居酒屋日記・オムニバス (16)
第二話 小悪魔と呼ばれたい ⑤

いまの時代。専業主婦や所得証明書を出せない客に、金融会社が金を貸すと法令違反になる。
そのため。どこの消費者金融も主婦へ金を貸さなくなった。
困り果てた主婦たちが、生活費の不足分を夫の給料を使い、一攫千金のパチンコで
稼ぎ出そうと胸算用をたてる。
だが願いもむなしく、玉はすべて、回収穴に吸い込まれていく。
内緒で持ってきた軍資金は、あっという間に底をつく。
そこでドル箱を抱えている勝ち組男に声をかけ、体を武器に「パチンコ売春」で
負けた金の穴埋めしょうと企てる。
最近は信じられないほどの美女が、声をかけてくるケースもあるという。
「たしかに顏は美人だったが、反応はいまいちだった。
もったいないよなぁ、あんないい女が無反応のマグロとはよう」
マグロとは、性行為に反応しない女のことだ。
まるで魚市場にゴロゴロと並んでいる冷凍のマグロのようだ、と表現したことから
この名前がついた。
「あんたがただ、下手だっただけじゃないの?」と鉄筋女が笑う。
「アネゴ。そんな馬鹿な女はいねぇ。
普通は早く終わりにするために、演技のあえぎ声を出して男をあおるもんだ。
無反応のままじゃ、男の方もそのうちにしらけちまう。
また会おうねと名刺をもらったけど、こんなものには用はねぇ。
捨てちまおうか、こんなもの」
「名刺をもらってきた?。ふぅ~ん。
・・・となると組織売春の可能性があるね、そいつには」
「組織売春?。そうすると、こいつはいまはやりの主婦売春のサークルなのかな?
やばいな。これ以上、あの女に深入りし過ぎると・・・」
「なんだ。まだその気が有るんじゃないか、あんたには。
無反応のマグロ女とまだエッチをする気かい?。呆れたねぇ、あんたにも」
「そうじゃねぇ。
母と娘の3Pってやつを、マグロ女のほうから言い出してきたんだ。
金はかかるが、母と娘の親子どんぶりというのも面白い。
娘がOKしたら、すぐ電話して来いと、マグロ女に言い残してきた」
(母と娘による3Pか、なんだか、とんでもないことになりそうだな・・・)
事件にでもならなければいいがと、盗み聞きしていた幸作が首をひねる。
その次の日も鉄筋女がやって来た。
今日も風呂上がりのいい匂いが、女といっしょに店の中へ入って来た。
「どうなった?。3Pの話は?」
「あら、聞いていたのかい、隅におけないわねぇ、あんたも」
「そりゃな気になるさ。母と娘の親子どんぶりだ。
男なら、一度くらいは味見してみたいもんだと、食指が動く」
「娘の承諾に、すこし時間がかかっているみたいだ。
男ってやつはなんでこんなに必死になって、女の尻を追い回すんだろう。
信じられないよ。男の生きる目的は、女だけじゃないはずだ」
「君の場合はどうなんだ?。たまに、男が欲しくなるときはないのか?」
「相手によるさ。あんたとならデートしてもいいよ。
あんたみたいな、なよっとした年上の男が、実はあたしの好みだもの」
ばかやろう。大人をからかうんじゃねぇ!、と幸作が、鉄筋女に背中を向ける。
「本気なんだけどなぁ、あたし・・・」と、さらに女の声が追いかけてくる。
ホントに本気かもしれないな、と思うほど、妙に鼻にかかった声だ。
(17)へつづく
新田さらだ館は、こちら
第二話 小悪魔と呼ばれたい ⑤

いまの時代。専業主婦や所得証明書を出せない客に、金融会社が金を貸すと法令違反になる。
そのため。どこの消費者金融も主婦へ金を貸さなくなった。
困り果てた主婦たちが、生活費の不足分を夫の給料を使い、一攫千金のパチンコで
稼ぎ出そうと胸算用をたてる。
だが願いもむなしく、玉はすべて、回収穴に吸い込まれていく。
内緒で持ってきた軍資金は、あっという間に底をつく。
そこでドル箱を抱えている勝ち組男に声をかけ、体を武器に「パチンコ売春」で
負けた金の穴埋めしょうと企てる。
最近は信じられないほどの美女が、声をかけてくるケースもあるという。
「たしかに顏は美人だったが、反応はいまいちだった。
もったいないよなぁ、あんないい女が無反応のマグロとはよう」
マグロとは、性行為に反応しない女のことだ。
まるで魚市場にゴロゴロと並んでいる冷凍のマグロのようだ、と表現したことから
この名前がついた。
「あんたがただ、下手だっただけじゃないの?」と鉄筋女が笑う。
「アネゴ。そんな馬鹿な女はいねぇ。
普通は早く終わりにするために、演技のあえぎ声を出して男をあおるもんだ。
無反応のままじゃ、男の方もそのうちにしらけちまう。
また会おうねと名刺をもらったけど、こんなものには用はねぇ。
捨てちまおうか、こんなもの」
「名刺をもらってきた?。ふぅ~ん。
・・・となると組織売春の可能性があるね、そいつには」
「組織売春?。そうすると、こいつはいまはやりの主婦売春のサークルなのかな?
やばいな。これ以上、あの女に深入りし過ぎると・・・」
「なんだ。まだその気が有るんじゃないか、あんたには。
無反応のマグロ女とまだエッチをする気かい?。呆れたねぇ、あんたにも」
「そうじゃねぇ。
母と娘の3Pってやつを、マグロ女のほうから言い出してきたんだ。
金はかかるが、母と娘の親子どんぶりというのも面白い。
娘がOKしたら、すぐ電話して来いと、マグロ女に言い残してきた」
(母と娘による3Pか、なんだか、とんでもないことになりそうだな・・・)
事件にでもならなければいいがと、盗み聞きしていた幸作が首をひねる。
その次の日も鉄筋女がやって来た。
今日も風呂上がりのいい匂いが、女といっしょに店の中へ入って来た。
「どうなった?。3Pの話は?」
「あら、聞いていたのかい、隅におけないわねぇ、あんたも」
「そりゃな気になるさ。母と娘の親子どんぶりだ。
男なら、一度くらいは味見してみたいもんだと、食指が動く」
「娘の承諾に、すこし時間がかかっているみたいだ。
男ってやつはなんでこんなに必死になって、女の尻を追い回すんだろう。
信じられないよ。男の生きる目的は、女だけじゃないはずだ」
「君の場合はどうなんだ?。たまに、男が欲しくなるときはないのか?」
「相手によるさ。あんたとならデートしてもいいよ。
あんたみたいな、なよっとした年上の男が、実はあたしの好みだもの」
ばかやろう。大人をからかうんじゃねぇ!、と幸作が、鉄筋女に背中を向ける。
「本気なんだけどなぁ、あたし・・・」と、さらに女の声が追いかけてくる。
ホントに本気かもしれないな、と思うほど、妙に鼻にかかった声だ。
(17)へつづく
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