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朴槿恵大統領のリーダーシップ

2014年09月19日 | 三千里コラム

国務会議を主宰する朴槿恵大統領(9.16,青瓦台)



9月16日、朴槿恵大統領は青瓦台で国務会議を主宰した。与党・セヌリ党の指導部も参加した当日の会議で、朴大統領は今後の政局を左右する重大な指針を表明している。この日は、朴槿恵政権に一大転機をもたらした日として記憶されるかも知れない。大統領の発言に込められたメッセージは、一切の期待や幻想を払拭させるほどに明確だった。

まず、セウォル号の惨事に関して。
その間の長い沈黙を破って発した大統領の第一声は、遺族および対策委員会の要求を一刀のもとに拒絶するものだった。大統領は“特別法の制定にあたって、外部勢力が政治的に利用することが無いようにすべきだ”と警告し、“真相調査委員会に捜査権と起訴権を与えるのは、三権分立と司法体系の根幹を揺るがすことだ。大統領が決断できることではない”と言明した。

三権分立を掲げる朴大統領はしかし、セウォル号特別法に関しては“与野党の合意案(特命検察官の選定に際し野党と遺族の意見を尊重する)が最終的な決断だ”と強調している。これ以上の譲歩はないと厳命し、行政府の首長として立法機関への圧力を遺憾なく行使しているわけだ。そして、大統領の意に反してあくまでも捜査権と起訴権の付与を求める遺族や市民団体を、「体制の根幹を否定する不純分子」と断定してはばからない。

国会への圧力と干渉は更に続く。
セウォル号特別法をめぐる与野党の対立で、国会は今、諸法案の審議が全くできずに空転している。大統領は「野党議員の非協力的な姿勢」を強く糾弾し、“国会議員への歳費は国民の税金から支給されている。国民に対する責任と義務を果たせないなら、議員資格を返上して歳費も返納すべきだ”と、言いたい放題である。

ついには、1970年代の独裁政権期を想起させる発言まで飛び出した。“国会が機能マヒの現状では、与党だけでも問題解決に向けた主導的な役割を果たすべきだろう”と述べ、与党単独での国会運営と強行採決への本心を吐露している。大統領の叱咤が効いたのか、国務会議の直後には国会議長が職権を行使して、定期国会の議事日程を一方的に決定している。指導部が支離滅裂の状態にある野党・新政治民主連合は、為す術もない。

続いて、あたかも戦闘を陣頭指揮するかのように大統領の意向が各機関に下達された。セウォル号惨事が発生した当日、「空白の7時間」を追求されている大統領は、これを機に逆襲へと転じたようだ。自らへの疑惑に関しては口を閉ざしたまま、“大統領を侮辱する発言が度を過ぎている。法務部と検察は、こうした国論を分裂させる行為を徹底して取り締まるように”指示した。

また、朴大統領の顔色を窺うことでは人後に落ちないファン・ウヨ教育部長官は、間髪を置かず全国各地の市・道教育庁に公文を発送し、“黄色いリボン着用など、セウォル号犠牲者を追慕する行動の禁止”を通達した。その理由が「教育の政治的中立性を損ない、未成熟な生徒たちに偏った視点を植え付ける」というのだから、これこそ生徒たちへの「度を過ぎた侮辱」であろう。

‘黄色いリボン’は、セウォル号の犠牲者追慕と失踪者の速やかな救助を願う心情で着用し始めたものだ。教え子の死を悲しむ先生たちが、友の悲劇を悼む仲間たちが、決して忘れまいと胸に刻む誓いでもある。先月訪韓したフランシスコ法王も、ミサの際には‘黄色いリボン’着用していたことを思い出してほしい。

ちなみに韓国政府の教育部は去る6月、セウォル号惨事の政府責任を問い朴槿恵大統領に退陣を求めた200余名の教職員を、一人残さず検察に告訴している。

政権に反対する人々をすべて「不純分子」と見なし制圧しようとするなら、独裁者が民衆の抗争で悲惨な末路を迎えた韓国現代史の教訓から、何も学んでいないことになる。前回のコラムで、韓国社会に現存する「強力なリーダーシップへの渇望」を指摘したが、朴槿恵大統領はどうか錯覚しないでほしい。あなたの政局運営から見出すのは、民主共和国大統領としての指導力ではなく、専制王朝の女王陛下に通じる独断と専横でしかないからだ。(JHK)

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