Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

刑法Ⅱ(各論)(第13回 練習問題)

2016-12-21 | 日記
 刑法Ⅱ(各論) 第13回 練習問題
(1)基本問題
0国家的法益に対する罪の構成
・国家の存立――内乱罪、外患罪、国交に関する罪
・国家の作用――公務執行妨害罪、職務強要罪、封印破棄罪、強制執行妨害罪、逃走罪
        犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪、偽証罪、虚偽告訴罪、職権濫用罪、汚職の罪

1内乱罪
 内乱罪(77)とは、国の統治機構を破壊し、またはその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として(目的犯)、暴動をする行為である(1項)。首謀者(1号)、謀議参与者・群衆指揮者(2号)、付和随行者(3号)に応じた刑が定められている。未遂も処罰される(2項)。

 内乱予備罪・内乱陰謀罪(78)は、内乱を実行する目的とした準備行為、内乱を実行するための2人以上の者による合意である。

 内乱罪・内乱予備・内乱陰謀罪の幇助罪(79)は、兵器・資金・食糧を供給するなどして、77条・78条の行為を幇助する行為である。

 内乱予備・内乱陰謀・その幇助後、暴動(=内乱既遂)に至る前に自首した場合、その刑は必要的に免除される(80)。

2外患罪
 外患誘致罪(81)とは、外国の政府や軍隊と通謀して、日本国に対して武力を行使させる行為である。外患援助罪(82)とは、日本国に対しては外国から武力の行使があたときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与える行為である。外患誘致・外患援助の未遂罪(87)・予備罪・陰謀罪(88)も処罰される。

3国交に関する罪
 外国国章損壊等罪(92)とは、外国に対して侮辱を加える目的で(目的犯)、国旗・国章を損壊、除去、汚損する行為である。

 私戦予備罪・陰謀罪(93)とは、外国に対して私的に戦闘行為を加える目的で(目的犯)、その準備をし、またその実行のために2人以上の者の間で合意することである。

 中立命令違反罪(94)とは、外国が交戦している際に局外中立命令に関する命令に違反する行為である。

4公務執行妨害罪
 公務執行妨害罪(95①)の保護法益は、公務員によって執行される公務である。公務員が職務を執行するにあたり、暴行・脅迫を加える行為であり、公務執行の執行が妨害されたことを要しない(抽象的危険犯)。

 公務は適法なものでなければならない。当該公務員(警察官)の一般的・抽象的な職務権限の範囲内にある職務であり(現行犯逮捕)、かつその執行について具体的な権限があり(犯罪の現認など)、さらに関係法令が定める方式(最小限度の有形力の行使)に基づいているものでなければならない。従って、執行方法に重大な法令違反がある場合、その職務の適法性は失われる。たとえ、現行犯人ではない者を逮捕した場合であっても、逮捕行為時において、一般人を基準にして判断すれば、現行犯人と認められる十分な理由があったといえる場合には、そのような職務であっても適法と判断される(それによる被害は刑事補償制度が適用される)。

 ただし、逮捕されそうになった者の側からは、そのような逮捕は適法とは思えない。それを免れるために、警察官に暴行を加えることもある。そのような場合、公務執行妨害罪の構成要件に該当し違法であるが、行為者には自己の行為の違法性を基礎づける事実の認識がないので、公務執行妨害罪の故意が阻却される。

5職務強要罪
 職務強要罪(95②)とは、公務員にある処分をさせ、若しくはさせないために、またはその職を辞させるために、暴行・脅迫を加える行為である。結果として処分させるなどしなくても、成立する。処分は職務権限に属するものなので、当該処職務権限の範囲内にない処分をさせようとした場合、本罪は成立しない。

6封印破棄罪
 封印破棄罪(96)とは、公務員が施した封印・差押えの標示を損壊するなどの行為である。封印などは、公務員が物を保全するために行なう職務である。弁済したので、差押えの効力は失われたと誤信して、その表示を損壊した場合、差押えの表示が公務員によって為されたこと、これを損壊することの認識がある以上、錯誤により違法ではないと誤信したことは、法律(違法性)の錯誤でしかない。制限故意説からは、違法性の認識の可能性がある場合、故意の成立が認められる(犯罪の故意=事実の認識+違法性の認識の可能性)。

7強制執行妨害罪
 強制執行妨害目的財産損壊等罪(96の2)とは、強制執行の適正な遂行を妨害するために、自己の財産を損壊等する行為である。強制執行の適正な遂行が保護法益であるが、強制執行は債権の実現のための手段であり、最終的には債権者の債権保護を目的とするものであるので、本罪が成立するかどうかの判断に当たっては、少なくとも刑事訴訟の審理過程において、被害者に債権があることが確定していなければならない。

 強制執行行為妨害罪(96の3)とは、偽計・威力を用いて強制執行を妨害する行為である。

 強制執行関係売却妨害罪(96の4)とは、偽計・威力を用いて強制執行において行われ、また行なわれるべき売却の公正を害する行為である。例えば、強制執行として不動産の競売が行なわれ、それを落札した人に対して、その取得を断念するよう威力を用いて要求する行為などである。

 加重封印等破棄罪(96の5)は、報酬を得る目的で、または得させる目的で、他人の債務に関して、96条から96条の4までの行為を行なうことである。

 公契約関係競売妨害罪(96の6①)は、偽計・威力を用いて競売を妨害する行為であり、談合罪(96の6②)は、公正な価格を害し、または不正な利益を得る目的で、競売や入札において競争者が通謀して、価格を取り決めたり、特定の者に落札させて契約者にする行為である。

8逃走罪
 逃走罪(97)とは、裁判の執行により拘禁された既決または未決の者が逃走する行為である。

 加重逃走罪(98)、97条に規定する者、勾引状の執行を受けた者が、拘禁場・拘束器具を破壊し、暴行・脅迫し、または2人以上通謀して、逃走する行為である。

 被拘禁者奪取罪(99)とは、法令により拘禁された物を奪取する行為である。

 逃走援助罪(100)とは、法令により拘禁された者を逃走させる目的で(目的犯)、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為である。前項の目的で、(看守等に対して)暴行または脅迫する行為である。

 看守等による逃走援助罪(101)とは、法令により拘禁された者を看守し、または護送する者が、その拘禁された者を逃走させる行為である。

 以上の罪の未遂(102)は、処罰される。

(2)事例問題
 上記の判例の事実関係を参照。
(1)内乱罪について
1内乱罪の保護法益について論じなさい。









2内乱罪は集団犯であるが、集団に属さない者が集団に内乱を行なうよう教唆したが、集団は何も行わなかった。教唆した者に対する総則の共犯規定の適用の可否について、論じなさい。









3集団に属さない者が集団が行なう内乱の計画・準備・実行のために資金を提供したが、集団は何も行わなかった。幇助した者の罪責を論じなさい。










(2)外患罪について
1外患罪における「外患」の意義について論じなさい。









2外患罪は集団犯ではないので、それを教唆・幇助した者には総則の共犯規定が適用されますが、外患の実行に着手しなかった場合、どのように扱われるでしょうか。










3外観援助罪の行為状況と行為客体の特徴について述べなさい。また、日本に対して外国から武力行使が行われる前においても、外患援助の予備・陰謀の成立は認められるかについて論じなさい。










(3)国交に関する罪について
1外国国章損壊等罪の客体と行為について論じなさい。









2私戦予備および陰謀罪の意義について論じなさい。日本人がイギリス旅行中に「イスラム国」からの勧誘を受けてトルコ経由でシリアに行き、そこでシリア軍に対して戦闘行為を行なうための軍事訓練に参加した場合、私戦予備にあたるでしょうか。










(4)公務執行妨害罪について
1公務執行妨害罪の行為について論じなさい。









2公務執行妨害罪における「公務員の職務」の内容について論じなさい。












3公務の適法性の要否とその判断方法について論じなさい。









4公務員の職務が違法であると誤信して、暴行を加えた場合の罪責を論じなさい。









5昼休みが終わり、捜査現場に戻る途中の警察官に暴行を加えた場合、「公務の執行中」といえるか。









6決済をすませば、封印の効力が無効になると誤信し、それを破った場合の罪責について論じなさい。









7債権を履行するための仮処分に対して妨害を行なったが、まだ民事裁判では債権の存在が認定されていない場合の強制執行妨害罪の成否について論じなさい。









8競売・入札妨害罪の特徴について論じなさい。








9談合罪の特徴について論じなさい。









(5)逃走罪について
1逃走の罪の保護法益を論じなさい。








2単純逃走罪と加重逃走罪の違いを述べなさい。








3被拘禁者奪取罪における「拘禁」」の特徴を述べなさい。







4逃走援助罪の特徴を述べなさい。






5看守者による逃走援助について述べなさい。



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