映画鑑賞感想文

濫観っていうか、乱観っていうか・・・ポリシーないですけど(^^;

『赤目四十八瀧心中未遂』 '03 日本

2006-05-09 17:08:48 | Weblog
【スタッフ】
製作     : 河津秋敏/石川富康/村山治/橘秀仁
プロデューサー: 村岡伸一郎
監督     : 荒戸源次郎
原作     : 車谷長吉
脚本     : 鈴木棟也
【キャスト】
大西滝次郎/寺島しのぶ/大楠道代/内田裕也
【ストーリー】
尼崎へ流れ着いた生島与一(大西瀧次郎)は、もとは物書きだったが、繊細な若者らしい虚無感に捕らわれている。それでも、食う為に焼き鳥屋の下ごしらえの仕事をもらい、あてがわれたアパートで、朝から晩まで、黙々と串を刺す。そのアパートには、刺青師やらヤクザな兄を持つ綾(寺島しのぶ)という女が住んでいる。彼らは、生島に対して微妙な距離を保ちつつ、観察している。特に綾は、近づいたかと思えば突き放すような接し方をし、生島を翻弄していく。そして、ある日「私をこの世の外へ連れてって」と生島を誘いだす。そして、二人は赤目四十八瀧を登っていく。

【感想】
ありがちな失敗なのだけど、期待しすぎて肩透かしになっちやった・・・つまり、無垢な気持ちで出遭わなかった、わたしの間違いだな・・・残念なことをしてしまった。
けど・・・この映画の目指したところって、非日常性じゃないかと思うのだけど、それはなかったような気がするんだよなぁ~。とにかく、わたし的には、非常に日常的な風景であり、心象に思えた。
尼崎を「アマ」と呼ぶってのが、何か特別なことのような、非日常世界へ入っていく呪文のような扱われ方をしていたように感じたけど、関西人にとっちゃ、マクドナルドがマクド(関東じゃ、マックだね)なのと同じ程度のことなわけで、特にコメントすることの方に違和感があったりしたよなぁ。
それから、生島君の心情みたいなものは、決して特別なことじゃないでしょ。妙な縁を感じたんだけど、数日前(2005年11月16日(水) )のパティオに「内職仕事で金を稼ぎたい私」ってエピソードを書き込んだんだけど、これは限りなく生島君的心情なんだよなぁ、マジで。自分に対して人一倍の執着も自負もあり、一時は自分の才能を頼りに独自の世界の構築さえ可能だと思ったときもあったにしろ、今は虚無という怪物に喉元まで飲み込まれ、あとほんの僅か捨てられない何かが鈎針になり、この世に引っかかっている状態で、できるだけ単純な、できるだけ世の隅で行える仕事を、誰に気に止められることなく繰り返しながら、ただ息をしているだけのごとく暮らしていたいみたいな心情ね。
でも、まっ、心情的にそうであるのと、実際生島君のように行動してしまうことの間には、ものすごく深い溝があって、なんやかやいっても、そうそう人は、それを飛び越えたりはしないんだけどね。特に家族持ちは。
つまり、まっ、エロティシズムに関しても、自己破壊性みたいなものに関しても、大きすぎる期待をしてしまっていたのだけれど、実際に見た映画は、リアリズムの世界だなと思ったということです。で、最初から、そこを望んでみていたならば、もっとのめり込めただろうにと、少し悔しい気分なのでした。

『悪い男』 '01 韓国

2006-05-09 17:08:16 | Weblog
【スタッフ】
監督・脚本: キム・ギドク
撮影   : ファン・チョリョン
音楽   : パク・ホジュン
【キャスト】
チョ・ジェヒョン/ソ・ウォン/チェ・ドンムン
【ストーリー】
ヤクザのハンギは、公園でボーイフレンドと待ち合わせしている女子大生ソナをみかけ、ひとめぼれしてしまう。ボーイフレンと仲良くしている姿を見て、思わず二人に歩み寄り、いきなりソナにキスをし、居合わせた軍人たちに無理やり引き離され、袋叩きにされる。ソナとしては、不愉快ではあるが、通り魔的な出来事として捨て去ってしまえる事件のはずだったが、ハンギのソナへの執着は、ソナが思っているほど生易しい物ではなかった。ハンギは、部下たちを使って、ソナに罠をかけた。本屋で本を見ている彼女の横に、財布を置き忘れたように放置し、それを彼女が自分のものにしてしまったのを確認してから、泥棒として捕まえ、警察に突き出されたくなかったら、財布の中身を弁償しろと法外な金額を彼女に借金させたのだ。そんな借金を返せるはずもない彼女は娼婦街に売られてしまう。そして、ハンギは、自らソナに手を出すことなく、身を売るソナをマジックミラー越しに見つめる。

【感想】
これが、日記で話した、複数の友達に「絶対に好きだと思うよ」と薦められた映画です。ふうむ、みんなは、わたしのこと、どう思っているんだろう・・・でも、確かに嫌いじゃない(爆)。
だけどね・・・今、状況が少し特殊なのですよ、わたし。ソナちゃんと同じくらいの年の女子大生の娘が一人暮らしを始めたばかりの母親としての私が、この映画を、ひどく拒否するのだ。で、「親は何しとんじゃ!!ソナのお嬢さん風の風貌からいって、娘のこの状況をほっておく家庭じゃなかろうが!!」と叫んでしまった(爆)。
でなくても、キドク監督の作品って、共感域に入るのに、多めの時間が必要なんだなぁ、わたしは。もう一作『悪い女』も見たけれど、同じ印象だった。観客のタイプとして、わたしは共感派なんですよ。よりメインに近い登場人物にで共感できたら、その映画が楽しくなるタイプなんです。なんで、その共感は入っていくのに、この監督の場合は時間が必要みたいです、その分、入り込んだら、独特の絆を感じるようなマニアックな世界に取り込まれる感じではありますが。
で、『悪い男』の場合、共感域の入り口は、ハンギが酔ってソナの部屋に侵入し、彼女の横に寝転がって、子どもみたいな姿勢で寝ちゃった時だったなぁ。あの瞬間、胸がギュンときて、あっ!
ヤラレタなって感じたです。それ以降は、ソナに執着するあまり、彼女を浚ってきたはものの、自分には彼女を愛する資格もなければ、愛される可能性もないと、どんどん気持ちが引いていって卑屈になっていくハンギに、どっぷり共感してましたけどね。意外に卑屈な愛は好きだから(爆)。
だけど、ソナには、最後まで共感はなかったなぁ。役者さんが、すごく良くって・・・可愛いし巧いし、ものすごく好きだったけど、ソナの心理に対しては共感はなかった。実話でも誘拐犯に恋しちゃった富豪の娘さんの話とかあるし、エッチ系の映画では普遍的人気のあるテーマだし、有り得ない心の動きではないのかもしれないけど、これは、わたし的には無しなんだよね。たは認めないけど自は認めるMな私は、自分から望んで辛い状況に落ちていくのは好みですが(そういう意味では、ラストのソナには多少共感するかな)、強要されて辛い状況に落とされると、異常なほどの闘争心が生まれちゃうんだもん。愛情関係だけじゃなく、普通の人間関係でも、仕事上の人間関係でも、攻撃に対しては非情かつ強硬に対処するタイプですから(爆)。
というわけで、娘のことを考えさえしなければ、ほんと好きな映画だと思います (^^;。

『シークレット・ウィンドウ』 '04 米

2006-05-09 17:07:42 | Weblog
【スタッフ】
製作総指揮: エズラ・スワードロー
製作   : ギャビン・ポロン
監督・脚本: デヴィッド・コープ
原作   : スティーヴン・キング
音楽   : フィリップ・グラス
【キャスト】
ジョニー・デップ/ジョン・タトゥーロ/マリア・ベロ/ティモシー・ハットン/チャールズ・S.ダットン
【ストーリー】
人気作家モート・レイニー(ジョニー・デップ)は、妻の浮気に気づき、現場に踏み込んだ。それ以来、二人は別居。モートは人里はなれた別荘で、愛犬だけを話し相手に執筆活動を続けている。
そんなモートの前に、ある日、シューター(ジョン・タトゥーロ)という男が現われ、いきなり盗作を責める。盗作など全く覚えのないモートは、彼を適当にあしらうが、シューターの行動は徐々にエスカレートして、ほってはおけない状況になっていく。
【公式サイト】
http://www.sonypictures.jp/movies/secretwindow/site/contents.html

【感想】
デップだからね・・・それが感想の全てだったりして(爆)。いやいや、ちゃんといい映画だと思うから、真面目に話そう (^^;。
予告宣伝などで「意外な結末っ!!」って言ってたでしょ。となると、意外でなくなっちゃったね、この仕掛けは。でも、だからといって、悪くはない。というより、だから良かったと、わたしは思うですよ。というのも、そういうところでドキドキさせる必要のない面白さが、ちゃんとこの映画にはあった。モートの心の中を見るという楽しさが、この映画の面白さだと思う。
それに、謎解きの謎が、ちっとも謎でなくなっちゃった原因は、作り手のフェアー精神だったと思うのですよ。観客に対して、嘘や隠匿がない作り方をしていて・・・それは、観客としては、すごく信頼されている感じで心地よかった。結末に至る為の情報を、ほとんど見せないで、最後に大どんでん返して「予測不能な意外な結末」って言われても、そんなのちっとも面白くないでしょ。必要なものが、すべてちゃんと描きこまれていて、登場人物の心理描写も丁寧であってはじめて、謎が活きてくるんだと思う。そういう点では、この映画は、ちゃんと謎が活きていたしね。
まっ、細かいところで好き嫌いを言えば、犬が殺されるのはどうもなぁ・・・あれは、ちょっと納得いかなかった (^^;。それから、三箇所ほど、ん?って違和感を感じる映像があって、気が削がれたです。たとえば、デップが崖から落ちる夢を見るんだけど、その崖や荒海の映像とか・・・なんで、こんな違和感のある映像を差し入れるのって思うのが、数回あったのが、わたし的には残念。でも、まっ、そのあたりは好みの問題だからね。
というわけで、デップだからというわけではなく、面白い映画だと思います。ミステリーファンじゃない人に、よりお勧めです!!

『殺しのターゲット』 '03 米

2006-05-09 17:07:10 | Weblog
【スタッフ】
監督   ジョン・バダム
製作総指揮  マーク・ゴードン
製作   ジニー・ジョーンズ=デュザク
脚本   シェリー・エヴァンス
撮影   ロン・スタネット
音楽   クリストファー・フランケ
【キャスト】
デイジー・ロウェンダール:キャンディス・バーゲン
スペンサー       :バグ・ホール
エディ         :ブライアン・ブラウン
ロビー         :マイケル・マーフィ
ジョーダン役の女優   :シンディ・サンプソン
【ストーリー】
人気スパイ小説作家のデイジー・ロウェンダールは、彼女の小説の影響で、ファンの男が自分の妻を殺すという事件が起こって以来、精神的に不安定な状態になってしまった。スパイ小説を書くことにも嫌気がさし、夫ロビーの反対も押し切って、問題の大人気シリーズも終了させてしまい、今は殆ど隠遁生活をしている。
が、自分の別荘がある島で、島民たちが開いたファン・イベントに招かれ、久しぶりに公の場に姿を見せたのだが、やはり大きな不安に襲われ、倒れそうになる。
イベントの後、別荘に戻ったデイジーは、不法侵入して家の中を物色していたスペンサーという青年と鉢合わせする。デイジーは、最近不気味な脅迫を受けており、スペンサーがその犯人ではないかと疑うが、彼は、自分は彼女の熱狂的なファンで、別荘の戸が開いていたので、ついつい入り込んでしまっただと弁解する。
デイジーの通報で、地元警察の刑事エディが現れ、一見は落着したかに見えたのだが……。

【感想】
これ、もとは舞台じゃないのかな・・・登場人物の少なさとか、場面転換のなさということは勿論なんだけど、雰囲気が舞台のそれだった。もし、舞台から映画に起こしたんじゃないなら、是非舞台化をお勧めしちゃう(^^)。
で、感想ですが・・・面白いっス!!  すごく地味なの。キャンディス・バーゲンが唯一の華やかさで、後は本当に地味なの。最初に言ったように、登場人物も少ないし、舞台転換もないし、筋立てもオーソドックスだし。でも、だから元本がしっかりしているのとか、役者の巧さだとかが、すごく活きてきて、見ごたえになっている。落ち着いてドキドキできるっていうのかな。安心して引き込まれるっていうのかな。撮られたのは最近なのに、映画として大御所の貫禄みたいなものを感じました。たまには、こういう映画を見るのもいいなぁ。上映時間が90分程度というのも、わたしは、とっても好きですし(爆)。

『トスカーナの休日』 '04 米

2006-05-09 17:06:36 | Weblog
【スタッフ】
製作・監督・脚本: オードリー・ウェルズ
製作: トム・スターンバーグ
原作: フランシス・メイズ
【キャスト】
ダイアン・レイン/サンドラ・オー/リンゼイ・ダンカン/ラウル・ボヴァ/ヴィンセント・リオッタ
【公式ストーリー】
きっかけは、離婚のショックから立ち直るための、ほんの気まぐれの傷心旅行──だが、イタリアのトスカーナ地方を訪れたサンフランシスコの女性作家フランシスを待っていたのは、まさに【運命の出会い】だった。魅力的なイタリア男性と…ではなく、築300年の荒れ果てた一軒の“家”と!
“ブラマソーレ(太陽に焦がれる者)”という名を持つこの家を衝動買いしてしまった彼女は、いつ終わるとも知れない家屋の修復にのめり込む内に、トスカーナの住人としてこの地に溶け込んでいく。ユニークで愛すべき隣人たち、明るい光に包まれた絵のような風景、心まで満腹にするスロー・フード、etc.…人生をキラキラと輝かせるイタリア的ライフ・スタイルは、魔法のように少しずつフランシスの心を癒していく。だが、彼女の本当の願いは、この家でかけがえのない家族を持つことだった…。

【感想】
ああ~、イタリア行きたくなったよぉ~っ(^^)。実際には無理だけど、ヨーロッパの田舎で、雰囲気のある古い家を買って、自分で少しずつ手を入れながら暮らすなんて、憧れるシチュエイションなんだよねぇ~。夫の浮気で離婚したばかりの主人公フランシスとしては、そんな悠長な話じゃないんだけど (^^;。けど、精神的にはともかく、金銭的にはフランシスは悠長だわねぇ~・・・あんな大きな家を買って、修理の人を四人も雇って、料理を作るっていったら、ものすごく贅沢だったし・・・そういうところが、ちょっと庶民生活からかけはなれていて、同情心が削がれはするなぁ(爆)。
けど、とにかく、全てが好みだった。風景も、料理も、人間も。
特に人間は、そんなに濃く描きこんでないのに、それぞれの人がちゃんと立っていて、ほどよく全員魅力的。主人公のフランシスを演じるダイアン・レインが今もって可愛らしいのには勿論感動だけど、フランシスがイタリアで恋をするマルチェロもイタリア男性らしい押しの強さがありながら嫌味じゃなくチャーミング。自由奔放に生きているように見えて実は寂しさも垣間見せる不動産屋さんのボスのキャサリンも可愛い曲者だし、フランシスの大親友のパティもイイ味出してた。家の修繕をしてくれるイタリア人の親方とその家族の絡み具合も程よく効いてて、作業員のポーランド人三人にはフランシスと一緒に愛おしさを感じちゃった。個人的には、文学を愛する教授に参ったね(^^)。でも、何より素敵だったのは、何かフランシスを支えてくれる不動産屋さんのマルティニさん。すごく控えめなんだけど、温かくて大きくて優しくて、ほんと素敵なの。フランシスに「もう悲しまないで。でないと、君と間違いを起こしそうだ。けど、僕は妻を裏切りたくない」と、静かに優しく語りかけたときには、マジ、くらっときちゃった(^^)。そうそう、ほんとに一言の台詞もない、ただ花を供えに来る無愛想なおじいちゃんが登場するんだけど、彼の最後の一動作、あれにも参ったな・・・うんうん、あれはカッコよかった(^^)。
なんていうか・・・掘り下げるとか、突き詰めるとか、描き込むとかということもないし、特別な演出があるとか、驚くような展開があるということもないし・・・あくまでも、軽やかにテンポよく、美しい風景の中で、人々が恋をしたり、友情を育んだりするだけなんだけど・・・それが心地よく楽しく可愛らしい映画だった。なんだか、見ていて、とっても幸せな気分になりました。わたし的には、かなりお勧め!!大好きな一作でした。

『ディボース・ショウ』'03 米

2006-05-09 17:05:52 | Weblog
【スタッフ】
監督・脚本:ジョエル・コーエン
製作・脚本:イーサン・コーエン
製作:ブライアン・グレイザー、プロダクション・デザイン、レズリー・マクドナルド
原案:ジョン・ロマノ
脚本・原案:ロバート・ラムゼイ&マシュー・ストーン
撮影監督:ロジャー・ディーキンズ
衣裳デザイン:メアリー・ゾフレス
音楽:カーター・バーウェル
【キャスト】
マイルズ・マッシー:ジョージ・クルーニー
マリリン:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
ドノヴァン・ドナリー:ジェフリー・ラッシュ
ガス・ペッチ:セドリック・ジ・エンターテイナー
レックス・レックスロス : エドワード・ハーマン
リグレー:ポール・アデルスタイン
ハワード・D・ドイル:ビリー・ボブ・ソーントン
フレディー・ベンダー:リチャード・ジェンキンス
【ストーリー】
マイルズ・マッシー(ジョージ・クルーニー)は、ロサンジェルスで最も腕のいい離婚訴訟専門弁護士の一人。一方、マリリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、離婚太りを企む美貌の悪女。その二人が、マリリンの離婚訴訟で激突する。が。第一ラウンド、不動産王のレックス・レックスロス(エドワード・ハーマン)とマリリンの離婚訴訟では、マリリンの財産目当て結婚を暴いたマイルズの勝利となる。せっかく探偵に、夫の浮気現場までビデオで撮影させて、絶対的有利な状況で訴訟に挑んだのに、結局1セントの慰謝料も取れずに別れることになったマリリンは、腹の虫が納まらない。さっそく、次の罠を仕掛けてきた。マリリンは、冴えない婚約者をともなってマイルズのもとに現われ、婚約者の財産を守る婚前契約書を作りたいと言うのだ。当然、マイルズはマリリンが何か企らんでいるに違いないと疑うが、それ以上に、マリリンの婚約者に嫉妬している自分に驚く。二人は、好敵手としての闘争心をぶつけ合いつつ、男と女としても強く惹かれ始める・・・。

【感想】
コーエン兄弟の作品っぽくないんじゃないかな・・・でも、やっぱり滅茶苦茶お洒落ではある。スタイリッシュとは違う、マジ大人のカッコよさってヤツだね。わたしの印象では、他のでもコーエン兄弟の映画は、女性がヤタラとカッコいいと思うんだけど、この映画でのキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、掛け値なしにカッコよかった。加えて、かなりゴージャス(^^)。わたしは、もう、かなりマリリン寄りで見てしまった。
で、ジョージ・クルーニーは、逆に全然カッコよくないところが、とっても好印象(^^)。マリリンをも遣り込めてしまうやり手なのに、軽いっていうか、馬鹿っぽいというか、抜けてるっていうか・・・けど、それがチャーミングに見えるのが、コーエンマジック&クルーニーの魅力ってことかな。とにかく、すごく楽しい映画。ずっとクスクス笑いしながら見ちゃう。とっても愉快な映画でした(^^)。

『CODE46』 '03 英

2006-05-09 17:05:19 | Weblog
【スタッフ】
製作: アンドリュー・イートン
監督: マイケル・ウィンターボトム
脚本: フランク・コトレル・ボイス
撮影: アルウィン・カックラー/マルセル・ザイスキンド
美術: マーク・ティルデスリー
衣装: ナタリー・ウォード
編集: ピーター・クリステリス
音楽: ザ・フリー・アソシエーション
【キャスト】
ティム・ロビンス/サマンサ・モートン/オム・プリ/ジャンヌ・バリバール/デヴィッド・ファーム
【ストーリー】
貧富というよりは、それを越えた保護枠内と外という徹底的な差が出来てしまった未来の社会。ただし、保護枠内といえば聞こえはいいが、別の見方をすれば徹底した管理の下にある世界だということでもある。そんな社会では、自分の身元を示すパペル(パスポートとビザの機能を持つ滞在許可書)が不可欠である。ということは、必然的に、パペルの偽造も行われる。そして、それを取り締まる部署もできる。ウィリアム(ティム・ロビンス)は、その偽造パペルの調査員。上海で偽造パペルが見つかった為に、会社から派遣されてくる。ウィリアムは、すぐに犯人を見つけ出す。けれど、それを報告しないまま、個人的に彼女に接触する。ウィリアム自身も、自分の行動の理由は分からない・・・何かが、二人を結び合わせるのだ・・・。

【感想】
SF映画って、難しいんですよね。SF小説好きな私としては、めったに満足できるSF映画には出会えない。まだまだ、脳内イメージの方が、映像化されたそれより、広がりがあるみたいです。
けれど、この映画は、その点を、かなり巧く誤魔化してくれたなと思います。場所設定を上海にしたのが、正解だったんじゃないかな。もともと、東洋と西洋、あるいは近代的なものと古いものが混在する都市だから、ほとんど違和感なく「過去に取り残された地域」と「未来に向かって暴走する世界」が、観客の中で共存できた気がします。
物語的には、今ちょうど旬の話題じゃないでしょうか。クローン技術が、再生医療として、我々の生活の中で、いよいよ現実味を帯びてきているから・・・ふうむ。だけど、これだけ遺伝子管理ができるなら、近親相姦を忌避することもない気はしました。だって、近親相姦が禁止されている理由って、生まれてくる子どもが病気になりやすいからなんでしょ。そこを管理できるんなら、CODE46は必要ないんじゃないの。それよりは、クローン管理を徹底するほうが自然じゃないのって思うもの。その他にも、気になる点がないでもないのだけれど、基本的に、この映画には科学偏重現代に対する警鐘の要素があるわけだし、バランスが取れていない世界というのは、設定として正しいのかもしれないですね。それに、一番メインであるラブストーリーの部分でも、この世界の歪さが、二人に悲劇性を与えるわけなので、仕上がりの悪い世界というのは重要な要素なのかも。
でも、そんなことより・・・とっても印象的だったのが、ウィリアムの「遺伝子が100%同じだと、同じ人間なのか」という質問に「いいえ違います。だって、生きていく環境が違うでしょ」と、きっぱりとした答えが返ってきたこと。そうだよねぇ、わたしもそう思う。「わたし」って決してDNAじゃないんだよ。同じDNAでも、違う出来上がりになる、その違うことができる余地にこそ「わたし」があるんだと思う。この対話だけでも、この映画を見た甲斐があったな。というわけで、なかなか面白い映画なのでした。

『真珠の耳飾の少女』'03 イギリス&ルクセンブルグ

2006-05-09 17:04:47 | Weblog
【スタッフ】
監督: ピーター・ウェーバー
原作: トレイシー・シュヴァリエ
脚本: オリヴィア・ヘトリード
撮影: エドゥアルド・セラ
美術: ベン・ヴァン・オズ
衣装デザイン: ディーン・ヴァン・ストラーレン
【キャスト】
スカーレット・ヨハンソン/コリン・ファース/キリアン・マーフィ/トム・ウィルキンソン/アラキーナ・マン
【ストーリー】
1665年のオランダ・デルフト。画家ヨハネス・フェルメール(コリン・ファース)の家に、新しい使用人がやってくる。タイル職人の父親が失明し家族を養わなければならなくなった17歳の少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)だった。
彼女は、通常の家事の手伝い以外に、ヤン(フェルメール)のアトリエの掃除を言いつかる。丁寧にアトリエを掃除しながら、時々目にするヤンの絵に、グリートは惹かれていく。そんなグリートの様子に、ヤンも何かを感じる。
フェルメール家は、彼にベタ惚れだけれど現世的な欲求も人並みにある妻のカタリーナ(エッシィ・デイビス)と、彼女の母で一家の家計を全て握っているマーリア(ジュディ・パーフィット)、それに六人の子どもという大家族で、ヤンは絵を描くことによって彼女達を養わなければならない立場にあった。けれど彼の筆は遅く、何ヶ月もかかって一枚の絵を仕上げるような状況で、その間の掛かりは女達が宝石を売って調達しているという噂もある。家長であるヤンは、たえず世俗的なプレッシャーを受けながら、一方で完全なる孤独をもって、キャンバスに向かいあっていた。
そんなヤンが、自分の絵に自らの感性で何かを感じている少女を見たとき、心の中に漣が立つ。ヤンは、少しずつ、グリートを自分の世界に招きいれていく。そんな二人の様子に気づいたヤンの娘の
コルネーリアは、グリートに泥棒の濡れ衣を着せようとするが、ヤンはグリートを庇う。そんなヤンの態度に、妻のカタリーナも二人の関係のタダナラヌものを感じ、抑えがたい嫉妬を感じる。そして、それがついに爆発する時がくるのである・・・。

【感想】
欧米の人は、アジアの風景のエキゾチックな魅力に惹かれると聞くけれど、アジア人が感じるヨーロッパのエキゾチックな魅力が、スクリーンに溢れている映画だったなぁ。わたしは、この風景描写だけでも、十分満足なほどです(^^)。
それに、どのシーンも静止させて額縁に入れればルーブルに飾っておけるんじゃないかと思うほどで、17世紀フランドル絵画の世界がそのまま映画の中にあった。
なんて言いながら、実は、ものすごくミーハーな理由で、この映画をみたわけです。ええ、ええ、その通り、コリン・ファース狙い (^^;。で、実際、コリン、良かったよぉ~、素敵だった(^^)。世間的には、グリートを演じたスカーレット・ヨハンソンの評価が高かったようですが、まっ、それは当然ですね (^^;。っていうか、役者さんは外れなく、皆さん良かったですよ。地味なところでは、フェルメール家の家事を一切仕切っている先輩使用人さんも好い味出てたし、根性の悪いフェルメールの娘を演じてたアラキーナ・マンちゃんも徹底的に嫌な女ながら、父の愛情を求めている感じが微妙に切なくて実に良かった(^^)。
っていうか、娘だけじゃなく、みんな、それぞれにフェルメールを愛してるんですよね。妻の激しい嫉妬を炸裂させるストレートな愛情や、グリートが父と特別な関わりを持っているのを感じで意地悪をする娘の気持ちは分かりやすいけど、それに対して義母のマーリアも密やかに愛を持ってフェルメールを見ていたと思うんですよね。男女のそれとは少し違うと思うけど、冷たく強欲な顔を前面に見せながら、時に微妙に切ない表情してた義母さんも、なかなか印象的でした。あれは、絶対に金勘定だけのものじゃないと思うな。
じゃぁ、フェルメールは誰を一番愛していたか・・・彼としては、それなりに、それぞれの女性を思っていたと思うよ。妻は、決して自分が関われない部分に別の女が入り込んだと、気も狂わんばかりに嫉妬してたけど、彼としては、妻のことは女としてシッカリ愛してたと思う。少なくても、コリンの芝居からは、そう感じたなぁ。
ただ、どんなに愛されていても、どんなに愛していても、癒しがたく孤独な部分って誰にでもあるでしょ。その部分が大きい人ではあったんだろうな、この映画のフェルメールは。そして、その部分にグリートがピッタリとはまり込んだ。でも、わたしの体験からいうと、グリートに対するフェルメールの愛情って、ナルシシズムなんだよなぁ。自分の外に自分を見つけた時の衝撃と安心感・・・これは、他人を愛しく思うのとは全く別の感情だと思う。異性間のパッションを伴う愛情に比べて、決して劣りはしないものだけど、別物だと思う。
となると・・・女性側としては、どの愛され方が嬉しいのかな。全部って答えはダメだよ、どれかしかダメ。だとしたら・・・やっぱり、女性として愛される方が嬉しくない?自分の愛する人が、別の女と自分には踏み込めない世界を紡いでるのには嫉妬するだろうけど、でもそこには女として男に愛される喜びは無いんだもん。実際、グリートは、その寂しさを知ったよね。もしグリートが、彼女自身も一人のアーティストとして、あるいは芸術愛好家として、フェルメールと向かい合っていたら、決して寂しさなんか感じなかったと思うけど、そうじゃない部分があったら・・・これは切ないよ。
その点、パトロンのライフェンが微妙。義母さんにも通じるものがあるんだけど、フェルメールの才能に対する愛情が愛憎あいまってる感じで・・・と考えると、ちょっと『アマデウス』っぽくもあるかな。芸術を愛する者は、天才的な作り手に対して、尊敬や愛情と共に嫉妬も感じることがあるからね。
それから、付録的な楽しみなんだけれど、絵の具を作るシーンには、ドキドキしたなぁ。作業中に二人の手が触れるとか、とういうドキドキじゃなく、単純に絵の具を作ってるシーンの絵の具が色っぽいの。くらっとするほど (^^;。フェルメールが窓を開け、グリートに雲を見せて、何色かって聞くシーンがあって、その後に真っ青な空と雲が映し出されるんだけど、その瞬間走り出して筆を持ちたくなったもん。
というわけで、もろもろいっぱい全て大好き!!多少、好き嫌いはあるかと思いますが、よかったら見ていただきたい一作でした。

『インファナル・アフェアⅡ 無間序曲』 '03 香港

2006-05-09 17:04:10 | Weblog
【スタッフ】
《監督》 劉偉強アンドリュー・ラウ / 麥兆輝 アラン・マック
《脚本》 アラン・マック / フェリックス・チョン
《ライン・プロデューサー》 エレン・チャン / ロレイン・ホー
《美術》 ビル・ルイ
《衣装》 デザインシルバー・チョン
《アクション指導》 リー・タッチウ
《撮影》 アンドリュー・ラウ / ン・マンチン
《編集》 ダニー・パン / パン・チンヘイ
《音楽》 チャン・クォンウィン
《音響》 デザインキンソン・ツァン
【キャスト】
陳冠希エディソン・チャン,ショーン・ユー,黄秋生アンソニー・ウォン,曾志偉エリック・ツァン,劉嘉玲カリーナ・ラウ,呉鎮宇フランシス・ン,胡軍フー・ジュン,チャップマン・トウ,張耀揚ロイ・チョン,リウ・カイチー
【ストーリー】
黒社会から警察に送り込まれたラウ(アンディ・ラウ劉徳華 今作は陳冠希エディソン・チャン)、警察から黒社会に潜入した警官のヤン(トニー・レオン梁朝偉 今作はショーン・ユー)。その二人を中心に、香港の黒社会と警察の攻防を描いたのが前作『インファナル・アフェアー』だったが、今作はラウとヤンの若い頃、この物語の発端にたある部分が濃密に描かれている。
時は1991年から始まる。黒社会を一手に握っている大ボスのクワンが一人の若者に暗殺された。それは、今は配下のボスの一人であるサム(曾志偉エリック・ツァン)の妻マリー(劉嘉玲カリーナ・ラウ)に指示されたラウの仕業だった。しかし、それをサム自身は全く知らない。黒社会のボスでありながら、どこかに人の良さを残すサムを、何とか大ボスに押し上げたいというマリーの先走りだったのだ。クワンの跡継ぎであるハウ(呉鎮宇フランシス・ン)は、クワンの死を機会に、それぞれ独立しようと目論むボス達を押さえ込みつつ、犯人探しを始める。
この騒動によって思いもよらず人生を狂わされた若者が一人いた。クワンの私生児で警察学校で学んでいたヤンだ。彼は父親の世界とは全く違う場所で生きていこうとしていたのだが、クワンの死によって警察に素性がばれ、警察学校を追放されることになる。そんな彼に、組織犯罪課のウォン警部(黄秋生アンソニー・ウォン)が黒社会への潜入を持ちかける。無事任務遂行のあかつきには、警察官として迎え入れることを条件に、ヤンは密偵になることを承知する。
そして時は流れ、香港の中国返還の年、1997年。クワン殺しの犯人は見つからないも、サムを含む五人のボス達は完全にハウに覇権を握られ、香港の黒社会は安定した状態にあるように見えた。しかし、ハウは父親の恨みを忘れてはいなかったのた。再び事態は動き出す・・・

【感想】
華仔(アンディ・ラウ劉徳華)も偉仔(トニー・レオン梁朝偉)も出ないし、まっいっか・・・と思って見ていなかったの。そしたら、香港映画迷仲間から「絶対見るべし。ジャンユー(呉鎮宇フランシス・ン)が、めっちゃいいもん、絶対に好きなはず!!」といわれ、そこまで言うならと見てみたところ・・・まさしく!!
いやいや、ジャンユーだけじゃないよ、香港映画曲者俳優三人衆(怪優は他にももっといるけどね(^^;)残りの二人(黄秋生アンソニー・ウォン&曾志偉エリック・ツァン)までもが、あの抑えに抑えた芝居。加えて、張耀揚ロイ・チョンまでもが渋いったらありゃしない・・・ところで、ロイ、台詞あったって (^^;。
一応、ラウ&ヤンの若い頃の物語ってことだけど、これは三人衆の映画だわぁ。劉偉強アンドリュー・ラウの真骨頂だね。個人的には、カリーナ(劉嘉玲)と胡軍(フー・ジュン)も捨てがたい。極限まで男の世界を描いたこの映画の中で、女の業と性をキッチリと見せつけたもんなぁ。あれだけのメンバーの中で見劣りしないどころか、女としてとことん毅然としていたあの姿は男達より男前だったでしょ。ちなみに、胡軍は『藍宇(ランユー)』の時から、外見が好みだなぁと思っていたのさ(爆)。
まっ、とにかく、この映画に薀蓄はいらないね。見ろ、そして酔えってことだと思う。撮り方に関しても、山盛り薀蓄が語りたくなる好いシーンが目白押しなんだけど、それをあえて封印する。見てくれっ!! これがジョン・ウー以来の香港ノワールを正統的に継ぎつつ、かつ独自の新境地を開いた当世香港映画の誇りだもん。それにしても、まじ、三人衆・・・いいわぁ~。&カリーナ、いいわぁ。

『修羅雪姫 怨み恋歌』 '74 日本

2006-05-09 17:03:28 | Weblog
【スタッフ&キャスト】
監督: 藤田敏八
原作: 小池一雄/上村一夫
脚本: 長田紀生/大原清秀
出演: 梶芽衣子/原田芳雄/吉行和子/南原宏治/岸田森/伊丹十三
【ストーリー】
修羅雪姫こと鹿島雪(梶芽衣子)が、無実の罪を着せられ惨殺された父母の復讐を果たした前作『修羅雪姫』の続編。いや、原作から離れオリジナルストーリーだというから、続編というよりはシリーズ第二弾か。
とにかく、前作で父母の敵を撃った雪が凶悪犯人として捕まり死刑が宣告されるところから物語は始まる。けれど、世情は雪を簡単には死なせてくれなかった。彼女の知らないところで特警が動き、彼女を護送する車を襲い、彼女を奪還してしまう。その上で特高警察長官の菊井(岸田森)は、彼女にある使命を与えた。それは、反政府活動をする徳永乱水(伊丹十三)を殺害し、彼が隠し持つ書類を手に入れること。そのために、雪は女中として徳永家に送り込まれた。しかし、徳永は雪の正体を知っていた。そして、雪に菊井たちの不正行為、今の世の実情、そして己の考えを説いて聞かせる。雪は菊井を裏切り徳永の用心棒となる。雪の裏切りを知った特警は、丸山警部(山本麟一)に密告して、徳永と雪を襲わせる。徳永は、雪に貧民窟の街医者になっている弟(原田芳雄)のもとに逃げるように言って、自分は特警に捕まる。

【感想】
とにかく、役者が凄いでしょ。怪しいことにかけては指折りの役者さん達を揃えた揃えてる(爆)。粗筋に名前を出した人以外にも、特警の手先である蜍役の南原宏治さん、弟の妻でありながら兄の乱水を愛してしまった徳永夫人の吉行和子さん。梶芽衣子さんも、そうとう個性的な役者さんだけど、怪しさでは完全に共演者たちに負けてしまってます。でも、そのかわり、とにかく可愛いっ!!美しいっ!!いや、美しいより、ほんとうに可愛らしいっ!!!もう、憎いほど可愛らしいっ!!
ただ・・・梶さんは、殺陣は苦手なのね(^^;。全然腰が入ってなくって、とってもへなちょこ。でも、それすら可愛いのだもの、どうしようもないなぁ(爆)。
というわけで、この映画の見所は、役者さんたちの驚くばかりの怪演と、梶さんの可愛美しさ。絶対必見。癖になる味のある映画ですよ!!!