Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

刑法Ⅱ(各論)試験問題とその講評

2016-02-28 | 日記
 2015年度刑法Ⅱ(各論)試験問題
 次の問題から1問を選んで答えなさい。

(1)Aは、深夜、Bのアパートの窓から入り、就寝中のBを姦淫しようと、その手足を押さえたところ、気づかれ、「お前は誰が」と言われたので、玄関から逃げようとしたところ、シャツの襟をつかまれたので、その手を払いのけるために、手拳でBの手をたたき、そのまま逃走した。Bは加療4週間の傷を負った。Aの罪責を論じなさい。

(2)村の村長Aは、その職務として村の財産の管理事務を執り行っているが、懇意にしているBから依頼を受け、村議会の決済を受けずに、その一部である現金を村の名義でBに交付した。Aの罪責を論じなさい。

(3)Aは、町はずれにある自己の所有物の倉庫が老朽化し、崩れそうになっていたが、解体費用がなかったため、取り壊すことができなかったところ、失火を装って解体することを計画し、火を放ち、全焼させた。近隣の住民は、そのために一時的に避難した。Aは、多くの人に危険が及ぶとは認識していなかった。Aの罪責を論じなさい。

試験問題の論点
 いずれの問題も、
(1)事実関係の整理と問題の所在、
(2)前提となる議論の解説、
(3)事例問題へのあてはめ、
(4)結論
 の順番に答えことが必要です。その際、(3)において、自説と異なる見解を批判して、自説の正しさを論証することが必要です。講義でも繰り返し説明しましたが、「○○説は、なるほど確かに、……という点で非常に説得力があるが、しかし……問題がある。その点、××説は、……について、……と論じており、妥当であると思われる」というフレーズを用いるのがよいと思います。

 第1問は、住居侵入罪と準強制わいせつ(未遂)致傷罪の成否が論点です。とくに、準強制わいせつ罪の「抗拒不能」の意義、準強制わいせつ(未遂)致傷罪の成立要件である致傷は、準強制わいせつの手段行為(手足を押さえる)から生じた場合に限るのか、その機会に行われた行為から生じた場合も含まれるのか、という輪転を設定して答えてください。

 第2問は、横領罪か背任罪かのいずれが成立するかの問題です。職務として村の財産を管理している村長が他人にそれを交付した場合、横領罪が成立するためには、その行為が横領(自分のものとして処分する行為)でなければなりません。背任罪が成立するためには、その行為が他人の事務処理(村名義による貸付)として行われていなければなりません。この論点を設定して答えてください。

 第3問は、自己所有の非現住建造物の成立要件(刑109②)である「公共の危険」の基本的性格に関する問題です。この要素が構成要件要素であるならば、その発生を認識していなければ、故意が成立は認められまあせん。これに対して、この要素を「客観的処罰条件」と捉えるならば、その認識がなくても、故意の成立を認めることができます。

 答案は、(1)から順序良く(4)へと流れるように書いてください。試験時間は1時間なので、最初に問題文を読んで、回答する問題を選び、その回答のために、(1)(2)(3)(4)のそれぞれの箇所で何を書くかをまず考え、それをレジュメ化してください。この作業が重要です。これに20分は費やしてほしいと思います。書きながら考えると、不完全な答案になるので、まず考えてから、論点を明らかにして、で書くようにしてください。