リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

90. 優しい家族

2017年05月24日 | 旅行

2016年・ドイツ14回目の旅 No.46


 一生忘れられない体験をしたバス停    ベンチの上の黒い物は私のリュックとチビコロです


◆11月24日(木) もう泣きそう…  6592歩    

 今日はある意味一番楽しみな教会訪問でもありました。リーメンシュナイダーの手になる作品で小さな天使像がウンターエーベルスバッハという町にあるというのです。以前から気にはなっていたものの、写真を見るとあまりリーメンシュナイダーの作風が感じられません。でもきちんと見てみないことには簡単に判断を下すわけにはいかないと思って機会を待っていたのでした。ヴュルツブルクを10時1分に列車で出てから北上してバート・ノイシュタット駅まで直行ですが、10時46分に着いてから約1時間バスを待たなければなりません。この駅にはトイレもなく、近くにカフェーも見当たらないのです。幸いなことにお天気はよく暖かかったので、外で待つことは苦になりませんでしたが。

 バスが走り出してから17分で(12時7分)順調にウンターエーベルスバッハに着きました。でもあらかじめ調べていた地図と大違い。地図に依れば比較的大きな町の中心にマルクト広場があってその近くにマリア教会があるはず。レストランもあるし、何とかお昼もトイレも賄える予定だったのですが、何と小さな静かな村でしょう! 一体何を間違えたものか。その小さな村の入り口に確かに小さな教会がありました。念のためバスを降りてその教会まで戻ってみると、ドアは閉まり、トイレもあるけど鍵がかかり、近くに誰もいません。


この一番奥が教会です   近くに行けば美しいマリア像が… 


 教会のホームページに書かれていた事務所に電話を入れてみたところ、「あなたの言っていることがわかりません」とガチャン。悲しくなりました。バス停はトップ写真のようにきれいなところですが、近くの家は静かで人気もなく、町を通る人もいないのです。次第にトイレに行きたくなってきました。帰りのバスは13時31分か41分にはバート・ノイシュタット行きが来るはずです。多分どちらかはスクールバスなのでしょう。



       バス停前の様子 とっても静かです 


 この頃、ぽつりぽつりと人影が現れ、皆教会の方向に歩いて行きます。次第に人も増えて、何かあるのかと思ったら一人の男性が目の前の掲示板を見て、またもや教会の方向へ。私も掲示板を見てみたら、今日の午後お葬式が入っていたのでした。今なら教会に入れるのになぁと思いましたが、あまりにもそれは失礼だと思い、日を改めてまた来ようと思い直しました。しかし午後2時を過ぎてもまだバスが来ないのです。次第にトイレには行きたくなるし、どうしよう、近くの家のベルを片っ端から鳴らしてトイレを貸してくださいと言ってみようかと案じているところに、バス停横の家から一人の女性が出てきました。人がいたんだ! 彼女は私に向かって歩いてきます。そして、にこやかに、
「あなたはずっと長い時間バスを待っているようですけれども何かお手伝いできることはありますか?」
と声をかけてくれたのです。もう泣きそうになりました。「お手洗いを貸していただけませんか?」というと、どうぞどうぞと笑顔でいってくれたので、本当にありがたく思いました。

 トイレから出ると、「夫が町に出る用事があるから駅までお送りしますよ」というのです。まだ若い夫妻でお連れ合いはちょっと見にはヤンキーのような感じ。でも、黙々と運転する彼に少しずつ話しかけてみたところ、教会の天使像を町の誇りだと思っているとのこと。後ろの席に乗った男の子も何だかのんびりした口調であれこれお父さんに話しかけています。見かけよりずっと親切な人たちだとわかりました。バート・ノイシュタット駅で降りたときにお礼の手紙を送りたいからと住所を書いてもらいました。帰国してからお礼の手紙とささやかなクリスマスプレゼントを贈りました。ウンターエーベルスバッハでは作品も見られず、バスは来なかったけど、優しい家族に出会えて心から感謝しています。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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