☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十二話
Epilogue Bridge「出会い」5(全五話)
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
Noah・Shangri-La 現在
二人の練習が一息ついた頃に、二人はジョミーから呼ばれた。
「ジョミー。こいつ、飲み込みが早いよ。教えてて楽しい」
と本当に楽しそうにトォニィは言った。
「そう。良かった」
「ヴィー、君は大丈夫だった?体、無理してない?」
「え…いえ。どこも…大丈夫です」
さっきまでの事を思うと返事がしにくかった。
「最近、トォニィは外交で疲れ気味だったから、良い気分転換になればと思った。ありがと。急に変な事につきあわせちゃったね」
「いえ…俺も色々教えてもらえたので…」
「そうか、なら良かった。それじゃ、庭に行こう」
と、ジョミーが歩き出した。
「あ、待って…」
ヴィーが声をかける。
「待って…ください」
ヴィーのその表情を見て、トォニィは先に行くねと言いながら庭園に向かって行った。
「何?」
「あ、あの…さっきの事、ノアでの運び屋の事ですが…。俺は誰にも言っていません。あの頃、あの部隊にミュウは俺一人で、機械にかけたのは皆も知っていますが、あなたと彼らの事は俺しか知りません。でも、見たっていってもごく一部で…ずっと気になっていて…あんな事を言うつもりは無かったんです。直接会っても聞くつもりなんて…全然、本当に全然無かったのに…」
「きっと、君には疑問がいっぱいあって…僕を見る度に辛い思いをしていたのだろうね。僕が今、君に言えるのはこんな言葉でしかない…あの時の事は、本当にごめんね」
「…あ…いいえ…俺が悪いんです…」
謝られた。
俺は謝れと言っていた。
それが叶った。
だけど、なんで、こんなに胸が痛くなるんだ?
「…つっ…」
「…ヴィー、トォニィが待ってるよ」
と歩き出す。
ヴィーは泣きそうな顔でついて来た。
「あ、ジョミー。さっき…誰にも言ってないって言いましたが…キース議長には転属の時に話して…います。すみません…」
ジョミーの後に続きながら、急に思い出したようにヴィーが言った。
「ん、そう。それはかまわないよ。大丈夫だから…」
「……」
「そんな事より、ヴィー。君の最初の疑問に答えよう」
と言い、ジョミーは庭園に入って行った。
シャングリラ(庭園)
「トォニィ、お待たせ。君も知りたいと思っているだろう。僕がノアで集めていたのは、これだよ」
とジョミーが言った。
ジョミーは胸にしまったものを取り出した。
幅五センチくらいの黒い水晶のような塊が、彼の右手の上に浮いていた。
「これは人類の記録の断片。でもこれはもう古すぎて解析も出来ない。人類には用も何も無くなった物。グランド・マザーの基盤になっていたコンピューター・テラの中に残されてた物だ。僕はそれのある部分を切り取ってきた」
それって犯罪じゃ…。
と言いかけたヴィーをトォニィが止める。
「これには僕たちミュウの起源が書かれているんだ」
「僕たちの…?」
「でも、この記録はもう古くて人類には解析が出来ない。ただの数列の塊さ」
と言って両手を閉じる。
意味の無い物と言いながらも、大事そうにジョミーはそれを胸にしまった。
青く光りそれはジョミーの中に消えていった。
「でも、人類の物だよ…」
とヴィーが言った。
「持ってても、人では何も出来ないし意味はないと言っただろ」
とトォニィが言う。
「あ、それって…ジョミー。ミュウなら出せるかも?って事だよね?」
「そうだけど、やってもバラバラ過ぎて、答えが出ないんだ」
「ジョミーがテラズナンバーを巡っているのはそれのせいだったの?」
「うん。まだ情報が足りない。月へ行くべきかも…」
「月?」
ちょっと不安げな表情を浮かべたジョミーは顔を上げて言った。
「ああ、いや…。ねぇ、トォニィ。僕たちがミュウと呼ばれる意味は知ってるよね?」
「突然変異(ミュータント)だからでしょ?」
「そう。けれど、それすら作られたものだとしたら…どう思う?」
「僕たちが作られた?この前のノア政変で、人間にミュウ因子を植え付けるのが出来なくて失敗したから、クローンを作ったんじゃないの?人間からミュウを作るなんて無理なんじゃ…」
「でも、もし、そうやって作られたのなら、僕たちは人間から作られた別物。それでも、根幹は人間…僕たちは人間だって事になるよね」
「だけど、それじゃ。突然変異で生まれたより…酷いじゃない?」
「そうだね。でも、今は、その可能性もあるって言っただけだよ」
「人類は僕達を勝手に作っておいて変なのが出来たから、抹殺しようって事だよね」
「…そうなるね…」
「あ、あの。これって俺は聞いてていいのかな?」
ヴィーは公表されていないクローンの事は知らなかった。
「ん、君がイヤなら…負担になるなら…。忘れさせようか?」
とジョミーが言った。
「いいえ。誰にも言いませんから、聞いてていい…で…すか?」
「…君は…」
と、じっと、ヴィーを見るジョミー。
「?」
そして、ジョミーはにっこりと笑うと、
「聞いてていいよ。知りたいだろう?」
と言った。
そのまま、二人はまたミュウの起源の話をしていた。
俺はさっきの「君は」の続きが気になっていた。
彼は何を言おうとしたのだろう。
やがて、会議の行事がすべて終了した。
トォニィはメサイアへと戻る事になった。
ジョミーもスメールへ戻ってゆく。
キース議長付きになった僕は彼らを見送った。
二つの白い船体が別方向に進んでいった。
「ヴィー、君はシャングリラに行ったと聞いたが」
とキースが聞いた。
「はい。ソルジャー・トォニィが色々と戦い方を指導して下さいました」
「そうか。それは良かったな」
マツカ、お前がもし今、生まれていたら、彼のようになったのだろうか?
この世に「もし」はないが…。
もし、あったとしたら、今頃、俺達はどうしていたのだろうな…。
「出会い」 終
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十二話
Epilogue Bridge「出会い」5(全五話)
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
Noah・Shangri-La 現在
二人の練習が一息ついた頃に、二人はジョミーから呼ばれた。
「ジョミー。こいつ、飲み込みが早いよ。教えてて楽しい」
と本当に楽しそうにトォニィは言った。
「そう。良かった」
「ヴィー、君は大丈夫だった?体、無理してない?」
「え…いえ。どこも…大丈夫です」
さっきまでの事を思うと返事がしにくかった。
「最近、トォニィは外交で疲れ気味だったから、良い気分転換になればと思った。ありがと。急に変な事につきあわせちゃったね」
「いえ…俺も色々教えてもらえたので…」
「そうか、なら良かった。それじゃ、庭に行こう」
と、ジョミーが歩き出した。
「あ、待って…」
ヴィーが声をかける。
「待って…ください」
ヴィーのその表情を見て、トォニィは先に行くねと言いながら庭園に向かって行った。
「何?」
「あ、あの…さっきの事、ノアでの運び屋の事ですが…。俺は誰にも言っていません。あの頃、あの部隊にミュウは俺一人で、機械にかけたのは皆も知っていますが、あなたと彼らの事は俺しか知りません。でも、見たっていってもごく一部で…ずっと気になっていて…あんな事を言うつもりは無かったんです。直接会っても聞くつもりなんて…全然、本当に全然無かったのに…」
「きっと、君には疑問がいっぱいあって…僕を見る度に辛い思いをしていたのだろうね。僕が今、君に言えるのはこんな言葉でしかない…あの時の事は、本当にごめんね」
「…あ…いいえ…俺が悪いんです…」
謝られた。
俺は謝れと言っていた。
それが叶った。
だけど、なんで、こんなに胸が痛くなるんだ?
「…つっ…」
「…ヴィー、トォニィが待ってるよ」
と歩き出す。
ヴィーは泣きそうな顔でついて来た。
「あ、ジョミー。さっき…誰にも言ってないって言いましたが…キース議長には転属の時に話して…います。すみません…」
ジョミーの後に続きながら、急に思い出したようにヴィーが言った。
「ん、そう。それはかまわないよ。大丈夫だから…」
「……」
「そんな事より、ヴィー。君の最初の疑問に答えよう」
と言い、ジョミーは庭園に入って行った。
シャングリラ(庭園)
「トォニィ、お待たせ。君も知りたいと思っているだろう。僕がノアで集めていたのは、これだよ」
とジョミーが言った。
ジョミーは胸にしまったものを取り出した。
幅五センチくらいの黒い水晶のような塊が、彼の右手の上に浮いていた。
「これは人類の記録の断片。でもこれはもう古すぎて解析も出来ない。人類には用も何も無くなった物。グランド・マザーの基盤になっていたコンピューター・テラの中に残されてた物だ。僕はそれのある部分を切り取ってきた」
それって犯罪じゃ…。
と言いかけたヴィーをトォニィが止める。
「これには僕たちミュウの起源が書かれているんだ」
「僕たちの…?」
「でも、この記録はもう古くて人類には解析が出来ない。ただの数列の塊さ」
と言って両手を閉じる。
意味の無い物と言いながらも、大事そうにジョミーはそれを胸にしまった。
青く光りそれはジョミーの中に消えていった。
「でも、人類の物だよ…」
とヴィーが言った。
「持ってても、人では何も出来ないし意味はないと言っただろ」
とトォニィが言う。
「あ、それって…ジョミー。ミュウなら出せるかも?って事だよね?」
「そうだけど、やってもバラバラ過ぎて、答えが出ないんだ」
「ジョミーがテラズナンバーを巡っているのはそれのせいだったの?」
「うん。まだ情報が足りない。月へ行くべきかも…」
「月?」
ちょっと不安げな表情を浮かべたジョミーは顔を上げて言った。
「ああ、いや…。ねぇ、トォニィ。僕たちがミュウと呼ばれる意味は知ってるよね?」
「突然変異(ミュータント)だからでしょ?」
「そう。けれど、それすら作られたものだとしたら…どう思う?」
「僕たちが作られた?この前のノア政変で、人間にミュウ因子を植え付けるのが出来なくて失敗したから、クローンを作ったんじゃないの?人間からミュウを作るなんて無理なんじゃ…」
「でも、もし、そうやって作られたのなら、僕たちは人間から作られた別物。それでも、根幹は人間…僕たちは人間だって事になるよね」
「だけど、それじゃ。突然変異で生まれたより…酷いじゃない?」
「そうだね。でも、今は、その可能性もあるって言っただけだよ」
「人類は僕達を勝手に作っておいて変なのが出来たから、抹殺しようって事だよね」
「…そうなるね…」
「あ、あの。これって俺は聞いてていいのかな?」
ヴィーは公表されていないクローンの事は知らなかった。
「ん、君がイヤなら…負担になるなら…。忘れさせようか?」
とジョミーが言った。
「いいえ。誰にも言いませんから、聞いてていい…で…すか?」
「…君は…」
と、じっと、ヴィーを見るジョミー。
「?」
そして、ジョミーはにっこりと笑うと、
「聞いてていいよ。知りたいだろう?」
と言った。
そのまま、二人はまたミュウの起源の話をしていた。
俺はさっきの「君は」の続きが気になっていた。
彼は何を言おうとしたのだろう。
やがて、会議の行事がすべて終了した。
トォニィはメサイアへと戻る事になった。
ジョミーもスメールへ戻ってゆく。
キース議長付きになった僕は彼らを見送った。
二つの白い船体が別方向に進んでいった。
「ヴィー、君はシャングリラに行ったと聞いたが」
とキースが聞いた。
「はい。ソルジャー・トォニィが色々と戦い方を指導して下さいました」
「そうか。それは良かったな」
マツカ、お前がもし今、生まれていたら、彼のようになったのだろうか?
この世に「もし」はないが…。
もし、あったとしたら、今頃、俺達はどうしていたのだろうな…。
「出会い」 終