼働させる必要がある。
  現時点では8基が稼働しているのみで、
  はたして再稼働反対の国民の意志に反する再稼働の目標を達成することができるのか。
  この基本計画原案では、
  「原発への依存度を可能な限り低減させる」としながらも、
  「重要なベースロード電源」と従来の基本計画と変わらない位置づけをしている。

  プルサーマル発電や原発輸出も
  「世界の原子力の安全向上や平和利用などに積極的な貢献を行う」として、
  原発政策に積極的に取り組む姿勢を推進するようだ。

  福島第一原発の事故の混乱を忘れたわけではあるまい。

  拡散された放射能の恐れや不安は今なお被災者を苦しめ、
  故郷さえフレコンバックの仮置き場として、
  先の見えない原発政策の犠牲となっている。

  原発の危険性を指摘されると、
  「世界一厳しい原発規制」だからと、新原発神話をお題目のように言うが、
  具体的に日本の原発規制を世界の規制と比較した説明を国民に明示したことはない。

 残余のリスク
  最高の科学技術ゃ頭脳を持ってしても、「完全なもの」など作れるわけはない。
  二重、三重の安全セキュリティーを追求した原発でも、これを扱うのは生身の人間だ。
  ヒューマンエラーという考え方がある。  
  安全を極めてなお、
  事故は絶対に起こらないとは言い切れないことが、
  原発事故ではよく起こる。

  安全を極めてなお
  残余のリスクを内包していることを忘れてはならない。

  原発のような制御不可能なものは作ってはいけないのだ。

  フクシマの悲劇を二度と起こしてはならないということが、教訓なのだ。
  その教訓を生かすことができなければ、
  かけがえのない命を奪われた人々や
  故郷を失った人々に何と説明していいのか
  私は分からない。

            (つづく)
         (2018.5.14)    (風の行方№39)
                    次回は「ハインリッヒの法則」について述べます。
読者の皆さんにお詫び
      ①と②を間違えてアップしてしまいました。
    
  ①(残余のリスク)は後日アップします。
      ②は5/16にアップしています。




 

コメント (2)
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原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 ②

2018-05-16 08:03:29 | 風の行方・原発

原発・残余のリスクとハインリッヒの法則 
 ②潜在的危険・ハインリッヒの法則
 「重要なベースロード電源」である原発は、再稼働の反対を押し切って
 現在8基が稼働している。
 稼働していない原発はどうか。
 例えば新潟県柏崎刈羽原発の場合。(朝日新聞科学者接担当・村山知博記者の記事引用)
  ひろい構内を車が行きかい、放射線管理区域のゲートを作業員らが出入りする。
  原子炉の周りやタービン建屋など、あちこちにひとの姿がある。
  原発が動いていなくても6千人が働いている。 
 
 取材に訪れた村山記者は、
 長いこと稼働していない原発に携わっていて、作業員の士気の低下につながらないか。
 単純な質問だが東電社員から帰ってきた答えは重い。
 「士気は大丈夫ですが、長期にわたる運転停止はリスクです」

 
 士気の低下は、施設内の訓練や研修等により維持できるが、
 マンネリは大きなミスを併発する原因となる。
 訓練や研修を続けても所詮は「本物ではない」物への試みだ。
 
 錆びによる腐食やネジやバルブのゆるみなど思わぬことが事故に繋がっていく。
 記者が、「士気は大丈夫」かとした裏には次のような小さな事故があったからだ。
   2018.3 九州電力玄海原発3号機 蒸気漏れトラブル
                 7年3カ月 ぶりの再稼働から1週間後の事故だった。
                 九電は「機械を長く止めているのはリスクが大きく、
                 緊張感を持っ再稼働に臨む」としていたが、
                 トラブルを防ぐ瀬ことはできなかった、と記事は報告する。
   2015.8 九州電力川内原発1号機 2次冷却系に海水が混入。細管5本に穴が開いていた。
                 再稼働9日後のトラブル
   2016.2 関西電力高浜原発4号機 変圧器周辺の設定ミスで緊急停止。
                 再稼働3日後のトラブル
   そして、最も新しい再稼働におけるトラブル
   2018.5 関西電力大飯原発4号機 蒸気発生器の水位の低下を知らせる警報が鳴る。
                 再稼働2日目のトラブル。(問題のないことが確認できれば予定通り
                 11日夕から発電・送電を始める。14日現在予定通り再稼働された)
  ハインリッヒの法則
     一つの重大事故の背後には29件の軽微な事故と300件の異常がある、という説。

   事故と言えないようなトラブルだが、
   侮(あなど)るなかれ再稼働に携わる人々よ、
   心して気を引き締めて欲しい。
   この法則が決して実証されてはならないのだから。
           (2018.5.14記)    (風の行方№40)
         
読者の皆さんにお詫び

      ①と②を間違えてアップしてしまいました。
    
  ①(残余のリスク)は後日アップします。

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春を詠う② 別れと出会い

2018-05-11 17:30:00 | 人生を謳う


                          
春を詠う②  別れと出会い 
  夏日が幾日か来たかと思ったら、急に寒くなって今日は気温18℃。
 雨が降って、風も出ているようです。
 行く春にしてはとても寒く感じる一日です。

 春は気持ちが穏やかになり、うきうきした気分になります。
 それでいて、どこかに寂しさを感じる季節です

 〇 春きみと駅の階段下りるときふうわり揺れるスカートを買う
              
 
…… (横浜市) 岡田紀子 朝日歌壇2018.03.05
    青春っていいなぁー。風が駅の階段を駆け登ってくる。スカートがふうわりと揺れる。一瞬二人の体                  が寄り添う…… 春は恋の生まれる季節です。

 〇 春が来て街の時計屋ひっそりと閉店セールの幟(のぼり)しまひぬ
          …… (東久留米市) 関沢由起子 朝日歌壇2018.03.12
      街でたった一軒の時計屋。入学祝の腕時計が子どもたちの腕で光っている。人生のスタートを飾り退
 
      職後の第二の人生を静かに見つめてきた町の時計屋が幟をしまう。また一つ街のにぎわいが消えた過 疎 の町。

   春は出会いの季節であり、同時に別れの季節でもあります。
     別れは出会いの始まりでもある。

 〇 惜別の花のこゑ聞く風の中                         
       …… (浜田市) 田中由紀子 朝日俳壇2018.04.22
      惜別の風が吹き、花吹雪の中からさようならの声が聞こえる。
 〇 満開の桜残して町を去る
      …… (柏市) 福川敏機 朝日俳壇2018.04.22
      
別れと出会いが交差する春。季節も人も走馬灯のように回っていく。
    〇    辛夷咲く傷み激しき空家かな
      
……  (尼崎市) 田中節夫 朝日俳壇2018.04.29
  〇  春浅し街路樹根元から切られ 
                           
               …… (堺市) 吉田敦子 朝日俳壇2018.03.19

                限界集落が静かに進行する。辛夷の花が白くたおやかに青い空に広がっている。
         何事もなかったように当時のままの姿を保ち続けている。
         開発のためとはいえ、なんと我儘で、傲慢な人間なのでしょうか。
         道路拡張や落ち葉の始末に邪魔なものは排除する。
         排除されるのは何時の時代にも弱者なのです。

     
      逝ってしまった人を思いだしながら、時の流れを感じるのも春なのでしょうか。
      春には出会いと別れの感情が潜んでいるのでしょうか。

  〇  お父さんを買ってと地団太踏んでいた子が高校生の母親になる (逝きし人)
                         …… (青森市) 前橋一二子 朝日歌壇2018.03.19
      母の手一つで育てた娘も今は懐かしい思い出になった。「お父さんを買って…」とせがまれた辛い思い出も
      今は懐かしい思い出としてよみがえってくる。 
  〇  忘れたら君は二度死ぬ七年を供養のために拾う桜花 (逝きし人)
                         …… (さくら市) 大場公史 朝日歌壇2018.03.19
      
君は逝ってしまったけれど、最愛の妻は今でもわたしの心に生きている。絶対忘れないよ。
      桜吹雪の花びらを一枚一枚拾いながら、逝きし人を思う情景が浮かんでくる。
                              (2018.5.11) (人生を謳う)
















 

 

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