Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

刑法Ⅱ(各論)(第02回② 2015年10月08日)

2015-10-04 | 日記
 刑法Ⅱ(各論)
 第02週 練習問題

 一 基本問題
(1)単純過失・業務上過失・重過失致死傷罪
1業務とは、人が(       )に基づいて、(    ・    )して行なう行為であって、他人の(    ・    )等に危害を加えるおそれのあるものをいう。例えば、業務に含まれるものに、( 調理  狩猟  自転車  動物の調教)がある。←該当するものに○印をつけなさい。


2業務には、人の生命・身体に危害を加えるおそれのあるものだけでなく、その危害を防止することを内容とする業務も含まれる。その業務を行なわなかったことによって、すなわち業務の不履行・不作為によって他人の生命・身体に危害が及んだ場合、業務上過失致死傷罪が成立する。( ○ × )


3業務は、社会生活上の地位に基づくものであるので、それは社会生活、すなわち社会経済的な生活において収入や利益を得るための手段行為に限定され、非営利行為などは除外される。( ○ × )


4業務には、社会生活上の営業上の行為だけでなく、非営業・非営利の行為も含まれ、収入を目的としていないもの、たんなる娯楽を目的としたものもまた業務にあたる。( ○ × )


5業務は、社会生活上の地位に基づいて、反復・継続して行なわれ、他者の生命・身体に危険を及ぼすおそれのある行為であるので、一回限りのつもりで行なった場合は、反復継続して行なう意思があったとはいえないので、それは客観的い業務には当たらない( ○ × )。たとえ、業務にあたるとしても、反復・継続性の認識はなかったので、業務性の認識があたっとはいえない( ○ × )。

6医師が、患者の往診のための自動車を運転して移動する行為は、業務にあたる。( ○ × )
 大判昭和14・523刑集18・283

7自動車の運転の練習と車体の洗浄のために、十数回にわたって自動車を運転した。( ○ × )
 最決昭和34・4・23裁判集刑129・53

8バード・ハンティングのために猟銃を使用した。業務にあたる。( ○ × )
 最判昭和33・4・18刑集12・6・1090

9高校教師が顧問を務める山岳部の山上合宿に同行した。( ○ × )
 山形地判昭和49・4・24刑月6・4・439

10雑貨輸入商Aや医師Bが、その仕事のために、自家用自動車の運転を行なった。( ○ × )
 大判大12・8・1刑集2・673

11お菓子屋の店長Aは、自転車に乗って、夏祭りの会場に菓子を運んだ。( ○ × )


12単純過失と重過失の違いを述べなさい。


13業務上の過失の場合、単純過失に比べて刑罰が重くなるのは何故か。説明しなさい。


(2)堕胎罪
1堕胎罪の行為主体と行為客体の特徴を、各条文に即しながら答えなさい。
 212条 主体               客体

 213条 主体               客体

 214条 主体               客体

 215条 主体               客体

 216条 主体               客体

2堕胎罪の保護法益は、何ですか。各条文に即しながら答えなさい。
 212条・213条・214条

 215条

 216条


3堕胎罪は、216条を除き、保護法益が侵害されなくても、それが危険にさらされただけで、既遂に達する。このような犯罪を(        )に対して(       )という。


4堕胎罪(業務上堕胎罪)と母体保護法との関係を述べなさい。
 なお、堕胎罪の客体は、胎児であり、母体の外部に(      )した時点で、(    )となる。ただし、堕胎は、一定の要件のもとに、人工妊娠中絶として許容されている。母体保護法によれば、(  週未満)の胎児については、一定の要件のもとに実施することが認められている。人口妊娠中絶は、刑法上、(         )に該当するものの、指定医師による適性な手術として行なわれ、母体の生命と健康などの優越する法益が保全される場合には、(    )が阻却される。


5堕胎とは、(   )週以降の胎児を、(      )より先に、人為的に母体の外に排出する行為をいう。その行為によって母体の健康と安全だけでなく、胎児の生命もまた危険にさらされるため、刑法は堕胎を処罰している。ただし、(      )より先に、例えば40週の堕胎を人為的に排出しても、その生命に対して危険はあっても、無事に生まれ、その後順調に生育することもある。帝王切開の場合がそうであるである。しかし、帝王切開は、胎児は(   )週を超えているので、人工妊娠中絶として正当化できない。では、このような場合でも堕胎罪の構成要件に該当し、胎児の生命への危険を理由に処罰されるのか。処罰されない。それは何故か。

・堕胎=胎児の生命への危険はどの程度必要か?(抽象的危険犯説か、それとも具体的危険犯説か)
 出生し生育しているとはいえ、堕胎により胎児の生命には抽象的ではあっても、危険が及んできるので、その行為は堕胎罪として処罰することができる。しかし、帝王切開の場合、自然の分娩に先立って、人為的に胎児を母体の外に排出しているが、胎児の生命には、そのような抽象的な危険は及んでいないので、堕胎にはあたらない(抽象的危険犯説)。あるいは、抽象的な危険は認められても、具体的な程度に達していなければ、堕胎とは認められないので、堕胎とはいえない(具体的危険犯説)。

 これに対して、生まれ、生育している以上、堕胎にはあたらないと解する立場がある。堕胎とは「嬰児殺」のことであり、生きて生まれている以上、生命への危険の有無やその程度は関係ないといえるからである。この立場からは、帝王切開によって、胎児が生きて生まれてきた場合、堕胎にはならない。その後、医師や親が胎児を放置して死亡させた場合、(        罪)の成否が問われる。


6妊娠中の女性Aは、薬物を使用して、お腹の子どもを堕胎した。
 Aの罪責は?


7妊娠中の女性Aは、友人Bに依頼して、Aのお腹の子どもを堕胎させた。
 Bの罪責は?

 Aの罪責は?
 「堕胎をBに依頼する」ということを「堕胎の一方法」と捉えると、

 自身が子どもを認識している妊婦であることを「堕胎罪の刑を減軽する身分」と捉えると、


8友人Bは、妊娠中の女性Aを教唆して、お腹の子どもを堕胎させた(または、Aの堕胎を幇助した)。
 Aの罪責は?

 Bの罪責は?
 A自身が子どもを認識している妊婦であり、それは「堕胎罪の刑を減軽する身分」である。
 Bはそのような身分を持たない。


9妊娠中の女性Aと友人Bは、医師Cに依頼して、Aのお腹の子どもを堕胎させた。
 Cの罪責は?

 Bの罪責は?
 Aの罪責は?


10刑法216条の「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」の意味を説明しなさい。

 不同意堕胎を行ない、よって致傷または致死の結果を発生させた場合
 不同意堕胎罪と傷害罪を比較し、その法定刑の長期と短期を比較して、重い刑により処断する。
 →
 不同意堕胎罪と傷害致死罪を比較し、法定刑の長期と短期を比較して、重い刑による処罰する。
 →

(3)遺棄罪
1遺棄罪の行為客体の特徴を説明しなさい。
 老年
 幼年 堕胎により出生した生育可能性のある未熟児(最決昭和63・1・19刑集42・1・1)
 身体障害
 疾病 高度の酩酊により身体の自由を失った者(最決昭和43・11・7判時541・183)
    MDMAを使用し、意識不明の状態に陥った人


2遺棄の特徴を説明しなさい。
 保護法益としての要扶助者の生命・身体の安全

 保護法益の侵害・危殆化行為としての遺棄
 遺棄=要扶助者との間に場所的離隔を生じさせ、要扶助者を保護のない状態に置くこと
赤の他人Aが、熱中症で倒れそうなBをアスファルトの灼熱の公園に行かせた(作為=移置)
 ただし、同じ状態は不作為によっても生じさせることができる。例えば、救急隊員Aがアスファルトの灼熱の公園で倒れているBを、その場に放置した(不作為=置去り)場合がそうである。遺棄は基本的に作為形式の行為であるが、特定の人の不作為については、遺棄にあたる場合がある。


3単純遺棄罪と保護責任者遺棄罪の関係について論じなさい。
 一般人による遺棄→単純遺棄(基本類型)
 保護責任者による遺棄→保護責任者遺棄(保護責任者という身分による加重類型)

5保護責任者遺棄罪の遺棄の意義について論じなさい。
 単純遺棄罪は行為主体を特定していない→誰でもが「遺棄」を行なえば処罰される
 つまり、刑法は、不特定・多数の者に、「遺棄」という作為を行なわないよう要求している
 この「遺棄」は、作為による遺棄(場所的離隔を生じさせる移置)を意味している

 これに対して、保護責任者遺棄罪は行為主体を特定→「遺棄」は保護責任者に限定
 刑法は、一般の人に対して「遺棄=作為=移置」を禁止しているが、これは保護責任者の場合には、なおのこと禁止される。その禁止規範に違反した場合、責任はより重大。
→保護責任者による遺棄=作為=移置は、単純遺棄罪の身分による加重類型(加重的身分犯)。

 また、要扶助者に対して保護が及んでいない場合、保護責任者は、それを積極的に保護すること(作為)が期待されている(保護責任=保護の作為義務がある)。この作為義務を履行せず、置去りにするなどの不作為の態度をとった場合、その責任もまた重大である。このような不作為もまた遺棄罪として、すなわち保護責任者遺棄罪として処罰される。一般の人の場合には、作為=移置を行なった場合にだけ遺棄罪として処罰され、不作為=置去りにしても処罰されないが、保護責任者の場合は、遺棄は作為=移置だけでなく、不作為=置去りによっても実現できると解されている。つまり、保護責任者による不作為の遺棄は、作為の形式で定められた遺棄を不作為によって実現する「不真正不作為犯」であり、その刑は保護責任者という身分によって単純遺棄罪の刑を加重したものであり、「加重的身分犯」であるといえる。

 不作為による遺棄  自動車故後に負傷者を自車に乗せて現場を離れ、降雪中の薄暗い車道まで運び置去りにした→保護責任者遺棄罪(最判昭和34・7・24刑集13・81163)
 過失により自動車事故を起こし、負傷者を自車に乗せ、その生命・身体の安全を引き受けた者


4保護責任者不保護罪の実行行為としての「不保護」とは、どのようなものか。
 不保護=要扶助者の生存に必要な保護をしないこと→不作為
 保護責任者による不保護だけが、不保護罪として処罰される(真正不作為犯)
 保護責任のない一般の人の不保護は不処罰。保護責任者の不保護のみ可罰(構成的身分犯)

5「保護責任者の不作為による遺棄」と「保護責任者の不保護」の違いは?
 保護責任者の不作為による遺棄は、遺棄という作為形式の犯罪を保護責任者が不作為によって実現する場合である。それは不真正不作為犯であり、(非身分者による)遺棄罪の刑を保護責任者という身分によって加重したものである。これに対して、保護責任者の不保護は、真正不作為犯であり、構成的身分犯である。


6AとBは行き倒れのCを大雨の降る橋の欄干に連れて行った。AとBの罪責は?


7AはBを教唆して、行き倒れのCを大雨の降る橋の欄干に連れて行かせた。AとBの罪責は?
 B
 A

8AとBは高熱の幼児Cを大雨の降る橋の欄干に連れて行った(BはCの実の親)。AとBの罪責は?


9AはBを教唆して高熱の幼児Cを大雨の降る橋の欄干に連れて行かせた(BはCの実の親))。〃?
 B
 A

10AとBは幼児Cに食事を与えなかった(BはCの実の親)。AとBの罪責は?


11AはBを教唆して幼児Cに食事を与えさせなかった(BはCの実の親))。AとBの罪責は?
 B
 A


 二 判例問題
3胎児傷害(最決昭和63・2・29刑集42巻2号314頁)
 現行刑法上、胎児は、堕胎の罪において独立の行為客体として特別に規定されている場合を除き、母体の一部を構成するものと取り扱われていると解されるから、業務上過失致死傷罪の成否を論ずるに当たっては、胎児に病変を生じさせることは、人である母体の一部に対するものとして、人に病変を発生させることにほかならない。そして、胎児が出生し人となった後、右病変に起因して死亡するに至った場合は、結局、人に病変を生じさせて人の死の結果をもたらしたことに帰するから、病変の発生時において客体が人であることを要するとの立場を採ると否とにかかわらず、同罪が成立すると解するのが相当である。

9保護責任者の意義(最決昭和63・1・19刑集42巻1号1頁)
 被告人は、産婦人科医師として、妊婦の依頼を受け、自ら開業する医院で妊娠第26週に入った胎児の堕胎を行なったものであるところ、右堕胎により出生した未熟児(推定体重1000グラム弱)に保育器等の未熟児医療設備の整った病院の医療を受けさせれば、同児が短期間内に死亡することはなく、むしろ生育する可能性のあることを認識し、かつ、右の医療を受けさせるための措置をとることが迅速容易にできたにもかかわらず、同児を保育器もない自己の医院内に放置したまま、生存に必要な保護を何らとらなかった結果、出生の54時間後い同児を死亡するにいたらしめたというのであり、右の事実関係のもとにおいて、被告人に対し業務上堕胎罪に併せて保護責任者遺棄致死罪の成立を認めた原判断は、正当としてこれを是認することができる。


 三 事例問題
1Aは自動車の運転中に過失により歩行者で妊娠中のBに傷害を負わせた。その事故により胎児は損傷を受け、その損傷は、出生後に傷害となって現われた。


2医師Aは、妊娠中のBから依頼を受け、22週を超える胎児Cを人為的に母体の外に排出した。手術後にBは病院を後にした。Cは生育可能な状態にあったが、Aはそのまま放置した、Cは死亡した。


3Aは愛人Bとホテルの一室で相互にMDMAを使用した。すると、Bは錯乱状態になり、泡を吹いて倒れた。Aは心臓マッサージなどしたが、Bの意識は戻らなかった。AはMDMAの使用の事実が発覚するのをおそれ、その場を離れた。その後、Bは死亡した。検死の結果、Aが救急医慮を要請していたならば、Bの生命は十中八九、助かったであろうと認定された。


4Aは自動車の運転中に過失により歩行者Bに傷害を負わせた。Aがそのまま走り去って、置去りにした場合とAがBを自車に乗せて現場を離れ、その後、人気のない農道まで行って、置去りにした場合とを比較して、罪責を論じさない。