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制裁? 対話と交渉!

2016年04月05日 | 三千里コラム

各界人士818名による「今こそ制裁ではなく、対話と交渉を開始せよ!」共同宣言(3.31,ソウル)



3月31日、ワシントンでの第4回核安全保障サミット期間に米中首脳会談が開かれた。日本の報道では、両国首脳が「対北朝鮮制裁決議の全面的な履行意思を再確認した」と伝えるだけだ。しかし、国連安保理の決議2270号は単に制裁という要素だけではなく、対話と交渉によって朝鮮半島の非核化(北朝鮮の非核化ではない!)と平和体制を追求するという側面も含まれている。決議の第49項は「朝鮮半島・東北アジアにおける平和と安定の維持」、第50項は「六カ国協議と『9.19共同声明』の支持」となっているのだ。制裁決議の全面履行とは、これら項目の実現に向けて米中両国が共同で努力することの確認でもある。

4月1日、中国外交部の報道によれば、米中首脳会談で習近平主席は「中国は一貫して、朝鮮半島の非核化・朝鮮半島の平和と安定・対話と交渉による諸問題の解決、という原則を堅持してきた」と述べたそうだ。北朝鮮の第4回核実験以降、中国の首脳が米大統領に「対話と交渉による解決」を求めたのは、これが初めてのことだろう。
周知のごとく、史上最強レベルの対北朝鮮制裁決議が3月2日に採択され、史上最大規模の米韓合同演習が3月6日から始まった。そして南北双方が互いの最高指導者を標的にした軍事作戦の敢行を表明するなか、朝鮮半島の軍事緊張は「休戦協定以降で最高位」とまで言われている。一触即発とも見れる危機状況だが、筆者は「戦争から平和」に向かう変化の兆しを感じている。

まず、1月の核実験から制裁決議の採択に8週間も要したことは、何を意味するのだろうか。明らかに、制裁だけでは“北朝鮮の核・ミサイルの脅威”を解消できないこと、国連安保理が問題解決の有効な場ではないことの反映であろう。別の表現をするなら、朝鮮半島の非核化は朝鮮半島平和体制(核心は朝鮮戦争の平和協定)の一部分であり、その実現は安保理の制裁強化ではなく六カ国協議の合意履行を通じてこそ可能であることを、ようやく米中を始めとする関係国(日韓両国は除き)が自覚するようになったのだ。

次に、米中両国が制裁決議案を論議するなかで到達した合意内容だ。2月17日、中国の王毅外相は「朝鮮半島の非核化と米朝平和協定を並行して推進する」との提案を行った。さらに同23日、米中外相会談で両国は「制裁は対話のための手段であり、朝鮮半島問題の対話による解決」を表明している。衝撃的だったのは、2月21日付米紙『ウォールストリートジャーナル』の記事だった。昨年末に米朝両国がニューヨークで、平和協定交渉に関し非公開で接触したというのだ。この報道に関し米国務省は「われわれは平和協定に関する北朝鮮の提案を慎重に検討し、非核化がそうした論議の一部として含まれるべきだと言明した」というものだった。

これまでは「非核化(北朝鮮の核放棄)をあらゆる交渉の前提」にしてきた米政府が、「平和協定と非核化をパッケージにして一括交渉する」立場に移行しつつあると読める内容だ。米政府は制裁を前面に掲げているが、一角で交渉の余地も残している。それは、2006年以降くり返された安保理制裁に効力はなく、平和協定締結の提案を受け入れることでしか、北朝鮮の核問題は解決されないと悟り始めたからだろう。その意味で3月8日、全国人民代表大会における王毅外相の記者会見は、米朝関係の今後を予測するうえで参考になる。彼は次のように述べた。「非核化は国際社会の確固とした目標であり、停戦体制の平和体制への転換は朝鮮の合理的関心であり、両者を併行して交渉し統一的に解決することは、公平かつ合理的であるとともに、確実に実行可能でもある。」

そして、もう一方の当事者である北朝鮮も明確なシグナルを送っている。4月3日、国防委員会は報道官談話を通じて以下のようなメッセージを表明した。
「…一方的な制裁よりも安定の維持が急務であり、無謀な軍事的圧迫よりも交渉への転換が根本的な解決策であり、制度転覆の企図よりも無条件の体制承認と協調こそが賢明であるとの世論が大勢となっている…」。3月7日、米韓合同演習の開始直後に出された国防委員会の声明とは、明らかに異なるトーンである。当時、声明の基調は「米国とその追従勢力による核戦争の挑発狂気に全面対応するため、総攻勢に進入する」との過激な警告だった。今回、談話のキーワードが「安定の維持、交渉への転換」であることに注目したい。平和協定交渉に向け、米政府に“ボールを投げた”と言えよう。

ボールは米側のコートにある。受けて返すのか、以前のように無視するのか。選択は米政府にかかっている。残念ながら、韓国政府は変化の現状を直視していないようだ。朴槿恵政権の国防部は、北の談話に対し「今は国際社会が一致して対北制裁を強化している時期だ。対話について論じる時ではない」と一蹴した。参考までに、3月31日、韓国の市民社会と宗教界を代表する818名の人士が「今こそ制裁ではなく対話を!」という趣旨で共同宣言を発表した。宣言は、他でもない「朝鮮半島の平和協定と非核化の同時解決」を訴えている。そして、4月13日の国会議員総選挙を控え、主要な三野党もすべて「平和協定と非核化の同時解決」を公約として掲げている。制裁への執着がもたらすのは戦争の危機だけである。朴槿恵政権の覚醒を促したい。(JHK)

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1 コメント

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Unknown (黄英治)
2016-04-08 09:22:15
いつもながら、冷静かつ的確な分析。
視界が明るくなりました。
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