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日本軍慰安婦制度に対する米議会の姿勢

2014年01月17日 | 三千里コラム

グレンデール市の慰安婦像



2007年6月26日(以下、現地時間)米下院外交委員会は「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議案」を、「賛成39、反対2」で可決しました。決議案はその後、7月30日に下院本会議において満場一致で採択されています(米下院121号決議)。決議の本文は冒頭で、日本軍慰安婦制度の犯罪性と被害女性の苦痛を省みない日本社会の現状について、次のように指摘しています。

 -1930年代から第2次世界大戦までの間、日本政府は、「慰安婦」と呼ばれる若い女性たちを日本軍に性的サービスを提供する目的で動員させた。日本政府による強制的な軍隊売春制度「慰安婦」は、「集団強姦」や「強制流産」「恥辱」「身体切断」「死亡」「自殺を招いた性的暴行」など、残虐性と規模において前例のない20世紀最大規模の人身売買のひとつである。
 日本の学校で使われている新しい教科書は、こうした慰安婦の悲劇や太平洋戦争中の 日本の戦争犯罪を矮小化している。また、最近日本には、慰安婦の苦痛に対する政府の真摯(しんし)な謝罪を含む河野洋平官房長官による1993年の「慰安婦関連談話」を弱めようとしたり、撤回させようとしている者がいる。

そして決議121号は、米下院の「共通した意見」として日本政府に以下の様な勧告を明示したのです。
①日本政府は1930年代から第2次世界大戦終戦に至るまでアジア諸国と太平洋諸島を植民地化したり戦時占領する過程で、日本軍が強制的に若い女性を「慰安婦」と呼ばれる性の奴隷にした事実を、明確な態度で公式に認めて謝罪し、歴史的な責任を負わなければならない。
②日本政府は「日本軍が慰安婦を性の奴隷にし、人身売買した事実は絶対にない」といういかなる主張に対しても、明確かつ公式に反論しなければならない。
③日本政府は、国際社会が提示した慰安婦に関する勧告に従い、現世代と未来世代を対象に残酷な犯罪について教育をしなければならない。

しかし、この決議に対し日本政府は全面的に無視する姿勢を取り、米政府も日本政府に配慮して立法府である議会の決議を支持しませんでした。当時の両首脳は誰あろう、ジョージ・ブッシュと安倍晋三です。ケーシー国務省副報道官が当時、「ブッシュ大統領と安倍首相は慰安婦問題を話し合い、大統領は日本側の対応に満足の意を表明している」と述べています。

あれから6年半が過ぎた今、米議会が再びこの問題に関して明確な意思表示を見せました。
米下院は1月15日、国務長官が日本政府に対し、2007年の121号決議を遵守するように促すことを公式に決議しました。下院はこの日午後の本会議で、こうした内容が盛り込まれた『2014年統合歳出法案』を表決し通過させたのです。慰安婦問題が米国議会の正式法案に含まれたのは、今回が初めてのことです(『統合歳出法案』の第7章、「国務部の海外業務歳出法案」に関する合同解説書、アジア・太平洋部分に収録)。

収録されたのは、「2007年7月30日付下院の慰安婦決議案通過に注目し、国務長官をして、日本政府がこの決議案で提起された問題を解決するように督励することを求める」という内容です。法的強制力がない報告書の形態ですが、日本軍慰安婦問題が正式法案の内容として明記されたことで、米国務省の外交努力と日本政府の謝罪を圧迫する根拠となります。象徴的な効果は決して小さくないと評価できるでしょう。

下院に続き上院も、今週中には『2014年統合歳出法案』を表決する予定であり、通過する可能性が高いと見られています。法案が通過すれば、行政府に移送され大統領が署名します。安部政権の反動的な歴史認識を快く思わないオバマ大統領が、署名を拒否することはあり得ないでしょう。

ワシントンの外交消息筋は、「2007年米国下院の慰安婦決議案採択に続き、米国議会ではじめて正式方案にまで言及されたのだから、今後の慰安婦問題解決においてその意味と象徴性は極めて大きい。人類の普遍的価値である人権問題を解決しようとする米国議会の明確な意志が反映されたものだ」と述べています。特に今回は、安倍晋三首相の靖国神社参拝以後、米議会内で対日批判世論が高まっているなかでの決議だけに、より一層、その意味が注目されるところです。

ところで、日本の地方議員ら13人が、米カリフォルニア州グレンデール市に設置された「慰安婦」像に対する抗議と現地視察のために、1月14日から訪米したとの報道がありました。グレンデール市の「慰安婦」像は昨年7月、市議会の決議で設置されたものですが、その後もいくつかの地方都市で同様の動きがありました。当然ながら、日本国内では“歴史の歪曲”だと反発する人たちがいます。

今回、訪米団は「慰安婦像設置に抗議する全国地方議員の会」のメンバーが中心で、地方議員318名が署名した抗議文書をグレンデール市議会に提出するそうです。訪米団の代表格である松浦芳子・杉並区議は、「米国人が韓国の(嘘の)主張をうのみにしてしまっている。私は母親なので、誤った歴史認識が次の世代に残るのは耐えられない。...真実かどうかの検証がないのに、モニュメントが建ってしまったら形として残ってしまう」と、声を上げています。

訪米団の地方議員たちは今回、米国議会で日本軍慰安婦問題の解決を明記した方案が正式に通過したことを、どのように受け止めているのでしょうか。このような事態を現地で目撃した今も、「米国の下院議員たちはお人好しで、韓国人の嘘をうのみにしている」と憤懣やるかたない心情なのかもしれません。代表団の滞米が、心安らかなものであることを願うばかりです。

余計なお世話かもしれませんが、歴史の「事実」を超え、歴史の「真実」に向きあおうとしない限り、“われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ”(日本国憲法前文)との願いが実現することはないでしょう。

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