NPO法人 三千里鐵道 

NPO法人 三千里鐵道のブログです。記事下のコメントをクリックしていただくとコメント記入欄が出ます。

南北関係の国際関係化?-北の仁川アジア大会参加を実現させよう!-

2014年08月06日 | 三千里コラム

統一旗を掲げ合同で入場行進する南北の選手団(2002.9.29、釜山アジア大会)



9月17日から10月4日まで、韓国の仁川市で第17回アジア大会が開かれます。南北間の政治・軍事的な対峙が続く朝鮮半島ですが、北が今大会への参加を表明しています。しかも、選手団350名・応援団350名、計700名の大規模な代表団を派遣するというのです。

2000年6月の南北首脳会談を契機に、南北のスポーツ交流が活性化しました。金大中・盧武鉉政権期には南での各種国際大会に北からの代表団が参加し、南の市民が「統一旗」を振って南北の選手を応援するなど、微笑ましい南北和解のシーンが見られたものです。北からは2002年の釜山アジア大会、2003年の大邱夏季ユニバーシアード大会、2005年の仁川アジア陸上競技大会などに参加しています。

ところが、「核放棄と開放」を経済協力の前提条件にした李明博政権の下で南北関係は悪化し、スポーツ交流も中断します。今月の18日は故・金大中大統領の5周忌ですが、当時、弔問に訪れた北の高位代表団に李明博大統領は会おうとしませんでした。なんとか大統領官邸で短時間の接見が実現したのは、8月23日のことです。“各国弔問団との接見に準じた対処”というのが、大統領報道官の説明でした。

「同じ民族というだけで南北を特殊な関係と見なす時代は終わった。国際関係の一般的な原則に基づき、国家間の関係に再設定することが南北関係の進化だ」というのが、李明博政権の視点でした。当初は、統一部を廃止し通商外交部に吸収させる構想もあったようです。しかし、こうした視点で南北関係を軽視した結果、前政権の対北政策には「失われた5年」との否定的な評価が下されています。

そして“南北関係の国際関係化”という目標を、朴槿恵政権も継承しています。政権出帆から一年半が経過しましたが、その間の南北対話と交渉において、これといった画期的な成果はありません。7月17日、板門店で北のアジア大会参加に関する南北実務交渉が開かれました。これまでの前例からして、交渉は順調に進むものと楽観されましたが、決裂したのです。

争点は、代表団の位置づけと処遇をめぐる対立でした。700名という史上最大規模の代表団派遣について「南北関係を改善し、相互不信を解消する重要な契機」との意義を付与する北は、板門店経由の陸路、西海直行の空路、万景峰92号による海路など、多様な移動手段を考えています。そして、前例に相応する南の協力と支援を期待しているでしょう。

一方の南は、大規模代表団による北の政治宣伝を警戒し、“適切な規模”の代表団を希望しています。そして、代表団の処遇に関して「国際慣例とアジアオリンピック評議会(OCA)の規定に従うことが望ましい」と表明しました。‘これまでのような便宜を提供せず、他の参加国と同様の処遇をする’との意思表示です。ここでも、“南北関係の国際関係化”が原則なようです。

“国際慣例とOCAの規定”によると、各選手は一日50ドルの選手村使用料を支払います。応援団は基本的に観光客と見なされ、すべて自費負担が原則です。ただし、特定国の経済的事情を考慮して、選手団50名までの滞在費は開催国が支援してきました(当該国の体面を重んじ、国名は公開しないのが慣例です)。

しかし、南北関係はこれまで、「国際慣例」ではなく「南北間の慣例」が重視されてきたのです。会談であれ行事であれ、主催側がすべての経費を負担するのが慣例でした。今回のアジア大会に際し朴槿恵政権は、“南北関係の国際関係化”を持ち出し‘すべての経費を自己負担せよ。嫌なら参加しなくても構わない’と、ほのめかしているのです。

相手の自尊心を踏みにじるような対応で、何を得ようとするのでしょうか。これまで、北が南に派遣した代表団で最大規模は、2002年・釜山アジア大会の650名です。多数の応援団(いわゆる美女応援団)が万景峰号で釜山に入港し、その船舶で宿泊しながら釜山市民と意義深い交流をしました。当時、韓国政府が支援した滞在費用は13億5500万ウォンです。今回、700名の代表団を受け入れても、その支援額は20億ウォン(約1億9800万円)に満たいないでしょう。

世界第12位の経済大国を自賛するには、いささか気恥ずかしい少額です。でも、もし北から700名の代表団が南に来れば、その経済効果はおそらく1000億ウォンを下らないことでしょう。そして、北の選手団と応援団の大多数は、未来を担う若い世代です。

民族の未来を切り開く南北の若い世代が一緒になって、平和と統一を歌い舞う場面を想像してみましょう。この素晴らしいマダンを創りだすのに、南の現政権はわずか20億ウォンを惜しむのでしょうか。1998年6月、500頭の牛を連れて故郷である北の地を訪れた、故鄭周永氏(現代グループ元会長)の民族愛と剛毅が懐かしいばかりです。

最後に、8月4日付『ハンギョレ新聞』に掲載された丁世鉉・元統一部長官のコラムから、その一節を引用したいと思います。(JHK)

「...現実の問題として、対北政策は北が拒否したら、推進することも成果を挙げることもできない。少なくとも北が拒否しないように持って行くことが、対北政策の必要十分条件なのだ。...一年半ほどやってみて成果がなかったのなら、方法を変えるべきだ。国際情勢を見ても、南北の協力が緊要な時点だ。朴槿恵大統領が8月15日の慶祝辞で、北に対し‘アジア大会の参加に向けた南北体育会談を開催しよう’と提案するのも一策だろう。」

最新の画像もっと見る

コメントを投稿