北へふたり旅(108)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/21/f5bfac985d401c38a04710cfd4dd3fdb.jpg)
床面積の広いスーパーマーケット。そんなイメージで地下へ降りていく。
エレベーターのドアが開いた瞬間、目を見張った。
そこはまるで食のテーマパーク。
洗練された店舗が華やかに並んでいる。
(いまどきのデパ地下は、こんな風になっているのか・・・)
(ホント。じつに美味しそうです)
メロンを見にいくはずが、妻の目は華やかな弁当にクギづけになった。
北海道の食材をふんだんに盛り込んだ弁当が、これでもかとばかり並んでいる。
「駅弁よりこちらのほうがおいしそうに見えます」
「問題は時間だ。朝10時だ。買えるか、ここで」
デパートの開店は10時。その時間、弁当はここへ並んでいるのか?。
「だいじょうぶです。
開店とどうじに販売できるよう、ご準備しております。
駅弁として楽しんでいただけるようお茶もセットで用意してございます」
妻の疑問に、店員が笑顔でこたえる。
「いいわね。それならたくさん買えるわ」
10時30分から10時間。
わたしたちはJR東日本を南下していく。
効率を重視したため、乗り換え時間にそれほど余裕はない。
そのため2食が、列車の中の食事になる。
「カニがおいしそう」
「君。明日の弁当もだいじだが、とりあえずメロン記念日が先だ。
ユキちゃんのメロンを見に行こう」
「だいじょうぶ。もう見つけてきたっしょ」
ユキちゃんがわたしたちの背中へ戻ってきた。
手に透明のカップを持っている。
カップの中にカットされた赤肉のメロンがはいっている。
「800円て書いてある・・・、こんなので良いの。本当に?」
「学生です。これでもずいぶん贅沢っしょ。
自分のご褒美に買うのも、年に1度か2度あれば買いすぎですから」
「あら。おいしそうね。それ。どこで売っていたの。
わたしたちも買いましょう。せっかくですもの、ねぇあなた」
結局。カップにはいったカットメロンを3個購入した。
「ずいぶん世話になったのに、ささやかすぎてこころ苦しい。
ほかに何かないか。
遠慮しないで言ってくれ」
「それなら、もうひとつ・・・」
「あるのか。そいつは良かった。
どんなものがいい?」
「卒業旅行を考えているっしょ。
わたし、群馬へ行きたくなりました」
「群馬へ卒業旅行・・・ずいぶん地味だね」
「お2人を見ていたら源泉かけ流しの温泉地、草津温泉を見たくなったしょ」
「おお、草津か。いいところだ。草津温泉は。
毎分3万2300ℓ以上の自然湧出量は、日本一だ。
よし。群馬へ来たら電話してくれ。
おれたち2人で草津温泉へ案内してあげるから」
「ほんと!。うれしいっしょ!。約束です」
「君にまた逢えると思うと、おれたちのほうがはるかに嬉しい。
よかった。はるばる札幌までやってきた甲斐があった」
卒業したら親が経営している牧場を継ぐといっていた娘が、
嬉しそうに、カットメロンが入った袋をぶらさげて、立ち去っていく。
(109)へつづく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/21/f5bfac985d401c38a04710cfd4dd3fdb.jpg)
床面積の広いスーパーマーケット。そんなイメージで地下へ降りていく。
エレベーターのドアが開いた瞬間、目を見張った。
そこはまるで食のテーマパーク。
洗練された店舗が華やかに並んでいる。
(いまどきのデパ地下は、こんな風になっているのか・・・)
(ホント。じつに美味しそうです)
メロンを見にいくはずが、妻の目は華やかな弁当にクギづけになった。
北海道の食材をふんだんに盛り込んだ弁当が、これでもかとばかり並んでいる。
「駅弁よりこちらのほうがおいしそうに見えます」
「問題は時間だ。朝10時だ。買えるか、ここで」
デパートの開店は10時。その時間、弁当はここへ並んでいるのか?。
「だいじょうぶです。
開店とどうじに販売できるよう、ご準備しております。
駅弁として楽しんでいただけるようお茶もセットで用意してございます」
妻の疑問に、店員が笑顔でこたえる。
「いいわね。それならたくさん買えるわ」
10時30分から10時間。
わたしたちはJR東日本を南下していく。
効率を重視したため、乗り換え時間にそれほど余裕はない。
そのため2食が、列車の中の食事になる。
「カニがおいしそう」
「君。明日の弁当もだいじだが、とりあえずメロン記念日が先だ。
ユキちゃんのメロンを見に行こう」
「だいじょうぶ。もう見つけてきたっしょ」
ユキちゃんがわたしたちの背中へ戻ってきた。
手に透明のカップを持っている。
カップの中にカットされた赤肉のメロンがはいっている。
「800円て書いてある・・・、こんなので良いの。本当に?」
「学生です。これでもずいぶん贅沢っしょ。
自分のご褒美に買うのも、年に1度か2度あれば買いすぎですから」
「あら。おいしそうね。それ。どこで売っていたの。
わたしたちも買いましょう。せっかくですもの、ねぇあなた」
結局。カップにはいったカットメロンを3個購入した。
「ずいぶん世話になったのに、ささやかすぎてこころ苦しい。
ほかに何かないか。
遠慮しないで言ってくれ」
「それなら、もうひとつ・・・」
「あるのか。そいつは良かった。
どんなものがいい?」
「卒業旅行を考えているっしょ。
わたし、群馬へ行きたくなりました」
「群馬へ卒業旅行・・・ずいぶん地味だね」
「お2人を見ていたら源泉かけ流しの温泉地、草津温泉を見たくなったしょ」
「おお、草津か。いいところだ。草津温泉は。
毎分3万2300ℓ以上の自然湧出量は、日本一だ。
よし。群馬へ来たら電話してくれ。
おれたち2人で草津温泉へ案内してあげるから」
「ほんと!。うれしいっしょ!。約束です」
「君にまた逢えると思うと、おれたちのほうがはるかに嬉しい。
よかった。はるばる札幌までやってきた甲斐があった」
卒業したら親が経営している牧場を継ぐといっていた娘が、
嬉しそうに、カットメロンが入った袋をぶらさげて、立ち去っていく。
(109)へつづく