君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十二話

2015-01-05 02:05:44 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十二話

  太陽系 木星のメティス・ビルレスト屋上(異空間)

 キース、僕は諦めないよ。
 何が起きたとしても、僕は諦めない。

 二人は木星が見える高度まで上がった。
 ふわふわと薄い、青い色の丸い幕のような物がが二人を包んでいる。
「タイプブルーの力…」
 キースが呟く。
「どうして急に力が戻ったんだ?」
「さあ、僕にもわからない。多分、僕の中の何かが変わったんだろうな」
「お前の力は地球再生から戻ってからずっと不安定だったが、あれは全てお前の中(心)が原因だったのか…」
「そうだね。人間っぽいだろ?」
 と、ジョミーは笑った。
「…そうだな」
 キースもつられて笑った。
「…ここで良いかな?」
 ジョミーがゆっくりとキースから手を離し、うん。大丈夫と確認する。 
「力が戻ったのなら、ここから出る事が出来るんだな」
「うん。出られるし、元に戻せるよ。ついでに言うと別の時間にも行ける。だから、僕は時間を戻して無かった事にしようと思っている」
「別の時間?時間を戻す?それは…出来ないと…」
「普通の状態なら出来ない。だけど、ここからなら…僕達が遡るだけだ…」
「だから…あれを見たのか?」
「ああ、あれは誰かの僕への干渉。だけど…。そうだね。二人が出会う前でも戻せるよ。僕と君が生まれていれば、そこまで戻る事が出来る」
「は…はは…。だからお前は変えないと叫んだ」
「三年間悩んだ。まだ迷いはある…」
「戻さなくていい」
「キース、そう言うと思っていた。だけど、もう僕は決めたんだ。だから力が戻った」
「決めたのか…。それはいつ何処に?」
「プロメテウス破壊の前に…」
「そうか…。お前は何処にでも行けると言いながら、俺たちがここに来たほんの数時間前を選ぶのだな」」
「でも、キース…どこに戻しても、君の罪は消えない」
「…そうだな…俺は俺の意思であれを破壊した」
「どうしてあんな事をした」
「あの艦はなにを敵とみて作られたか知っているか…」
「ミュウだよね?」
「ああ、戦時中の案のままに作られた。もう無用な物だ」
「マザー信奉者たちが作らせた」
「あの前時代の残骸。あれを棺にして彼らを葬ってやろうとしただけだ」
「その気持ちが誰かに植え付けられ煽られたにしても、キースの中にあった本心だったとしても…それはしてはならなかった。今の君はそれに気が付いている」
「…そうだな。魔がさしたとか、気が緩んだとか。そんな、バカな言い訳しかでてこないがな…。だから、戻さなくていい。俺は自分の罪をかぶる」
「罪?それは何を指して言う?未来は君だけのものじゃない。死んでいった者たちはこうしないと戻せない。未来も救えない。彼は君やトォニィを殺して、新時代を作ろうとしている。そして、僕には彼を止められない」
「それは破滅の未来か?」
「そうだ」
「……」
「彼の計画の最初はキースの陥落。これが成さなかったら全ては始まらなかった。だからもう、必然なんだ。安心して、僕は君の時間を戻しても、君のした事は忘れない。大丈夫。この報いは受けてもらう」
「……」
「反論は許さない」
「わかった。俺は覚悟を決める」
「…ありがとう。キース」
 そう言ったジョミーの持つ空気がフッと優しい色に変わる。
 キースは「こいつはこんなに風だったか?」と不思議に思った。近くにいる所為だけではなくてこんなにも感情を止めないで出しているジョミーを見るのは初めてだった。
「何を…」
 何をしようとしている?そう聞こうとしたキースにジョミーはただ見つめ返すだけだった。
「ねぇ、キース。君はここでの事をどう思っていた?もう二十年前になる。ここビルレストでの事を」
「もうそんなになるのか…。俺は貴重な時間だったと思っている。お前が言う大切な時間とそう変わりはない。俺も必要な時間だったと思っている」
「そっか、良かった。こんな遠くにまで跳んで来て、ここまで君を呼んで、それで君がここでの事を覚えていなかったらと、とても、心配だった」
「ジョミー。この先、俺の記憶がもし消えても、俺がここを忘れても、お前を想う気持ちはきっと忘れない」
「キース…君のそういうまっすぐな所、好きだけど…嬉しいけど…くすぐったいな…」
 とジョミーは小さく笑った。その目に光る涙を見て、キースは唐突に抱きしめた。
「…ジョミー。お前は何をしようとしているんだ?」
「……」
「時間を戻すだけじゃないだろう?」
「ううん。僕は何もしないよ。大丈夫」
「こういう時のお前の大丈夫は信用出来ない」
「ひどいな」
 そう言うとジョミーはキースの腕を解き、そのままキースを真正面から見上げた。
「キース。時間を戻したら、今の、ここでの事は君は覚えていない。だから、いま言うのは卑怯かもしれない。だけど…」
「卑怯?」
「…出来れば、僕は覚えていたい。ここでずっと悩みながら君を待っていた事を。そして、君を見た時のあの気持ちを…」
 一瞬詰まり、泣きそうな気持ちをこらえてジョミーは言葉を続けた。
「…キース。君が好きだ。誰よりも。こんな言葉では言い表せないほどに、僕は愛している」
「ジョミー」
「例え…君が忘れてしまっても…僕は忘れない。きっと、僕と再び…」
 世界が青く光り始める。
 キースの身体が浮き上がり、ジョミーの手を離れる。
「ジョミー!」
 遠ざかってゆくキースが叫ぶ。
「キース。ミュウを好きになってみないか?」
 それがキースが見た時間が戻る前のジョミーの最後の姿だった。


 キース、僕は諦めないよ。
 何が起きたとしても、僕は諦めない。
 今、僕をこの世界で一番のナルシストにしてくれないか?
 僕は信じる。
 この空の星が瞬く限り永遠にいつまでも…。

 まわりは白い世界。
 ガラスで出来た白いドーム。高い天井からは無数の長い布が下まで降りている。
 白いサテンのような布の間にはキラキラと光る氷の粒がこれも無数に浮かんでいた。
 パキパキと薪のはじける音とともにガラスのような氷の出来てゆくような音がしている。
 ジョミーは白い床に仰向けに寝転んだまま動かない。
 目をつむり音だけを聞いていた。
 今のジョミーはミュウのソルジャー服に変わっている。
 音の中に靴音と衣擦れの音が加わる。
「キースはもう居ない。元の時間に戻しました」
 ジョミーは目を閉じたまま側に来た者に声をかける。
「もっと前に、何も無い時間に返す事も出来ただろうに…」
 と、声をかけられた人物は答えた。
「自分で引き起こした事象から全て逃げられるような甘いのは望まない」
「冷たいな…」
 声の主が小さく笑う。
「僕は貴方程冷たくはありませんよ」
「そうかな?」
「しかし、ここが時間も空間もどこでも無い場所なら、来ると思っていましたよ。ソルジャー・ブルー」
「宇宙空間を漂う君をまた拾う事が出来て光栄に思うよ。ジョミー」




  続く








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