Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

第15回・現代の人権(20190118)

2019-01-12 | 日記
 2018年度 現代の人権
 第15回(0118)刑事司法と社会福祉の連携のあり方

(1)講義の目的と課題
・社会問題への関心を高める
 社会問題が自分の問題でもあることを知る
 社会問題を考察し、その解決に主体的取り組むきっかけを探る

 →社会問題の範囲・領域は幅広い。その全てを考察することは困難。
  まず1つの問題を取り上げ、考える。例えば、「子どもの貧困」の問題。
  日本は「経済大国」と言われるが、同時に「子どもの貧困率」の高い国。
  子どもの貧困とは何か? その背景事情は? 「親の貧困」?

・犯罪を減らし、なくすための課題
 犯罪と社会
 犯罪と刑罰
 犯罪と犯罪の実像
 刑罰の有効性神話からの脱却
 非刑罰的対応の必要性と可能性の模索
 非刑罰的対応と「福祉」による働きかけ
 「刑罰の代わりに福祉を用いる」のではなく、
 「福祉の充実の向こう側にある犯罪なき社会」を展望する
 科学的有効性と人道的寛容性を備えた社会科学の必要性

 →子どもの貧困は要因の一因に親の貧困があると仮定すると、
  結果である子どもの貧困を解決するためには、
  原因である親の貧困を解決することが必要
  親の貧困の解決策が原因となって、子どもの貧困の解決という結果が出る
  しかし、結果が出るまで、目の前の子どもの貧困への対処が必要
  子どもの居場所、子ども食堂、無償の学習相談会など
  それを誰が担うのか、行政か、個人か、地域住民か?
  少年非行の背景に「子どもの貧困」があると仮定すると、
  非行少年への対応は刑法→刑事訴訟法ではなく、刑法→少年法
  少年法に基づく保護処分の「非刑罰化」
  同時に居住地域の社会環境・家庭環境などの調整を徹底する

(2)講義のスケジュールとテーマ
第01回(0928)犯罪白書の統計から見える日本社会
 戦後日本の犯罪情勢をマクロ的視点から見ると、
 犯罪の種類では窃盗と交通事故(過失運転致死傷)が多数
 戦後の増加傾向は終戦後の不況と混乱に起因し、
 1960年代後半の増加は交通事故の増加に起因し、
 1990年代のピーク時はバブル崩壊後の貧困・経済事情に起因
 現在は犯罪対策が功を奏して減少傾向に転じている

第02回(1005)高齢者犯罪の実態
 ミクロ的な視点で見るならば、犯罪の減少傾向も複雑な様相を呈している
 高齢者(65才以上)の犯罪が増加傾向にある
 しかも初犯の犯罪高齢者が増加傾向にある
 要因には「孤独」と「貧困」がある
 年金制度は? 居住形態は? 家族関係は?
 高齢犯罪者が出所した後の居場所と生活保障は?

第03回(1012)少年犯罪の実態
 1980年代をピークに少年非行は減少傾向にある。
 しかし、中高生の時期から非行・犯罪を行う要因・事情の解明が必要
 日本社会が子どもにとって生きずらい社会になっている
 競争が激しい社会は、子どもに緊張とストレスをもたらし、圧迫している


第04回(1019)再犯予防の現状
 政府が一丸となって再犯予防の取り組みを始めている
 2000年代の半ばから犯罪対策閣僚会議が発足
 犯罪対策の総合的な政策と個別の政策を結合し
 警察庁・法務省などの省庁だけでなく、他の省庁とも連携
 再犯予防の重要課題 仕事と居場所

第05回(1026)50年後の日本社会
 人口動態・経済見通し 少子高齢化がもたらす社会の実態
 経済成長が伸び悩み、脱デフレ策が頓挫し、不況・貧困の傾向
 高齢率の上昇、年金・医療・社会保障費の増大
 社会の経済規模の縮小傾向を是正する対策
 人工知能などを活用した経済的なイノベーション
 外国人労働者の受け入れに伴う諸制度の見直し

第06回(1102)犯罪と福祉の関係
 刑罰制度の現在のあり方 犯罪に対する刑罰の一般的な関係
 犯罪の個別・特殊な要因を除去する刑罰の個別性・特殊性
 一般的な自由剥奪刑(懲役刑)によって除去される要因は何か?
 それによって除去されない要因は何によって除去可能か?
 自由剥奪・懲役を補足する、あるいはそれを代替する政策の模索の必要性

第07回(1109)日本の現状
 高齢犯罪者・障害のある犯罪者が出所後に地域に定着し、
 居場所と仕事を見つけ、自立的な生活ができるような支援体制

第08回(1116)フィリピンの現状
 フィリピンの少年非行対策
 アメリカ・イギリスの理論の影響
 フィリピン固有の課題の成立と理論の創造的適用の必要性

第09回(1123)イタリアの現状
 施設内処遇から社会的処遇 社会的共同組合の実践
 ヨーロッパの自由主義経済市場のなかで生き残れる活動
 協同組合の運営が民主主義・平等主義に基づいている
 人間社会の基本的なあり方として教訓化の可能性

第10回(1130)ブラジルの現状
 ブラジルにおける社会的共同組合・女性の元受刑者の組織の実践
 環境保護、廃材の活用、学校教材としての利用
 イタリアと同様に、社会が元受刑者を社会の一員として受け入れる気風

第11回(1207)アメリカの現状
 障害のある犯罪者、あるいは障害に起因した犯罪
 倫理・道徳・人道性、科学的・医療的な研究成果・データに基づく対応

第12回(1214)ロシアの現状
 ロシアにおけるDV対策
 社会主義から資本主義へ 古いロシアの伝統の克服へ

第13回(1221)アムネスティ・インターナショナルの取り組み
 アムネスティ・インターナショナルの取り組み

第14回(0111)日本国際社会事業団(ISSJ)の取り組み
 子ども目線から子どもを取り巻く様々な問題の解決の取り組み
 国際的縁組縁組、無国籍の子どもへの支援

第15回(0118)刑事司法と社会福祉の連携のあり方
 犯罪・非行の克服のための社会福祉の必要性・緊急性・重要性