つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

神様の天地創造。~ COMと火の鳥。

2020年11月21日 06時44分42秒 | 手すさびにて候。
      
同じカテゴリーの先回投稿(LINK有)では、漫画誌「ガロ」を取り上げた。
今回は、その先達を大いに意識しながら、
別路線でサブカルチャー振興に一石を投じた雑誌の話から筆を起こそう。

COMICS(マンガ)、COMPANION(仲間)、COMMUNICATION(伝達・報道)。
これらの意を込めた月刊マンガ誌 --- 「COM(コム)」。
商業主義に囚われず新人を発掘する場として、昭和42年(1967年)に誕生した。
出版元は「虫プロ商事」。
つまり“マンガの神様”が大きく関わっている。

創刊時は、その「手塚治虫」の『火の鳥』を筆頭に、
「永島慎二」「石森章太郎」の新作が三本柱。
他にも、12名競作による企画連載『トキワ荘物語』や、
すでにメジャーで活躍していた漫画家が、短編を寄稿した。
月例新人賞からは「あだち充」「竹宮惠子」「能條純一」「諸星大二郎」
「岡田史子」「松森正」らが見い出される。
そして、画期的・先駆的な取り組みとして、
読者参加ページを通じ、全国のマンガサークルの組織化(※1)を目指した。

なかなかの充実ぶりだが、「COM」は短命に終わった。
商業的に成功していたとは言いがたく、加えて組織内部のイザコザもあり、
昭和46年(1971)、虫プロ商事の倒産により幕を下ろす。
発行期間は僅か4年余りに過ぎない。
しかし、ここでの萌芽は以降の漫画史へ少なからず影響を及ぼした。

--- さて、『火の鳥』である。
足かけ30年以上に亘り、複数の掲載誌をまたいで発表された未完の大作。
そのペンが最も充実していたのが「COM」誌上だった。
僕が、個人的に好きな話は ------ 迷った末に「未来編」を挙げたい。

ほんの手すさび、手慰み。
不定期イラスト連載第百五十九弾は「火の鳥~未来編」。



舞台は、西暦3404年。
人間は荒廃した地上に見切りをつけ、
世界5箇所に作った地下都市・メガロポリスに移り住み、
自らの支配・管理を人工知能にゆだね生きながらえていた。
しかし、ある日、AIが暴走を始め、核戦争が勃発。
人類は、ほぼ滅亡した。

放射能に汚染された地球で生き残ったのは、
ドームシェルターに居合わせた3人の地球人と、1人の異星人。
@死の大地に人造の生態系を作り出そうとしている異端の科学者、「猿田」。
@メガロポリスのAIを母と慕う僕(しもべ)、「ロック」。
@ロックの部下で体制に疑問を抱き逃亡してきた、「マサト」。
@そしてマサトの恋人、「タマミ」。
 彼女は美しい女性の姿をしているが人間ではなく、太陽系外の宇宙生物。
 外見を自由に変形できる不定形生物・ムーピーだ。

--- ここに「火の鳥」が絡んでくる。
火の鳥とは、人類と地球の歴史を見守り続ける不死の鳥で、
時間と時空を超越した存在。
(※2)
「神」にも等しい“大いなる者”は、「マサト」に途方もない使命を託す。

<お前に不死を与えた、地球に次の人類を誕生させよ。>

程なく、大核戦争が引き起こした地殻変動により、
ドームシェルター内に放射能が充満し、「ロック」と「猿田」は他界。
「タマミ」--- ムーピーは、過酷な環境に耐える長命だが、500年で息絶えた。
死ぬに死ねない「マサト」は、孤独と戦いながら新しい命を創ろうとする。
ロボットを製造し、人工細胞から合成生物を培養したが、うまくいかない。
失敗と絶望を繰り返し、やがて一つの結論に辿り着く。

<命を創るのではなく、命の発生・進化を待とう。>

有機物を海に注ぎ、それが波に揺られるうち、単細胞生物が生まれ、
多細胞生物になり、動物と植物に枝分かれし、地上で繁栄。
恐竜が生まれ、知能をもったナメクジが滅び、ようやく人類が現れる。
--- ここまで費やした時間は少なくとも「30億年」。
「マサト」は、ようやく使命を果たし終えた。

「未来編」を初めて読み終えたあの日。
少年だった僕は小さな窓から外を見遣り(みやり)、
ほとんど「永劫」と言っていい時の果てに思いを馳せ身震いした。
同時に、これが「手塚治虫」の脳内で紡(つむ)がれたことに、
ただ驚き、感服するしかなかったのである。

(※1:ここでの運動は、後の同人誌即売会「コミックマーケット」へ繋がる)
(※2:手塚治虫公式HPから、抜粋・引用)

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