オヤジ達の白球(65)屋根から落ちる雪
ドサッ。物音で祐介が目を覚ます。
(なんの音だ。いまの音は・・・)こたつの中で身体の向きをかえる。
横になった瞬間、そのまま眠りに落ちていたようだ。
陽子がかけてくれたのだろう。動いた瞬間、ピンクの毛布がずれ落ちていく。
部屋の中はあたたかい。ストーブは赤々と燃えているし、電気も点いたままだ。
ドサッ。また表から重たい物音が響いてきた。
こたつから出た祐介が膝で、猫間障子まで這い寄っていく。
小障子に手をかける。力をいれるまでもなく、するりと小障子が滑りあがっていく。
何も見えない。完全に結露したガラスがあらわれた。
(くもりガラスを手でふいて・・・か。まるでさざんかの宿みたいだな)
結露を手でぬぐう。ガラスの感触が手のひらに冷たい。
表の様子が見えてきた。
庭は全面真っ白だ。それいがい、何も見えてこない。
(まだ薄暗いな。夜明けの前かな?・・・)
この頃の日の出は、6時30分頃。
雪はまだ小やみなく降っている。明るくなるのはすこし遅くなるだろう。
(まだ降り続いているのか。ずいぶん大量に積もったもんだ)
祐介の目が、雪の中にくぼみを見つける。
(なんだ・・・雪の中に、出来たばかりのようなクレーターがあるぜ)
クレータはひとつではない。
建物と平行に、ふぞろいの大きさのクレーターがいくつも並んでいる。
ドスン。またひとつ。上から何かが落ちてきた。
雪煙をまきあげたあと、地面へにぶい衝撃音をひびかせる。
(雪のかたまりだ。それも氷結した雪のかたまりだ!。そいつが2階の屋根から落ちてくるんだ。
物音は、そのときの衝撃音だ)
途中から雨音を聞いたような記憶がある。
風も強まったようだ。(荒れた天候になって来たようだなぁ・・・)
そんな感想をぼんやり抱きながら、そのまま眠りの中へ落ちていった記憶がある。
(雨がふると積もった雪が水気を含む。
そこへつめたい強風が吹きつければ、氷のかたまりが出来上がる。
そのかたまりが、2階の屋根から滑り落ちてくる。
そいつが雪の地面に、クレーターのような穴を開けるんだ)
眠っているあいだに雪が重みを増していたんだ・・・と祐介が、ぼんやりした頭で考える。
水をふくんだ雪は想像を超える重量になる。
しかも雨は一時的なもので、いまはまた雪に変わり、それはいまも降り続いている。
(あ・・・)
祐介が急に覚醒する。
(屋根から落ちる氷のかたまり・・・まずい!)
車は玄関の直前に停めてある。
停めた車の真上に、2階からひさしが突き出ている。
愛車へ氷のかたまりが落ちる可能性がある。直撃したらたいへんな事になる。
祐介の予感が的中した。
毛布をはおり、表へ飛びだした祐介がみたものは、変わり果てた愛車のボンネットだった。
屋根に大量の雪が降り積もっている。
ゆうに60㌢はあるだろう。
しかし。ボンネットの上に雪は無い。
そのかわり。2ヵ所に、ハンマーで殴った様なへこみが出来ている。
2階のひさしから落ちてきた氷のかたまりが、ボンネットを直撃したのだろう。
凹んだボンネットの様子を見て、祐介がおもわず苦笑をうかべる。
(雪が凶器になる事実を、おれは、産まれてはじめてこの目でみた・・・)
祐介が毛布にくるんだ身体を、おもわずぶるりと震わせる。
(66)へつづく
ドサッ。物音で祐介が目を覚ます。
(なんの音だ。いまの音は・・・)こたつの中で身体の向きをかえる。
横になった瞬間、そのまま眠りに落ちていたようだ。
陽子がかけてくれたのだろう。動いた瞬間、ピンクの毛布がずれ落ちていく。
部屋の中はあたたかい。ストーブは赤々と燃えているし、電気も点いたままだ。
ドサッ。また表から重たい物音が響いてきた。
こたつから出た祐介が膝で、猫間障子まで這い寄っていく。
小障子に手をかける。力をいれるまでもなく、するりと小障子が滑りあがっていく。
何も見えない。完全に結露したガラスがあらわれた。
(くもりガラスを手でふいて・・・か。まるでさざんかの宿みたいだな)
結露を手でぬぐう。ガラスの感触が手のひらに冷たい。
表の様子が見えてきた。
庭は全面真っ白だ。それいがい、何も見えてこない。
(まだ薄暗いな。夜明けの前かな?・・・)
この頃の日の出は、6時30分頃。
雪はまだ小やみなく降っている。明るくなるのはすこし遅くなるだろう。
(まだ降り続いているのか。ずいぶん大量に積もったもんだ)
祐介の目が、雪の中にくぼみを見つける。
(なんだ・・・雪の中に、出来たばかりのようなクレーターがあるぜ)
クレータはひとつではない。
建物と平行に、ふぞろいの大きさのクレーターがいくつも並んでいる。
ドスン。またひとつ。上から何かが落ちてきた。
雪煙をまきあげたあと、地面へにぶい衝撃音をひびかせる。
(雪のかたまりだ。それも氷結した雪のかたまりだ!。そいつが2階の屋根から落ちてくるんだ。
物音は、そのときの衝撃音だ)
途中から雨音を聞いたような記憶がある。
風も強まったようだ。(荒れた天候になって来たようだなぁ・・・)
そんな感想をぼんやり抱きながら、そのまま眠りの中へ落ちていった記憶がある。
(雨がふると積もった雪が水気を含む。
そこへつめたい強風が吹きつければ、氷のかたまりが出来上がる。
そのかたまりが、2階の屋根から滑り落ちてくる。
そいつが雪の地面に、クレーターのような穴を開けるんだ)
眠っているあいだに雪が重みを増していたんだ・・・と祐介が、ぼんやりした頭で考える。
水をふくんだ雪は想像を超える重量になる。
しかも雨は一時的なもので、いまはまた雪に変わり、それはいまも降り続いている。
(あ・・・)
祐介が急に覚醒する。
(屋根から落ちる氷のかたまり・・・まずい!)
車は玄関の直前に停めてある。
停めた車の真上に、2階からひさしが突き出ている。
愛車へ氷のかたまりが落ちる可能性がある。直撃したらたいへんな事になる。
祐介の予感が的中した。
毛布をはおり、表へ飛びだした祐介がみたものは、変わり果てた愛車のボンネットだった。
屋根に大量の雪が降り積もっている。
ゆうに60㌢はあるだろう。
しかし。ボンネットの上に雪は無い。
そのかわり。2ヵ所に、ハンマーで殴った様なへこみが出来ている。
2階のひさしから落ちてきた氷のかたまりが、ボンネットを直撃したのだろう。
凹んだボンネットの様子を見て、祐介がおもわず苦笑をうかべる。
(雪が凶器になる事実を、おれは、産まれてはじめてこの目でみた・・・)
祐介が毛布にくるんだ身体を、おもわずぶるりと震わせる。
(66)へつづく