雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

紅茶の中に落ちた秋

2019-09-28 06:00:00 | 季節の香り

紅茶の中に落ちた秋

   風がそよぐ
    雑木林のこずえを揺らし
  きれいに刈り込まれた下草の間を通り抜けて
  ヴェランダの明るい日差しの中に
  還ってきた

  小さな木製の古いテーブルの上に置かれた
  テイーカップ
  紅く色付いたわくらば一枚
  風と一緒に還ってきて
  淡いべにいろの紅茶の中に落ちた

  予期せぬ出来事に
  秋の風のさざ波に揺られ
  紅茶の海に落ちた秋色の遠い昔の思い出が
  カップの中に浮かんでくる

  父よ 母よ 姉よ 兄よ
  逝きて還らぬ大切な私のなつかしい人たちよ
  秋の気配の降りてくる林の中のヴェランダで
  今日は一日
  黄昏がやわらかい光の帯をたたみ
  夜のとばりが林をつつむまで
  思い出の船に乗って語りつくそう
  私たちが歩んてきた「道」のことについて……

  
  

   (2019.9.27記)        (季節の香り№32)

  


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